39. やつらは本物のハンターだ!
「全機に通達、これより前方のⅤ型を殲滅する」
大隊を指揮するカキノキ中佐がそう告げながら、機体が手にする銃を構えた。
基地の上空を低空で通過する多数のザンゲツ。
同じ高度で接近するⅤ型。
「攻撃開始!」
ザンゲツから一斉に放たれる砲弾。
左右に分かれて回避するⅤ型。
Ⅴ型に乗るキリシマよりも少し若いパイロットが、モニターを見つめて言った。
「いったい何機いるんだよ!」
「この数を相手にするのは、かなりきついな……キヌタのヤツ無茶させてくれる」
Ⅴ型を操縦するキリシマが激しく機体を揺らしながら、砲弾を放っている。
「よし! 1機目。 次ぎ!」
数の差は4倍近くあるが、Ⅴ型は敵の機体同士を射線に持ち込んで、敵に砲撃をためらわせながら戦っていた。
「2機目。 次ぎはそこだ!」
キリシマは追われている僚機をさがしていた。
見つけると、追っている敵の推進器へ砲弾を撃ち込む。
「3機目!」
最初は分散したキリシマ達だが、すぐに左右から中央へ切り込んで敵を分散。
動きの遅い者から確実に狙い、数を減らしていった。
「くそっ! こいつら戦争の生き残りか? 錬度が違い過ぎる」
カキノキ中佐は少し離れた場所から、戦闘を眺めていた。
「中佐! あんな旧型機に我々がなぜ?」
「旧型だと、ザンゲツと中身は同じだぞ! やつらは本物の狩猟者だ!」
「ハンターですか?」
「ああ。獲物に噛みつかれるような素人じゃない。本物のハンターだ」
次ぎ次ぎと落とされていたザンゲツだが、Ⅴ型も何機か被弾し、離脱する者がいた。
数が多すぎて混乱していた空だが、互いに半数まで減ると、状況が変わった。
「推進剤がヤバイな……降下して戦うしかないか……」
キリシマが降下し、敵を下から撃ち始める。
すると、ほかの機体も同じように降下し始めた。
そのとき降下中に爆裂開放で自動回避した機体。
一瞬だった。
Ⅴ型は腰から下が粉々に吹き飛んだ。
「何だ今のは!?」
キリシマが予測した砲撃地点を見る。
モニターの動体認識枠が表示され、拡大された。
枠の中には着地したままのⅥ型が、巨大な砲を腰に構えていた。
その機体にはサトコが乗っていた。
構えていたのは、今回の式典に持ち込まれていたザンゲツ用の装備。
メテオララ社の大口径砲。
放たれたのは、新装備の多弾頭砲弾。
1発の砲弾が分散して敵を襲う。
浮遊しながら撃てる小口径の砲弾ではない。
浮遊したまま使うことが出来ない、大口径の砲弾。
直撃すれば、猟機兵装は粉々に吹き飛ぶ。
「先にアレを潰さなければ、厄介だ……」
キリシマは知らなかった。
操縦しているのがサトコだということを。
「次ぎはアレ……」
サトコの目の前には敵であるⅤ型が映し出され、照準の中に納まった。
「撃ちます!」
サトコが操縦スティックのボタンを押す。
同時にⅥ型の人指し指が大口径砲のトリガーを引いた。
砲口から放たれる砲弾。
爆炎と衝撃波に爆音。
吐き出される巨大な薬莢。
Ⅴ型の自動回避では、分散してくる多弾頭砲弾をかわし切れなかった。
左の手足が噴き飛び、胴体の側面にもかすり、機体が弾き飛ばされる。
「次ぎは……」
サトコが次ぎの標的を探していると、警告音が鳴った。
「やっぱり、この状況じゃ無理なんです。こんなの」
そう言ってサトコのⅥ型は砲を投げ捨て、地下格納庫のスロープへ後退。
キリシマが全力で向かって、砲撃を始めたが届かなかった。
「よし、それでいい」
キリシマはⅥ型が砲を捨てることはわかっていた。
だから射程外からでも、砲弾を放ったのだ。
「まだ出てくるのか……」
サトコが消えた方向からザンゲツが出てきて、まっすぐ向かってきた。
「……キヌタは何をやってるんだ」
キリシマはザンゲツに向けて照準を合わせたまま待っていた。
敵が撃つタイミングで打ち返す気で待った。
自身の機体が放った光で、こちらの砲口の光を感知させない。
その結果、自動回避をさせずに仕留められる。
そのタイミングを待っていた。
しかし、ザンゲツは青い光を放って上昇。
同時に砲撃を始めた。
「なに!」
キリシマはザンゲツを追って視線を動かした。
照準も銃もザンゲツを追った。
そして、キリシマの乗るⅤ型の銃から砲弾が放たれた。
同時に機体が金属で殴られている音が聞こえた。
「何だ、ヤツの砲弾じゃない。もう1機いただと!」
キリシマの機体に砲弾を浴びせていたのは、コハルだった。
「これ以上はもう、好きにさせない!」
上昇したザンゲツにはキミズカ中尉が乗っていた。
二人は試合の時に見せた技を、実戦で仕えるように進化させていた。
先行するキミヅカ機の陰にコハル機。
キミズカ機は上昇する際に最大推進で上昇。
それによって青い炎の壁が生まれ、その影からコハルが砲弾を放つ。
砲口の光は青い光に溶け込み、感知されない。
それにより、キリシマは青い炎の中にⅥ型がいるとは気がつかなかった。
「ここまでか……全機撤退せよ!」
キリシマはそう言って、青い信号弾を放った。
「キリシマ隊長が……全機撤退だ!」
キリシマ隊の副隊長機が電波妨害中とはいえ、無線で呼びかけた。
そして、眼下に横たわるⅤ型を見つめながら、その場を離れた。
◇
来賓席のある建物の地下。
最初に潜入したキヌタの弟、ヒロキがいた倉庫の前。
扉を5回ノックする清掃作業員。
扉を開いて中に入ると、口を塞がれ、首に冷たい物を感じた。
抵抗せずに両手を上げる清掃作業員。
顔に明かりが向けられると、誰かが言った。
「大丈夫。そいつは仲間だ」
倉庫にはキヌタの仲間がいた。
状況を聞いてから、燃料配管のあるトンネルに戻った。
トンネルには有線での通話機を急遽用意していた。
そして、キヌタの兄、カズキと連絡をとり作戦を考え始めた。
終われるのかドキドキでしたが、なんとかなりそうです。




