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梨咲との出会い

『せいッ!』


 ズバンッ!


 私の投げたボールが乾いたミットに収まる。


『ふぅ、いい感じね』

『前よりも球速が上がったんじゃないか?』

『そうかしら?』

『あぁ、だいぶ速くなってる。・・・・・ってお前。また、無理してるんじゃないだろうな?』

『・・・・・・』

『なんだその沈黙は』

『・・・・・・』

『はぁ、次の土曜日は試合なんだぞ。ちゃんと体は休ませろ』

『分かってるわよ』

『分かってないから言ってるんだ』

『次投げるわよ』

『・・・ったく、話を聞けよ・・・・。よし、いいぞ』


 私は、大きく振りかぶって投げた。


 ズバンッ!


 再び乾いたミットの音がした。


「ふぅ」


 僕は、本を閉じた。次の授業は・・・・数学か。

 僕の名前は、榎木田えのきだ 由姫ゆき。今年この学校に入学したばかりの一年だ。身長が150cm前半と高校生にしてはかなり小柄。ちなみに今読んでた本は、『野球少女、梨沙』という、野球小説だ。簡単に内容を説明すると、野球好きの女の子が、ある学校でチームを作って野球をするという話。もう、何度読み返したことか。バカな話だけど僕は、この女の子にあってみたいと思っている。本当にバカな話だけど・・・・


「なんだ、また読書か」


 隣に座っている、幼なじみの一人、赤坂あかさか 健二けんじが話しかけてきた。健二はスポーツというより、体を動かすことが好きな人。見た目は、真っ黒な髪にいつも制服のボタンを付けずにいて、中の派手な色のシャツが見えているのが特徴的。よく、先生や風紀委員会に呼び出されたり追いかけられたりしている。以前、健二が『まったく、風紀委員会は疲れるなぁ』って言ってたから、僕が『なら、ちゃんとした格好をすればいいのに』と言った。そしたら健二は『別に追いかけられるのが嫌ってわけじゃねェよ。むしろ好きだぜ。なんたって、逃げるたびに走れるからな。だから、俺は、この恰好のままでいるんだ』と返事を返した。風紀を破ってまでも体を動かすことが好きなんだぁとつくづく思う。


「うん、たまには健二も本を読んでみたら?」

「いや、いい。俺に、読書なんて似合わねェ。まぁ、最低限の勉強はするけどな」

「そういえば、次の数学はノートの提出をするらしいよ」

「・・・・・由姫。ノート写させてくれ」


 駄目じゃん。


 最後の授業が終わり、帰りのホームルームが始まった。


 ホームルームが終わり、放課後に入った。

 今日は、土曜日なので授業は午前中まで。土曜、日曜には、幼なじみ皆で集まっている場所がある。


「よし、今日も行くんだろ」

「うん」

「すまないな、俺は先生に用事があるから、少し遅れると思う」


 僕たち、幼なじみのリーダー格の峰山みねやま 拓哉たくやが言った。拓哉は整った顔立ちからどこか、気品な大人を感じさせる優等生に見える・・・。拓哉を中心とした幼なじみは何かしらで有名だ。健二の場合は、問題が多かったりとか拓哉も似たような感じかな。僕は・・・・まぁ、後ほど。


「なんだ、拓哉。また悪い事でもしたのか?」

「またとはなんだ。違うぞ、ただの提出物があるだけだ」

「その、提出物って何?」

「・・・・・器物破損始末書」

「悪いことじゃないか」


 もう一人の幼なじみ、中宇禰なかうね 涼香すずかが言った。濃い茶色の髪で頭の後ろで一か所黒色の紐でくくって、そこから背中まで髪は伸びている。・・・・・ポニーテールっていうのかな?目がつり目で、強気な感じがする。背はあまり高くない(残念ながら僕よりかは大きい)。


「ッ・・・・・とりあえず、いってくる。先に行っていてくれ」

「バカだなあいつ。学校のものを壊すなんて。学校ではちゃんとした生活をしたらいいのにな」


 健二がそういったときに、教室のドアが開き教師が入ってきた。教師は、誰かを探しているらしく、教室を見渡していた。そして、探している人が見つかったのか、見渡すのをやめた。


「こら、赤坂!お前は、今日も遅刻をしたな。五日連続だぞ!」

「うげ、俺かよっ。逃げないとな・・・・すまん!俺も少し遅れる」

「待て、赤坂っ!」

「ふぅ、健二も人のこと言えないよね」

「うむ」

「・・・・じゃあ、二人で行こうか」


 僕たちが行こうとしているところは、学校から少し歩いたところにあるマンションだ。今は、もう誰も住んでいないけど、マンションの持ち主にひと月ごとにちゃんとお金を払う、ということで、五階の一部屋を使わしてもらっている。このマンションの近くには、川がある。この川辺で小さいころみんなでよく遊んでいた。拓哉が考える遊びは、いつも面白くて飽きることがない。だから、今までずっとこうして一緒にいることができた。


