期待の新入学
そうして喜怒哀楽を極力抑え込む生活を少し続けたところで、念願の小学校入学となった。学校に行っている間は緊張しなくて済むし、友達と遊ぶことで気をまぎらわせることもできるだろう。
笑顔で過ごすことだってできるに違いないと思い、友達百人できるかなの歌のとおりに待ち焦がれていた小学校にようやく通えることになりました。
けれども。
テンプレ化してるのか?というほどわたしの信じたものは裏切られた。
友達百人?なにそれおいしいの?
もともと幼稚園中退というデビューを果たしていたわたしには集団生活というものがわかっていなかったということだろうか。
幼稚園にも行っていない。引き取られて別の土地に移ったので知り合いもいない。
いわゆる新参者。
子供の社会というものは異物に対して敏感になる。
物珍しさと好奇心でコンタクトを取って新しい友達に加えようとしてくれる優しい人ももちろんいたが、その子供社会の中でヒエラルキートップに君臨する、いわゆるガキ大将といわれる人物、葉山にとっては異物=排除する対象となってしまったらしい。
当然のように始まった新参者に対するイジメという名の洗礼。
当時のわたしは、聞き分けのいい子だった反面、妙に冷めたところもあり、いわゆる子供らしくない子供だったので余計に彼らの癇に障っていたのだろうか。
最初は物を隠したり、持ち物に落書きをしたり、わたしから取り上げたものを投げ合って喜ぶようないわゆる子供らしいいじめで済んでいた。
しかし、ガキンチョだなぁという感想しか持てなかったわたしは大して取り乱すこともなく、粛々と対応していたのでそこからエスカレートしていくのにそんなに時間はかからなかった。
間接的ないじめに対しては客観視することで冷静に対応できていたわたしも、直接的な暴力に対しては客観視することもできず、子供のように泣いてしまった。子供だったんだけどね。
小学生というものは男子と女子がグループ分けされていく年代でもあり、成長の早い女子というものは男子に対して強気にでていくことも多く、わたしも同性である女子からかばってもらったり、慰めてもらったりしていたのはありがたかった。
でも、葉山は少したちが悪かったようで、わたしをかばう女子に対しても同じように暴力を振るうようになってしまい、申し訳ないと思ってしまうようになったわたしは彼女らに対して自分の方から距離をとるようになってしまった。人に甘えるということがわからなかったんだろうね。
迷惑をかけてはいけない。わたしが耐えればそれでいい。しょせん学校という閉じられた狭い空間の中だけのこと。そう考えて耐える日々は数か月続いたと思う。