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大胆不敵イリュージョン  作者: みんしぃ
第2章 ハミングストリート
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13話* テレパストーン

 

 講義の時間はあっという間に終わって、放課後。

 僕はアサギに言われた通りミステリー研究部に来ていた。


「で、渡したい物ってなんだよ?」

「ふっふっふ……これさ!」


 じゃじゃーん! と効果音がつきそうな勢いで、アサギはネックレスを取り出した。

 麻紐でくくりつけられた菱形のガラスの中に、透明な液体が入っている。


「なんだこれ?」

「僕が一番最近に開発した魔道具……名付けてテレパストーンだ!」

「……てれぱすとーん?」

「まぁ、いいからいいから。ちょっとそのネックレスを手のひらに乗せてみてくれ」

「はいはい」


 アサギの言うままにネックレスを手のひらに乗せる。

 すると、ガラスの中に入っていた液体が煙のように動き回り始めた。


「うおっ。なんか動いてるぞ」

「いい感じだ! そのまま、そのまま……」


 透明だった液体が、どんどん色づいてゆく。白いモヤの中に、紫の色水が落とされたみたいだ。

 2色はどんどん混じり合って、鮮やかな青紫になるとぴたりと動きが止まった。


「よし、上出来だな。でもまだ最後の仕上げが残っている。リオ、それを握りしめてくれ」


 手のひらに乗せていたネックレスを握りしめる。


「いいぞ……そのまま目を閉じて。1、2、3……うん。もう目を開いて大丈夫。ネックレスを見てみたまえ」

「んん……? うお!」


 さっきまでガラスと液体だったはずのものが、石になっている。

 青紫に輝く菱形の石は、西日を浴びて輝いていた。


「石になってる!」

「そうだ。中々綺麗だろう? リオの瞳と同じ色だ」

「あ、本当だ……」


 どこかで見たことのある色だと思ったけど、僕の瞳の色とまるっきり同じ色だ。

 女か男かわからないこの幼い顔立ちのことはあまり好きじゃないけど、瞳だけは気に入っている。

 確かアサギが有名な占い師と同じ色だって言ってたっけ。


「今、その石に君のエネルギーが登録された」

「登録?」

「そうさ。ほら、僕の持ってる石も見てみたまえ」


 アサギはシャツの中にしまい込んでいたネックレスを取り出して見せた。


「あ、そっちはお前の瞳の色と同じなんだな」

「そう。この石には僕のエネルギーが登録されている」

「石にそれぞれのエネルギーが登録されたのはわかったけど、これで何ができるんだ? 魔道具って言うからには、それなりのことが出来るんだろ?」

「ふっふっふ。驚くなよ。ちょっと試しにやってみるから」


 アサギは子供っぽく笑うと、肘掛け椅子に腰掛けて目を瞑った。


『おい、リオ。聞こえるか? 』

「え……?」


 口を動かしている様子は全くないのに、アサギの声が聞こえた。空耳か……? 


