春斗達の長い長い1日 その1
ゲームセンターの件から数日が経ちあの三人とよく話すようになった。
「それでさー、昨日楓がさ・・・あ、月宮君おはよー」
「あぁ、おはよう」
「おはよう、おい聞けよ梨恵の話」
「楓がね昨日の帰りにね・・・ん!?」
「言わないでー!!」
「おい、暴れるな!!」
楓は腕を振り俺や雄一郎にまで被害がおよんだ。
何気痛いんだけど威力高くね!?
「聞いていいか?」
「なんだよ、こんな時に」
「楓の力さ、強くないか?あと失礼かもしれないが言わせてもらうけど、何でこんなに力あるの?」
「実はな楓の家庭は大手企業で楓はその令嬢なんだよ、だから学問や武道とか小さい頃から山ほど教わっててそれでいつの間にかこんなパワーを手に入れたということだ」
理解はしたがしれっと重大なことをいったよな、というか令嬢っておい!!
最初名前聞いた時は有名な会社と一緒だなと思ったがまさか本当にあの会社の関係者だったとは・・・。
「悪かった、聞かない!聞かないから!!やめてくれ」
「はぁ、はぁ・・・本当?」
「本当だ!!言わないさ」
「はぁー良かったー、もうやめてよねー」
楓の怒りが収まりこの問題がひと段落し、俺達はかなりの痛手を負った。
俺はこの瞬間一番怒らせてはいない人物がここにいると確信した。
「昔から楓はこうなのか?」
「そうさ、初めてこれを受けた時はさすがにキツかったが今はもう慣れたよ」
「お前も大変だったんだな」
「それよりもちょっと見ろよ、あの姿を・・・。」
横を見るとそこにはさっきまでの光景を疑ってしまうような光景だった。
何故なら楓はニコニコしながら梨恵と会話をしているからだ。
「梨恵も絶対に言わないでよ」
「わかってるわよ、私もしつこかったわごめん」
「もう大丈夫だよ、気にしないで」
「これを見てるといきなり疲れがどっと出てきた」
「いいことを教えてやろう、まだ朝学活前だぞ」
「それを言わないでくれ」
「二人ともー先生きたよー」
「だってよ春斗、席座ろうぜ」
「そうしよう」
俺は鉄下駄を履いているような感じの足を一歩、また一歩と進み自分の席に着いた。
「お前らー席に着けー」
辺りで溜息やえーなどのマイナス思考な言葉が小さいが飛び交ってた。
「えーっと今日の6限は数学なんだけど、授業はせずこのクラスの学級委員を決めてもらう」
この時クラスのほとんどが歓喜の歓声が溢れてきた。
「理由は俺が数学の担当だし授業もそこそこ他のクラスより進んでいるからだ」
「先生って生徒に優しいですね」
「最初は面倒な先生かと思ったけど見直しました!!」
先生を称える言葉もあれば先生を若干けなす言葉もあった。
「たまには先生いいことするねー」
「確かに、ね」
「学級委員かー・・・。」
「何、アンタがあれやるの?」
「面白そうだしさー」
「いいかー分かったなーとういことで朝学活終わりなー解散」
「終わったか」
ゆっくりと席を立ち雄一郎達の所へ向かった。
「おぉきたな!!いやーあの先生もなかなかやるね」
「それは俺も同感だ」
「本当、教師にはまともなヤツはいないと思っていたけど今回の担任は当たりね」
「あんな先生来年もいてほしいねー」
「まだ4月なんだけど」
「あ、そうだったね」
「全く、楓はいつでも変わらないわねー」
「補足をすると楓は毎年こんな感じの言葉を言ってるぞ」
「え、それ本当?」
「確かに言ってたわ」
「あはは、い、いやー面白い!!それマジか」
初めてこの三人の目の前でこんなに笑った。
「笑ってる・・・。」
「私、こんなに笑ってる春斗君見たの初めて」
「なんか以外だー」
「失礼だな、俺だって笑うときは笑うさ」
何か三人には勘違いされてしまったが仕方ない・・・とは思いたくない!!
俺はそんなに無表情なのか?誰か教えてくれ!!
