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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第三章 悪役令嬢と学園生活⁉︎
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狙われ続けるお嬢様

「ふんっ、助けてもらった礼はきっちり返すわ、何がご所望? 金? 権力?」

「そういうのはいらないですから、私たちはあくまで貴方を守りにきたので」

「お堅いのね、まぁ、報酬はどうせお父様や学園長辺りから払われるでしょう、せいぜい私を必死に守ることね」


 相変わらずの上から目線だが、信頼してるのか、先ほどまでの威圧的な態度はない。落ち着いた様子で話すと、神癒奈はクラスまでステラと一緒に歩く。

 クラスに戻るとごく普通の日々が広がっていた。それもそうだ、記憶処理で女子生徒全員の記憶を操作したのだから。

 だが、何やら気に食わない様子の者がいた。


「ちっ…」


 イーガスとその一味だった。彼らはステラがいることが不満なのか、舌打ちを漏らしながらステラに近づく。


「おやおや、転校生を連れてやってくるとは、ステラ嬢様も甘くなったもんだな」

「あら、ごめん遊ばせ、このお方は先ほど私が転びそうになったのを助けていただいたので、少し気を許しているだけですわ」

「お嬢様も転びそうになることがあるんだな、その高そうな学生服を汚さなかったか? べそかいて泣くんじゃねぇかってよ」

「ええ、偶然にも、このお方のおかげでね、涙も流さずに済んだわ」


 イーガスとステラの間で火花が散る中、神癒奈はあわあわしながら事の成り行きを見守る。


「ちっ…目障りなんだよ、このクラスに入ってから、何をするにもお前がトップに立つ、いつも下民扱いだ、どこにでも出てきてお嬢様ヅラしやがる!」

「あら? 貴方も地位を築いたんじゃないのですか? この猿山の大将に」

「ステラァ!」

「さんをつけなさいこのデコ助!」


 どこかで見たような流れをしながらイーガスはステラを殴るが、ステラはサッと横に避けることでかわした。

 その姿を見て、神癒奈はおおっと感嘆する。都市の議員の娘は伊達じゃないらしい、徒手空拳程度の攻撃ではものともしないのかと。

 イーガスが次に殴りかかろうとした瞬間、ステラはデコピンでイーガスの身を弾く。流石はこの学園のトップクラスの成績の学生、魔法に関しても卓越している。武器なし相手ならば余裕で戦えるらしい。


「貴方みたいなウジ虫にやられる程私は甘くなくってよ、魔法の基礎から出直して来なさい」

「くそ…! まだ終わっちゃいねぇ!」


 イーガスが立ち上がってステラを襲おうとするが、ここでチャイムが鳴る。授業の時間となり、彼は再び舌打ちをすると席に戻っていった。


(イーガスさん……怪しいですね、彼も刺客の一人の可能性を入れておきましょうか)


 神癒奈はそう思うと、椅子に座り、ステラの様子を見ながら授業を受け始めたのだった。


 ーーー


 フィアネリス、永戸、クレス組の方は先程捕まえた殺し屋を尋問していた。


「何をしようが話さないわよ、こう見えて痛覚遮断の施術は受けてるんだから」

「気絶はするのに痛みは感じないんだな…しかし困った、その場合だと、別の手段を取る必要がある」

「な、何をする気よ……」


 永戸が悪い笑みを浮かべると、フィアネリスがさらりととんでもない事を言い出す。


「この方の関係を洗い出しました、家族構成、知人、友人、あらゆる者の関係を導き出しました、どうなさるかはご自由に」


 フィアネリスが冷酷な笑みでそう言うと、殺し屋の少女はゾワっとする。


「待って! 家族には手を出さないで!」

「知ってる情報を話さないと…どうなるかなぁ」

「分かった! 話すから! 話すから家族に手を出すのだけは!」


 そうした少女から情報を聞き出す。その姿を見たクレスは「悪魔だ…」と戦慄した


「今回、私達が依頼を受けたのは都市の議員、ベリルからよ」

「ベリル…って誰だっけ」


 永戸が議員の名前のリストを一人一人見ていく中、フィアネリスがさらりと答える。


「議会では結構末端の議員ですね、しかし、そんな方がマクラーレン様を襲うのは少し変ですね」

「何故だ?」


 永戸の疑問に対し、意外な方向から答えが返ってきた。クレスが答えを返したのだ。


「下剋上を簡単に狙えるような議員じゃねぇのさ、ベリルは末席のいるだけな奴、対してマクラーレンは議会の有力政治家、レベルが違う」

「成る程……それなら尚更、何故マクラーレンは狙われてるんだ?」

「…ここからは俺の憶測になるけどいいか? 隊長さん」

「頼む」


 永戸が聞くと、クレスは自身の憶測を言い始めた。


「恐らくだけど、狙いはマクラーレン本人ではなくて、その娘、ステラの方だ、ステラが狙われればマクラーレンは政治で動けなくなるし、そうなれば末席のベリルにもいくつかチャンスが巡ってくる」

「いくつか?」

「一つは失墜による自分がのしあがる下剋上のチャンスだ、マクラーレン解任と同時に彼から支持を受けて少しでも上のキャリアを狙う事がまず一つ、もう一つは、穏便なパターンならステラを人質にしての裏金での身代金の要求。後は…そうだな、息子にとっての邪魔者が消える事だな」

