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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第一章 左遷される英雄達
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正義の代償

「何⁉︎領地の主と交戦した挙句領主を交代させただぁ⁉︎」


仕事から帰ればいきなりランジーから怒鳴られた。永戸はむすっとした顔で対応する。


「あのままあの村を放置していれば、いずれは村が崩壊すると思い、自発的に行動しました。結果として村が救われたので良かったかと」

「良かったかどうかじゃない! 俺はお前らの身を案じて楽な仕事を選んだつもりだ! それがなんだ! 領主との決闘⁉︎ 正気の沙汰ではない!」

「この仕事に楽な仕事など存在しません。俺たちは常に、その土地の人たちの心に寄り添っていくのが仕事です」

「一丁前な事を言うんじゃねぇ! 正義の味方ぶったって命を無駄に使うんじゃねぇ! 万が一死んじまったらそこまでなんだぞ!」


ランジーは怒鳴りながら説く。彼らの戦いに対する向き合い方は異常だと。ランジーは彼らの中にある恐ろしいものを恐れた。こんな戦いを続けていたら、彼らは殺人鬼と化してしまうのではないかと。

だがそれでも、彼らは言った。


「たとえ命をかける事でしか人を救う事ができなくても。俺は、それで人を救い続けます。それでもし誰かが笑顔になってくれるなら」

「……馬鹿野郎、そんな笑顔は、偽りの笑顔にすぎやしねぇんだよ…」


永戸の言うその言葉に、ランジーは低く唸る。永戸の言う事は命知らずの言う言葉だ。自己犠牲による正義の執行に過ぎない。だがそんなことは、ランジーの心が許さなかった。


「待て! お前達の武器は! 俺が預かる!」


帰ろうとする永戸達に、ランジーがそう言う。それを聞いた永戸達はギョッとした。


「待ってください、武器を預かるって、それじゃあ俺達はどうやって戦えと言うのですか」

「もう戦うな! お前達は! ここで散らす命じゃない、未来を築いていく大事な楔だ!」


そうして永戸達の武器は回収され、武器は最低限のロングソードくらいしか支給されなくなった。


「これで一体どうやって戦えって言うんだ…」

「お前達は命を無駄にし過ぎる! この武器は、俺が2度と使われないよう預かるからな!」


武器を回収された永戸達は何も言えずにオフィスの外に出た。するとクレスがいう。


「ま、あんな無茶をすれば課長からどやされるよな。これに反省したら、明日からフツーに仕事しような」

「隊長殿の活躍はもう見れないのですか? フローは残念に思います…」

「でも…こうなるのも妥当だと…あれほど危険な事をしたのですから」


新兵の3人はそう言っては去ろうとする。だがそこで、永戸は言った。


「待った、帰るのは、後にしないか?」

「なんだよ、何か俺たちを呼び止める予定でもあるのか?」

「……歓迎会、まだしてなかっただろ?」


それを聞いた3人は、永戸をまじまじと見つめたのだった。


ーーー


「かんぱーい!」


その日の夜、6人は3番街の居酒屋で飲み会をする事になった。あいもかわらず永戸は頼んだ側のくせしてソフトドリンクだが、それを頼んだら新兵3人から意外そうに見られた。


「隊長殿はお酒は飲まれないのですか?」

「マスターは酒が苦手なのですよ、飲めなくはないだけで」

「意外です……隊長さんが子供舌だったなんて」

「酒の味に慣れないだけだよ」


永戸はそう言うとコーラを飲んではぷへぁーっと疲れを吐き出す。


「今日は永戸さんが大活躍した日でしたからね、労わってあげないと」

「ま、そのおかげで課長にどやされちまったけどな、どーするんだ? まさかそんなひょろい剣でこれからも戦うと言う気じゃないだろうな?」

「そうだとしたら?」

「うげ…そうだとしたらもう課長には止められないぞ」


クレスがドン引きする中、永戸達は出された料理を食べていく。そんな中で、楽しく会話をした。


「それで私は、故郷から飛び出したのです! 普通のエルフとしてこのまま暮らすのは嫌だと! そしてやってきたのが都市ミズガルズ! 特査四課に配属され、見事私は平和の戦士となったのです!」

