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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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36. 「全機、応戦せよ!」


 白く高い壁に囲まれた刑務所。

 広場を囲むフェンスに、もたれ掛かる囚人服の男。


 フェンスの外から、ゆっくりと近づいて行く黒いスーツの男。

 目的の男の背中を見ながら声をかける。


「――またザンゲツ(・・・・)で暴れさせてやる。腕のいい奴を集めろ」

「どうせ、命がけなんだろ。報酬は?」


 囚人の男は背を向けたまま話を続けた。


「全員、同盟国でハーレム生活だ」

「そりゃあいい、乗ったぜ」


「――明日の朝、迎えをまわす――」

「了解だ」


 囚人服の男が歩き出す。

 片腕を上げ、人指し指を立て、指をまわした。


 周囲に他の囚人達が集まって来る。

 黒いスーツを着た男は振り返り歩き出した。


   ◇


 『キヌタ産業 第108処理施設』


 駐車場に並んだバンタイプの大型トラックが数台。

 荷台の中には、モニターの並んだ機器を操作する男女の姿。


「この電波妨害ジャミング。いったい誰が……何が起きてるんだ?」

「だめです! ヒロキさんと繋がりません」


「キリシマ隊への連絡は?」

「そちらは間に合いました」


 キヌタの弟であるヒロキ。

 弟からの連絡を待っている兄。


 連絡があれば、猟機兵装アーマーを突入。

 人型作業機ワーカーの金属カッターでフェンスを切断。

 トラックで制圧部隊を送る予定だった。


「カズキさん! ヒロキさん達が地下格納庫へと移動してます」 


 トラックの後ろから入って来た男がキヌタに告げた。


「捕まったのか?」

「いえ、誘導に従って、避難してるような感じです」


 あごを親指で押しながら考えるキヌタ・カズキ。

 周囲の者がキヌタを見つめる。


「何なんだ? 作戦は失敗したがバレて無いってことか……」

「どうする?」


 キヌタがトラックの後ろに集まっていた男達に指示を出す。


「2班は地下から侵入。出来るだけ情報を集めてくれ。事態を悪化させるような無茶はするな。3班と4班はここで待機、監視を続行。1班は電波妨害ジャミングの発信源を探す」


 キヌタは情報端末で基地周辺の地図を表示。

 1班に電力消費の多い建物を調査するよう指示を出していた。


   ◇


 雲の合間から、地平線に基地を視認。

 数十機に及ぶ猟機兵装アーマーの大編隊。


 GG社製A03ザンゲツ。


 先頭をゆく機体が右手の銃を掲げ、銃口で円をえがくように動かす。

 動作をやめて腕を下げると、機体を滑らせ降下してゆく。


 そのあとを斜めに編隊を組んでいた機体が、次々と続いてゆく。


   ◇


猟機兵装アーマーが多数接近中! 友軍機です」


 キミズカ中尉が地下格納庫の近くで告げた。

 厚い扉が閉じられた地下格納庫内。


 外のアンテナと繋がっているケーブルが指揮車に繋がっていた。

 基地の監視カメラから送られてくる映像が、モニターに移し出されている。


 指揮車に乗り込んだ基地司令が、無線のマイクを手にして告げる。


「――奪われた可能性もある、確認できるまで油断するな!」

「了解しました。全機散開して待機」


 ノイズ混じりの無線による通話。

 強力な電波妨害ジャミングにより視認距離でも届かない。


 ここは、連合本部に最も近い基地。

 選考会が開かれている期間は、企業に格納庫を貸し出す。


 残っているのは十数機。

 敵役で参加した機体と、少数の守備隊だけ。

 期間中、ほかの機体は、GG社の試験場にある格納庫へ移動されていた。




 昼間のように明るい照明の下。

 実戦装備へと換装されてゆくⅥ型。


「――二人ともしっかりしてください!」


 基地司令の命令に従い予備の武闘Ⅵ型に乗り込んだサトコ。

 暗い表情の二人と無線で話をしていた。


「敵だったら戦うしかありません。さっき捕まってたときに、ずっと考えてました。爆弾が爆発して、生き埋めになって、このまま死ぬんだって。怖かった、すごく怖かったんです。あんな思いで、何も出来ずに死にたく無い。だから、今は戦うしか無いって……私は、戦うって決めたんです」


