アオハルは唐突に
【ターゲットは3番街裏路地を逃走中、神癒奈、追いかけられるか?】
「お任せください!」
【フロー、お前は裏から回ってターゲットを囲い込め】
「了解であります!」
四課の仕事がようやく回るようになり、永戸達は凶悪犯罪者の逮捕や世界の救済など、難しい依頼にも手が出せるようになった。
【クレス、そこから狙撃できるか?】
「あぁ、よく狙えるぜ、よくフィーネは絶好の狙撃ポイントを指定してくれたな」
【よし、なら牽制でいい、狙撃して相手の足を止めてくれ】
「了解だ、隊長さん」
今回の依頼は連続強盗犯の確保だった。相手の手口は厄介なことに、家にいる人を全員殺しては金品を奪い去ると言う悪辣な手口だった。
クレスはライフルの狙撃で強盗犯の足元を撃ち抜き、足を止めさせることに成功する。
「っ! 狙撃か!」
「逃がしません!」
「もう逃げられませんぞ!」
「ちくしょう! イストリアにバレるなんて! こうなったら…やってやる!」
強盗犯が神癒奈に向かってナイフを振るうが、それを神癒奈はひらりとかわすと強盗犯を背負い投げし、倒した。
「強盗犯を確保しました!」
【よし、手錠をつけて警察署に送ってやれ。ミッションコンプリートだ、皆お疲れ様】
フィアネリスとメルトに強盗犯と神癒奈達のモニターを頼んでいた永戸は、任務をやり終えたことにほっとする。
「少しお疲れではないですか? お茶をお待ちいたしましょうか?」
「いや、いいよ、茶を飲むのは課長に報告してからだ」
そうして永戸達は任務を終えて第二支部のオフィスへと戻ってくる。
「課長、凶悪強盗犯の逮捕、終わらせてきました」
「あい、お疲れさん、日に日に仕事に慣れていってないか? えーゆーさん達よ?」
「むしろ、ブランクが取れてる感じがして肩慣らしにはちょうどいい感じですよ」
「ははっ、よく言うな。ここまでピンチも何もなくやる辺り、えーゆーさん達の実力がわかるよ」
そうランジーは皮肉気味に言いながらも酒を飲む。永戸は任務の達成の書類を書くと、ランジーに渡してふぅっと落ち着く。フィアネリスが隊員全員分のお茶を入れてきたところで。ランジーは次の依頼の話に移った。
「お前達に次の依頼が来た。場所は都市の都立魔道学園からだ」
「魔導学園? それも都立の、なぜまたそんなところが依頼を?」
「分からない、唐突に来た依頼なものだからどう関係するか分からないんだ」
依頼内容もわからない、都立の学園からの依頼、永戸達はどんな依頼が来るか怪しいといぶかしむ。
しかし、立ち止まっていては分からないので、ひとまず受けることにした。
ーーー
それから数日後、学園に呼ばれた永戸達は、六人で違和感がないようにそれぞれ整った格好をして都立魔導学園の前に立つ。
「凄いところですね…ここ」
「3番街に仕事に来てまだ一ヶ月程度なのに1番街の仕事に逆戻りなんてな」
「そもそもこの魔導学園って、いったいなんなんですか?」
「この都市一番の魔導技術が学べる学園だよ。科学、魔法、そして魔導、それら全てを学ぶことができる学園なんだよ」
そう説明すると、永戸は学園内に入る。学園内は1番街の富裕層の生徒達が行き交っていた。そんな中を歩いていき、今回の依頼を頼んできた者…学園長の部屋の前に立つ。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか、見ていくとするか」
永戸は学園長室のドアを叩く。すると、入れとの声が聞こえてきたので永戸達は入った。そこでは、白髪の老人が椅子に座っていた。
「よく来てくれた、ミズガルズ第二支部特査四課の諸君。まずは、唐突に依頼をしたことに関して詫びを入れよう」
