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ヒトとキツネの異世界黙示録Ⅱ  作者: 遊戯九尾
第三章 悪役令嬢と学園生活⁉︎
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学園生活開始

 学生服と執事服に身を包んだ永戸と神癒奈達、学校に潜入する準備は万端で、六人はそれぞれ担当を決めていた。


「執事組はステラ嬢から一定の距離を保ちつつ、気づかれないように護衛、学生組は、クラスメイトや友達を装いつつ、ステラ嬢に接近、そこで護衛を行う」

「校則はしっかり守る必要はない、富裕層の学園なだけあって、多少の校則違反は黙認されるからな」

「武器はいつでも取り出せるようにしておいてください、ただし、使えるのは小型のナイフや杖が限度です」


 永戸、クレス、フィアネリスから、神癒奈、フローレア、メルトに向けてそう指示が伝えられる。

 神癒奈達は本当に変装して入れるのか緊張していた。


「わ、私たち……本当にクラスに馴染めるかな…?」

「心配せずとも、フローの勇敢な姿にお任せあれ!」

「私は自分より二人の方が心配ですよ…どこかでポカをしないか」


 フローレアとメルトは潜入は初めてだが、神癒奈はこと潜入においてはプロフェッショナルな逸材だ、変装による偽装は、この四課において、彼女の右に出るものはいない。


「それじゃあ、皆さん、健闘を祈ります」


 ぐっと神癒奈達が拳を合わせると、それぞれのクラスへ向かった。フローレアはAのクラス、メルトはBのクラス、そして神癒奈が、護衛対象のステラ嬢のいるCのクラスだ。


 教室の中に入る前に、さっそく変装を行う。姿を少し幼くして、尻尾と耳を隠し、人の姿になる。そして、準備が整うとクラスの中に入った。


「見ない顔だな、転校生か?」

「なんて綺麗な金色の髪…」

「立ち振る舞いも優雅…良いところに住んでいるのかしらね?」


 そんなふうに言われながら神癒奈は教室を歩く、どうやらホームルームの最中だったようで、先生が「あぁ」と言っては生徒達に言った。


「彼女が今日転校してきた新しい生徒だ、名前は…」

「焔月 神癒奈です、どうぞよろしくお願いします」


 規律正しい礼を見せると、クラスの生徒達はおおっと驚いた。いくら名門校の生徒達であっても、神癒奈の姿は美しく思えたらしい。だが一部から舌打ちの音が聞こえた気がした。


「神癒奈君の席はあちらだ、皆、神癒奈君と仲良くしてくれたまえ」

「はい、先生」


 そうして優雅に神癒奈は教室を歩く、すると、生徒の席に近づいた時、誰かに足をかけられた。転びそうになるが慌てて体勢を整え、真っ直ぐ立つと、足をかけた生徒の方を見る。するとその生徒は、神癒奈を見ては周りの生徒と一緒にニヤニヤ笑っていた。


「せんせー、こいつ転びかけましたよ、こんなドジ踏みそうなやつが本当に魔導学園に必要な人材なんですかね」

「イーガス君、この学園において、優雅たれとはいうが、失敗の責任をこう事はない、たとえ仮に転んだとしても、彼女が再び立ち上がるのならば、我々は教鞭をとろう」


 するとイーガスと呼ばれたその生徒から、再び舌打ちの声が聞こえた。


(成る程…これは難解なミッションになりそうですね)


 クラスメイトのイジメにも耐えながら、ステラ嬢の護衛までせねばならないとなると、より隠密性が必要になると神癒奈は思った。対してステラ嬢がどこにいるのか、確認すると、最後列の中央にいた、神癒奈が最後列の一番端に座るから、守れなくはない距離感だろう。クラスメイトに見られながらも神癒奈は席に着くと、カバンから教科書を取り出した。

 簡単な予習用のノートは全て読んできた。魔導に関しては神癒奈は詳しくないが、それでも最低限の知識は備えてここにきた。問題はないだろう。

 ホームルームが終わると、さっそくクラスメイトから質問攻めをくらった。


「ミユナさんっていうのね、出身は?」

「都市の1番街ですよ、今は家族と豊かに暮らしてます」

「その金色の髪って地毛なの⁉︎ とっても綺麗!」

「地毛です。私の自慢の髪なんですよ」

「あの…一目惚れしました! よければ恋人になってください!」

「恋人になるには少々気が早いですが、友達ならいいですよ」


 クラスメイトからあれやこれやと言われる合間にもちらりとステラ嬢を見る。見たところ凛としていて落ち着いた性格のようだ、対して先ほど足をかけてきたイーガスと呼ばれた男子生徒の組はこちらを見ては恨めしそうにしている。

 神癒奈は持ち前のセンスで部屋の構造と近くの建物を調べた。


(部屋に入るには前と後ろの扉、それとその間に挟まれたガラス……ガラスは安全も兼ねて防弾性ですかね? 外から狙える場所は……ここは三階、それなりに高いですけど、ビル街が立ち並んでますからね、その気になれば、向かいのビルから狙撃もできるかもしれません、一応こっちも防弾っぽいですけど、防げるかは心配かも…)

「ミユナさん? どうかなされたのですか? そんな顔をして」

「ああいえ、ちょっとクラスに馴染めるか緊張していただけですよ、大丈夫です」


 そう言うと神癒奈は持ち出した教科書の中から一限目に使う教科書を選び取る。潜入は始まったばかりだ、気負いしても仕方ないと考えると、神癒奈は授業の準備をした。


 ーーー


 一方、こちらは永戸達事務員の班、学園内の清掃をしながらも危険がないかチェックを行う。


「フィーネ、爆薬の類などはないか?」

「今の所は見つかりませんね、ステラ嬢のいる三階はクリアです」


 三階の窓拭きをしながらもフィアネリスは神癒奈以上に周囲に気を配る。周囲のビルに狙撃手の気配はない、三階全体の走査をしてみたが爆薬の類はない、危険物を持ち込んでいる者がいないか三階から順に調べたが、今の所は生徒が持つハサミやカッター程度だ。

