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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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18. スカーレット22(前編)


【統一経済圏推進連合に敵対する国】

 

「負けることはわかっている。だが、戦わないわけにはいかない」

「このような無条件降伏ともいえる和平案を、受け入れることは出来ない」

 

 開戦と同時に軍民問わず、人工衛星の潰し合いが始まった。

 生き残った人工衛星も、地上からの攻撃で砕け散った。

 

 その結果、衛星軌道にはデブリが高速で飛び交っている。

 そこへ、新たな衛星を打ち上げても、数時間後には機能を停止。

 通信、天候、位置情報など生活にも軍事においても大きな影響をあたえた。

 

 開戦当初、対空用レーザーによって都市への爆撃はありえないと宣言。

 しかし、人工衛星を失った場合の索敵設備の防衛には、問題があった。

 

 雨天に降下してくる猟機兵装アーマーによって次々と破壊された。

 雨の少ない乾燥地帯でも、武闘Ⅱ型による電磁投射砲レールガンや誘導榴弾の曲射によって破壊された。

 

 連合軍は防空兵器を使い捨てのドローンや特殊部隊によって位置を調べ、移動する前に破壊。

 これを徹底していた。


   ◇


【統一経済圏推進連合に敵対する国の前線にある空港】


 規則的に区切られた田畑に囲まれた空港。

 カエルや虫たちの泣き声が格納庫の中にまで聞こえてくる。


 格納庫にはバイオレット11が並んでいた。

 パイロットに合わせて兵装が違うため、同じには見えない。

 

 サヤカは直刀2丁と小口径銃2丁。

 キヌタは小口径銃2丁と左腕にワイドシールド。

 背中に多くの予備弾倉マガジンを背負っていた。

 

 機体の周囲で整備兵が動きまわっている。


「班長! この装甲1発食らってるから交換していいですか?」

「予備があるうちは交換しろ。そいつは奥に立てかけて後で補修しろ」


 若い整備兵は装甲を巨大な台車に乗せ、奥へと押して行った。

 班長と呼ばれた男は帽子を脱いで、首に下げたタオルで汗を拭いていた。


 首都まで千数百キロにまで後退した防衛線。

 サヤカ達、義勇軍も同盟政府軍の指揮下で戦っていた。


 格納庫の外に並べられた猟機兵装アーマーの装甲。

 戦闘で銃弾が突き刺さり、ひび割れた部分をパテで埋めてバーナーで焼く。

 予備が無くなったときに使う気休めの装甲。

 

「サヤカ!」

「ありがと」


 サヤカは格納庫の影に並んでいる補修された装甲の上で横になっていた。

 そこへキヌタが冷えた飲み物を持ってきた。


「明日の朝、出られるって」

「そう……Ⅴ型……厄介ね……」

「ああ、でも横推進器付きのバイオレット11なら戦える」

「それも、いまだけね。アレを使いこなせるヤツが来たら厳しいかな」

「なぁ、サヤカ」

「なに」

「潜入作戦が終わったら、一緒にこないか俺の国に」

「そっそっそそうね、私もそろそろ行き場所を考えないとね」


 サヤカは冷えた飲み物を口にして、小さな雲が流れる空を見ていた。

 サヤカも敵国か、敵の同盟国へ潜入する予定だった。


 キヌタは敵の同盟国出身者。

 親の会社が統一経済圏によって作られた事件によって騒ぎになった。

 そこへ過剰な報道により印象が悪くなり経営が苦しくなった。

 そして、すぐに統一経済圏の企業に吸収され報道も途絶えた。


 轟音が格納庫の壁を揺らし、いつのまにか眠っていた二人を起こした。

 キヌタが起き上がり滑走路を見た。

 いつもの大型輸送機。


「また新人と機体のフレッシュセットかな」

「そうでしょうね」

「重要拠点がコレじゃ他はどうなってんだか」


 重要拠点。

 この空港が敵に渡れば、空路で補給が始まる。

 そうなれば、猟機兵装の補充、戦闘機による空爆……首都への侵攻が容易になる。

 

 だから、ここを拠点に、周辺の防空施設を守っていた。




 翌朝、サヤカ達は山頂のレーダー基地を守る駐屯地に向かって出発した。

 

 トンネルに隠れて敵を待つ対空兵器。

 レーザー、電磁投射砲レールガン、ミサイル。

 これらが破壊されるまで、敵は地上を進んでくるしかない。


 それでも、多数で進入し長距離誘導爆弾を放ってゆく戦闘機部隊。

 後方炎の監視網が充実した地域では、戦闘機やミサイルは補足され落とされる。

 

 電波の発生源を特定したり、欺瞞ぎまんしたりといった電子戦が進んだ時代。

 光学画像解析が必須となった兵器達。

 

 技術の進化によって爆弾までステルスになっている時代。

 炎を出さずに飛んでくる小型の長距離誘導爆弾は迎撃に苦労する。



 

 サヤカ達は駐屯地に到着し交代で偵察任務に付き、数日が過ぎた。

 

 雲ひとつ無い青い空の下。

 日の光を浴び熱くなったアスファルト。

 数台の大型トレーラーか駐屯地に到着した。

 荷台にはシートに覆われた猟機兵装アーマーがつまれている。

 別な車両から整備用の作業着を着た色白な男女が降りてきた。

 

「フレッシュセットがもう前線?」


 格納庫の隅にある待機室の窓から、外を眺めていたサヤカがそうつぶやいた。

 そのとき、駐屯地の指揮所に偵察部隊からの連絡が入った。


「ポイントS9に敵……」


 暗号通信で送られて来た情報。

 敵も傍受していれば、数分で解析される。

 僅かに早く行動を始められるだけ。


「……ポイントS9に敵発見。精神スピリット中隊が交戦開始。ファング中隊の猟機兵装アーマーは全機出撃せよ」


 放送が始まったときには、整備員が走り出し機体周囲の障害物などが無いことを確認する。

 サヤカ達は放送が終わると隊長が指示を出した。

 

「各小隊、別々に索敵ルートで現地へ急行、上空への警戒も怠るな。よし搭乗開始」


 待機室から次々と出てくるパイロットが機体へと駆けてゆく。

 機体に駆け上がりコックピットに入る。

 シートについてベルトを装着。

 バイオレット11の起動操作を始める。

 待機モードのシステム画面が切り替わり、機体の全体図が表示された。


「起電石機動、浮遊石機動、システム正常、機体正常……」


 ブーンとうなりを上げ、機体の各部へと電気が満たされる。


「最終システムチェック完了。ハッチ閉鎖、移動開始」


 両膝をついていた機体が立ち上がり、格納庫の入り口に近い機体から歩き出す。

 格納庫の前にそろった小隊から、浮遊石を輝かせ、滑るように駐屯地を後にした。


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