「おっと、地味に春斗をいじってたらチャイムが鳴ってしまった、次何だっけ?」
「えーっとね、現代文だね」
「簡単な授業だな」
「よーし!!寝よう」
「え、ダメだよーそんなことしちゃ」
「いいじゃない寝ても」
「分かってくれるか俺の考えを!!」
「うん、寝てたら全力でたたき起こしていい目覚めを提供するわ」
「ありがたい、それじゃあしっかり授業受けるとするか」
「つまらないわね」
「そんなさ、痛みを伴ってまで寝たいとは思わないよ」
「二人とも、先生もう前にいるよ」
「いいかしら?川谷君、大道さん」
「はい、大丈夫です」
「すみません」
二人は申し訳なさそうに席へ戻った。
「そういえば、春斗君は?」
「確かにいつの間に」
「二人がね話している時に先生が入ってきて月宮君がそれに気づいて私に先生が来たことを伝えて自分の席に行ったよ」
「なんてスキルだ」
「二人が話していて気付かなかっただけじゃないの」
「それよりどうしたの急に?」
「これならさ、バスケに出れば絶対活躍できるって」
「この話はやめなさい」
「なんでだよ」
「なんでって色々ヤバいことだってあるんだよ」
「そうなのか、俺は理由が分からないから教えてくれ」
「と・に・か・く!!ヤバいことはヤバいの」
「わかったよ」
話終わった後に俺をガン見している。
何で見てるんだ楓まで見るんじゃない。
「ハーイ皆さんいいですかー」
ナイスタイミング!!先生、いいところに話をしてくれた。
「高校が始まってまだ数日ですがしっかり授業受けてくださいね、そうしないとテストで赤点取って補習しなきゃいけないことになりますよ」
何でこう先生という人物は留年やら補習とやらをよく言うのか、まぁ俺達の為を思って言っていることなんだろうけど。
「今回の授業は羅生門を勉強します」
あの有名な作品か中学ではちょっと学んだ位だから実際読んだことがないしいい機会かもしれない。
「先生ー、なんで今更これを勉強するんですか?」
雄一郎は何を言っているんだ?
「どうしたの?そんな事を言って」
「いや、中学で習ったことがあったので」
「そういうことですか大丈夫ですよ、心配しないでください」
「どうしてですか?」
「どうしてって中学では詳しく勉強してなかったことを学習するからね」
「とほほ、案外楽ではないってことか」
「そういうこと、それじゃあ内容に入るね」
最初は文を一人が一文ずつ読んでいき一週半して羅生門を読み終えた。
案外長かったなこの作品は、久しぶりにこんな長い文を聞いた。
「お疲れ様、結構長かったね、この後の内容は前半の部分を学習するよ」
まだ授業は続くのか、時間は・・・でもあと15分か、こんな時間集中して受ければすぐ終わる。
「それで、ここの場面では下人が・・・」
先生が話をしているところに割り切ってチャイムが鳴った。
「チャイム鳴っちゃったな、じゃあ今日の授業はここまで終わりにしていいよー」
話を終えると一斉に生徒が席から離れ休み時間を過ごした。
俺も当然のようにあの三人の所へ向かった。
「よぉ黒○」
おい、俺はバスケもしないし、影も薄くないぞ。
「さっきの続きで話をしてるわね」
「どうしてそんなことがわかるの?」
「それは・・・言いづらいわねどう説明すればいいの」
「難しいんだね」
「雄一郎も春斗君にその呼び方をしないように、何かと面倒くさいから」
「分かったよ、幼馴染の話を聞いてやろう」
「偉そうに」
「待って!!そんないきなり暴力は無しだって」
「二人は相変わらずだねー」
「これが雄一郎のM疑惑を浮上させたのか」
「だから俺はMじゃないって」
一応Mではないと信じよう多分答えが変わることはないと思うけど。
それより二時間目は・・・
「次は世界史か」
「でも今日は教室じゃないよ」
「え、そうなの?」
「うん、確か今日は三国志のことを見るらしいからなにもいらないかなー、しかも席は自由でいいって前回の授業の終わりに言ってた」