「ふぅ」

「どうした、さっきからため息をついて。ため息をすると、悪魔が逃げる・・・・あれ?不幸が逃げるだっけ?」


 それじゃどちらともいいことだよ。


「あ」

「どうした?」

「ジュースが切れていたんだった」

「私が買って来よう」

「いいよ、悪いし」

「いや、私もちょうど買いたいものがある。だから、先に行っていてくれ」

「うーん、それじゃあ悪いけど買い物頼むね」


 涼香と別れ、僕はマンションにつく。エレベータに乗り、最上階の五階を目指す。


「あれ?鍵が開いてる・・・・。誰かもう来てるのかな?」


 僕が、ドアを開けるとテレビの音がした。靴もならべてある。誰かいるらしい。


「だれだろう・・・・」


 僕はリビングのドアを開けた。そこには、同じ学校の制服を着た女子生徒が買いだめしておいたポテトチップスを食べていた。

 僕はその女子生徒は見たことがなかった。いや、正確には現実の中・・・・では、見たことがなかった。


「あ・・・・・」


 僕は、言葉を失った。この人はもしかして・・・・


「ん?あぁ、お菓子あったからもらってるわよ」

「・・・・うん、別にいいよ・・・・ってえぇっ!」


 僕は、声を上げた。いや、それはしょうがないだろう。なぜなら、その女子生徒は、僕が読んでいる『野球少女、梨咲』の桓外中かいとなか 梨咲りさにそっくりだった。金髪に頭の横で二か所赤いリボンのついたゴムで止め、腰より下まで髪が伸びている。


「な、なによ。人の顔を見るなり声を上げるなんて」

「いやいやいや、これが声を上げずにはいられないよ・・・・ってえぇっ!」


 え?え?どういうこと?どうして彼女がいるの?いや、まだそうとは決まっていない。


「えーと、名前は?」

「垣外中 梨咲よ」

「やっぱりそうなんだ」

「?・・・・私のこと知っているのかしら?」

「知ってるけど、本の中でね」

「ほぅ、読んでるんだ」

「僕のお気に入りの本だからね」

「それは、喜ばしいことね」

「・・・・で、なんでここにいるの?」

「気づいたらこのマンションの前にいたからよ」

「そうじゃなくて、君は小説の中のキャラでしょ?どうしてここにいるの?」

「あぁ、そのことね。簡単よ。出てきたのよ」

「・・・・・はい?」


 出てきた?本の中の人って現実の世界と本の中の世界を出入りできるのか・・・・ってそんなわけあるか!


「で、でてきたってどういうこと?」

「そのままの意味よ。私が、この世界に行きたい、と強く願ってたら気づいたらこのマンションの前に。まぁ、よろしくね」


 もうわけがわからない。


 この後、健二、拓哉、涼香が来て僕が垣外中さんについて説明を始めた。


「よし、大体事情は分かった」

「いや、俺はわからねェよ」

「私もわからん」

「つまりだ・・・・野球をしたいんだな」


 拓哉がそういった。

 ・・・・・へ?どうしてそういう話になるんだろうか


「どうして、野球?」

「わからないのか?以前、由姫から借りた『野球少女、梨咲』の中に、野球部に試合で負けてチームが一度壊滅状態になっただろ」

「うん、それが今のところ最新巻だよ」

「野球好きの梨咲は、試合に負けて悔しかっただろう。しかも、野球もできる状況ではなくなっている。そしたら、野球ができる場所を求める。・・・・そしてここに来たというわけだ」

「・・・・理由はわかった」


 え?健二は今ので分かっちゃうんだ。


「だが、ひとつわからないことがある。どうやってこの世界に来たんだ?」

「それは・・・・・強い思いに神様が答えてくれたんじゃないか?」

「神様っているのか!」

「そこは、今食いつくとこじゃないよ」

「神様が同川分からないけど・・・・あなたすごいわね。ほとんど正解よ。探偵か何かかしら?」

「ふっ、ただの学生だよ」


 お、なんかかっこよく聞こえた。


「ふーん・・・・ねぇ、あなたたち。私と一緒に野球をやらない?」

「まぁ、そう来るだろうと思っていた。・・・・いいだろう。俺たち全員野球に参加してやる」

「へ?」

「???」


 健二が間抜けな声を出す。涼香はいまだに現状を理解できていないようだ。


「それは助かるわ」

「ちょ、ちょっと待ってよっ!まだ、何も・・・・」

「なんだ、由紀は一緒に野球がやりたくないのか?」

「え、いや、そういうわけじゃないけど・・・・」

「なら、決まりね。・・・・とりあえず、メンバーは五人そろったわね」

「おい、待てよ。俺にもいろいろと、予定があるんだぜ」

「ほう、その予定とは」

「昼寝だ」

「よし、とりあえず、由姫に俺と健二と涼香と梨咲の五人だな」

「なにぃっ!私もその五人に入っているのかっ!?」


 ここにいるのは、五人だからね。・・・・っ拓哉は本の中にいるはずの人間がここにいても、普通に接するんだな・・・・。


「五人だけど、メンバーがそろったわね」

「では、今日からさっそく練習をしよう」

「えぇっ!?今から?」

「どうした、駄目なのか?」


 どうして、拓哉はそんなにノリノリなんだろう。


「あー、俺には予定が・・・・」

「昼寝?」

「いや、テレビだ」

「なら、こい」

峰山「そう言う、涼香は大丈夫なのか?」

「うむ、暇だし問題はない」


 そういうことで、僕たちは練習をするため、学校に向かった。

どうも、城本 友城です。

新作を書いてみました。

・・・・また、学園ものです、はい。

でも、今書いている「Closed World」は、学園ものなんだろうか?まぁ、いいや。


今回の舞台について説明をします。

学園なんですが、名前は特にありません。ちなみに全寮制。

年齢も特に決まっていませんが、そこは皆さんの想像で・・・

生徒数は・・・・一応1000人は超えているという設定です。


・・・・適当ですね。

まぁ、頑張ります。

なのでこれからよろしくです!

(「Closed World」もよろしくです)

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