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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
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第五十一話   『凶弾』

お待たせしました。第五十一話です。

 


「永島、、、さん?」



 ニチカ達と合流する為動き出そうとした直後、電撃を受けた俺は視線を巡らせ、永島さんの姿を発見して困惑の声を漏らした。流石に距離があり過ぎて身体の細かな状況までは確認できないが、全身から雷を迸らせ、その足元は今にも倒れそうな程フラフラと覚束ない。



 何故、、彼女が、、、()()()()がここに?



 まさか、、、



「、、、ッ!」



 ニチカ達がいない事に嫌な予感を覚えた俺は、永島さんが前のめりに倒れ込むのを目にして即座に思考を中断して″転移″を行った。



「っと、、永島さん?大丈夫ですか?永島さん?」



 間一髪、顔から地面に突っ込む前に身体を滑り込ませ、腹の辺りで永島さんを受け止める事に成功した俺はそのまま軽く揺さぶって声をかけるが反応がない。そして、既に治り始めているがその身体は全身、特に手足に″光る木″による回復反応の光が発生しており、未だに小さくパリッパリッと雷が迸っていてそのたびに身体がビクッと動いている。



 大丈夫、息はある。緋月の残した″光る木″も健在だ。アレの光に当たった瞬間、怪我の類は治癒が始まっていたはず。であれば、、意識を失ったのはおそらくは疲労が原因か。



 ここまで戻ってくるにしては速すぎるし、身体の状況的にもおそらくは自身の身体に雷魔法を流して無理矢理速度を上げてここまで来たのだろう。そして、疲労で力尽きる前に上空にいる俺に自身の存在を知らせる為に電撃を放った、、か。

 無茶な事を、、、いや、それだけしなきゃならない″何か″が向こうで起きてるのか。



「、、チッ!嫌な予感が当たったみてえだな」



 後ろから後を追ってきた牧瀬さんがズドン!!という着地音を響き渡らせながら声をかけてかけてきた。



「、、そうらしいっすね。長島さんのこと頼めますか?俺はすぐ動きます」



「わかった。とりあえず安全な場所に運んでから叩き起こして情報を吐かせてやるから″ソレ″耳につけておけよ」



 牧瀬さんはそう言いながら永島さんをヒョイっと抱えるとその場から掻き消える様に姿を消した。



「、、、、、、、、、」



 とても俺達に危機を伝える為に無茶をしてここまで戻ってきた味方に対する言い草ではないが、、まぁ今の状況的にはありがたいことだ。この後永島さんに襲いかかるであろう理不尽には同情を禁じ得ないが、そのおかげで得られる情報に期待しつつ今はとにかく行動しよう。



 そう思い俺が足を踏み出そうとしたその瞬間。



「お前にこの場を離れられては困るな」



 突如背後から聞こえてきたその言葉と共に、乾いた破裂音が周囲に響き渡った。



 そして、腹部に衝撃を感じてゆるゆると視線を下に向けると、腹部からじんわりと血が滲み出しているのが確認できた。



「、、、、ッ!ォエ゛!!」



 それを自覚した途端、猛烈な痛みを感じて思わず膝を突いた。胃から何かが込み上げ嘔吐感に任せてそのまま吐き出すとバシャっと血溜まりが地面に生成される。そして足に、、全身に力が入らず脂汗が滝の様に吹き出してきた。



 痛い。熱い。痛い。熱い。痛い熱い痛い熱い。



 この世界に来て、、いや、人生の中で感じた中で間違いなく一番の激痛に頭の中がその二言で埋め尽くされ、猛烈な眩暈と共に視界が暗くなり始める。



 ーーまずい、、意識が。



「、、、ッ!!」



 このままでは意識を失うと悟った俺は唇をガリッと噛んでその痛みでなんとか意識を保つ。



 大丈夫だ、、落ち着け。怪我は″木″の力でじきに治る。痛みも、、徐々に慣れてきた。いや、、もちろん現在進行形で物凄く痛くはあるのだが、、、まぁ死ぬ気で気合いを入れれば動けなくはない。そんな事よりも、、だ。