「お!!今回は梨恵に邪魔されずに思う存分寝れるぞ!!」
「良かったな」
「よーし、視聴覚室へ行こうぜ!!」
「サボれるとなるとすぐこうなんだから」
「いいじゃない、いつものことだし」
チャイムが鳴る前に雄一郎は上機嫌で視聴覚室に向かった。
俺と梨恵と楓はゆっくりと時間までに間に合う程度に歩いた。
「おーい!!こっちだ」
雄一郎は俺のぶんの席を取ってくれていた。
用意してくれているって意外と善人だな。
「私達はここにしましょう」
「うん、いいよー」
席は一番後ろの列の窓際が俺と雄一郎、その前に梨恵と楓が座っている。
「げっ、なんで前に座っているんだよ」
「いいじゃない、そんなの私と楓の勝手でしょ」
「春斗も何とか言ってやれよ」
「俺は三国志の話が聞けるならどこでもいい」
「あれ、三国志好きなの?」
「いや、ただゲームをしていて面白かったから」
「やっぱりゲーム関連だったか」
「変わらないねー」
「先生のお出ましだぞ、今回は全然関係ないけど」
挨拶をした後先生が映像を再生し少しテンションが上がった。
動画を見ていると隣の雄一郎はもう爆睡し、前の梨恵はつまらなそうに見て楓は頭の上に?マークを浮かんでいそうな表情で見ていた。
俺は食い入るように見ていたらチャイムが鳴ってしまった。
「動画は途中だけどここで終わりにするぞー、教室戻っていいよ」
「ふぁわぁー良く寝たいい睡眠学習だった」
「なーんか難しかったわ」
「よくわからなかったけど面白かった!!」
「あの動画ちょっと拍子抜けだった」
「どうして?」
「だって、出てくる人物が曹操、劉備、孫権がメインだったからだよ、もっと他の人物も出してほしかったよ」
「そうだったんだ」
「もっと趙雲とか呂布とか出してほしかったよ」
「それは災難だったね、そんなことより次何だっけ?」
「次は日本史だよ」
「歴史の後に歴史かよ」
「俺は別に嫌じゃないけど」
「私は歴史苦手かなー」
「楓でも苦手な教科あるんだ」
「もちろん嫌いな教科だってあるよ」
「教えてあげるよ春斗君、楓はねいくら勉強できていても歴史だけはできないんだよ」
「そうなんだ」
「クソー次寝れないじゃないか」
「別に寝てもいいんだよ?」
「誰が寝るか!!」
ここでも雄一郎がいじられ三時間目のチャイムが鳴った。
「今日勉強するところは安土桃山時代のところかな」
「ここら辺で有名なところといえば本能寺の変だな、これは、本能寺にいる織田信長が明智光秀によって焼き討ちされるという話だ」
「そこで質問するぞ、川谷雄一郎、なんでこの本能寺の変が起きたか説明してみろ」
「先生、そんなの簡単に決まっているじゃないですか」
「ほぉ、言うね、でその理由は」
「理由はですね明智が信長と他の家来と一緒にモン○トをしてて信長が最後これで相手を倒せるって時にミスをしてこのままそのミスが後に響いて負けてしまいそのミスを
信長は反省しておらずそれに激怒をした光秀が本能寺で焼き討ちを決行したっていうのが本能寺の変が起きた理由です」
この時先生と一部の生徒がぽかんとし、それ以外の生徒は大爆笑していた。
無論俺は笑うほうだぞ。
「お前はなにバカなことを言っているんだ!!」
「え、だってあのCMを見ていればそうに違いないって思いますよ」
「モン○トは一切関係ないぞ」
「ゆ、雄一郎、その発想は、な、なかったぞ」
「面白すぎ、バカでしょアンタくだらなすぎて笑っちゃう!!」
「流石に、そんな答え出す人初めて、アハハハ!!」
この考えは誰もがこんな答え出すとは思っていなかったと確信した。
「全くこんな答え出す奴初めてだ」
この後雄一郎は軽い説教のようなものを受けチャイムが鳴ってしまった。
「鳴ってしまったな、これで終わりにするぞ」
午前中の授業でこんなに体力を消耗すると思わなかった、主に笑いで。