12. 「ただのⅢ型じゃない!」
真っ黒な森の中にライタの駆るⅢ型が降下した。
操縦席のモニターに映し出されている敵の位置を確認すると、操縦スティックを握りなおし、ペダルが踏み込まれた。
Ⅲ型は大きな針葉樹の森へと消えてゆく。
機体で枝葉を散らせながら。
電磁投射砲を支えて移動するバイオレット11の後ろには護衛の機体がいた。
操縦席にはサヤカが座っている。
「なんでなんでなんで! アタシが、こんなヤツの護衛なのよ!」
前をゆく機体を見ながらサヤカは戦闘に参加させてもらえないことへの不満を口にしていた。
敵の猟機兵装を撃破した数は亡命政権の軍ではトップクラス。
そんな彼女が早々に後退させられることを納得していなかった。
「誰かほかのヤツにやらせればいいのに! もうもうもう!」
視線を後方モニターに移すと、小さな光が飛び交い、大きな光が膨れ上がった。
「デルタワンよりエコーワン、気を付けろ――のⅢ型じゃ――」
途中で無線が切れた。
「エコーワン、先に行って。あたしが片付けにいく」
「了解だ。油断するな」
「ええ」
サヤカが機体を反転させ、森の中へと消えてゆくのをキヌタがバックモニターで見ていた。
「コイツを届けたら、必ず行くからな……」
キヌタはサヤカの顔を思い浮かべていた。
すると、大きく機体が揺れた。
自動操縦で木を避けただけだった。
「おっと、集中集中。今はとにかく急ごう」
キヌタは操縦スティックを握りなおして、ペダルを踏み込んだ。
目的地を目指して。
ここは山岳地帯だけに、多くのトンネルが存在するため、前線基地として利用していた。
民間のコンテナトレーラーに偽装し、猟機兵装や武器弾薬を運んでいる。
「見えた!」
キヌタがトンネルの入り口をモニターに捕らえた。
「見えた!」
サヤカの駆るバイオレット11のモニター上方に動体反応枠があらわれた。
地表を照らす青白い光、浮遊石の放つ光だけは隠せない。
その光こそ浮遊石の力。
光を覆い隠せば覆いをはじき飛ばすだけ。
収束装置の負担を減らすため、点滅させながら光を放つのが波動式浮遊石。
Ⅲ型とバイオレット11が持つ短時間飛行……ジャンプ能力だ。
「こんな場所でジャンプなんて、間抜けなパイロットね」
サヤカは浮遊石を停止させ待ち伏せしていた。
敵に発見されずに、仕留める為に。
「さよなら、お間抜けさん」
照準が合った瞬間、バイオレット11の手にしていた銃から砲弾が放たれた。
砲弾が当たる寸前、Ⅲ型が空中で横方向へ移動した。
「はずした!? なんなの今の動き」
サヤカが驚くのは当然であった。
浮遊石で飛んでいるⅢ型が、空中で横移動することは無い。
このときまでは、無いはずだった。
「ただのⅢ型じゃない!」
サヤカは浮遊石を起動し、操縦を自動にし木々を回避しながら指定した場所へ移動をはじめた。
サヤカが操縦席のモニターに何度か触れると、Ⅲ型が回避した時の画像が映し出された。
そこには、腰の後ろを横切る筒があった。
その筒先から噴きだす青い光。
「この光……まさか! 推進装置」
サヤカが見たのはⅣ型から装備されている推進装置。
磁界変性燃料を使った高出力推進器に似た光だった。
「待ち伏せか……いい読みだが、コイツには効かない。横方向のみとは言え高出力推進器を装備している、このⅢ型改にはな」
ライタの乗るⅢ型改は森の中に降下すると、すぐに移動を始めた。
「そこか、逃しはしない!」
森林では動けば枝葉が音を立てるため、位置を知ることができる。
それは敵も同じだ。
「追ってきたって事は、殲滅部隊ね。いいわ、相手をしてあげる」
バイオレット11は手にしていた銃を腰に取り付け、背中から2本の直刀を抜いて両手にし、木の枝を払いながら移動を始めた。
「木の枝葉の音が大きくなった……向かって来る、面白い」
Ⅲ型改は音の発生源へ3芯ガトリング銃を向け砲弾を放った。
「手ごたえ無し?」
その瞬間左側面から警告音が聞こえた。
自動回避制御が苦手な側面からの攻撃。
バイオレット11が木の陰から飛び出て着た。
「コイツいつのまに!」
ライタはバイオレット11の突き出す直刀を左手で受け流し、コックピットへの直撃をさけた。
左腕が千切れ飛ぶのも気にせず、右手の銃を左に向け弾倉が空になるまで撃ち続けた。
弾はバイオレット11の腰の辺りから左足へと突き刺さり装甲を砕いた。
ライタが距離を開けようと動いた瞬間、バイオレット11の左腕に握られた直刀がⅢ型の頭部を砕き胴体へと食い込んだ。
ライタの頭上の機器が歪んで、小さな火花を散らすと、モニターが消えコックピット内は真っ暗になった。
両機はもつれるように倒れた。
その衝撃でコックピットのエアバッグが作動した。
「助かった……でも、ココまでか……」
ライタは緊急脱出用のボタンを押した。
すると、コックピットの正面ハッチが吹き飛んで開いた。
シートの下に収められているケースから銃を手にして外に出た。
そこで目にしたのは敵のパイロットが操縦室から出てくるところだった。
ライタは同じような光景を思い出しながら見つめていた。
そして、そのパイロットと目が合った。
お互い、手にしていた銃を向ける。
「お前は、あのときの……」
ライタは思い出した。
ワーカーに乗っていた少女の顔を。
ライタは銃のトリガーから指を離した。
その瞬間、銃声が響いた。
ライタはその場で崩れるように倒れ、コックピットへと吸い込まれるように消えた。
あとがき
浮遊石の光が力ってのは書きながら思いついた。今頃です。
雪や水は光を透過、拡散するからってので説明もつく。
これぞ妄想科学?
今年はこれでおしまいです。
しばらく、のんびり、いい作品を読みましょう。よい年を。




