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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
13/45

13. 「未来の為に戦ってるの!」


「やっと来た」


 サヤカがバイオレット11を見て、親指と小指だけを伸ばして耳の横で振った。

 キヌタは外部マイクとスピーカを作動させた。


「サヤカ! 無事か?」

「キヌタ! この機体は壊さないで! それとパイロットが死んでるか確認してないの」

「了解」


 キヌタの乗ったバイオレット11が、ゆっくりと銃を操縦席に向けた。

 銃のカメラで確認している。

 混戦なら電波式照準のほうがいいのだが、待ち伏せなどでは逆探知される可能性があるため光学式の照準が装備されている。


「まだ、生きてるが気を失ってる」

「そう……」


 カメラを赤外線に変えると呼吸が弱くなっていることがわかった。

 サヤカは銃を手にしたまま、倒れている敵の機体に駆け昇って、操縦室のハッチの影から中を覗きこんだ。


「こいつが敵……」


 サヤカは自分より少し年上の青年が頭を下にして足から血を流しているのを見た。


「キヌタ、こいつを外に出すの手伝って!

「わかった」


 サヤカとキヌタは敵のパイロットの傷を塞いでから地面に降ろした。

 

「どうする気だ」

「連れて行きましょう、この機体の推進器の事知りたいの」

「わかった」




 降下した部隊は待ち伏せしていた亡命政府軍によって追い返した。

 その中で推進器が付いていた機体は2機。

 その1機を鹵獲できたのは幸運だった。


 標高の高い山に囲まれた湖の発電所に作られた秘密基地。

 発電所と言っても山の中を何百メートルも垂直に掘られたトンネルを使った直落式発電所。

 放水用のトンネルが何十キロも続き、途中にいくつか資材搬入口がある。


 基地に戻ったサヤカ達は、鹵獲した機体を解体し、亡命政府のある国へすぐに運んだ。


 サヤカの機体を整備している男が、待機室の簡易ベッドで横になっているサヤカを見つけた。


「サヤカの機体がヤラレてたから驚いたが、あれを無傷で手に入れようとしてってなら納得だ」

「仕掛けがあったから撃たれないでヤレルって思ったんだけどね」


 隣の簡易ベットにいたキヌタが起き上がった。


「たのむから、あんな無茶は二度とするなよ」

「うん、わかってる」

「なら、いい」

「でもⅣ型って、あの推進器ブースター付きのⅢ型以上だろうから、約束はできないよ」

「Ⅳ型か……サヤカはそろそろ降りたほうがいいかもな」

「なに言ってんの!」


 サヤカが起き上がってキヌタを見た。


「タイガ達みたいに敵の国で隠れて生き残る任務についたほうがいい」

「帰りたいだけでしょアンタ」


 サヤカはキヌタが統一経済圏の同盟国出身なのを知っていて口にした。


「ああ、帰りたい。ただ、それは今じゃない。もっと多くの仲間を送りたい。その中にお前がいる」

「わたしは、最後まで残って戦う」

「じゃあ、俺もだ」


   ◇


【亡命政府本部】


「潜入作戦はどのくらい進んでいるかね」

「計画している人数の半数は完了、残りの受け入れ先も決まってます。あとはIDの発行待ちです」

「統一経済圏への加盟国が急に増えてID発行業務の混乱を利用し、未来の希望を残す。今の我々にできるのはこれだけだ」


 薄暗い会議室で十数人のスーツを着た者と、軍の制服を着た者が向かい合って座っていた。

 亡命政府を置いているこの国でも、統一経済圏連合軍には勝てないほど、技術的にも戦力でも差は大きく開いてゆくばかりであった。


「統一経済圏連合軍がこの国と開戦するのはⅣ型が一定数実戦配備されてからとの情報です」

「Ⅳ型の機動力を生かして一気に首都を制圧する気でしょう」


「Ⅳ型についてですが推進器ブースターによる飛行は脅威ではありますが、戦闘能力については重量制限があり、携行弾数が少ないと予想されてます」

「しかし、重火器などを別に投下する訓練が行われているとの情報もあるが……」


 会議は敵の新型であるⅣ型への不安を口にするばかりで、何も得る物がなかった。


 そのとき扉を開けて男があらわれ、軍服の男に駆け寄って、耳元でささやくと情報カードを渡した。

 軍服の男はテーブルに据え付けられている情報端末にカードを挿し込んで、内容を確認した。

 

「おおっ、皆さん敵の推進器を装備した機体の入手に成功しました」

「ほんとかね」

「ええ、すでに機体はコチラに向かってるとのことです」

「この国へもすぐに知らせよう」


 亡命政府本部から受け入れ国へとⅢ型改は渡され、すぐに解析されバイオレット11に取り付け、テストが始まった。

 そして、Ⅳ型と同じように飛行能力を持つ試作機もつくられた。


   ◇


「あいつ、目をさましたって、でねっ」

「そう、いろいろ聞き出せるわね」


 サヤカが修理の終わった機体の操縦席で点検作業をしていると、事務職員の少女が操縦席を覗きこんでいた。


「あのね、サヤカと話がしたいって言ってるから、来てって」

「えっ、なになに? あんなやつ知らないわよ」

「それが、なんか泣きながら謝りたいとか言ってるって」

「謝る? 目隠しはしてるんだよね」

「うん、大丈夫」

「じゃあ、ちょっとだけ……何なの謝るって、戦争やってるのよ」


 サヤカは少女と一緒に医療所へ向かった。

 そして、あの日の事を聞かされた。

 

「そう……今の私はそんなことで戦ってるんじゃないの、未来の為に戦ってるの! あんた軍人でしょ、あれが任務だったんでしょ、だったら謝らないで、私が恨んでいるのは兵士じゃない、指示したやつらよ」


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