『リオ、聞こえてるだろう? 』

「うわああ。お前、どうやって喋ってるんだよ!」

『ふふ、いいリアクションだ。これがテレパストーンの力さ。リオも僕に何か伝えてみてくれ』

「ええ! どうやってやるんだ?」

『目を瞑って、僕の顔を思い浮かべてみて。そして心の中でしゃべってみるんだ。口には出さなくていい……』


 キザったらしく整いすぎたアサギの顔を思い浮かべるのは少々癪だが、とにかくやってみよう。

 頭の中でもあいつは不敵に微笑んでいる……


『こうか……?』

『そうだ! 聞こえてるぞ! リオ! 大成功だな』

『うわあ。頭の中に直接声が響くのって、なんだか変な感じだな』

『確かに最初は慣れないな。まぁ、そのうち慣れるだろう。さて、もう目を開けていいぞ』


 ゆっくりと目を開けると、頬杖をついたアサギが嬉しそうに笑っていた。


「すごいだろ?」

「……ちょっとな」

「まったく素直じゃない奴だな。昨日完成したばかりの、出来立てのホヤホヤだぞ!」

「昨日……!?」

「ああ。君の家から帰った後ね、ピンと閃いたんだ。離れてるとき君と連絡できる手段が無いのは不便だなって。だったら作ってしまえばいい! ってね」

「はぁ……お前、本当になんでも出来るんだな。この石の命名はふざけてるけど。もっといいネーミングは無かったのかよ」

「どうして! いい名前じゃないか、テレパストーン」

「うーん、まぁわかりやすいとは思うけどさ。それにしても、この石を世間に発表したら大騒ぎになるんじゃないか? こんな機能、みんな欲しがるぞ」

「だろうね。企業に提供すれば莫大な金になるだろう」

「しないのか?」

「しない。確かにこれは便利だが、悪用のリスクが高すぎる。だから、この石のことは2人だけの秘密だ。いいな?」


 ……確かに。こんな便利な石、何かの悪事に使われてもおかしくはない。便利な分、恐ろしいとも言える。


「わかった。この石のことは僕らだけの秘密だ」

「そうしてくれ。あと、さっき使った感じでわかったとは思うが、相手に石を伝えるときは目を瞑らないとだめなんだ。受信は目を開いててもできる」

「了解」

「もし僕と離れてるときに緊急事態が起こったら、テレパストーンで連絡してくれ。僕も何かあったら連絡するよ。さて、せっかく来たんだしお茶でもいれようか?」

「いいのか?」

「ああ、ゆっくりしてくれよ」


 アサギは魔法薬の調合机の上にある、アルコールランプに火をつけた。

 なるほど、あれでお湯を沸かすのか。


「そうだ。ちょっと本棚を見てもいいか?」

「ああ、構わないよ。初めてここに来たときからずっと気になっていたんだろう?」


 バレてたか……

 部屋の左側にある本棚は、10列ほど連なっていて、天井までびっしり本で埋め尽くされている。

 本棚と本棚の間に出来た通路は、ガタイのいい人だとキツそうな狭さだ。たぶん、学園長は入れないだろうな。


「それにしても膨大な量があるな……」


 こうして本棚の奥までくると、意外に広い部屋だということがわかる。

 ミステリー研究部という名目だけあって、探偵小説などが多めではあるが、本の種類は多種多様だ。どれどれ……


 "サイレントストリート殺人事件"

 "探偵のすべて"

 "魔石の応用方法・高度技術"

 "人間世界の写真集~日本編~"

 "おいしいお菓子の作り方"

 "恋愛心理・意中の人に好かれるためには?"


 いや、上の方はわかるけど……下に行くにつれ、どんどんくだらない内容になってくるな。


『どうだい? 色んな本があるだろう?』


 頭の中にアサギの声が響いた。


『お前……この距離ならテレパストーン使わなくてもいいだろ』

『いや、実は使いたくてウズウズしていてね。それにここから声をかけるには、ちょっと声を張らないといけないし』

『そうかい……この本、全部お前の持ち物なのか?』

『いや、ミステリー研究部がちゃんと活動していた時期に集めたものらしい。もう10年くらい前のことだ』

『へえ。じゃあこの本棚の本は読んでいないのか?』

『ん? 全部読んだけど?』

『へえー……って! この量を! 全部?』

『ああ。僕は本を読むのが早い方なんでね』

『膨大な量だぞ……しかも探偵とは全然関係なさそうな本まであるし……』

『何を言ってる。関係ない本なんて無いぞ。ありとあらゆる知識を取り入れて、応用することは探偵にとって重要だ。それに、ここの本はかなり貴重だ。図書館にも置いてない本がたくさんある』

『ふーん。じゃあ、"恋愛心理・意中の人に好かれるためには?"ってのも読んだのか?』

『もちろん読んだとも。中々興味深い内容だったよ。僕に好意を抱いている女の子たちがしてくる行動の謎が解けた』

『ああそうですかい……』


 本の表紙を眺めていると、一番奥の本棚の隅っこに、鎖でぐるぐる巻きにされた本を見つけた。南京錠で鍵もかけてあるし、絶対に読めそうにない。


『この本はなんだ? 南京錠もあるし、封印されてるって感じだな』

『ああ……その本だけは僕も読めていないんだった……色々と開ける手段を試してみたけど、全部ダメでね。強力な魔術で封印されているらしい』

『ふうん。一体何が書いてあるんだろうな』

『気になる。とても気になる。僕はわからないことがそのままになるのが1番嫌なんだ……いつか絶対にその本を開けてみせる』

『んじゃ、僕はお前が開けるのを待ってるとするよ』


 テレパストーンを使って会話していると、トントンとノックの音が部屋に響いた。


『どうやらお客様がきたようだ』

『そうみたいだな。じゃ、僕はこのまま本棚の奥に隠れているぞよ。初対面の人と会うのは苦手なんだ』

『全く。もう少しコミュニケーション能力を身につけたほうがいいぞ……』


 本棚に遮断されて鈍くなった、扉の開く音が聞こえてくる。


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