優遇される領、速水領
俺の目の前で女っぽい男の子、凛花がもじもじしながら口を開く。
「そのね?一人でギルドに行くのは勇気がなくって…けど、隼人ちゃんはギルドカード持ってるし、隼人ちゃんとなら一緒に行けるかもって思って…一緒に行ってください。」
「勇気が無いのは嘘でしょ…ギルドかあ…えっとね?勘違いしてるかもだけど、私ってギルドランク高く無いよ?4だよ?」
ギルドランクと言うのはその名の通り、ギルドの階位だ。一般的な子供なら1ちょっと魔物も狩れちゃう大人が2〜10速水領のギルドの人達の平均が110位だ。赤司さんは999らしい。限界だって。頭おかしいわあの人。
「隼人ちゃんはいてくれるだけでいいの。別に冒険者の手伝いをして欲しいわけじゃ無いし、ただきてくれるだけでいいの。」
「未来の私がどう思うかなんだよねえ…」
頼んだぞ未来の俺。
「仕方ない、やる事もないから行ってあげよう。」
「本当!ありがとう!」
「ここが、ギルド…速水領の何倍あるんだろう…」
「さあ!行くよ凛花!家電製品が私を待っている!」
「なんで隼人ちゃんの方が張り切ってるんだろう?」
ごめんよ、過去の俺。街を歩いてたら家電製品の誘惑には勝てなかったよ…
ギルドの扉を開けると、そこには色んな人達がいた。大人から子供まで、様々な人達がざわめき合っていた。
「おう、嬢ちゃんたちどうした?ここはお前らの家じゃねえぜ?おっと?まさかそんな小さいなりで冒険者になるだなんて言わねえよな?まさかな!がハハハハハ!」
おっさんが来た!これだよ!俺が最初に求めていたものは!テンプレだ!ただまあ、こんな女の子にしか見えない子供が来たら払うわな。
「私たちは!」
「わあってるって、あれだろ?おめえらさんがたの髪の色とか年齢から魔法学園の特待生枠で入ったんだろ?だがな、魔法が使えるからって魔物を倒せるわけじゃねんだよ。怪我したくなかったら大人しく帰りな。」
ど正論。
それに魔法学園の一年生生徒って魔法使えないしね。習った人なら別だけど。
「あれ?私髪の色普通だと思うんですけど?」
「あ?そりゃ特待生が誰でも髪の色違うわけじゃねえだろ。それにこの時期そんな歳でここに来るのなんて魔法学園の生徒以外いねえんだよ。」
「貴族の可能性は?」
「お貴族様がこんなとこに来るわけねえだろ。親から金貰ってるって聞いてるぜ?」
まあ、生活に最低限必要な金額は仕送られるらしいけど。貧乏貴族はどう言うわけにもいかんだろうに。
「ですけど、私は生活の為にお金が!」
「それもわかってるよ。今ので逃げなかったのは合格だ。だから次は実技に移らせてもらう。これに合格できなきゃギルドカードは渡せねえ。」
「望むところです!」
「そっちの嬢ちゃんはどうする?」
「私はいいです。見てますよ。」
「そうかい、じゃあ、銀髪の嬢ちゃん、付いて来てくれ。黒髪の方は、受付に聞いてくれ。」
「はーい。」
「行ってきます!」
まあ、落ちんやろ。
これがフラグになるのだった…
やめい。
とりあえず受付に向かう。
やっぱり受付嬢は美人だったよ。
やっぱりあれかな?モチベーションの為かな?
「はい、話は伺っております。闘技場観客席はあちらです。金額は1ドラです。」
「金とんの?」
「ギルドカードがあれば無料になりますが、一般の方にはお金を取らせていただきます。これも商売ですから。」
「私ギルドカードありますよ。」
「え?」
赤司さんに強制的に作らされたカードがね。
まさかここに来てまで使う事になろうとはね。使いたくなかったよ。
ギルドカードは鉄製で名前とランクが書いてある。ランクの更新にはとある魔法で書き換えする。見せてくれなかったけど、目を使えば鉄自体に魔石を混ぜているのがわかるし、どうやら光魔法で変えれるらしい。因みに俺の光魔法では変えることは出来なかった。
さらに言えばギルドカードは情報が漏れないようにある機械に通さないと見れないらしい。
俺?目があるから余裕で見れますよ?
「確認させて頂きます。…ギルドランク4!?…名前は…速水隼人…速水!!!????」
情報漏洩…ほら見ろ、さっきまで興味津々で見ていた他の人が速水って名前聞いた途端にそっぽ向いたぞ。いや、一人俺の事をじっと見てるな。おっさんだ。さっきのおっさんじゃないぞ?新しいおっさんだ言うなればおっさんBだおっさんAは闘技場言ったらしいし。
おっさんが現れた!
「おう、お前さん速水領の人間なんだって?」
「はい。おっさんは?」
「おっ…俺は海斗っていう。強え奴を探して旅をしている。聞きてえんだが、赤司って奴は本当にいるのか?」
「いますが。」
「へ、いんのか。なら、速水領ってとこに行ってもいいかな。」
こいつ悟空かよ。いや、待てよ?
