第五話 『離別』
第五話です。
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「うーん?」
なんだか、身体が軽い気がする。ほとんど寝ずの番をしたわりに驚くほど疲労を感じない。なんなら昨日より体調いい気がする。
俺が特に何事もなく見張りを終え、一息ついたところでそんな感想を抱きつつ肩を軽く回していると、、、早速問題が発生した。
「ちょっと!!あんたの仕業でしょ!!!」
なんか盛島がものすごい剣幕で俺に詰め寄ってきたのだ。広瀬もこちらを睨みつけ、、、いや、睨むと言うよりゴミを見るような目で、仁千佳は感情を当てはめるなら困惑、、が一番適切な表現だろうか?とにかく、複雑でなんとも言えない表情で2人に並びこちらを見ていた。
「ちょっと! 喧嘩はダメだと言ったでしょう?」
騒ぎを聞きつけた先生が慌てて間に入るが今度は盛島は先生の言葉でも止まらず押し退けて言葉を叩きつけてくる。
「私の下着返しなさいよこの変態!!!」
「、、、おおぅ」
どうやら、下着がなくなったらしい。盛島の言葉に先生は言葉を失って信じられないと言った表情でこちらを見てくる。
、、、おーい、先生?なんですか?その顔は。昨日の会話もあって先生にはこの島に来てからそれなりに信頼されてると思ってたんだけど、、この反応かぁ、、、泣けてくらぁ。
俺がどこか他人事のような感想を抱いていると盛島が無言な事に腹を立てたのか掴みかかってきた。
「なんとか言いなさいよ!!!この、、、ッ!!?」
そのまま平手を振るおうとした盛島が俺の顔を見て硬直する。
、、、?なんだ?人の顔見て。今、俺は無表情でそんな固まられる様な顔してないと思うんだがどうしたのだろうか?
俺が疑問を浮かべていると再び先生が間に入ってきた。
「やめなさい!!!渋谷くんもどうして否定しないの!?そんな事、、、してないわよね?」
先生が不安そうな顔をしてそう問いかけてきた。信じたくないが、信じきれないと言った様子だ。
、、、この人、昨日俺の事を頼りにしてるとか言ってたよな?
怒りが込み上げてくるが必死に押し殺して冷静になれと自分に言い聞かせる。そうだ、元々先生とちゃんと話したのだって昨日が初めてなんだ。たったの1日で得られる信頼なんてあってないようなものだ。その状況で疑ってしまうのは仕方ない。うん。
さて状況を整理、、、するまでもねぇな。盛島が朝っぱらから鬱陶しい大声で喚き散らしている内容から、どうやらコイツの下着が無くなったらしい。当然、俺はやっていない。
「、、、俺は盗んでない」
半ばどんな反応が帰ってくるかわかりつつも俺がそう答えると案の定、盛島は即座に否定する。
「嘘!!!あんた以外に誰がいるのよ!」
、、、確かに、男は俺だけだ。真っ先に疑いの矛先が向くのも理解できないではない。理解できないではないが、こうも完全に決めつけてかかってこられると流石に我慢ならないぞ。そもそも何か証拠でも見つかったのだろうか?
