26. Ⅵ型Dになるまで
「推進器による飛翔能力との関係で、細かなバランス制御が常時稼動する。そのせいで、ゆらゆら……」
黒い背景に緑色の文字が浮かび上がっているモニターを見つめるサトコ。
そのとなりで、同じ画面を見ているコハル。
「じゃあ、切りましょう。それ」
「そだね」
エリカは二人の会話を近くで聞いていただけで、モニターも見ずに答えた。
「無茶です! 死にます! 出来ません!」
「なぜ? 飛ぶときだけ使えばいいでしょ」
「遅いんです。間に合いません」
モニターにシミュレーション結果を表示して見せた。
「たしかに回避だと遅いわね……じゃあ、爆裂開放でいいでしょ」
「それは横だけ、上下でそれやったら死にますよ」
「へぇ~そうなんだ」
機体の制御を変えようと悩んだ結果、展示されていたⅢ型の後期型である、Ⅲ型改を引っ張り出して二人に乗ってもらい感想を聞いた。
「ナニコレ、すごいぞ~!」
「上昇回避は波動型浮遊石で十分ね」
「姿勢制御、大幅に変えなきゃ……」
サトコはソファーに体を預け、目を閉じた。
「プログラムとか出来ないけど手伝うぞ」
「そうね、私達になにか出来ればいいのだけれど……」
「そうだ! おばあちゃん直伝! 元気になれる魚介類のミックスジュース作ってあげるよ!」
「何ソレ……結構です! 気持ちだけ飲ませて頂きます」
サトコは操縦訓練に参加する時間が二人よりも減らされ、操縦技術の差が開いた。
システムの大幅な修正が終わっても、稼動データから得た調整を続けていた。
「システム開発って大変ね」
「そうです! 命がけです! 猟機兵装の基本システムを完成させるのに、亡くなった人が多かったのは関係者ならみんな知ってます」
サトコはカップを手にして、一口だけ飲んで話を続けた。
「GG社の出資者に同僚を犠牲にし、のし上がったタカヤマってのが犯人なのは有名です。彼は、うちの親会社だった巨大企業から送り込まれ、開発を急がせたって――人事部長のお兄さんがその犠牲者だったって噂も聞いたことありますし――」
「サトコ、疲れてるね。本番は二人で決めるから、訓練は休んで」
「そうね。私とエリカで戦い貫くから」
その日から、サトコのいない訓練と座学が続いた。
そんなある日、座学にサトコが現れ並んで座っていた。
「よし! 今日の授業はコレを見るぞ」
タキタ教官がデータカードを端末に差し込んで操作すると、スクリーンに映像が現れた。
それは過去3回の選考会映像だった。
来賓席の前に映し出されていた映像。
そう説明が表示されてから始まった。
第1回から第3回の敵役はⅤ型だった。
2機で前進し敵の守る標的を破壊する。
敵の数は決まっていない。
ただ、同時にしかけてくるのが2機というだけだった。
第1回と第2回は勝者無し。
第3回でザンゲツが勝利した。
「終わったぁ~」
エリカが両手を頭の上に伸ばして、そのままあくびをしていた。
タキタ教官が、スクリーンの脇にある教卓でカードを端末から取り出し、両手を教卓に乗せた。
「わが社については、第1回は急な規定値変更に対応できず落選。第2回は軍のパイロットがエースぞろいで、戦術による敗退。第3回はパイロットの一人が出場日がもうすぐというときに、通勤中に交通事故を起こしたため、出場を辞退している。今年は、はっきり言うと、敵はエースをそろえてくるだろう」
「ですね」
サトコがタキタ教官の顔を見ながら答えた。
「なんで、なんで?」
「数年おきとは言え、毎回採用してたら機体の種類が増えるだろ」
「だめなの?」
「コストよ」
「教育が大変だし、部品も増えるから」
「そっか~……じゃあなんでヤルの? 無駄じゃない?」
エリカの質問が単純なため、3人はすぐに答えていたが、これには間が開いた。
そして、コハルが口を開いた。
「お祭りみたいなものよ」
「そうだな」
「そうね」
「うん。わかった。ならがんばるぞ! おお~!」
表向きは現用機で最新機に対応できるか確認するためとも言われているが、裏では技術収集を行うためであった。
参加した機体と情報は軍に提出する。
それが、どこへ流出しているかは皆、知っているが口にしない。
僅かな見返りを期待して、少ない予算で参加するから、進化などほとんど無い。
それが、戦後の猟機兵装が進化しない理由だった。
なのに武闘Ⅵ型Dは違った。
新素材フレームと装甲による軽量化。
センサー強化による感知精度の向上。
それらによって人の限界ギリギリで自動回避を行う機体となった。
数日後、機体の調整も完了。
タキタによる基礎訓練も終了。
機体は民間の輸送機に積み込まれ、戦闘機動訓練を行える試験場へと向かった。
そこは、過去に敵国だった場所。
王国と呼ばれた国にあった。
ここまでくると、頭の中だけで整理するのは無理って気になり、これから書かなきゃいけないことをメモ帳に書き出した。
これが、プロットか……。
そして、今頃になって「この世界は……」と言う設定を考えた。
思いつき、いき当たりばったりでも、なんとか終わらせる道が見えた。




