03. 猟機兵装ストームアーマー
「アライ君。今回どうなの?」
「予備機を含め機体開発は最終調整に入ってます。トップを狙えるいい機体です」
「いやいや、そりゃ困るよ。うちは参加して技術はありますってのを見せて部品生産を回してもらえればいいんだから。わざわざ勝って苦労するのは、うちじゃ利益にならんよ」
上着だけ作業着を着た3人がテーブルを囲んでいる。
「まあまあ社長そう言わずに。アライ部長、開発部の方々には感謝してますよ。いいもの作ってください。でね、機体はいいけど操縦者のせいで勝てなかった、ってのでトップはあきらめてもらえませんか」
「あっ、それがいいね。そうしよう、アライ君。プロと契約しないで、うちの社員使おう安く済むしね」
「……」
アライ部長は返事を声にださず、目を閉じてゆっくりと頭を下げた。
「パイロットの選考は人事部長にお願いしましょう。あの人、来月定年退職ですから、誰もこの件で責任とらなくていいように進めましょう」
「そうだ、キヌタ君。報道関係もくるんだから、華やかに見せるため若い女性社員ってのはどうかね」
「女性差別に見られませんか?」
「大丈夫ですよアライ部長。軍の女性パイトットが少ないのを増やそうと考えてのことですってことにしますから」
「あっ、それがいいね。そうしよう、あとの事はまかせるよキヌタ君」
「はい、おかかせください社長」
◇
背中に取り付けられた推進器により、高高度を飛行し戦場へと舞い降り、地表を高速移動して敵を狩る。
猟機兵装。
地を滑るだけのⅠ型から半世紀が過ぎた今。
人型兵器が主力となった大規模な戦争が終わり、世界は大きく変わった。
統一経済圏で支配された世界の誕生。
その結果、支配圏内での搾取による貧富の差が増大し苦しむ人々が増え続け、戦争によって失われた人口は回復せず、減少し続けていた。
そんな状況でテロや暴動も多く発生。
その鎮圧に軍の人型兵器が投入されることもあった。
人型兵器の需要は減少してはいるがなくなることなく、研究開発も続いていた。
そして、軍が次に採用する機体を選考するため、いつもと同じように試作機による模擬戦闘を行うことを各企業へ通知していた。
◇
数日後、アライ部長は目の前の端末で顔写真が添えられている、資料を確認していた。
サイトウ・エリカ、パーツセンター勤務。
民間用ワーカーや軍用アーマーの交換部品倉庫にてワーカーを操縦。
機体に関する知識は充分有している。
弊社の下請け会社社長の孫娘。来期の取引について語ると快諾。
キリシマ・コハル、経理部勤務。
戦闘中行方不明となった父親は有名なエースパイロット。
操縦経験は無いが父の影響で軍用アーマーに詳しい。
同じ部署の人間関係に問題があり、異動の件を話すとすぐに快諾。
資料を見終えると、アライ部長は笑みを浮かべていた。
「人事部長にあのことを伝えなかったようだな……いけそうじゃないか」
開発部からは予備のパイロットと教官を出すことになっていた。
クリヤマ・サトコ、開発部勤務。
試作機の調整テストパイロット。
システム開発担当者の1人。
予備パイロット。
タキタ・ジンベイ、開発部勤務。
試作機の機動テストパイロット。
元軍人。今回、模擬戦闘などの訓練教官を担当する。
アライ部長の机の上には試作機の模型が飾られていた。
その台座には社内コードネームである『武闘Ⅵ型D』と書かれていた。
◇
模擬戦当日、戦闘中に発生した反乱組織の大規模進行。
それに巻き込まれ実弾飛び交う戦場に立たされる社員達。
試作機とはいえ軍用機を扱うため軍人扱いとなっていた彼女達は軍の指揮下に置かれ、実弾装備で戦場に送られた。
戦場で激しく舞い踊り、敵を圧倒する機体。
いつのまにかストームアーマーと呼ばれる武闘Ⅵ型。
反乱軍との激しい戦闘へと駆り出され、戦い続ける乙女達。
軍の機体を次々と倒す敵のエースパイロットとの激しい戦闘。
傷ついた機体の上に立つパイロットから聞こえてきたのは、忘れられない懐かしい声だった。
◇
最後の戦場となった統一経済圏本部ビルの前には、黒煙の中に3機のストームアーマーが立っていた。
その肩には反乱軍のマークが日の光をあびて輝いて見えた。
数日後、軍や企業の支持を得て、反乱軍が勝利し戦争は終結した。
こんな感じの努力、根性の日常からシリアス展開。って作品とかいいな~って思ってます。
2018.12.29 1世紀→半世紀に変更。
2019.02.24 呼称される3機のエース。→呼ばれる武闘Ⅵ型。に変更。
2019.04.05 数ヵ月後→数日後に変更。
2019.04.07 機体の中から→機体の上に立つパイロットから