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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
34/45

34. 表と裏


 戦闘後、付着したペイント弾の水性塗料を落とす。

 その為、洗浄機のある格納庫へと案内され、機体を移動させる。

 被弾した敵機のあとについてゆく。

 

「こちらキミ達の相手をした第2小隊、隊長のキミズカ中尉だ。二人とも凄かった……完敗だ」


 戦闘が終了し、相手との通信が解除された。

 モニターで顔を確認することも出来た。


「ありがとうございます」

「あれ? 敵と話ちゃっていいの?」


 エリカは敵との情報交換は禁止と聞いていたのを思い出していた。


「大丈夫だよ、お嬢さん。試合後なら問題ない」

「お嬢さんって、なんか照れるなぁ~。いやぁ~当たってくれてありがとう」

「いや、まあ、そういわれてもな……」


 キミズカ中尉は困惑していた、勝つ気じゃなかったのかと。


「エリカ。失礼なこと言わないで。すみませんウチのが変なこと言って」

「いや、気にしないでくれ、それにしても女とは聞いていたが、こんな若くて可愛い子だなんて知らなかった。驚きだ」

「かわいいだなんてぇ、そんなぁ~」


 エリカが操縦スティックから手を離して、手のひらで頬を押しあげた。


「エリカ、社交辞令よ本気にしちゃだめ」

「いやいや、社交辞令なんかじゃないさ。なっ、ミヤシロ少尉」

「まあ、そうですね」

 

 ミヤシロ少尉と呼ばれた男の顔がモニターに追加された。

 その映像の上に名前のミヤシロ・ハルトと第2小隊4番機と表示されていた。


「エリカくんの初弾で撃たれた男だ」

「隊長! そんな。はっきり言わなくても――」

「いいじゃないか。お返しにお前が彼女のハートを1発で決めてみろ!」


 ハルトとエリカがお互いモニターを見たまま固まっていた。

 それを聞いたコハルが少し笑っていた。


「隊長さん、うまいこと言いますね」

「キミのその、はっきりとした言い方。嫌いじゃない」

「いきなり、嫌いじゃないとか言うの、父にそっくりです」


 キミズカ中尉はモニターの名前を見て気がついた。


「キミは、キリシマ大尉の娘さんなのか?」

「はい。父をご存知で?」

「ああ、俺の教官だった」


 キミズカ中尉とコハルの表情が硬くなった。


「大尉のことは残念に思っている。ほんとうに、いい教官だった」

「ありがとうございます。そう言ってもらえると父も喜んでると想います」


 黙祷もくとうするかのように、お互いに目を閉じ、僅かな沈黙があった。


「キミ達とは、閉会式のあとで行なわれる、懇親会で直接会って話したいな」

「こちらこそ、ぜひお会いして、ゆっくり話を聞きかせてください」

「ハルト君も来るよね?」

「ええっ、まあ。出席するつもりです……」


 秒殺され、恥ずかしくて出る気がしなかった懇親会。

 しかし、エリカに会って見たくなり、気が変わったハルト。


 他の2機のパイロットも話しに加わり、6人での会話となった。

 それは、機体の洗浄が終わって、格納庫へと分かれるまで続いていた。


 皆、懇親会が待ち遠しく、楽しみになっていた。

 それが、叶わなくなるなんて、このときは誰も考えてはいなかった。


   ◇


「空港管制室、制圧完了」

「中央警備室、制圧完了」

「地下作戦司令室、制圧完了」


 拳銃や短機関銃サブマシンガンを手にした者達。

 指を結束バンドで拘束された職員たち。

 その中に、サトコとアライ部長の姿もあった。


「人質は地下シェルターへ移動しろ」

「了解」


 長い階段ををゆっくりと降りる人質達。

 たどり着いたのは、長い通路にそって並んだ扉。

 

 扉の中は大きな部屋。

 そこへ十数人ごとに押し込められ、電子錠が外からロックされる。

 

「管制室の爆弾をセット完了」

「来賓席の真下に爆弾セット完了」

「地下シェルターの爆弾、セット完了」

「了解。それでは撤収しよう」


 松葉色の服を着た者達は階段やエレベータで正面出口へと集まった。

 銃や防弾ベストを箱に投げ入れ、台車を押して外に出る。

 

 ゆっくりとバスが現れ、箱を積み込んでバスに乗り込み席につく。

 ドアが閉じて、バスは走り出した。

 ゲートを何もチェックされずに通過し、遠ざかって行った。

 

 中央警備室にセットされた情報端末が作動し、放送が始まる。


「我々は革命組織、暁の咆哮である――来賓席の下に爆弾を仕掛けた――」


 来賓席や参加企業の格納庫のスピーカーから男の声。

 驚いた来賓が慌てて立ち上がり、扉へと向かうが開かない。


「来賓席の扉を無理やり開いたり、上空に接近するものがあれば爆破する」


 扉を開けようとしていた者達が、扉から離れた。

 屋上は防弾ガラスでかこまれ、登ることはできない。


「我々は、連合に寄生し、同胞の命を吸い取る企業を粛清する――」


 入口ゲートや他の建物にいた警備部隊があわただしく動き出した。


「我々の要求は連合国民の命。連合国民への復讐! 恐怖し震えるがいい」

 

 そう言ってすぐに管制塔の窓ガラスが拭き飛んで爆音が響いた。

 吹き飛んだ窓からは、黒い煙と一緒に赤い炎も見えていた。 




 第3試合の開始を待っていたGG社のパイロットや、軍のパイロットは動かないように指示が出された。

 同じように、他の企業にも指示が出た。

 

「なになになに? なんなの? サトコと繋がんないよ!」


 エリカは泣きながら通信の状態を確認していた。

 コハルは黒い煙を吐き出す管制塔を見たまま呆然としていた。


   ◇


「今の爆発音は何だ? 何があったんだ?」


 廊下をあわただしく走りぬける靴音を聞きながら、倉庫に潜む黒い陰。

 予定の時間はもうすぐだが、動ける状況ではなかった。


 基地指令と来賓を人質にし、基地を掌握。

 仲間の猟機兵装アーマーが来て、完全に制圧する計画だった。


   ◇


 高高度を飛行する武闘Ⅴ型……ラピッドアーマーが十数機。

 選考会が行なわれている、基地へと青空に白い線を残しながら向かっていた。


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