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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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20. フレッシュセット


 ぼくらは基礎教育学校を卒業すると、すぐに軍の付属学校へと進んだ。

 なんの迷いもなかった。


 統一経済圏という金持ちだけに都合がいい世界。


 ひらめきは奪われ。

 努力は潰される。

 異を唱えれば、闇へと葬られ。

 奴隷のように従ってのみ生きられる。


 自由の存在しない世界。


 ぼくらは「そんなシステムは受け入れられない」と抵抗する国に生まれた。



 自由の存在しない世界。


 今のぼくらには、この国も同じだった。

 将来の夢を考える前に、戦えと言われて従った。

 他を選んでも、この国が戦争に負ければ終わりだと……。


 そして、僕らが在学中に戦争は始まった。




 適性検査で猟機兵装アーマーパイロットに選ばれ操縦科へと進んでいた。

 訓練機はバイオレット11。

 実戦で使われている機体と何も変わらない。


 平面移動、跳躍、回避、実弾射撃、レーザ照射による模擬戦。

 操縦訓練が終わると整備科へ機体を引き継ぐ。


 日々、その繰り返しだった。

 学生という安全な日常。

 卒業はまだまだ先。


 しかし現実は、ぼくらを卒業まで待ってはくれなかった。




 講堂に集められた生徒。

 ぼくの左隣には、大きく開いた空間。

 3年生はすでにいない。

 名前を呼ばれた生徒が壇上に上がる。

 基礎訓練を終えている成績上位の者達。


「――操縦科2年C組、トワダ・セイジ――」

「はい!」


 ぼくの名前が呼ばれた。


 列を離れ、壇上へと階段を昇る。

 教員の指示にしたがって壇上に並んだ。


 隣にいたのは同じクラスのオリキダ・アイ。

 クラスの委員長。


 後で、親友のシジマ・コウタも呼ばれた。

 彼は整備科。


 軍服を来た男に渡されたのは、一枚の紙と、認識票。


 在校生から、拍手が贈られる。

 委員長の顔を見ると泣いていた。

 嬉しいのか、悲しいのかわからないまま、ぼくも涙が溢れていた。




 翌日、曇り空の下、軍の輸送機が後部ハッチを開いて待っていた。

 泣きながら手を振る家族やクラスの友人。


 多くの人々に見送られ、輸送機の後部ハッチのスロープを進んだ。

 僅かな傾斜なのに、急な坂を登るように足取りは重かった。

 ぼくらは皆、涙を流しながら笑顔で手を振っていた。


「気をつけて」

「元気でね」

「がんばれよ」


 見送るものの言葉はいろいろあった。


 でも、ぼくらが返す言葉は同じだった。


「さようなら」


 なせか、そればかりだった。




 数時間後、前線の空港に到着。

 泣いていたのは離陸するまで。

 ぼくらは皆、不安と緊張で硬い表情……戦士の顔? になっていた。


 大きく揺れながら着陸。

 機体の後ろにあるハッチが開くと熱風が流れ込んできた。


 シートベルトを外し立ち上がる。

 荷物を手にし、ベルトを肩に掛けて歩き出す。


 照りつける太陽。

 熱さに揺らめく滑走路。


 ぼくらはトラックに乗せられ、格納庫の裏にある宿舎に連れて行かれた。

 荷物を置いて、格納庫の前に集合。


 上官の挨拶など数秒で終わり、走らされた。

 ここの気候に体を慣らすためだと言われた。


 翌日、搭乗する機体と、パートナーが決まった。

 オリキダだった。


 ぼくの機体を管理する担当者は希望通り、コウタに決まった。

 整備は整備長の指示で行われるが、整備記録は各機体の担当者が行う。


 広い空港を利用し、常にパートナーの位置を意識しながら戦う訓練が行われた。

 ぼくらが学校で習ったのは、基礎だけだったと知ることになった。


 実戦に近い高速機動戦闘。

 推進器を爆裂開放し、左右に激しく回避を繰り返す。

 ヘッドパックと呼ばれる、頭を保護するエアバックを開いたまま操縦を続ける。

 これらを行いながら標的を見失わず銃を向け続けた。


 翌日、ぼくは訓練を終え格納庫に機体を戻したあと、シャワー室へと向かうオリキダと並んで歩いていた。


「実戦じゃヘッドパックが開いたままで、視界が狭くなったままなのね」

「教官がリリースをマニュアルにしろってのはこのためかって……」

「オートで開くたびに首を押さえ込まれるのはうっとおしいものね」


 パイロットスーツのファスナーを少し下げると、首に付いている太い襟巻き型のヘッドパックが緩んで肩の脇に垂れ下がった。


「押さえられたまま、視線だけを変えて戦うほうが集中できて、ぼくは好きかな」

「そうね、シングルモニターのゲームって感じね」

「訓練中サイドモニターを見るのは、委員長の位置を確認するだけだった」

「委員長はやめてっていってるでしょ」

「あっ、ごめん。カラキダさん」


 ぼくは学校で、ずっとカラキダさんのことを委員長としか呼んでいなかった。


「ねぇ、名前で呼びあわない?」

「名前で……ですか? ぼくはいいですけど……」

「じゃあセイジ! わたしのことアイって呼んで――ほらっ! 早くしなさい!」

「アッ・ア・イ……さん」

「さんは余計よ! もう一度やり直し!」

「アイ……」

「うん、なんとなくいいね!」

「でも、なんか委員長からア……アイはちょっと早すぎかなって……」

「最後くらい、どこにでもいる委員長やカラキダじゃなくて、ちゃんと名前で呼ばれたいじゃない……」

「最後だなんて言うなよ、生き延びて帰ろうみんなで……」

「うん、そうだね……」




 ここに来た最初の日は、会話をする余裕も無かった。

 なのに数日でここの生活になれていた。

 

 なれた気がした次の日。

 ぼくらは最前線の駐屯地へと出発した。


 そこには、最強と噂に聞く義勇軍「牙」のエース「荒野の牙」と呼ばれる二刀流で戦うパイロットがいると聞いていた。


 どんな人だか、興味があった。

 戦場で生き続けるすべを知るものの姿に……。


 森の中を進む十数台のトレーラー。

 機体と供に揺られて数時間。


 道路脇にある巨大な駐車場。

 周囲に間隔を開けて建ち並ぶ格納庫。

 そこでトレーラーは次々と止まった。


「さっ、機体を早く・・降ろしてくれ……安心しろ! ここは、まだまだ大丈夫だ」


 ぼくの顔を見ながらトレーラーの運転手は作り笑いで、そう言った。


商業作品では避けられるシーンでしょうね。

学生が偶然戦闘に参加する作品が多いのは、こうなるからかなって話でした。

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