14. 猟機兵装ラピッドアーマー
「目的座標に到達、誘導爆弾投下」
暗闇の中、高高度を飛行する最新鋭ステルス戦闘機部隊。
機体の背面から放たれる青白い光は、磁界変性燃料推進器の放つ光。
機体の後方から次々と流れ落ちる誘導爆弾。
遠く離れた目標へ向かって、翼を広げ音も無く忍び寄る。
◇
「全機突入!」
厚い雨雲の上を飛ぶ猟機兵装
武闘Ⅴ型ラピッドアーマー。
青白い光を放っていた背中の推進器から光が消える。
機体が雲の中へと落ちてゆく。
稲光がモニターを真っ白に変え、雷鳴が激しく機体を揺らす。
「減速開始――」
雲を抜けると目の前は街の明かりが迫っていた。
揺れていた体が、一瞬にしてシートに押し付けられ呼吸も出来ないほどのGが襲ってくる。
地上からの対空砲火が始まるが、すぐに爆炎に包まれ沈黙。
戦闘機部隊が投下した誘導爆弾が、対空兵器の放つ光や熱を識別して襲った。
◇
【数時間前、強襲揚陸艦待機室」
「我々本体は西から、キリシマとハラダは空港東側から先行して攻撃、頼むぞ」
「了解」
「現地の天候は雨、これによって対空レーザーは――」
何十人ものパイロットが大きなモニターの前に立つ男の説明を聞いていた。
その最前列にいる若い男が二人。
統一経済圏推進連合軍の若きエース達。
大量に生産されたⅣ型が予定した戦果を上げられず苦戦したため、試験中だったⅤ型を急遽量産し配備することになった。
これによって状況が大きく変化した。
Ⅳ型では成せなかった長距離高高度飛行によって、輸送機を使わず容易に後方への奇襲が可能になったこと。
それと、Ⅳ型の増加重量問題も新素材フレームの採用と、フレーム内を磁界変性燃料の貯蔵タンクにすることでⅢ型と同じ重量となった。
これにより、反応速度や敏捷性もⅢ型と同じレベルに戻すことが出来た。
携行弾数は、輸送機の大きさに囚われないため、バランス良く取り付けることが可能となりⅢ型よりも増加していた。
「作戦開始時間だ、全機出撃せよ!」
次々とパイロットが立ち上がり、扉から外へと出て、甲板へと飛び出した。
夕日で赤く染まった艦橋を背に駆けてゆく。
強襲揚陸艦の甲板上には艦橋を挟んで、Ⅴ型が両ひざをついた姿勢で右舷に並んでいた。
パイロットが乗り込むと機動チェックを済ませて立ち上がり歩き出す。
中央付近にある艦橋前に着くと、機体を艦首に向けて立ち止まった。
左舷の着艦指示所から甲板上の安全確認完了を意味するサインが出された。
浮遊石が起動し甲板を青白い光で照らし出す。
ゆっくりと浮き上がり操縦席のハッチを閉じた。
背中に固定された推進器が、ほのかに青白い光を放ちはじめる。
艦橋側面に取り付けられた赤いライトが青になった。
推進器が轟音とともに、青白い光の尾を伸ばす。
一気に甲板を滑るように進むⅤ型。
艦首に到達すると上昇し始め、浮遊石の光が消え、夕暮れの藍色に染まった東の空へと吸い込まれるように消えていった。
次々と飛び立つ機体、舷側エレベーターには両ひざを着いた姿勢のⅤ型が甲板へと顔を出す。
十数分で全機発艦が済むと、艦は回収予定座標へと進路を変えた。
この数分後、後方の空母から戦闘機部隊が発艦し、支援攻撃へと向かった。
◇
「くそ! またオマエか!」
大粒の雨が降る空港で、キリシマとハラダは苦戦していた。
手のひらを太陽に透かしたような、朱色の機体。
スカーレット22。
敵の新型機。
「ハラダ! おまえは後退しろ!」
「ダメだ! アンタを置いてけない!」
ハラダの機体は右腕を失い、左手の銃も弾倉交換が出来ないため、残弾が僅かとなっていた。
「また、かわされた」
降下するときには味方だった雨が、今はじゃまになっていた。
各種センサーの反応速度や精度が低下し、敵の動きを追えず弾か当たらない。
空港ターミナルのライトを背にしたり、スモークやフレアでかく乱しながら戦う敵に二人は圧倒されていた。
「こいつ、強すぎる!」
スカーレット22は両手に刀を握り、銃を腰に取り付けたまま撃っていた。
刀を滑走路に向け下げたまま、上下左右にフェイントをかけ接近してくる。
そして、機体を回転させて刀を振り上げる。
「ヤラレル……」
全速で左に交わしたキリシマの機体は、右手の銃が跳ね上げられ、右足首に刀が当たった。
装甲に刃が食い込み浮遊石の光が消えた。
「またダメか……クソ! ハラダ後退する」
二人は残っていたスモークやチャフを全て放ち、低空飛行で空港から去った。
二人の後退と同時にバイオレット11の部隊を相手に苦戦していた本隊。
その隊長機が、撤退を知らせる信号弾を放った。
「またダメなのか……荒野の牙……次こそ必ず」
キリシマは低空飛行で撤退する機体の操縦席で思い出していた。
左肩に描かれた紋章。
牙を剥いたオオカミを……。
キリシマはコハルの父。
ハラダはコード111で出てきたハラダの父。




