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 皐月と接触した日の夜、咲良が眠りについた後、ヘッドボードの上に置いた首輪がかすかに光を帯び、白い犬が静かに咲良の枕元に現れた。窓の外で庭の桜がざわめいた。境界が薄くなっている。その白い犬は一度だけ振り返り、絵のある方角を見た。まだ早い。だが、近い。咲良の眠りをさらに深めるように、その横で寝そべるような体勢になった。

 咲良が目を開けると、自分はすでにパーラールームに立っていた。灯りは消えているのに、壁の絵だけが月明かりを含んだように淡く光っていた。手には何故かあの白い首輪を持っている。誰かに呼ばれたわけではないが、咲良は一歩前へ出た。床は音もなく白い砂へと変わる。

「いいの。ひとりで行ける」

誰に云うでもなく呟いたが、何故か胸の奥がちくりと痛んだ。あの白い犬の姿は見えないが、海はそこにあった。



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