23. フレッシュセット4
フレッシュセット編はこれで終わり。
「バイオレッ――11へ、格――に残し――た機体を破壊して――」
「今は無理!」
ぼくらは無線を入れたまま戦っている。
戦闘が始まれば無線封鎖は解除。
これが、ぼくらの戦い方。
ぼくと、委員長は駐屯地へと続く道から外れ、森の中を進んでいると無線が聞こえてきた。
シートで覆われていたあの機体だろうと考えながら進み格納庫の裏に到着。
そこから見えたのは、1機のバイオレット11。
上空から砲弾を浴びせられ、装甲を散らしながら格納庫へと滑り込んで消えた。
「シャーロット・スリー、シャーロット・フォーはここから援護」
「了解」
「シャーロット・ツー、行くわよ!」
「了解」
小隊長と僚機が左右に分かれて、格納庫の影から上空の敵機に砲弾を放つ。
敵は低空で飛行していたが、上昇し左右に機体を揺らし接近しながら、反撃。
「くそっ! ダメだ――」
「シャーロット・ツー! 後退して!」
小隊長の僚機が叫んだ瞬間、ぼくは見ていた。
格納庫の脇にいた機体に、上から降り注ぐ砲弾が頭部を砕き突き刺さる瞬間を。
ぼくは、そこから目をそらした。
そのとき、道路に人が倒れているのを見た。
そして動体反応枠が現れ自動でズームされた。
「(コウタ)」
整備員のコウタが道路わきの土手から頭を出していた。
こんな近くにいるとは思っていなかった。
ぼくは拡声器のスイッチを押そうとしたが、手を止めた。
このまま隠れていればいいのだから。
ぼくは、委員長の機体へ視線を移動した。
「(委員長はまだ大丈夫)」
委員長のバイオレット11は森の中から砲弾を放っている。
ぼくも、敵に視線を戻した。
「――シャーロット・ツー応答して! タツミ! えっ――」
小隊長の叫び声が聞こえると同時に機体の足元で爆発。
小隊長の機体が委員長の機体の近くへ飛ばされていた。
「小隊長!」
委員長の叫び声が聞こえた。
残っているのは、ぼくと委員長だけ。
荒野の牙はもういない。
ぼくらが敵を倒すしかない。
そんなこと、出来るはずない。
体に感じていた発砲による振動が止まった。
慌てて弾倉を交換する。
委員長の機体も同じく弾倉を交換していた。
交換を終えた瞬間、機体が大きく揺れた。
自動回避制御による、強烈な加速Gでヘッドパックが作動する。
何かが近くで爆発。
敵のグレネード。
機体は爆風で姿勢を崩し、格納庫の裏へ転がり出た。
「委員長!」
ぼくは思わず委員長と呼んでいた。
任務中はシャーロット・スリーと呼ばなければならないことなど、気にする余裕は無かった。
「――左腕をやられただけ」
ぼくは機体を寝かせたまま、部隊長の言葉を思い出した。
「委員長、ぼくらはここまでにしよう。言われたとおりコード111で待機――」
「いやよ! 私は戦うわ!」
ぼくは目の前にあるモニターで、左腕を失ったバイオレット11が立ち上がり、銃を撃ちはじめるのを目にした。
そして、そこへ上空から砲弾が降り注ぐのを目にした。
「委員長……委員長!」
ぼくは委員長の機体が倒れるのを見ながら、震える声で呼んでいた。
「――だいじょうぶ。でも、もう終わりかな、コード入力できそうもないし……」
「わかった! じっとしてて! 委員長はぼくが守る……」
ぼくは機体を起こし、残っていた全てのスモークチャフとフレアと信号弾を委員長の機体へ向けて放った。
拡声器のスイッチを押して叫ぶ。
「コウタ! 委員長を頼む!」
敵は2機とも上空にいる。
地上で止まったままなら狙われる。
地表を高速移動したくても、残骸が多く軌道が限られる。
だから、出来るのはコレしかない。
ぼくは波動型浮遊石で出来る限りの高度までジャンプした。
敵はぼくに向けて砲弾を放つ。
自動回避ではなく、手動で推進器を爆裂作動させる。
強烈な加速Gで横方向に回避。
何度も作動させ続ける。
機体のバランス制御が限界で機体が傾く。
手動だから推進器を作動させ続けられる。
敵は弾を撃ち続ける。
ぼくが放つ砲弾は散乱して当たるはずなどない。
でも敵の攻撃を引きつけている。
委員長が逃げる時間を稼げればいい。
ぼくは、それまで生きていればいい。
「委員長……さよなら」
爆裂作動による加速Gを繰り返していたせいで、意識が遠くなる。
視界が暗くなる寸前、地表で何かが動いた気がした。
そして、ぼくは意識を失った。
それから後のことはコウタから聞かされた。
コウタは委員長を機体から救い出し、背負って森に隠れていたこと。
荒野の牙が新型機に乗って敵を追い返したこと。
ぼくの機体は地表に無事着地していたこと。
◇
照りつける太陽。
熱さに揺らめく滑走路。
格納庫にはスカーレット22が1機。
ほかはスカーレット22と色違いの機体が並んでいる。
バイオレット11に変わって配備された飛行能力を持つ機体。
バイオレット21。
「牙小隊、シャーロット小隊、ブリーフィングの時間だ全員集合!」
格納庫の隅にある部屋から作戦士官が拡声器を手にして叫ぶ。
「起きて……委員長……」
ぼくと委員長は、格納庫の影に並んでいる補修された装甲の上で横になっていた。
委員長とぼくは体を起こして向きあった。
「セイジ! 委員長はやめてって言ってるでしょ」
「ごめん……小隊長」
「あぁ~もぉ~! もぉ! 私って名前で呼ばれない運命なの!?」