「息子?」


 息子と聞き、永戸は疑問を浮かべる。すると、フィアネリスがこう答えた。


「ベリルの息子はこの学校に生徒として通っています。名前はイーガス、この学園に通っている不良の一人ですね」

「イーガス……どんな奴なんだ?」

「それが、こいつだ」


 永戸達に、クレスが監視カメラによる、神癒奈が転校生の自己紹介直後の映像を見せる。するとそこには、彼女が席に向かう際に、足をかけていた生徒が映った。


「いかにも不良ですと言わんばかりの顔をした生徒だな」

「あぁ、しかも学園内で一つの派閥を築いているらしい、こいつの邪魔する奴は痛い目にあってる、こいつも親が役員とは、また厄介な相手を抱えたな」


 他の映像を見てみれば、ステラに近寄って暴力を振るおうとする所もあった。だが、ステラの魔法で返り討ちにあってるあたり、実力はステラの方が上手のようだ。


「イーガス自身は恐らくはそう易々と手は出さないと思う、今回のは言わば作戦がうまくいかなかったことへの怒りで手を出してしまったんだろう。本来手を出すとしたら取り巻きの連中だ。そいつらが裏でベリルとコネクションを繋いで報酬を求めてステラを始末しようとしてる」

「しかし、息子を利用してまで、そこまでしてマクラーレンの邪魔をしたいだなんて、ベリルってどんな奴なんだ?」


 永戸はベリルが何者かについて深く考えるも、今はステラの護衛が大事だと永戸は襲撃者の女子に振り向く。


「おい、お前はベリルと繋がってるんだろ? だったら奴にこう言っておけ、『次ステラに手を出してみろ、死神がお前の首をとりにくるぞ』とな」

「は、はい!」


 そう言うと永戸は女子に凄みをきかせ、脅して彼女の拘束を解く、拘束を解くと、女子はひぃぃと泣きながら外へと出ていった。


「さて、昼休みの時間になる頃だ、ご飯でも食べるとしよう、フィーネ、今日の弁当はなんだっけ」

「はい、本日の弁当は唐揚げ弁当でございます」


 さらりと言っては二人分の弁当を虚空から出すフィアネリス。それを見たクレスはよく出来た従者だなと少し引いた。


「昼からのカリキュラムは座学だけだ、俺達は監視カメラの映像だけを見守るだけでいい、だけどフィーネはすぐに動けるようにしておいてくれ」

「かしこまりました」


 そんなわけで弁当を開け、二人はもぐもぐと休憩タイムに入る。クレスも肩の荷を下ろすと、弁当のコンビニおにぎりを食べ始めたのだった。


 ーーー


 昼休みの時間、ステラと弁当を食べることになった神癒奈は、仲間であるフローレアとメルトと共に屋上で弁当を食べる。


「す、すごい…屋上が庭園になってます」

「少しでも学園に華がなければ面白みがないでしょう? ここは園芸部と執事達が丁寧に作り上げた場所ですの」

「美しい花園! 素晴らしい! フローはこのような場所でお茶会する事を夢見ていました!」

「ちょっと……恥ずかしい…です」


 そうして四人は椅子に座り、テーブルを囲んで弁当をそれぞれ食べ始める。尚ステラは豪華な重箱での弁当となっていた。


「私の従者達がここまで作らなくていいと言うのに使ってくるんですの、よろしければお食べくださいませ」

「本当でありますか⁉︎ ではお言葉に甘えて…」

「本当にがっつくのはよくありませんよ……」


 フローレアがステラの弁当にがっつく姿を見て苦言を申すメルト、神癒奈はそんな光景を見て癒されていた。だが次の瞬間、彼女の背筋に悪寒が走る。


「あぶないっ!」


 植木の隙間から見えていた銃口と人を見て、危機を察知した神癒奈が、ステラを伏せさせる。すると銃撃が飛び、ステラのいたところを横切っていった。


「また襲撃者ですの⁉︎」

「っ! 『グリーンバインド!』」


 ステラが狼狽える中、メルトが魔法を唱えると、庭の植木から枝が生え、襲撃者を捕らえた。


「くそっ! なんて勘のいい奴らなんだ!」

「伊達に"死神"は名乗っていませんので、この人を永戸さん達に突き出してください!」


 そうして襲撃者はメルトの手で送られていくが、反対にステラは恐慌状態にあった。


「私は、いつくるかわからない襲撃者に怯えて暮らさなければなりませんの?」

「この事態は、私達特査四課が解決します、それまでは、どうか気を強く持ってください」

「気を強く持て⁉︎ 冗談じゃありませんわ! これが茶番ならとっとと終わらせて欲しいくらいですのに!」


 そんな事は分かってる、ステラの気苦労くらい、だが、現状分かってる情報が少ない以上、神癒奈達にできるのは、彼女を守ることだけだった。


「貴方の身は必ず私達が守ります、ですからどうか、どうか気を確かに」

「……わかったわ…どうせ貴方達に従わないと、私は死んでしまうのでしょう? 貴方達を信じるしかないじゃない」


 ステラは恐怖で震える体をなんとか保たせると、神癒奈の手をとって立ち上がった。それからと言うもの、食事を終えて午後の授業が始まったが、その日の襲撃は何もなく済んだ。

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