「そうね、これに乗っている私達が戦わないせいで、みんなが殺されるのはもっといやね」 


 格納庫の隅で、銃を持った兵士に囲まれているコウタ達が見えた。


「私達が負けたら、みんなも……そうだね、やるしか無いね。うん私、みんなを守る。守りたい!」


 エリカは震えたまま動かない体に向かって叫んだ。


「戦わなきゃ殺されるぞぉ!」


 エリカの震えが止まった。


「換装完了。起動してください」

「了解」


「起電石起動、浮遊石起動、システム正常、推進装置正常、機体正常……」


 ブーンとうなりを上げ、機体の各部へと電気が満たされる。


「最終システムチェック完了。ハッチ閉鎖、移動開始」


 地面に触れていた膝が伸びて立ち上がる武闘Ⅵ型。

 ゆっくりと浮き上がり向きを変え、格納庫から出て坂を登って行く。


 3機はキミズカ中尉の指示で、他の企業の機体とともに移動した。

 来賓席のある建物へと。




「この状況じゃ、トラフィックパターンを無視して当然か……」


 接近する機体は滑走路の真横から接近。

 接地寸前で浮遊石によって浮いたまま、滑走路から外れ向かってくる。


「――こいつら、味方じゃないのか?」

「こちら基地司令のサザナミだ、接近中の猟機兵装アーマー隊、応答しろ!」


 キミズカ機のモニターに識別信号が届いた。

 無線も通じるはずだったが返答が無い。


 半数が地表に降下し接近。

 半数は上空に残り、基地を包囲するように旋回している。


「こいつら味方じゃ――」


 キミズカ中尉が最後までつぶやく前に、自動回避を始める機体。

 敵が一斉に発砲を始めた。


「全機、応戦せよ!」


 地上の格納庫に隠れている機体が発砲し敵を撃破。


 しかし、上空の機体から雨のように砲弾が降り注ぐ。

 装甲が砕け散り、沈黙し崩れるように倒れる機体。


 飛行して戦うキミズカ中尉達。

 被弾しながらも、敵を何機か撃破し奮戦している。




 上空を旋回していた機体が来賓席の裏側から接近。


「来た!」

「こっちに来るな!」


 エリカとコハル、それにサトコの機体が握っている銃が火を噴いた。

 来賓席のある建物の影から、上空の敵を撃墜してゆく。


「くそっ、なんだあのでかい防弾ガラスは……邪魔くせぇ!」


 エリカ達を狙った敵の砲弾が、防弾ガラスに当たり突き刺さる。

 弾を、貫通すること無く止めている。


「サトコ! つぎ!」

「はい」


 サトコが敵の右腕を狙って発砲。

 左へ回避したところを、コハルが装甲の薄い脇を狙い撃つ。

 エリカは巨大モニターの影から、敵へ砲弾を浴びせ、二人の背中を守る。


「追加装甲無しで戦うなんて! クソッ――」


 建物の裏側にいたメテオララ社のチュンタロウB1が次々と動きを止めた。


 近年は対人作戦が多い。

 軽装甲で機動力とコストを優先した機体。


 主力ではなく即応性を優先し、採用されることを狙った機体だった。

 追加装甲無しでの砲弾戦に、対応できるはずが無かった。


 GG社のA04は実戦用システムへの切り替えに失敗。

 地下格納庫に隠れたままだった。


 メテオララ社と同じコンセプトで作られたインタラメル社の機体も、次々と粉砕された。


 守備隊は敵を引き連れ基地から離れ、小隊ごとに分散して戦っている。

 エリカ達の近くに敵がいなくなった僅かな時間。


「今のうちに残弾の回収をしましょう。エリカは周囲を警戒」

「わかった」

「サトコお願い」

「了解です」


 銃を握ったままの機体に、コハルが起電石のある場所を狙って撃つ。

 サトコが敵の機体から銃を取り上げ、弾倉マガジンを外す。


 残弾があるものは、左腕の裏にある汎用固定レールへ取り付けた。

 そして、敵機の背中に残されている予備の弾倉マガジンを引き抜く。


 機体のシステムを把握しているサトコ。

 的確な視点と音声入力で、すばやく作業をこなしてゆく。




 エリカのコックピットのモニター。

 そこに映されているのは、遠くで高速移動しながら戦う機体。


 それを見つめるエリカ。

 模擬戦で戦っただけなのに、機体の動きでキミズカ隊長機だと気がついた。


 その周囲で逃げ回るだけで、精一杯な感じがするのはハルトだとわかった。

 その瞬間、ハルトの機体から足が外れ、落ちるのを目にした。 


「あっ、ハルトくんが!」


 エリカがそう言って推進器を全開にし、飛び去った。


「エリカ! ダメよ! 戻って!」


 コハルの叫びはエリカのいるコックビットに響いた。

 しかし、エリカの耳には届いていなかった。


 見つめる先には、爆裂開放を繰り返す推進器の青い光が点滅していた。


次回、荒れ狂う、嵐の如く、舞い踊れ!


キヌタの名前をカズキにやっと決めた。

企業名を考えるのが楽しい。

オトメナナかメテオララで迷ったり、インタラメル社もかっこいい。

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