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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
25/45

25. 義勇軍


 暗く、何も無い部屋。

 その壁に蒼く輝く星の映像が現れた。


 どこからともなく声が聞こえてくる。

 ゆっくりと、穏やかに響く数人の声。

 

「何度も試すことは出来ない。人は過去を記憶し記録する。それが、辛く、厳しい不幸ならばなおさら忘れることは無いであろう」


「ひとつとなることは幸せに繋がっていない。そのことを知った人類はどうするのか、どうなるのかを知ることができる」


「戦争が終わって、統一経済圏がまともな世界ならそれでいい。だが、敵がいなくなったらヤツらは本性を表すだろう」


「それが、統一経済圏というヤツらにとっての楽園計画だからな」


「本来は、人類がひとつとなって進む世界。それが、幸せに繋がっているのかを調べるための実験。そのためだけに生まれた組織。統一経済圏推進連合……のはずだった。なのにヤツらは……」


「今は敵がいるからいい。ひとつとなるために皆が必死に戦っている。だが、戦争が終わって、敵を失った人々は自由を求め、本当の敵が何かを知るだろう」


「しかし、ヤツらはそれを許さない。争いを維持しようと行動するだろう」


「そのために彼らは、敵を作り続ける。人々から自分達が敵ではないと信じさせるために」


「力によって、ひとつになった結果、二度とひとつになることを望まない世界が作られる。その後の世界は幸せなのか?」


「どちらとも言えない。また自由を奪い会う世界が訪れるだけ」


「もし、何者にも支配されていない、新天地が現れたとしても変わらない。そこでまた繰り返す。争いの無い世界を望んで争うことを」


「人類すべてが争わない方法は何なのか。その答えに辿りついた時こそ、おだやかな終焉へと進みはじめるだろう。そこで、全てを捨てられなければ滅び、捨てることが出来ればまた同じ道を辿りはじめるだろう」




「今の世界は、先に生きた資産家たちの権益を守るためだけに存在している。そんな自由を失った世界で生きるより、命を懸けて戦うことを我々は選んだ」


「未開の新天地があるなら争わずに済むかもしれない。けれど、それだって長くは続かないだろう。奴らは金の力ですべてを操れる世界を創りたいのだから、必ず追ってくる。結局、戦うしかない」


「無抵抗だから殺されないなんて時代じゃない。逆らうものは消すのに何のためらいも無い。そんな世界を変えようとするなら、行き過ぎた権益主義に不安を抱いてる資産家と手を組んで、できるだけ多くの人々に納得してもらえる世界に変える努力を進めよう」


「資産家達の中には身の危険を感じながらも、より大きな力を持つものに合わせて生きるしかないのが現状だ」




「若いお前達は、あの国で信頼できる仲間を集めなさい。そして、出来るだけ多くの者をココへ送りなさい」


「ヤツらが支配する地獄のような世界を、1日でも早く終わらせる。そのために命がけで戦いなさい」


「お前達と、子供には辛く厳しい時代かもしれないが、孫達には明日を選べる世界を取り戻してやれると信じ、使命を果たしなさい」


 

 彼らは敵国で国籍を問わない軍隊。

 傭兵のように金にこだわらない兵士の集団。

 義勇軍として活動を始めた。

 

   ◇


 戦争が始まり、王国はすぐに降伏。

 亡命政府の樹立と残存兵力による反抗。

 いずれ、負けると知りながら戦う反連合軍。

 

 サヤカがアーマー乗りとして最後の戦場となったのは、空港基地だった。




 照りつける太陽。

 穴だらけの滑走路。

 地上の施設は瓦礫と化し、地下からトンネルを抜け出撃する日々。

 残った機体は数機。

 

 反連合国の軍と亡命政府軍はここを放棄して後退。

 義勇軍はここで後退が完了するまで戦闘を継続せよとの命令だった。




 その地下深くで、冷たいコンクリートに覆われた通路を足早に進む男女。

 サヤカ達、義勇軍のリーダーとマイナが会議室の扉を開け姿をみせた。


「みんな聞いてくれ! まずいことになった! 亡命政府の奴ら和平交渉を始めやがった」

「バカな! 連合がテロリスト扱いしている相手と交渉なんてするはずがない!」


 キヌタがテーブルに両手を叩き付けて立ち上がった。

 