 いや、カッターやハサミでも魔力を込めれば立派な武器になるとフィアネリスは考えると、念入りに所持生徒の経歴を洗い出す。

 だがどの生徒も今の所はほとんどがシロだった。唯一警戒すべきはイーガスと呼ばれる神癒奈に足をかけた不良達くらいだろう。


「マスター、監視カメラの方は?」

「一つ一つ周りながら見てるよ、ちゃんと機材も持ち出してある」


 永戸の方は清掃しながらもよく見える位置にある監視カメラを一つずつ見ていた、今は授業中で生徒は勉強に夢中だ、監視カメラの動作をチェックしてても気づく者はいない。


「隊長さん、神癒奈ちゃんがさっそくトラブルにあったぞ、クラスメイトにいやーなお迎えをされた」

「神癒奈なら大丈夫だろう、最悪、いじめっ子を返り討ちにするはずだ」

「その場合目立ってしまうが大丈夫なのか?」

「こっちには記憶処理装置がある、それで話の辻褄を合わせれば何の問題もない」

「記憶処理装置って…これのことか」


 クレスは小さなカメラサイズの箱型の装置を取り出した。こんな物で記憶処理を施して今まで四課は事件の隠蔽をしてきたんだと考えると、クレスはゾッとする。


「なぁ本当に大丈夫なのか? 記憶処理なんかしちゃって」

「これから先、俺たちが仕事するにあたってその装置は必須になる。事実、この前の王国の事件だって、その記憶処理装置を使って住民や兵士の記憶を書き換えた。パニックの危険や陰謀の拡散の危険を避ける為にもその装置がいるんだ、慣れてくれ」

「慣れろって、よく言うよまったく…」


 クレスは廊下の掃除をしながら、神癒奈達を観察する。今は授業中で神癒奈はさらさらと授業の内容を書き留めていた。ステラ嬢は今の所無事だ。


「なぁ、万が一記憶処理をせねばならない事態ってどんな感じなんだ?」

「そうだな、男の子の憧れで言えば、学校にテロリストが乗り込んできて占拠する、なんて事態だ、こう言う依頼では割とあり得るから気をつけるようにな」

「テロリストって、警備が厳重なこの学校にそんなのがくるのか?」

「あり得なくはない、裏路地の有力者の組織ならこの学校の警備の突破なんて容易くできるだろうさ」


 聞きたくなかった情報を聞いてクレスは聞くんじゃなかったと後悔する。少しずつ仕事に慣れてきたとはいえクレス達はまだ裏路地を単独で歩けるほどではない新兵だ。そんな組織が襲いかかってくるとなると、クレス達でも対処はできるか怪しい。

 まぁそのための先輩方だが、それでもクレスは心配だった。


 ーーー


 授業も終わり、再び休み時間がやってくる。神癒奈はほうっと一息つくと、ステラ嬢の方へ再びちらりと目を向ける。授業中、自分が狙われてるはずなのに、凛々しい態度で授業を受けていた。狙われてるのを知らないのだろうか?

 そう思っていると、イーガスがやってきて神癒奈の前に立った。


「なぁ転校生、クラスの人気者になった気分はどうだ? 楽しいか?」

「……えぇまぁ、それなりには充実してますけど」


 周りのクラスメイトが恐れ慄く中、イーガスは机を叩き、神癒奈に罵声を浴びせる。


「生意気なんだよ、ここのクラスの1番が誰か教えてやる」


 そう言ってイーガスは机にあった神癒奈の筆記用具を魔術で燃やそうとする。神癒奈はすぐに解除ディスペルしようとしたが、ここで、思いもよらぬところから止められた。


「やめなさい、ここでは誰が1番か知らないつもりかしら?」


 何とステラ嬢直々に止められた。彼女は椅子から立ち上がると、尊大な態度でイーガスに口を出す。


「貴方達みたいな弱小家系が惨めに争うのもいいですけど、ここは都市随一の都立魔導学園、品位を下げるような行為はやめてもらえるかしら?」

「んだと⁉︎ この金持ちのボンボンが、調子に乗りやがって!」

「ほらすぐにカッとなる、惨め、あまりにも惨めね。大体そこにいる子だって、1番街から来たと言うけど一般家庭のどこにでもいる子じゃない、そんな子がこの学園の門を叩くだなんて、この学園の経歴に泥を塗るつもり?」

「そんなつもりは…!」


 それには神癒奈も反論しようとした、だがそうしようとした途端、外にいたクレスから軽いジェスチャーでこう伝えられる。「耐えろ」と。


「…あら? 言い返す度胸もないの? 全く、この学園の生徒はどいつもこいつも頭が弱いわね、私らしく優雅なのはいないのかしらね?」


 そう言うとステラは教室の外へと出ていった、次の授業は体育だったはずだと思うと、神癒奈は教科書をまとめ、慌てて教室から飛び出していく。


「チッ…」


 イーガスは反論する暇も与えられることなく二人が出ていったのを見て、不機嫌になると、神癒奈の座っていた椅子を蹴飛ばした。その一連の流れを見たクレスは思う。


(これは面倒なミッションになりそうだぞ…)


 波乱の学園生活が幕を開けたのを彼は知ることとなったのだった。

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