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忘れ物  作者: あるて
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闖入者

信ずるものは救われる。誰が言ったかは知らないけれど、本当に信じるだけで救われることがあるならいくらでも信じよう。

 でもたとえどればけ強く信じたところで実際には裏切られることも多い。しかも深く信じれば信じるほど、裏切られた時のショックも傷も深くなるという正比例の関係でもある。


 これで三人で暮らせると思っていた。父もいないので両親の喧嘩も見ることなく、平和な日常が初めて訪れるものだと信じて疑っていなかった。

 だがしかし。

「詩織、実はあなたには新しいおとうさんがいるのよ。」


 は?

 新しいお父さん?

 ニューお父さん?

 お父さんって複数存在するもの?

 一瞬意味がわからなかったけど、小賢しい知識だけは豊富につけていたわたしはすぐに理解した。あぁ、再婚したんだね。

 実際には子供の名字がコロコロ変わるのは可哀そうだということで籍は入れずに内縁の妻というやつだったらしいが、ようはこれからはその人に扶養されるという意味らしい。

 でも頭で理解するのと心で納得するのはまた別物であって、その時のわたしは意味こそわかったものの実感としては何も湧かず、どこか他人事のように考えていた。

 優しい人だったらいいな。おかあさんに暴力をふるわない人がいいな。


 そして初めての対面の日。どう見てもおかあさんよりけっこうな年上。しかも半袖のシャツからはみ出た二の腕には立派な落書き。そう、いわゆる反社の人ってやつだね。

 そして対面してはじめてかけられた言葉。

 

「小さいガキは好きじゃない。あんまりうるさくすんじゃねえぞ。おとなしくしとけ。」

 

 硬直。

 うっとおしいという気持ちをこれ以上ないくらい子供にもわかりやすく丁寧に説明していただきました。

 

「詩織、今日からはこの人をおとうさんって呼ぶのよ。」

「!?」


  今のやりとり聞いていたよね?はっきりとわたしが拒絶されたのを見ていたよね?


「詩織、わかった?」

「・・・・・はい。」


 諦観と失望の入り混じった返事。

 それでも一度たりとも「おとうさん」と呼んだことはなく、ずっと「とうちゃん」と呼び続けていたのは精いっぱいの反抗だったのか、はじめて訪れた反抗期というものだったのかはわからない。

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