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Re-carnation  作者: 透譜


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第22話 奪われし守護

黒の港を抜け、キトたちは崩れた倉庫の裏手に身を寄せていた。

 海風は冷たく、夜明け前の空にはまだ闇が濃く残っている。


「イヴィル……。あいつ、完全に俺らを知ってたな」

 ルキが険しい声で吐き捨てる。


「守護の力を奪うなんて、普通じゃねぇ。神の力を扱えるって……なんなんだよ」

 フィストの拳は震えていた。怒りか、不安か、本人にも分からない。


 キトは静かに海を眺めた。

「……守護の力。あれは“神が各地に残した残滓ざんし”のはずだ。

 本来なら、人を守るためにある力。なのに……奪われてる」


「奪われた守護って、どういう意味なんだ」

 青龍が問いかける。


 キトは言葉を探しながら答えた。

「守護は本来“人”じゃない。

 神が作った“器”があり、そこに力が流れ込むことで、その土地を守る存在になる」


 フィストが目を見開く。

「じゃあ、俺たちの国を守ってた“守護のじいちゃん”も……?」


 キトは頷く。

「守護は代々継承されるけど、土台となる力は同じ。

 イヴィルは“継承者”から力を抜き取っている……そういうことだ」


 その瞬間、フィストの拳が地面を叩いた。

「じゃあ……俺の村の守護も……アイツらに奪われたってことなのかよ!」


 怒りで拳がひび割れ、血が滲む。

 青龍が優しく肩に手を置いた。


「奪われた力が戻るのなら、救えるはずだ。

 死んだわけではないのだろう?」


 フィストは歯を食いしばり、涙をこらえるようにうなずいた。


「でもよ、キト」

 ルキが黒い羽根を指先でつまむ。

「この羽根……ただの影じゃねえ。なんか、光ってるぞ」


 羽根は暗闇の中で脈動するように微弱な光を放っていた。


「これは……“堕天の羽根”」

 キトの表情が険しくなる。


「堕天?」

 フィストが聞き返す。


「本来、天には“神の使い”がいた。

 けど、一部は神と意見が分かれ、地に堕ちた。

 その者たちは“守護ではない力”を集めることを選んだ」


 ルキが舌打ちする。

「じゃあアビスゲートは、その堕ちた連中の後継ってことか」


「可能性は高い」

 キトは羽根から手を離した。

「イヴィルが神を恨んでいるのは本気だ。

 ……ただ、神を憎んでる理由が、俺にはどこか引っかかる」


 青龍が腕を組む。

「つまり、イヴィルはただの悪党ではない。

 思想を持ち、目的を持った“戦う者”だ」


「戦力を補うために守護を奪う……か」

 キトは拳を握りしめる。

「なら、次に奪われる守護がどこか……それを突き止める必要がある」


 黒の港の外れ。

 朽ち果てた小舟の陰で、青龍が拾った古い布を広げる。


「これは……地図?」

 ルキが身を乗り出す。


「いや、違う。この印……“神の遺塔”の場所だ」

 キトが指を滑らせ、赤い印を指した。


「遺塔?」

「神が残した遺物を保管するための塔。

 守護の力そのものが生み出された源泉の一つでもある」


 全員が息を呑んだ。


「イヴィルが次に狙うのは、おそらくここだ」

 キトは迷いなく言う。


「……奪われたらやべぇってことだな」

 ルキが鼻を鳴らした。


「ええ。守護の力どころか、“源”を奪われる」

 青龍が厳しい声で続ける。


 フィストは握り締めた拳を胸にあてた。

「じゃあ……助けよう。守護も、奪われた力も!」


 キトが微笑む。

「行こう。神の遺塔へ」


 その瞬間、黒い港の陰から視線を感じた。

 鋭い、だが懐かしい“何か”がこちらを見ている。


 キトが振り返る

 だが、そこには誰もいない。


「キトさん?」

「……いや。なんでもない」


 最後に残った気配。

 それは、確かに“神の血”を持つ者のものだった。


 遠く離れた別の場所。

 塔の上で、闇を纏う少年が空を見つめていた。


「兄上……。動き始めましたね」


 その瞳は、夜よりも冷たく。

 微笑みは、刃物よりも鋭かった。


「神鬼キト

 あなたの魂は、やがて“真の姿”に戻る。

 その時こそ、私たちの物語が始まるのです」


 風が吹く。

 黒い羽根が舞い落ちた。

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