練習開始!
「そういえば、グローブとか持ってねェけど、どうするんだ?」
「そんなもん、野球部から借りればいいじゃない」
「だな」
「・・・・そう簡単に借りれるのかな」
僕たちは、野球コートについた。この学校には、野球コートは二つある。一つは、野球部がちゃんと使っているが、もう一つは、時々しか使われていないので、荒れ放題だ。
「と、いうわけで野球コートと野球道具を借りるわよ」
「いや、どういうわけだよ」
「そう、ありがとうね」
「おい、まだ何も言ってねェぞ!」
垣外中さんは、野球部員と交渉してくるといったけど・・・・大丈夫かな?そのあと、なんかいろいろ言い争いがあった。僕は、巻き込まれるのを避けて、少し離れたところで見ることにした。
あ、垣外中さんがこっちに向かって歩いてきた。
「さぁ、行くわよ」
結局借りていいことになったみたい。だけど、野球部員たちは、どこか悔しそうな顔をしている。・・・何をしたんだろう
「野球コートと道具は集まったわけだけど・・・」
「メンバーが足りなきゃ、野球はできねェよ」
「だが、練習はできるぞ」
「まぁ、そうかもしれねェけど・・・」
「・・・本当にここ使ってよかったのかな?」
「よかったのよ。野球部が貸してくれたんだから。さぁ、それより練習しましょ、練習」
「ポジションは?」
「ピッチャーはもちろん私よ。なんたってエースだからね」
「それは、本の中だけなんだろ?」
「何言ってんのよ。本もここも変わらないわ」
「ストライク、入らないんじゃないか?」
「あなた、なめているのかしら?」
「まぁまぁ、とりあえず、投げてみろよ。由姫、バッター頼む」
「うん、了解」
僕は、金属バットを取ってバッターボックスに立つ。
「いつでも投げていいよ」
「ふん、見て驚きなさい」
垣外中さんは、大きく振りかぶって、投げた。
垣外中さんが投げたボールは、ビュンと風を切る音がした。
「うをぉ・・・・これは、確かに驚いた」
垣外中さんが投げたボールは、大きくそれて、後ろのバックネットにあたった。
「こ、これは、手が滑っただけよッ!うん、そうだわ」
そういって、もう一度ボールを投げた。
ゴンッ
「ふごぉおッ!」
健二の頭に直撃した。ちなみに、健二が立っていた場所は、垣外中さんがいた右斜め後ろ。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
言葉を失った。何を言えばいいかわからない。どうやったら、そこに投げれるんですか?とでも聞いたほうがいいんだろうか?
赤坂「いってぇな・・・・つーかどう投げたら、ボールが右斜め後ろにくるんだよッ!?」
垣外中「ッ・・・・・そ、それは・・・・」
垣外中さんも言葉を失った。ここは励ますべきだろうか?こんなこともあるさ、とでも言うべきか?いやいやいや、野球経験がある人が、こんなことあるわけない。
「なんだ、これは人にぶつける遊びなのか?」
あぁ、涼香が野球という競技を勘違いしてしまった。
「くっ、バ、バッターよっ!由姫君、バットを貸してちょうだい」
「う、うん・・・・」
あまりの迫力に少し、竦む。・・・・情けない。
「拓哉君、ピッチャをお願いするわ。健二君は、外野をしなさい」
「へいへい」
「分かった。・・・・・よし、準備はいいか?」
「いつでも来なさい」
健二は、レフトの位置につき、どうせ飛んでこねぇだろ、という気持ちからか、頭を書きながら下を見ていた。拓哉は腕を振り、ボールを投げる。投げられたボールは、まっすぐストライクゾーンに向かう。
ビュン
鋭いバットを振る音が聞こえた・・・・・だけだった。それ以外の音は聞こえない。
ガンッ
しばらくして、何かが何かにあたる音がした。
「ぅんぎゃぁああっ!!」
垣外中さんが持っていたはずのバットが、健二の頭に直撃した。そしてそのまま、健二は転倒。
僕たちは、健二のもとに駆け寄った。
「ふごぉおお・・・・あ、頭が割れる・・・・」
「健二、大丈夫?」
「頭に当たったのか?」
「ごめんなさい、けがはない?」
「な、何とかけがはねェ・・・・」
「そう、残念・・・・」
「残念ってなんだっ!」
「そりゃ、あなたがけがしてなかったのが残念なのよ。・・・・ったく、だらしないわね」
「お前がバットを飛ばしてきたんだろっ」
「そ、それは・・・・あなたが前を見てたら当たらなかったわよ」
「誰も、バットが外野に飛んでくるなんて思わねェよ」
確かに、ボールだったらバットに当たった音がするから、前を向くかもしれないけど、バットは・・・
「だけど、梨咲。お前、結構まずいんじゃないのか?そこまで、衰えているなんて」
「うッ・・・・確かにそうね。・・・・でも、どうしてここまで衰えているんだろう?」
「あ?元からそのぐらいじゃないのか?」
「違うわよっ!あなたも、私の本を読みなさい。そしたら私のすごさがわかるわよ」
「やだよ、めんどくさい」
「め、めんどくさい?」
「おう」
「くっ、まぁ、いいわ。私だってこんなバカに私の本を読まれるのは気が引けるわ」
「やっぱ、読もうかな」
「なんでそうなるのよっ!読まなくていいわよ」
「お前から勧めてきたんじゃねェか」
「それにしても、本当にどうしたんだ?」
「そんなのわからないわよ・・・・」
「しばらく体を動かしてなかったからじゃないのか?」
「そんなことないわよ。私はほとんど毎日体を・・・・・あ、もしかして」
「・・・・確かに、そう考えるのが一番妥当だな」
「へ?何が?」
なんか、二人で話が通じ合ているようだ。だけどほかの人は、僕と同じように疑問を浮かべている。
「涼香の言うとおり、しばらく体を動かしてなかったんだろう」
「え?でも、さっきほとんど毎日体を動かしているって・・・・」
「たぶんだけどね、本の中とこの世界の時間系列が違うのよ」
「なんだ、その時間強烈って。なんか、すごそうだな」
「時間系列よ。本の中の世界では、今10月の最初ぐらいなのよ。でも、この世界は4月の中旬」
「つまり、10月から4月の約7か月間は、体を動かしていないってことになるんだ」
「そうなんだ・・・・・」
でも、ここまでひどくなるのかな?あ、でもまったく体を動かしていないことになるからしょうがないのかな?そう考えると、バットを外野まで飛ばすのはすごいかも
「・・・・?由姫君どうしたの、私を見て」
「いや、外野までバットを飛ばすなんてすごいなぁって思って」
「それは、バカにしているのかしら?」
「え、いやそんなつもりはないけど」
「ふん」
ドカッ
垣外中さんに背中を蹴られた。
「ふごぉあぁっ!」
健二が・・・・・
「それにしても、梨咲は運動不足。俺たちは、野球に関してほとんど素人だしな。これは、みんなして、基礎練習からしたほうがいいな」
「・・・・悔しいけど、そうね」
「よし、じゃあ、キャッチボールから始めるか」
こんな感じで、僕たちの練習が始まった。
どうも、城本 友城です。
第二話書き終えました。
基本的に『野球少女、梨咲』のほうは、『Closed World』の続きが思いつかないとき、気が向いたときに書きます。
だから、こっちは書くのがおそくなると思います。
後書きも、今のところ書くことないのでこれで終わります。
皆さん、これからもがんばっていくのでよろしくです!