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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
32/45

32. コード111を実行せよ。


 基地を囲むフェンスの外。

 塀に囲まれた灰色の大きな建物。


 入口の門には大きな表札。

 『キヌタ産業 第108処理施設』


 地下には基地へと続くトンネルがあった。


「ヒロキ、気をつけろよ」

「ああ、兄貴もな――よし、みんな時間だ、行くぞ」


 義勇軍で偵察部隊のリーダーだったヒロキ。

 兄貴と呼ばれたのはサヤカと猟機兵装アーマー乗りとして戦っていたキヌタだった。


 キヌタはマンホールの蓋を閉じて、階段を登り地上の事務所へと戻った。


 事務所の机に置かれた写真立て。

 そこには赤ん坊を抱えたキヌタとベッドの背もたれを少し起こして、体を預けたまま、笑顔のサヤカが写っていた。


 たが、その笑顔は子供を想う母親ではなく、別な何かに喜んでいるようにも見えた。


 黒い服を着て、ライトを手にした集団が水路の脇を走っていた。

 しばらく進むと、上へと向かう梯子はしごが見えた。

 

「ここだ。昇るぞ」


 マンホールの蓋を持ち上げ、静かに蓋をずらしてから、穴から出る。

 小さな部屋には水密扉があった。

 

 ハンドルを回して扉を開いた。

 そこは燃料配管が並んだトンネルだった。

 

 ケースに収められた非常口を示す表示器の照明。

 それだけしか明かりのない空間。

 そこへ黒い影が次々と扉から出てきた。


「こっちだ」


 紙の地図を見て男が進み始めた。

 トンネル内には空気の流れがあった。

 男は風上へと向かっていた。


 しばらく進むと、扉が見えた。

 燃料保管室と表記がされている。

 

「いくぞ」

「了解」


 扉を開いて巨大な燃料タンクの脇を駈け抜け、階段を登ってゆく。

 登りきった場所で待っていると、仲間が扉を開いた。

 

 地下の通路を移動し、案内された倉庫で時間まで待つことになっていた。


 外では楽団の演奏や来賓の挨拶が終わり、最初の模擬戦が始まろうとしていた。


 この基地以外では、すでにコード111が発動され、他国にある連合軍の基地はすでに制圧されていた。

 残っているのは連合本部周辺の基地だけだった。




「――第1目標、管理居住区の確保に成功。これよりコード111を実行せよ。繰り返す――」


 通信衛星製造企業の協力によって用意された専用通信網。

 統一経済圏推進連合が設立されたのと同じ頃、すでにこの計画は始まっていた。


 独裁者によって多くの人々が苦しむ世界が訪れると予想し、自由で健全な社会を取り戻すために準備を始めようと……。



【ある国にある上級民の屋敷 その1】


 床に座りこんで震える主人。

 目の前には、銃を手にしたコックが立っていた。


「長いあいだ、あんたらに好き勝手され、苦しめられた日々は今日で終わりだ!」

「まて! 金銭カネか? 金銭カネがほしいのか――。金庫の番号を教えるから見逃してくれ」


「そうやって、何でもカネで済むと思ってるようなヤツを逃がすわけないだろ!」



【ある国にある上級民の屋敷 その2】


「そんなもの持ち出して危ないじゃない。ここはワタクシの部屋です。出て行きなさい」


 派手なアクセサリーを身に付けた女性が、部屋をうろうろとしながら、大声でさけんでいる。

 部屋の扉や、窓の周囲には屋敷で働く者達が、小さな銃を手にしていた。


「まだ、状況を理解できてないようですね。何度も繰り返しますが、私達は統一経済圏連合への反抗組織の者です。あなたにはいずれ裁判を受けていただきます。それまではココでおとなしくしてもらいます」


「なにをバカなことを言ってるの? 今日は出かける予定があるのよ。それにあなた達はワタクシに仕えるのが仕事よ!」



【ある国にある上級民の屋敷 その3】


「ご主人様。本日の予定は全てキャンセルとさせて頂きました。ワタクシどもの指示に従って頂きます。どうか抵抗されぬようお願いします」


 執事が主人に頭を下げていた。

 その後ろにいるメイドは銃を手にしていたが、銃口は床に向けられていた。


「いつかはこうなると思っていたよ。わかった、従おう。家族には私から説明させてくれないか」

「はい。そうしていただけると助かります。手荒な事はしたくありませんので」


 世界各地で似たような状況が起こっていた。

 統一経済圏で搾取を続けてきた上級民の拘束。

 資産の凍結。

 

 反抗組織が未来を築くために必要な資金。

 その確保を行う者達。


 仕えた主人によって生活は様々だった。

 そのせいで捕えかたも様々だった。


   ◇


 選考会場の基地。

 

 模擬戦の前に機体紹介が行われていた。

 滑走路を浮遊しながら踊るように移動。


 エリカとコハルの操縦する武闘Ⅵ型Dの姿もあった。

 全ての機体が来賓席のある建物の前に並んで、膝をついてハッチが開く。

 パイロットが姿を表し、ワイヤーで降下した。


 来賓席から拍手を浴びて、敬礼で答える。


「第1試合はメテオララ社、チュンタロウB1。開始地点へ移動してください」


 放送で呼ばれた企業のパイロット2名が機体に乗り込んだ。

 他のパイロットは建物の中へ入ってゆく。


 パイロットと指揮する者は、他の機体が戦うのを見る事は許されない。

 これは公平さを保つためだった。


「なんか、すごい緊張してるぞぞぞっ」

「そうね、エリカは緊張しすぎね」


 アライ部長とサトコも同じ部屋にいた。

 長い椅子に並んで座って、手を握ったり開いたり。


「2人なら大丈夫です。勝てますよ」

「勝てなくても誰も責めたりしない。敵はプロで数は無制限なんだから」


 十数分後、放送が入った。


「第1試合終了、軍の勝利です。次の第2試合はスズシロ工業、武闘Ⅵ型。パイロットは搭乗し、開始地点へ移動してください」

「よし! いくぞ!」

「ええ、そうね」


 4人は立ち上がった。


「訓練どおり出来れば、きっと勝てます」

「好きなように戦ってくれ。俺達は管制塔に向かう」


 扉が開いて部屋から出るように言われ、軍服を着た案内人について歩き出した。


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