「問題は亡命政府の奴ら、潜入させた者達の情報を渡せと言って来た」

「そんなこと出来るはず無いだろ!」

「ああ、渡す気は無い……が、問題はやつらが記憶している者達だ」


 リーダーの脇で話を聞いていたマイナが口を開いた。


「潜入作戦、私達だけでやってきて正解でした」

「記憶ってことは、リーダーとマイナは……」


 サヤカがリーダーの顔を見ていた。

 

「ああ、ココでは俺達だけだが、他の組織もリーダーは知られている」

「そう……」

「気にするな、やつらが話さなくても、俺は連合にも知られているだろう」


 キヌタが座って目を閉じ、何かを考えている。

 他の者も黙ったままだった。


「すでに潜入させている者はどうする気だ」

「誰なのかがわかるまでは何も出来ない」

「先に手に入れられないか?」

「たぶん、記憶のまま渡す気だろう……」

「そうだよな……先に渡したら用済みだよな」


 マイナが端末を操作してモニターにリストを表示した。

 リストは8人で1枠ごとに区切られていた。

 

「ひとり捕まると8人が捕まる可能性があります。ある程度仲のいいメンバーをまとめて同じ地域に送ることで、交友関係を増やしやすくする作戦でしたが……」


 モニターを見ていたサヤカがリーダーに視線をもどした。


「何もしない気? 大使館ふっ飛ばすなら行くよ」

「それをやったら、俺達はただのテロリストだぞ!」

「……じゃあどうすんの?」

「まずは、行けなくなった者の行き場所を用意する」


 全員、席についてモニターを見ていた。

 マイナがリストを消して、行けない者の隠れ家一覧を表示した。

 多くの場所が表示されていたが、空きはわずかだった。

 

 サヤカはモニターから視線を外してリーダーを見た。


「捕まった人がわかったらどうするの?」

「助けられるなら助けたい……」

「わかったわ。マイナ! 収容されそうな場所を調べておいて。キヌタ! 襲撃用の特殊部隊を用意しましょう」

「了解」


 サヤカとキヌタは、偵察部隊のリーダーと一緒に部屋を出た。

 

「マイナ、ダムに戻ったら新しい収容場所を探そう」

「そうですね、なんとかやってみます」




 予想はしていた。

 スパイが生かしてもらえないこと。


 亡命政府は記憶を記録情報にかえ交渉材料として先に渡した。

 僅かな停戦期間と引き換えに。

 その結果、多くの仲間が捕まった。


 このことで義勇軍は亡命政府軍の指揮下から離れた。

 義勇軍は全ての猟機兵装アーマーを没収され戦う術を失った。

 その中にはスカーレット22も含まれていた。

 

「その機体は私の!」

「よせ! サヤカ!」


 キヌタがサヤカの腕をつかんでいた。

 

「命令ですので、お許しください。これまで、義勇軍の方々には何度も助けられました。今日まで、ありがとうございました」


 反連合軍、輸送部隊の指揮官がサヤカの前で敬礼していた。


「聞いてくれサヤカ! この戦争はもう俺達が猟機兵装アーマーで戦っても何も状況は変わらないところまで来ているんだ」

「そうだけど……アレは私が最後まで……」

「俺だって、そう思うけど、あきらめよう。ここまでだ」

「……」

「俺達の本当の戦いはこれからだ」

「うん。そうだけど……わかってるけど……」

「ちゃんと見送ろうぜ」


 機体がトレーラーに積み込まれ、基地から運び出される。

 それをサヤカ達は横に並んで敬礼しながら見送った。


「……さようなら……ありがとう」

 

 トレーラーが出た後、義勇軍の兵達もトラックに乗り込み空港を去った。

 サヤカ達は皆、瓦礫と化した空港を見つめていた。

 

「これで終わりなの……こんなので終わりなんだ……」

 

 この日、義勇軍は姿を消した。


 そして、数ヵ月後。

 戦争が終わった。


次回からストームアーマー(三人娘)編です。

そのなかにサヤカもまだまだ出てくる。

※各話タイトルに番号を追加。

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