「あはは、都市の外からやってきてよく四課に入れましたね」

「お前も元々は都市の外育ちだろ」

「なんと、神癒奈殿も都市の外育ちなのですか! 一体どのようなところで育ったのですか⁉︎」


それは……と神癒奈がうーんと話そうかと悩んでるところで、フィアネリスの茶々が入る。


「そういえば、3人の能力をお聞きしてませんでしたね、この際ですしお聞きしてもよろしいでしょうか? 見たところ、通常の身体強化以外にも能力を持ち合わせていそうですし」


あぁ、と言うと、まずはフローレアが立ち上がった。


「我が能力はエルフには珍しい仮想の能力! 私が願えばどんなものも揺るがし、戦局を変えてみせましょうぞ!」


仮想の能力、聞いたことがないなと永戸達は思う。調べてみるとよほど珍しい能力らしく、口にして願ったことが本当に起きてしまうらしい。万が一暴発したらどうするんだろうと永戸達は思った。


「心配すんな、こいつの能力はよほど強く願わないと発動しない」

「そうなのか?」

「はい! ですのでご安心を! 私の能力はここぞと言う時にしか扱えませぬので!」


それなら安心か、と次はメルトの能力を聞いた。


「私の能力は心を読み、操る能力です……最も、操る能力は使ったことないですが」

「何故…?」

「昔、それで友達からいじめられたんだとよ、俗に言う能力差別さ」


能力差別と聞いて、永戸は複雑な問題だな…と考える。だが、心を読むだけではフィアネリスの"下位互換"に過ぎない。彼女は、ある事情でそれを超える能力を持ち合わせていた。

最後にクレスに聞く。


「俺か? ふっふっふ、聞いて驚くなよ、俺の能力は、ない! だが、射撃の腕は誰にも劣らない自信はあるぜ」


射撃能力に長けてるのか、と永戸達は思う。確かに、バックアップは欲しいと彼らは思っていたところだ。彼がいれば後方は安心かもしれないと思った。


「それで、教えてくれよ、隊長達の能力を」

「俺は昼間神癒奈が説明してくれただろ、神癒奈は……」

「大変だ! 近くの家で火事だ!」


火事と聞いて永戸達はハッとなり外に出る。すると、一戸建ての家が燃えていた。その燃え方は非常に燃えていて、少し距離を置いている永戸達でさえ熱いと感じるほどだった。


「中にはまだ子供が取り残されてるんだ! 早く助けてくれ!」

「無理だ! この火の量はそう簡単に人が入れない!」

「そんなぁ! 俺たちの大切な息子なんだ! 誰か助けてくれ!」


この家の主人らしい人がそうは言うが、救助隊の人たちは中に入れずにいた。


「あーあー、ありゃもう中の人は助からねえぞ…」

「……いえ、助かります」

「は? あんなに燃えてるんだぞ⁉︎ 助かるわけが! あぁおい!」


クレスが止めようとする中、神癒奈はかけ出すと、火の中へ飛び込んでいった。


「正気の沙汰じゃない! あいつ! あの火の中に飛び込んで行きやがった!」

「……いや、あれでいい、神癒奈なら、あれで正解だ」

「なんだって?」


永戸がそう言ってはクレスを困惑させる中、暫くの間家は燃え続ける。流石に死んだかと新兵3人が思う中だった、なんと火の中から神癒奈が、揺らめく炎を掻き分けて出てきたのだ.その手には子供が抱き抱えられていた。

そして、その子供を地面に置くと、火傷の跡に手をなぞると、その火傷の跡がみるみるうちに治っていった。


「あぁ! 息子を助けてくれてありがとうございます!」

「いえいえ、これが私たちイストリアの役目ですから」


子供の親と会話を交わす中、永戸はクレス達に説明する。


「あいつは焔月と呼ばれる一族の出で、焔の能力の使い手なんだ、だからあんな火の中でも活動してられる。加えてあいつは、全能神なんだ。だから、どんな時でも頼りになるんだよ」

「全能神⁉︎ おいおいマジかよ! 能力者としては最強クラスの存在じゃねぇか」

「おおー! 神癒奈殿にそんな力があったとは! 私! 感動しました! 流石は英雄部隊の2人目!」


しばらくすると火は消し止められ、家族の安否が確認されるが、全員無事で、誰も死なずに済んだのだった。

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