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忘れ物  作者: あるて
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母の声

 ただ、そんな昼食戦争(?)を繰り広げている間もいろんなことがあった。


 最初に疑問に思ったのは、当時のわたしは年齢の割にしっかりしていて、来客や配達物の受け取りなんかはちゃんと対応できていたのに、決して電話対応だけはさせてもらえなかったこと。

 昼間は基本的に電話が鳴ることがなかったけれど、夜ご飯を食べている時などに時折家の電話がなることがあったけど、わたしが出ようとするとなぜか止められた。それでも出ようとすると怒られることも。

 幼児でも気づきますよ。なんかおかしいって。

 で、原因を考えてみると答えは一つしかなくて、だいたいいつも同じような時間、父の仕事が終わって帰宅してご飯を食べている時を見計らったかのようにかけてくる電話の相手。それが母だということを確信するまでにそんなに時間はかからなかったと思う。

 そのことに気が付いたらやることは一つ。実力行使あるのみ。

 ご飯どきに行儀が悪いとは思ったけど、どうしても我慢できなくなってトイレに立ったふりをして電話の前でスタンバイ。

 チリンと電話が鳴った瞬間に、どこぞの裏稼業の人ですかといいたくなるような素早さで電話に出る!

「もしもし?」

「!?・・・・・」

 電話の相手は驚いたのか、しばらく声も出せないようだった。

「・・・おかあさん?」

「詩織・・・・・」

 電話の向こうで泣きながら私を呼ぶ懐かしい声。

「おかあさん!!」

 そこから先は何を話したかも覚えていない。ひたすら泣きながら会話にならない言葉を発していただけだと思う。

 久々に聞く母の声をずっと聴いていたくて。

 わたしの名前を呼んでほしくて。

 ただ泣きながら。


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