「もしかして、赤司さんと戦うおつもりで?」
「おう、最強なんて言われててその実態は誰も知らねえって言うギルドが嘘吹いてんのかと疑ってたが、いるんなら別だ。ぶっ潰して俺が最強になってやるぜ。」
「えっと…赤司さんとはやらない方がいい気が…」
いや、勿論赤司さんぶっ潰せるくらい強かったらこっちから嗾けるよ?けど…この人多分俺より弱い…
「安心しな!俺のギルドランクは53だぜ?赤司って奴が何ランクだろうとぶっ潰してやるぜ!」
あ…(察し)それって多分村人にすら勝てないと思うんですけど。
うちにあるゴブリン退治とかって駆け出しの子の為にとってあるだけであって村人が強すぎて結構まじでやばい奴以外はギルドに出されないもん。俺が森に潜った時にも浅いとこに来た日の熊を5、6人で囲んで撃ち殺してたし。
「えっと、日の熊の単独撃破はしたことありますか?」
「はあ?日の熊なんて見たことねえよ。あんなん御伽噺の化け物だろ?ま、俺なら出ても一瞬で殺すけどな。」
うち森の奥入ったらうじゃうじゃいるからなあ。
「えっとですね。赤司さんのランクは…」
「あのー、もう間も無く始まりますが…」
「あ、じゃあこれで。」
さてと、凛花はどれくらい強くなってるかな。
西側にいるのはマッチョのおっさん。東側にいるのが凛花。そういえば、あいつ魔法どうすんだ?まさか運動的魔法?使うのか?ん?使うのか?使ったら絶対いじってやろう。
「えー、では、はじめ!」
先に動いたのは凛花。
腰を低くして重心を前に持ちらながら走る。結構早い。そのままおっさんに向かってパンチ…いやおい待て。
「は、そんなヘナチョコパンチにあたるかっての。」
馬鹿、もっと大きく避けろおっさん。その技は…
避けられた凛花は倒れて右手をつく、そしてその右手を重心に体を捻り…
「獣拳流其之一豪脚!」
その遠心力を生かして完全に油断した相手の脹脛を正確に蹴り飛ばした。
「いってえええええ!!!!!」
あれは我らが10師匠の内が一人拳王さんの流派を魔改造して原型が亡くなった上で更に魔改造した獣拳流。ところで、拳王って名乗ってるのに足技ばっかり使ってていいのかと聞いたら。
『はあ?なんで足の方が強いのに拳使う必要があるんだよ?俺が拳王って言われてるのは本来足技に繋げる技で相手がノックしてるだけで本来は俺、足技専門だぞ。』
と言われた。
そして、あの人から受け継がれたのは何も技だけじゃない。
ああやって動かない獲物がいたらどうするか?
俺なら追い討ちをする。
そしてそれは凛花も同じことで。
「獣拳流其之二翔脚!」
そう言って、片手から両手立ちへと変わり猫のように体を曲げてバネのように両腕を…おいこら、魔法使ったろ、まあ、バネのようにはね飛び、相手の脇腹に足が突き刺さる。
本来は豪脚でよろめいた相手を上に上げるために使わないといけないから早くないといけないんだが、凛花は苦手だからああやって蹲ってる相手に対して腹を打つ為にやってる。
そして転がってるおっさんに対して蹴った勢いで少し飛んだ凛花はクルリと空中で一回転してそのまま足をついた瞬間に勢いを殺さないままバク転をして。
え?それもやるの?
「獣拳流其之三堕脚!」
そのまんま、相手の腹に踵落とし。
「うぐうう…ゲボォ…」
泡とゲロを撒き散らして白目向いておっさんは伸された。
南無。
「やった!私勝ちましたよ!勝ちましたよね?」
「はいいいい!凛花様の勝利!」
よかったね。初めてその技で勝てて。
「でででででは、凛花さんのギルドカードを贈呈いたします!」
「あれ?ギルドランクは10なんですね?」
「はい!凛花さんは鎌瀬さんを倒されたので、最高得点でクリアということでランク10からです。」
は?おいこら赤司さん、なんだよそれ。俺あんたからカード貰った時。
『僕とこれだけできるし、ギルドランクは2からでいいね?はい決定。』
って言ってたよな?そりゃあ、あんたを倒さなきゃランク10から始められないとか無いわー。
「それではあの板に依頼が貼っているので、そちらの紙を持って受付の場所まで来てください。」
「はい!行こう!隼人ちゃん!」
「はーい。」
色んな依頼があるな…流石王都。
「これとかどうかな?」
「なになに…ゴブリンの巣を壊して欲しい。報酬は100ドラ、報酬の受け渡しはゴブリンの巣の破壊を確認した後に払います…か。」
「うん。あんまり人が取ってないし、ここなら魔法も使えるでしょ?」
「いいんじゃない?」
「そうだよね!これ受けてくるね!」
「はい。ゴブリンの巣の駆除ですね。承りました。こちら期限は10以内とされておりますので。期限が切れたら依頼は強制失敗となり、報酬分の半分を払ってもらいます。」
「え…大丈夫かな?」
「その期限は報酬を受け取る期限ですか?それとも駆除完了の報告の期限ですか?」
「報告の方です。」
「なら大丈夫です。」
「はい。では、またのお越しをお待ちしております。」
「じゃあ、帰ろっか。」
「え!?行かないの?」
「ちょっと時間がたらないね〜明日行こう。」
「わかったー。」
夕食も食べたし、風呂は部屋にあった。流石、変なとこには拘るぜ、日本人。
寝よう。
コンコン。
「隼人ちゃん…お風呂貸して…」
…
「いいよ。」
「追い出されちゃって…平民は大浴場なんだけど、そこには先輩達もいて、女がこんなとこに来るなって…けど私男だから女風呂には入れないし…」
「わかるよ、大変だったね。」
「うん…」
速水領の人間は優遇されるわけではないようだ。
「ああ、久々に起きたなあ。」
彼等と遊ぶのもいいか。
「では、借りるよ。速水隼人。」