 腹部を貫かれる直前。ほとんど同時に聞こえた″音″。



 それの正体に心当たりのあった俺は頭で″ありえない″と否定しつつギリギリと歯を食いしばり、膝に力を入れて立ち上がった。そして再び腹部に走る激痛を気合いで無視して顔を上げるとその視界に″ありえないもの″が映り込んだ。



 ーーバカな、、ありえない。



 顔を上げた視線の先、そこには褐色の肌に紅い瞳、銀の短髪、額からは一本の角を生やし軍服の様な衣装を身につけた男が立っていた。



 魔族だ。だがそんな事はどうでもいい。そもそもこの襲撃自体が魔族によるものだったし、襲撃の折に数人確認されていたという情報も事前に耳にしていた。だからこれは今までどこぞにコソコソ隠れていやがった奴が姿を現したというだけの話だ。



 問題はその手に握られているものだ。



 全体的に黒く、角張ったブーメランの様な形状をしているソレはどこからどう見ても、、″銃″だ。



 ーーありえない。



 この世界には存在していなかった筈だ。

 いや、正確には生み出された過去はあるが発展を遂げる事なく歴史に埋もれた、、、その筈だ。



 魔族が独自に開発していた?でもそれなら、、あんなもん真っ先に牧瀬さんへの報告にあげられる筈だ。つまりはこの襲撃が起きてから今の今まで使ってなかったという事になる。それは何故だ?



「、、、、、、、、、」



 、、ここぞというタイミングで確実に刺すために温存していた?でも、、それなら何故、手を出してこない?

 これが狙いだとするなら結果は見事に成功だ。俺は腹部を撃ち抜かれ()()()()()()。しかしもう傷も動いて問題なさそうなくらいには癒えてきている。だというのに男は追撃する気配すら見せずに手に持った銃を興味深げに観察している。



 どういう、、事だ?狙いはなんだ?



「、、、あの娘からコレの事を聞いた時はいささか半信半疑ではあったが、、なかなか面白い武器ではないか。急拵えにしては性能も悪くない。、、聞くところによれば、貴様の世界ではこのオモチャで人同士が殺し合いを演じているらしいな?、、なぁ?勇者よ」



「な、、に、、?」



 いきなり語りかけてきた魔族の言葉にただ呆然と聞き返す。



 なんだ?その言い方は。その、珍しい物を観察する様な仕草はなんだ?まるで、、銃の存在を知ってまもない様な振る舞いではないか。



 それに、、奴は今()()()()()()()()と言った。



 女性であり、俺の元いた世界の事を知っていて、俺の知る″現代の銃火器″についての知識がある。



 俺の知りうる限り、この世界でその条件に該当するのはただ一人、ニチカだけだ。一応島にいたメンバーと後は永島さんも知ってはいるが雑談の中でチラッと話しただけで″物凄く早く魔法を使わない遠距離攻撃″程度の物凄く雑な説明しかしていない。

 ニチカには他の連中より少しだけ踏み込んだ説明をしたが、、そもそもあいつらが裏切るとは思えない。



 となれば、答えは一つだ。



 俺と同じ世界出身の誰かがこの世界に銃の知識を持ち込み魔族に伝えた。



 奴は″急拵え″と言っていたが、その言い方だとその娘とやらがこちらの世界に来たのは割と最近か?しかしそんな短期間でいきなり製造は、、、まぁ出来る、、か?

 元々銃火器の存在を除けば科学技術的には俺のいた世界とほとんど遜色ない世界だ。知識を持った奴がそれを頭のいい奴にでも伝えりゃ短期間でも少数であればいくらでも製造出来そうだ。



 チッ、、どこのどいつだ?物騒なもん持ち込みやがって。



「フー、、」



 まぁ、いい。傷は癒えた。違和感もねぇ。とりあえず今は目の前の敵だ。



 息を吐き出して意識を切り替えた俺はじっと相手を観察して、内心舌打ちをした。



 ーー多分コイツ、かなり強いな。



 理由は単純。攻め込みたくないからだ。

 ビビってるわけじゃ、ねぇ。

 銃なら不意打ちじゃなけりゃ対処も出来る。頭をぶち抜かれりゃ流石にどうなるかわからないが、、腹の数の治り具合を見るに即死レベルの傷以外は″木″のおかげでどうとでもなりそうだ。だというのに、攻め込みたくない。一歩踏み出そうとすると足が止まる。牧瀬さんを前にした時と似た感覚だ。



