ミレニアムなアイツと侵略計画
西暦二〇〇〇年。今年はキリスト教的にはなんだか意味のある年らしいが、年末にはクリスマスを祝い、正月には神社に行くような一般的な高校生である俺には全く関係ない話だ。
そんなことを考えながら居間でぼーっとテレビを見ていると、二階から大きな物音が聞こえてきた。
まずい、積んでたゲームがついに崩れたか!?
俺はそう思って大急ぎで部屋へと駆け上がった。ドアを開けると――
「うおっ!」
そこにあったのは、無残に崩れ去ったゲームソフト達の山……ではなく、「DIEO」とプリントが入ったTシャツを着ている、腰まで届くポニーテールの可愛らしい中学生くらいの少女だった。
「ディーオ……?」
俺は状況が全く把握できず、少女のTシャツの文字をバカっぽく読んでしまった。
「違う! 大王! Die O!」
しかもなんか反論された。
というよりなんでこんな奴が俺の部屋にいるんだ?
俺は驚きを通り越して呆れていた。
「私の名前は恐怖の大王。アンゴルモアを復活させて地球を侵略するために来ました」
少女はニヤリと笑った。
場が凍った。というより俺が凍った。恐怖の大王だと?
「なぁ……恐怖の大王が来るのって、去年じゃなかったか?」
今度は”自称”恐怖の大王が凍りついた。
……わかった。こいつはバカだ。
「ななな何を言ってるのかわかりません! 今は一九九九年ですもんね?」
「今は二〇〇〇年の一月三日だ。つまり君の来るべき年はつい三日前に終了してしまったのだよ」
そこまでいって大王の方を見ると、怒りからか恥ずかしさからか顔を真っ赤にして震えていた。良い気味だ。
「大体勝手に人の部屋に上がりこんでこんな一年遅れのギャグをやるなんてどういうつもりなんだ?」
「ふふふ、それにはちゃんと理由があるのです。というかギャグじゃありません」
そう言って大王はさっきの様子はどこへやら、にこやかに俺の部屋の床から一冊の本を拾い上げた。俺の本じゃないから、自分でわざわざ持ち込んだろう。ご苦労なこった。
「それを見てください」
俺は大王の差し出した本を受け取って、「トスノダラムスの大予言」と書かれた表紙を見た。
……パクリじゃん。これ。というか名前どうなってるんだ。
「ノストラダムス」と内容も全く一緒。
「その本は私の存在が記された門外不出の本なのです!」
案の定、背表紙には「禁貸出」と書いてあった。図書館から持ってきたのかよ。マナー違反だろ。
そのくせ本人は勝ち誇った顔でニヤニヤしてやがる。驚いたか、とでもいいたいんだろう。
……俺はこの不法侵入大王を警察に突き出すことにした。
携帯を取り出し、「一」「一」「〇」をダイヤルする。
「こらーっ! 人の話を聞けー!」
大王が叫んでるが、無視。話なら警察のおっちゃんに聞いてもらえ。
「ううう……無視とは酷いですね……ま、丁度いいですね。私の力をみせてあげます!」
発信音が止まった。
「もしもし警察ですか? アホな不法侵入者が――」
無言。
耳から外して画面を見てみる。
通話は切れていて、待受画面に表示が戻っていた。……そして、画面には「エラーが発生しました」の文字。
大王の方を見ると、また不敵にニヤニヤしていた。
「ミレニアム・バグ」として知られる、二〇〇〇年一月一日になったときにコンピュータが日付を処理できなくなるバグ。俺はそれを思い浮かべた。
……でも今は三日だ。なぜ一月一日にでなく今更なのかは知らない。もしかすると本当にこいつが恐怖の大王なのか?俺は部屋に入る前のことを考える。テレビを見てる時に聞いた物音。今考えるとあれは物が落ちた「ドシン」という音ではなくどちらかというと「ドーン」という爆発音に似ていたような――
「どうですか?」
こっちの逡巡など全く意に介さず本当にうれしそうな顔をして聞いてやがる。
「どうって……ところでキミはこれの他に何かできるの?」
大王はおもいっきりコケた。ひとりでバックドロップが出来るなんてずいぶん器用だな。図星か。
「キミは確かに恐怖の大王だ。 それは認めよう」
俺がそう言うのを聞いた大王は、とたんにぱぁっと明るい顔になる。違う意味でも十分恐怖だがな。特にバカ加減。
「でも、これからどうするの? コンピューターをフリーズさせられるだけじゃ地球侵略なんて無理だろ?」
「そ、それは……」
今度はシュンとなる。表情をコロコロ変わって忙しい奴だ。
「そこは私の悩殺セクシーアタックで」
「出来るかって」
誰がそんな幼児体型で悩殺されるんだよ。可愛いけど。……なんかバカすぎて不憫になってきた。
「……」
また黙りこんでしまった。
「じゃあ、とりあえず今日はどうするつもりなんだよ? 恐怖の大王なら、『空』から落ちてきたんだろ? 帰る所無いんじゃないのか?」
「……」
「キミが嫌じゃなかったらここにいてもいいよ。 どうせこんな広い家に一人暮らしだし」
「……あなたが変態ロリコンじゃなければぜひお願いします」
「誰が変態か!」
ここで泊めなかったら変態の上にヘタレってことになるんだろうな……
俺はそんなことをぼやきつつ、二人分の用意を始めるのだった。
この後、こいつのせいで俺の学校生活にも大波乱が起きるのだが――
それはまた別の話。
実は初めて書き上げた小説だったりします。
タイトルから分かるようにもとは電撃LLように書いたものです。
恐怖の大王は結構可愛くかけたのではないでしょうか(笑)




