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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第四章 大妖怪たちの宴
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鬼達の頭領

 南雲達を連れて都を案内する神癒奈。ゾロゾロと鬼を連れて歩く国の当主なものだから、目立って仕方ないが、それでも、都の人達は神癒奈を見ると手を振ってくれた。


「愛されてるんだね、この国の主君は」

「これも神癒奈さんの努力の成果です、時間があればああやって都に行き、そこに暮らす人々と交流を交わしてきましたから」


 フィアネリスがそう説明する中、神癒奈は都を案内しながらも都の人々と交流を交わす。


「御当主様じゃないかい、最近は他国との交流も増えててねぇ、土産物も大儲けさ」

「本当ですか? じゃあ私も、今の仕事を終えたら何か一品買ってこうかなぁ」

「はっはっは、御当主様ならタダでもくれてやるよ」


 ああやって国の人たちと仲良く接しているとなると、神癒奈は優しい王様なのだなと南雲は思う。ただ一つ気になるところもあった。


「ああ見えて、彼女は全能神なのだろう?」

「ええ、全能の力を持つ神です」

「ならこの国の掌握だって簡単なはずだ、何故このような回りくどい手段を取る」


 南雲は思った。全能神であるならば力による支配だって容易くできるだろうと。だが彼女はそれをせず、こんな緩やかで平和な暮らしを望んだ。それが何故か聞きたかった。


「……それが神癒奈さんの甘さ、いいえ、彼女なりの正義だからです」

「正義…」


 正義と聞いて南雲は黙る。確かにこのやり方は甘い、だが、それが彼女なりの正義だとしたら、きっと、貫くのにも理由があるのだろうと思った。

 そうしていると、神癒奈が戻ってくる。


「すみません、国の人と話してばかりで」

「いや、構わない、愛されてるんだな、君は」

「ええ、誰もが大切な国民ですから」


 神癒奈は誇らしげにそういうと、次の場所の説明に移った。南雲達はそれについていき、説明を聞いていく。だが、肯定的な意見ばかりではなかった。


「本当にこのお方が我々の暮らしを支えてくれるのか?」

「ただのお人好しの狐じゃないのか? 焔月の継承者と言っても所詮はただの狐だろう?」


 一部の鬼は、神癒奈について懐疑的だった。神癒奈はそれに気づかなかったが、フィアネリスはそれに気づき、一言物申す。


「あらそう、では貴方達はそんな狐に支えてもらえないと生きていけない元人間の鬼なんかに従う情けない角の生えた人なのですね」

「何を!」

「鬼族を愚弄して!」


 フィアネリスの一言に鬼達は憤慨する。対するフィアネリスは涼しげな表情で鬼達と向かい合うが、ここで、神癒奈からストップが入った。


「やめてください、貴方達ももうこの国の国民です。争い事は避けてください」

「…ちっ」


 言われるがまま、鬼達はフィアネリスとの喧嘩を止める。フィアネリスはほうっと息を吐くと、澄ました顔で神癒奈についていく。


「すまないな…身内が迷惑をかけて」

「いえ、仕方がありませんよ。信頼されてないのは、分かってますし」


 神癒奈だって鬼族全員に信頼されてるとは思っていなかった。むしろ、反対派の意見の方が多いと思っていたほどだ。だが、反対派がこうして少ないあたり、南雲という女性の影響力がいかにしてあるかがわかる。