 、、多分、アレが強え奴らの言う″隙がない″って状態なんだろう。



「、、、、、、、、、」



 試しにと無言で『魔弾』を放って見ると、、わかっていた事だが少し身を捻るだけの動作で軽々と躱されてしまった。

 一応付け加えておくと、もちろん色はつけていないし腕を振るなどの動作もなし、相手にさとらさせないように視線にまで気を遣った特性ステルス弾だ。



 本当、この世界の強い奴らはどいつもコイツも嫌になる。



「やはり貴様()か。宝の持ち腐れだな」



「ア゛ァ゛?テメェそりゃあどう言う意味だ?」



「言葉通りの意味だ。ただ勿体無いと思っただけだよ。それだけの力を持ちながら、やる事がその程度の手品とはな」



 こちらを嘲笑する様な男の言動に眉がぴくりと上がる。



 見え透いた挑発だ。乗る必要はねぇ。必要ねぇが、、ムカつくもんはムカつくなァ。上等だ乗ってやらァ。



「、、、、、、、、、」



 とは言え、だ。



 怒りに任せて突撃して死ぬつもりは無い。死ぬつもりが無いなら現実を見なければならない。



 ーー俺は、弱い。



 この世界において紛れもなく最高スペックの肉体を持ち、魔法に関してはその運用方法から異なっており文字通り、格が違う。



 だというのにそれら全てを用いても牧瀬さんといい勝負、魔法を禁止なら遠く及ばない。それどころか薙刀の実力者とはいえあくまで学生の身である霧島とすらいい勝負になる程度の実力だ。



 奴の言葉を認める様で癪だが、宝の持ち腐れというのもなるほど頷ける。



 かと言って、負けてやる選択肢はない。ニチカたちの事もあるし、なるべく迅速にコイツを攻略せねばならない。



 ならばどうするか?答えは一つだ。



 方針を定め、腹を括った俺は全力で()()に飛んだ。



「、、、、チッ」



 そんな俺を見て舌打ちをしながら無言で追ってきた魔族に牽制の″壁″と″炎槍″を放ちながら内心ホッと胸を撫で下ろす。

 ″最悪″は、奴が逃げた俺を追わずに住民に攻撃を始める事だった。そしてそうなった場合、強者を相手に住民を守りながらの戦闘を強いられる所だった。実際、相手からしたらそのやり方が1番イージーだ。わざわざ追わなくても住民を襲えばこちらが止めに入らざるを得ない事は分かりきっているのだから。

 それでも、その手段を取らなかった理由はおそらく、、万に一つでも俺がこの場を離脱する事態を避けたかったから。



 ーーどうやら余程俺にこの場にいて欲しいらしいな。



 そう考えをまとめつつ、自身は常に引きながら一定の距離を保って炎や氷、岩などの″相手の視界を潰せる属性″を使って合間に不可視の『魔弾』を撃ち込んでいく。



 元々身体のスペックは最高。完全に逃げに徹すれば誰も俺を捉える事は出来ない。そして無尽蔵の魔力による間断ない攻撃で相手の体力を徐々に削る。



 コレが現状、俺が″強い奴″に勝てる唯一の勝ち筋だ、、、が、しかしまぁ避ける事避ける事。



 周囲を巻き込まないよう、″面″ではなく″点″での攻撃に限定しているとはいえ、物量はかなりなものになっているはずだ。だというのに避ける、避ける、避ける。俺の攻撃に対して全く速度を緩める事なくこちらに向かって進んでくる。しかし速度で優っているぶんその距離は縮まっていないのでこのまま続けていばやはり俺が本体の基礎性能の差で推し勝てる。



 だが、この状況でそんな悠長な闘い方をするつもりは毛頭ない。



 俺の狙いはーー



「よォ、おもしれぇ事になってんなぁ?」



「ッ!!グッ!?」



 そう、俺の狙いは″化け物″には″化け物″を、、だ。



 俺は横から猛烈な勢いで突っ込んできた牧瀬さんと、その牧瀬さんにぶん殴られ苦悶の声を上げながら吹き飛ぶ魔族を見て非常に悪い笑みを浮かべるのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 ーー遡ること十数分前、富士の樹海。