学園長が指を一振りすると近くにあった物質が変化して椅子が一通り用意される。それを見たフローレアはおおっと目を光らせるが、永戸達は落ち着いた様子で椅子に座り、学園長の話を聞く。
「実は、君たちに願いしたいのは、都市の議会の役員の娘がこの学校にいるのだが、その娘が狙われていてね…これを見てくれんかの」
そうして一枚の紙が渡され、永戸達はそれを見るそれにはこう書かれていた。
《我々は都市の議会員、マクラーレン・アードラの存在を認めない、マクラーレンが解任しない場合、その娘、ステラ・アードラを殺す》
「マクラーレン・アードラ……って一体誰の事でありますか?」
「マクラーレン・アードラと言えば、最近再編された議会の中でも発言力のある人だな。都市の改革を本気で望んでいる、どこに出してもシロな優良役員だ」
「黒い噂も一切流れてない本物の政治家、それを快く思わないとなると……犯人は裏社会の闇組織、でしょうか」
フローレアの質問に永戸とフィアネリスは丁寧に答える。その通りと学園長は言うと依頼内容の説明に入った。
「君達への依頼は、マクラーレンからの依頼だ。学園に通うステラ・アードラの護衛を頼みたい、学園外なら自前の護衛がつくのだが、学園内までは守り抜く事はできない、そこで、君たちに白羽の矢が立ったわけだよ」
「つまり、学園内でのステラ嬢の護衛をしろと?」
「そういうことだ、やってもらえるかのう?」
「かまいませんが、俺達は学生にするにはとても無理があるとおもいますよ?」
永戸がそう言うと学園長は再び指を一振りし、永戸達に服装をそれぞれ渡していく。永戸、フィアネリス、クレスは執事服とメイド服だったが、神癒奈、フローレア、メルトには学生服が渡された。
「これは……? 何故俺達は執事服で彼女達は学生服なのですか?」
「見た目の年齢の高い者は学生服は似合わなかろう、先生をやるにしてもこの一流の学園では力不足のはずじゃ、よって、見た目の年齢の高い者は事務員の服装を、若そうな者は学生服を着て学園生活をおくる生徒の一人として潜入をしてほしい」
「しかし、事務員ならともかく学生の経験のない者だっていますよ?」
「問題ない、この時期は新学期、勉強にも入り込みやすいはずじゃ、それに、学生組には事前に予習用のノートを渡しておく」
それなら問題ないのかと永戸達は思うが、クラスに馴染めるか、そもそもステラ嬢にバレずに護衛をできるか心配になった。神狐、口うるさい奴、コミュ障と怪しい要素満載のメンバーなのだ、こんなのがいっぺんに入ってくると流石のステラ嬢も怪しむだろう。
「クラスは一人一人分けておく、ステラ嬢は三年のC組だ。丁度君たちの肉体年齢とも一致するじゃろう」
「とは言えなぁ……どうする?」
「私、頑張ってみます! 学園生活…? がなんなのかわかりませんが、やれる限りのことはやってみます!」
「お前が一番学園生活とは無縁な存在なんだよ、だから心配なんだ」
神癒奈は千年間自身の一族で箱入り娘をしていた存在、学校という存在について知らない。
他の二人も心配だ、フローレアは余計なことを口走らないか心配だし、メルトは学園生活において人見知りなところが出て護衛もへったくれもなくなるかもしれないだろう。
「だが、これは、都市の議会の有力な役員からの依頼だ。拒否権はないと思った方がいいじゃろう。当然、難易度に見合った報酬は出す。やってくれるかね?」
学園長がそういうと、永戸は神癒奈を見た。神癒奈は自分を信じてと言わんばかりに頷いている。こうされてしまっては、拒否権はないだろう。
「わかりました、依頼は受けましょう。ただし、やるからには徹底的に生徒に化けられるようにします」
「あぁ、よろしく頼むぞ」
そうして永戸達の騒がしい学園潜入生活が始まった。