「いかがでしょう、私の国は、魅力的ですか?」


 最後に、神癒奈は念を押すように聞いてみた。すると南雲は笑って答えた。


「あぁ、貴方の国は。国民全員が明るく。当主を信頼し、そして活気に溢れる良い国だと分かったよ」

「よかったです! これから、職の斡旋や住処の提供などを行いますので、またついてきてください!」


 そうして、時は流れ流れて行き、南雲達の移住の話も進んでいった。


 ーーー


 住処や職を提供し、その夜、鬼達と盃を交わすことになった神癒奈は、酒を飲みながら南雲達と宴会をした。


「ほう、これまた豪勢な食事だ、これほどのものをいただいていいの?」

「いいんです。折角の国の外からの客人ですから、出迎えなければ」


 酒の席には永戸とフローレアもいて、永戸はオレンジジュースを、フローレアは普通に酒を頂いていた。


「あちらの武人は? 見たところ人間のようだが?」

「私の大切な仲間です。とても信頼してるんですよ」


 神癒奈はニコッとわらうと、永戸のコップにオレンジジュースを注ぐ。


「悪いな、あれが今日来た酒呑童子の人らか?」

「はい、住処を求めているそうで、この国への移住を求めてきました」


 永戸はじっと南雲を見つめる。南雲も永戸を見つめ返すが、何かを感じ取ったのか、互いにシンパシーを感じていた。


「お前……そうか、国事については分からないが、ここは神癒奈の国だ、きっと、暮らしに馴染めるだろう」

「ありがとう、若き武人、見たところ貴方は、この国の当主と深い関わりがあるようだ、彼女について教えて欲しい」

「ああ、いいぞ」


 永戸は教えれる限りで神癒奈のいいところを一つ一つ教え始めた。一つ言うたびに神癒奈が顔を真っ赤にしたがだがそれをフィアネリスが笑っては、酒の席は進んだ。


「とまぁ、神癒奈はお人好しだけど優しい神様なんだ、それに狐の耳と尻尾があって可愛い、尻尾なんて触ってみろ、もふもふで触り心地がいいぞ」

「にゃ…にゃがとさんその辺で…」


 神癒奈も酔ってきたのか、恥ずかしさと酔いで顔を赤くしながら、永戸を止める。心なしか呂律も回らなくなってきていた。


「そうか、二人は、良い関係を築けているんだ、神と人という関係なのに」

「あぁ、俺と神癒奈は共に信頼しあってる」

「にゃがとさん!」


 恥ずかしさのあまり、神癒奈が止めに入るが、その時、今度は南雲が話を始めた。


「私も、鬼に拾われたんだ。人を喰らって生きる鬼に。けど不思議な事に、喰らわれずに済んだ」

「それって、酒呑童子の話…ですか?」


 神癒奈が問いかけると、南雲は首を縦に振った。


「そうだ、元の世界で病で死んで、気がついたらこんな世界に来て、そしたら運悪く酒呑童子とめぐりあわせてしまった」


 なんと、彼女は元は転生者だったようだ。その話に神癒奈は一瞬驚くも、話を聞き続ける。


「最初は死を確信した。死んで蘇ったのに、また死ぬのかと、けど死ななかった、酒呑童子は、私に温情を与えてくれた」

「温情?」


 神癒奈は再び問いかける。すると南雲は永戸と神癒奈を見て言った。


「君達二人のように、人と妖が調和を取れたんだよ。私は酒呑童子に拾われ、姉妹のように暮らし始めた。彼女は人を喰らわず、人と同じように暮らしをして、周囲の鬼から奇異がられながらも信頼を集めていた」


 人を喰らわない鬼、その暮らしをするだけでも大変だったろうに、神癒奈と永戸はその話を聞き続ける。


「私は、酒呑童子を自分の姉のように慕い、共に暮らした。酒呑童子も私のことを妹のように思い、鬼達も、こんな私を受け入れてくれた。」


 盃を揺らしながらも、南雲は思い出話をし続ける。


「だが、そんな暮らしも長くは続かなかった。鬼の暮らしに慣れすぎた酒呑童子は病に倒れ、死ぬ事となった。そして私に、鬼族としての稀血が与えられ、私は鬼になった」

「そんなことが…」


 神癒奈は思った。南雲は、かつての永戸にやはり似ていると。友から想いを受け継いだ永戸と、姉のような存在から想いを受け継いだ南雲、二人の存在は、とても似ているように感じた。


「それからというものの、鬼達は分派し、私についていく者、私を受け入れない者に別れ、そして私達は、故郷を追い出された。そうして流れる旅を続ける最中、この都の話を聞きつけ、こうしてやってきたってことだよ」

「…そうだったのですね」


 神癒奈は話を聞いて、南雲達がどうしてここに来たのかを納得した。同時に、そんな南雲の姿が儚そうに見えた。かつての永戸と同じように、死んだ酒呑童子の想いを背負おうとしているのだから。だから神癒奈は、南雲に一つ助言をした。


「酒呑童子さんの想いを継ぐのはいいことだと思います。でも、決して、それにとらわれないで」

「っ? ……わかった」


 南雲は神癒奈の発言を受け入れると、酒をぐいっと飲んだ。飲み干すと、酒を注ごうとする。するとその時、フィアネリスが現れ、神癒奈の耳元で囁いた。


「……っ? 鬼族がもう一族来ている?」

「はい、それも、武装した鬼達です。それがもう都の寸前まで」


 フィアネリスは映像を出す。すると、さまざまな鬼族が武器を持って都に進軍してきていた。


「これは一体……!」

「…っ! 分派が私たちを滅ぼす為に攻めてきた! 恐らくは…焔月に助けを求めた事が、彼らの逆鱗に触れた事だから」

「フィアネリスさん、戦えない都の人たちを防護壕へ逃がすよう役人達に伝えてください! 戦える兵士は武器を手に都の門前に集合!」


 神癒奈から指示を受けてフィアネリスは消えるが、同時に南雲は疑問に思った。


「これは私達の問題! 貴方方に助けてもらう必要なんてない!」

「ここにいる戦力だけであの大軍を本当に相手できると思っているんですか? 例え能力を持っていたとしても危険です。貴方達はもう私の庇護下にあります。だから、一緒に戦わせてください!」

「……わかった、でも、危険だから、無理はしないで」


 そう言うと南雲と神癒奈は立ち上がり、それぞれの兵士達を動かし始める、戦えない者は逃がし、都を守ろうと動き出す。


「まさか、休暇で来てみれば戦いに巻き込まれるとはな」

「はい! ですがこのフローレア! どのような敵でも臆しませぬ!」

「二人には遊撃を任せます。攻めてくる鬼達を一人でも多く迎撃してください!」

『任された!』


 永戸とフローレア、互いにサムズアップすると、神癒奈と南雲と共に防衛へと向かう。今この瞬間、月の国の都と鬼達の防衛陣地が組まれたのだった。

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