「「「、、、、、、、、、、、、」」」



 春樹と牧瀬さんを見送ったあと、その場で体力回復に努めていた私達は終始無言だった。



 シンプルに疲労困憊と言うのもあるけど、、やはりみんな不安だったのだろう。かくいう私も不安で仕方ない。牧瀬さんの話では私達の家族は無事という事だったが今もそうである保証はないのだ。



 街には春樹に牧瀬さん、葉月さんもいる。あの3人が揃っていて負けるビジョンは正直想像もつかないけど、、それでも不安な気持ちはどうしても湧いてきてしまう。



 春樹は怪我などしていないだろうか?家族は?友達は?みんな無事でいてくれてるだろうか?



 不安と焦燥感ばかりが募り、今すぐにでも飛び出したい衝動に駆られるが理性でなんとか踏みとどまる。



 確かに私達は信じられないくらい強くなった。街に向かってもそこいらの下手な部隊よりは活躍できるかもしれない。でも、それは万全の状態での話だ。疲労困憊の今では間違いなく足手纏いになる。牧瀬さんそうも言っていたし、なによりそんな事は自分達が1番理解している。



 だから、今は耐えてとにかく体力の回復を優先する。



 そう考え、とにかく全力で休む事20分弱。かなり体力が戻ってきた私は立ち上がって軽く屈伸などをして自分の身体の様子を確かめる。



 呼吸は整った。相変わらず倦怠感は凄いけど、、大丈夫、動ける。



 自身の状態を把握した私が周囲に目を向けると、他のみんなも私が身体を動かし始めたのを見たからか同じように屈伸などをして自身の身体を確認していた。



「、、、、、、、、」



 見たところ、みんなも問題なさそうだ。その表情には疲労が色濃く滲んでいるが、、木に寄りかかったり、ふらついたりせずにみんな自分の足でしっかりと立っている。



 お互いに頷き合い、意思を確認しあった私達は無言のまま歩みを進め始めた。



 そして、移動を始めてから5分も経たないうちに″ソレ″は現れた。



「、、あっ!!やっと見つけた!!やっほ〜」



 なんの前触れもなく唐突に背後から聞こえてきたどこか気が抜けるような口調と声音に反応して振り返った私達は、もれなく全員絶句した。



 いざという時に殿を務める為に列の1番後ろにいた霧島さんの更に後ろに″わたし″がいた。



 見たこともない軍服のような衣装に身につけ、腰に日本刀を差してはいるがそれ以外は私と瓜二つ、、というか毎日鏡で見る自分の顔そのままだ。そして手には角張った小さいブーメランのような物を持っている。



「、、、は?、、、、、え?」



 ーー偽物、、じゃない。



 呆然と私と″わたし″を交互に見ながら声を漏らす霧島さんを横目に見ながら私はそう考えた。



 変身か幻覚か、、とにかく普通なら真っ先に偽物である事を疑う場面だけど″アレ″は、、違う。うまく言葉に出来ないけど、、彼女は本物だと確信できる。

 それに、、多分、、、春樹の元いた世界にいた″わたし″だ。

 上手く言葉に出来ないが、、緋月さんの言葉を借りるところの所謂″圧″というやつが春樹ととてもよく似ている。



 ーーでも、、どうして?



 緋月さんの話だと別の世界からこの世界に来てしまった時点で春樹がそうであったように″わたし″は私に取り込まれる。つまりは同一の魂を持つものは同時に存在出来ないはずなのだ。実際、春樹だって物凄くイレギュラーな形ではあるが″統合″自体はされている。



「この中で1番厄介なのはあなた。、、だから、ごめんね?」



 突如現れたもう一人の自分の事で頭がいっぱいになっていた私は、その言葉と共に″わたし″が霧島さんに腕を向けた事で、ようやく″わたし″がその手に握っている″ソレ″に意識が向いた。



 ″わたし″が手に持っている物に心当たりがあった私は全身から血の気が引き、弾かれたように声を張り上げた。



「、、、、ッ!!!霧島さん!!避け、、」



 そして、最後まで言い切る前に乾いた破裂音が周囲に響き渡るのだった。




ここまでお読み頂きありがとうございます。


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