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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
33/45

33. 試合開始です!


「起電石起動、浮遊石起動、システム正常、推進装置正常、機体正常……」


 ブーンとうなりを上げ、機体の各部へと電気が満たされる。


「最終システムチェック完了。ハッチ閉鎖、移動開始」


 地面に触れていた膝が伸びて立ち上がる猟機兵装アーマー

 ゆっくりと浮き上がり向きを変え、来賓席のある建物から離れてゆく。




 サトコとアライ部長は管制塔へ向かうエレベータに乗っていた。

 エリカとコハルが開始地点に到着。


 銃と予備の弾倉マガジンを軍の機体から受け取り、予備の弾倉マガジンを背中のレールに押し込み固定する。


 二人はモニターを見て、手にした銃の残弾数を確認していた。


 サトコとアライ部長は見晴らしのいい管制塔にいた。

 渡されたヘッドセットマイクに話しかける。

 

「こちら指揮所アライだ、二人とも聞こえるか?」

「はいはい、こちら1号機。聞こえます」

「2号機、聞こえてます」


 サトコは望遠装置の電子画像モニターを見ていた。

 モニターには2機が銃を手にして立っているのが映っている。

 

 管制塔では古い接眼式レンズの双眼鏡を使う者もいる。

 しかし、夜間などでも使えるモニター式の望遠装置を使うのが一般的だった。




 来賓席には企業の紹介と、パイロットを紹介する放送が流れていた。

 それは、建物の前にある巨大なスクリーンにも表示されている。


「――お待たせいたしました。これより第2試合を始めます」

 

 スクリーンには数字が表示された。


『3、2、1、スタート!』


「いくぞ~!」


 スタートと同時にエリカとコハルは動いた。

 コハルが前。

 後ろにエリカ。

 推進装置を使っているのはエリカだけだった。

 

 推力全開のエリカに押されて進むコハルの機体。

 軍の機体は少し遅れて、ゆっくりと前に進んでいた。

 

「来るぞ! 3番機、4番機、発砲開始!」


 後方に控えている機体のパイロットが前進している2機に指示を出していた。

 軍の2機が有効射程に入る前に発砲を始めた。


 弾が届く前にエリカとコハルは一緒に動いた。

 エリカはコハルの影に入ったまま、同じ方向に回避。


「エリカ!」

「了解!」


 有効射程に入る寸前でコハルが波動浮遊石で上昇。

 エリカはそのままで発砲を始めた。

 

 エリカの放ったペイント弾。

 それは、コハルを追って銃を上に向けていた4番機に命中。

 

「4番機被弾! 直撃。戦闘不能」


 来賓席に男性の声で放送が流れると社長とキヌタ専務が、拍手をして喜んだが、すぐに手を止めた。


「まずかったかな? キヌタ君」

「いえ、社員のがんばってる姿を見て喜ぶくらいは、大丈夫でしょう。何も反応しないほうが不自然ですよ。社長」

「そうだよね」


 社長とキヌタ専務がスクリーンから目を離している間に2機目が戦闘不能と判定されていた。


 4番機が戦闘不能と判定されたのを聞いた3番機。

 パイロットは、動揺することなく、上昇していたコハルへ発砲を続けていた。

 しかし、警告音と同時に自動回避で機体が振られた。


 エリカは速度を下げずに、3番機へ1発放ったあと、機体の流れにまかせて、発砲を続けた。


「3番機被弾! 直撃。戦闘不能」


 上昇したコハルは、機体を大きく揺らしながら、奥から全速で出てきた機体と撃ちあっていた。


 2機目が停止判定された瞬間、コハルは地表へと降下し、エリカの影に入った。

 そしてコハルは弾倉マガジン交換を行った。


「くそ! やるな……センサーに1機と見せて、隙を狙って来やがる」


 ザンゲツに乗って指揮していたパイロットは笑っていた。

 そして、操縦スティックを操作し、ペダルを踏み込んだ。

 

 弾を交わしながら機体は大きく揺れる。

 少しずつだがコハルとエリカの乗るⅥ型との距離を詰めてゆく。


 今度は、エリカが弾切れになる寸前で上昇。

 コハルが推進装置で加速する。

 エリカは弾倉マガジンを上昇しながら交換していた。

 

「なめるな! 同じ手は通用せんぞ!」


 2機のザンゲツは地上のコハルへ集中し発砲。

 

 コハルの機体は上下左右へと激しく動いていた。

 しかし、2機からの砲撃すべてを回避することなど出来はしない。


「もらった!」


 ザンゲツのパイロットが叫んだ瞬間。

 左腕を胸の前にかざし直撃判定を回避するⅥ型を目にした。


「腕で直撃を交わすだと! だが、次は無いぞ!」


 その間、エリカは降下しながら加速。

 2機のザンゲツへと接近していた。


「抜けたぁ~!」


 エリカがザンゲツのあいだを抜けた。

 有効追尾限界に入った。

 この近距離でザンゲツの銃はエリカの機体を追えない。

 

 来賓達は、軍が負けるのかと、息を呑んでスクリーンを見つめた。

 

 コハルはおとりとなって単発で発砲を続けていたが、弾切れとなった。

 最後に放たれたペイント弾が、エリカを追って横を向いた敵にせまる。


「あっ……当たらないで!」


 当ててはいけなかった。

 なのに、当ててしまった。


「2番機被弾! 銃損傷! 戦闘不能」


 その瞬間、エリカの目の前に新たなザンゲツが姿を見せた。

 エリカの機体は銃のトリガーを引いた。

 

 ザンゲツも回避しながら、発砲している。

 

「いっ、けぇ~」


 エリカは上昇し、敵機の横にある穴の中に指揮車両マトを見つけた。

 その瞬間、側面の推進器を手動で爆裂開放させた。

 敵機を追尾していた照準が外れ、ペイント弾の軌跡が弧をえがいた。


 弧を描いて飛んで行くペイント弾。

 穴の中にある指揮車両マトへと近づいてゆくのがスローに見える。


 誰もが思った。

 軍が負けると……。

 

「まだだ! やらせん!」


 コハルと戦っていたはずのザンゲツ。

 それが、指揮車両マトの上に飛び込んできた。


 エリカの機体から放たれていたペイント弾が途切れた。

 ペイント弾がザンゲツに当たる。

 穴の中にいた指揮車両マトの上で。


「ザンゲツ、1番機被弾! 直撃。戦闘不能」

「Ⅵ型、1番機、2番機ともに残弾ゼロ。戦闘継続不能」


 エリカ達の乗るⅥ型についての放送は、女性の声だった。

 そして、その後の放送は別な女性によって行われた。


「第2試合終了、軍の勝利です。次の第3試合はGG社A04。パイロットは搭乗し、開始地点へ移動してください」


 来賓席では、まばらな拍手。

 社長はほっとした表情で拍手していた。


 キヌタ専務は拍手を終えて、時計を見てつぶやいた。


「まだ、時間はあるな……」


 管制室ではアライ部長とサトコだけ声をあげ、拍手をして喜んだ。

 アライ部長が案内人に肩を叩かれ、拍手をやめて周囲を見た。

 空気の重さに気がつくとサトコも手を止めた。


 そして、頭を下げてから管制室を出た。




 廊下に出ると、アライ部長とサトコは背後から口を塞がれ、拘束された。

 

 松葉色の作業着の上に防弾ベストを着た男達が管制室になだれ込む。

 その腕には、短機関銃サブマシンガンが抱えられていた。


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