「、、、一応聞くけど、何か証拠があって言ってる?」
浮かんだ疑問をそのまま投げてみる。
「だからあんた以外に誰がいるのって言ってるでしょ?ちょっと荷物見せなさいよ!!!」
盛島はそう言うと俺の返答も待たずに俺の荷物を乱暴に引っ掴むと中身を地面にぶちまけた。
、、、当然出てこない。一瞬、″誰かが俺を貶める為に仕込んだ、もしくは盛島の自演でカバンから下着が出てくる″という可能性が浮かんだ。昨日までのコイツらの俺に対する態度を見ていれば充分にあり得る可能性なので嫌な予感がしたが、、、どうやらそう言うわけでもないらしい。結果、出てきたのは俺の下着だけだった。
「、、、ないみたいだけど?というかさ、疑う気持ちもわからなくはないけどさ、男が俺だけしかいない状況でさすがに下着なんて盗むはずないだろ?確実に疑われることなんてわかりきってるんだし」
無駄だろうと思いつつ俺がそう問いかけると盛島は怒りに表情を歪めてこう言ってきた。
「どこに隠したのよ!!返して!!!」
ですよねー。
、、、まだ、″疑い″なら許せた。先程も言った通り男は俺だけ、理不尽に怒りはするがまぁ矛先が向くのは理解できる。けど、コイツは証拠もないのに完全に″断定″して糾弾してきている。俺の話を聞くそぶりも見せない。もはや誤解を解きたいとも、その価値があるとすらも感じない。
それは隣で睨んでいる広瀬も、よくわからねえツラしてる仁千佳も、疑う、と言うよりは信じたくないといった様子で結局何も言わない先生も同様だ。
別に恩を売るつもりは無いし事実、大した事はしていない。それでも、この島に来てからみんなで生き残る為に色々と考え、気を遣って来た。その上、一晩寝ずに見張りをしていた人に対する仕打ちがこれだ。
本来なら、言葉を尽くして誤解を解くべきなんだろう。でも、なんかもうどうでもよくなってきた。
頭が急激に冷えていくのを感じる。怒りが限界を超えるとかえって冷静になる、、、なんて聞いたことがあるがどうやら本当らしい。
冷静になった頭で俺は目の前の連中を見限っていた。この状況で、コイツらといるのは危険だ。ならばさっさと出て行って別行動をとろう、、と決めて、これからどう動こうかと考えていると盛島がまさに俺が望む言葉を放ってくる。
「正直に謝って返すつもりがないなら出て行ってよ!!」
先生辺りが反対してくるだろうからどうしたものかと考えていたが、ありがたい事に向こうから切り出してくれた。
「そんな、、こんな危険な動物が生息しているかもしれない場所で1人になるなんて絶対ダメよ!!!」
案の定、先生が反対の声を上げるが盛島が即座に言い返す。
「だったら私達が出ていく!!こんな変態と一緒なんて絶対に嫌!!!」
いいね。どんどん話が理想的な方へ進んでいく。
「条件が2つ、それを呑んでくれるなら大人しく出ていくよ」
俺は内心ほくそ笑みながらも先生が何かいい出す前にこの馬鹿げた会話にさっさとトドメを刺すべく条件付きで出ていく事を承諾した。
「渋谷くん!!!」
先生が必死な表情で叫ぶが盛島はそんな先生を無視してゴミを見るような目で聞いてくる。
「は?自分が条件なんてつけれる立場だと思ってるわけ?」
「証拠は?」
俺が食い気味に問いかけると一瞬面食らった表情をした盛島だったがすぐに怒りの表情に戻り言葉を続ける。
「だからあんた以外に、、、」
「いや、そう言うのいいから。フワッとしたのじゃなくて俺が盗んだって言う明確な証拠、ある?」
俺がそう問いかけると盛島は何か言おうとしたが、ここでやっただのやってないだの不毛な言い争いをするつもりはないので何も言わせないように人差し指を立て条件を提示する。
「証拠が出せないのなら、聞いてもらう。一つ、救助が来た場合お互いにもう片方の存在を伝える事」
「お前らが先に救助されて、俺だけ取り残されても困るしその逆の場合お前らも困るだろ?それに何より、助かった後で見捨てた事がバレたら普通に犯罪だしな」と付け加えると怒りの表情は変わらずだが特に反論は返ってこなかった。
「二つ、今から少しだけ俺の話を書いてもらう事。、、本来なら、不安にさせたくなかったからまだ話すつもりはなかったけど、これはお前らも知っておくべき重要な話だ。ついでにいくつか確認したい事もある」
やはり反論は返ってこないのでさらに言葉を続ける。
「俺の要求はこの2点だけだ。証拠もないのにどんな動物が生息してるかもわからない得体の知れない島に放り出されんのを大人しく受け入れるつってんだ。このくらいは要求してもいいだろ?」
そう締めくくると盛島は不満がな顔をしつつも「重要な話って何よ」と聞いてきた。どうやら怒りより興味が上回ったらしい。そのまま話してもよかったのだが、わざわざもったいつけて「条件」として提示したのが功を奏したのかも知れない。
まぁ聞く気になってくれたんなら何よりだ。さっさと気になってる件を確認して適当に注意喚起でもしてさっさと出て行くことにしよう。
そこまで考えて、俺は口を開き始めたのだった。
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