この作品を書いたのは
とある小説投稿サイトで作品を読み漁っていると、変なものを見つけた。
『この作品を書いたのは東都エリです』
それが地の文に書いてあった。
「ついにやって来たぞ魔王!」
勇者は聖剣を構え因縁の巨悪と対峙する。両親の友人の村の、そして仲間たちの仇。憎しみを携えて『この作品を書いたのは東都エリです』ここまでやって来たのだ!
「ついに来たか勇者よ」魔王のその顔が白昼に晒される。
「お、お前は……っ!」
「そうだお前の父だ」
「父さん!」
という具合である。
一見してただの自己顕示欲。言われなくても作者名が表示されているわけだから不必要な文章だ。それに読みにくい。
小説の可読性を削ってまでそんなモノを入れた理由がわからない。
一言文句を言ってやろうとして、手が止まった。待てよ、東都エリと言えば超が付くほどの売れっ子人気小説家で国民的美少女JKでおもしれー女じゃないか。あと巨乳。
そんな彼女がこんなことをする理由は一つしかない。
盗作対策。
誰かがもしも作品を丸ごとコピーしてもこの文章があるだけで彼女のものだって証明できる。
まるでAI対策のウォーターマークだな。
それでも作品内に無駄な文章を入れるのは、飾り付けに食べられない花を添えてくる『この作品を書いたのは東都エリです』写真映えを狙うだけのプライドを捨てた料理人並みに許せない行為だけど。
気を取り直して他の作品を読もう。
……おかしい。
この作品もだ。この作品も、この作品も。
どれを読んでも同じ文章が入っている。
そこでやっと気がついた。
AIはすでに彼女のウォーターマークを学習していたのだった。
という未来が来てもおかしくないわけで。
そりゃね、私も大学出てるからあり得ないってのはわかるのですよ。でも、生成AIが文章中には『ウォーターマーク』を入れないとって学習したら面白いと思うわけで。誰かの卒研の文章を私が書いたことになったら爆笑できるのですよ。




