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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
54/56

第四十九話  『初陣・2』

第四十九話です。

大変お待たせ致しました。


ローニン、FF7リバース、ドラゴンズドグマ2の三大時間泥棒を消化し終えたのでゆるゆると投稿を再開していこうと思います。

 


 それは、異様な光景だった。



 地上も空も、夥しい数の魔物が埋め尽くし我が物顔で闊歩し、建物は破壊され、所々から火と黒煙が立ち上り、人々の身体も燃え上がっているまさに地獄絵図の様な状況。



 そして人々はそんな状況にも関わらず、周囲の魔物にも、燃え上がる自身の身体にすらも頓着せず、ある者は希望に目を輝かせ、ある者は不安気に、また別のある者は神に祈る様に上空を見つめている。



 そして無防備な人々を理不尽に嬲り殺してやろうと牙を剥き襲い掛かり、直後更なる理不尽でもって返され、悲鳴を上げる暇もなく吐いすら残さず焼き尽くされる魔物達。



 そして人々の視線の先、光を遮り辺りが薄暗くなるほど魔物で埋め尽くされた空の一角、、、そこだけまるで黒のキャンパスに空色の絵の具をたらしたかの様に魔物がいない空間の中心で赤色の髪を靡かせ、まるで地面に立つかの様に佇む女性と、その周りを目にも留まらぬ速度で動き回り、魔物の群れを消しとばしていく男の姿。



 何もかもが、異様な光景だった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「、、、ッッ痛ッてぇなぁこのボケカスがァ!!」



 突然背後から衝撃と痛みが走り、悪態をつきながら振り向きざまに『炎槍』を発動。

 攻撃してきた魔物とその直線上にいた魔物をまとめて消し炭にして()()()()()に滑り込む。



「いくらなんでもキリなさすぎ、、、」



 ーーバキンッ



「、、ッ!!クソッ!!」



 敵の数が一向に減らない事をぼやいていると再び″壁″が破壊され、また悪態をつきながら慌てて貼り直す。



 正直言って、非常にまずい。



 ″壁″を守る為に外に飛び出してどれほどか、、ずいぶん長く感じたが実際には多分5分も経ってない。

 その短い時間で随分と″壁“を削られた。

 もちろん割れるたびに即座に再展開してはいるが破壊されてから貼り直すまでのわずかな隙に魔物は徐々に入り込んでくるわけで必然的に安全地帯もジワジワと狭まってきている。

 ″壁″を破壊できる力を持ったヤバそうなやつを優先的に仕留めに行ってもそもそもの数が多すぎてまるで間に合ってない。



 5分弱で既に当初の広さの1/3は削られた。

 単純計算でこのままでは後10分ももたない。



「、、、ッ!!」



 たまらず緋月の方に視線を向けるが相変わらず先程と同じ姿勢のまま佇んでいる。



「せめてどのくらいかかるのか教えといて欲しかった、、、なッ!!」



 ぼやきながら先程の『炎槍』によって生まれた空間を埋める様にして雪崩れ込んできた魔物のうちの一体、まるで悪魔の石像の様な外見のガーゴイルの持つ巨大な戦斧による攻撃を受け止め、柄の部分を握りしめつつ体を捻り、腕を薙ぎ払う様にして蹴りを放ち、斧を腕ごと千切り取る。

 そして、力任せに斧をフルスイングしてガーゴイルの半身を吹き飛ばし、遠心力をそのままに斧を狙いも定めずに無造作に放り投げた。



 そして、くるくると回転し直線上の魔物を分断し、薙ぎ倒しながら突き進む斧に向かって『転移』を発動、そのまま斧を掴み取り振り返りざまに今しがた斧が通過した場所に『炎槍』を放ち複数の魔物を巻き込みながら死体を処理、来た道を戻る形で再度開けた空間に滑り込む。



「まだ、、もっと早く」



 そう小さく呟きながら魔物が飛ばしてきた火球を足場の魔力を消して()()()事で回避、そのまま大気中の魔力を()()()一気に加速した俺は口元に笑みを浮かべた。



 そうだ、これでいい。

 なにも毎度毎度馬鹿正直に範囲を指定して足場を作る必要はねぇ。

 極端な話、前に踏み込むその瞬間、足の裏にだけ足場があればいい。



 魔力は想いに呼応して現象を引き起こす力だ。

 ″魔力は踏める″と信じて踏み出せばそこに足場は生成される。

 足場を生成すると言う結果は同じだが今までの範囲を指定して魔力を固め足場を作って移動→また次の足場を生成と言ったやり方とは過程がまるで異なる。



「もっと感覚的でいい、、発想も自由に、、」



 ブツブツと呟きながら文字通り空を走る様な移動方を手に入れた俺は一気に魔物に肉薄しそのまま力任せに戦斧を払って魔物数体をまとめて両断し、落ちていく

 死体に向けて手をかざして、グッと握りしめた。



「、、、、チッ、、流石にダメか、、」



 イメージ的には魔力で作った巨大な手で死体ごと周囲の魔物をまとめて握りつぶすつもりでやったのだが、、、結果は死体だけがひしゃげただけだった。



 、、、多分、、今のは死体に意識が行きすぎてたせいだな。

 あわよくば周囲を巻き込もうとしただけであくまで狙いは死体だったからこうなったのだろう。



 検証してみないことには何とも言えないが、、、多分感覚的にできそうなのは魔力を″踏む″とか″叩く″とかあくまで自分が触れている部分のみで周囲に影響を及ぼす系は今まで通りしっかりイメージしないとダメだな。



 まぁ、それが分かっただけでも充分だ。



「、、が、それはそれとして、、」



 俺はそう独り語ちながら内心歯噛みをした。

 まとめて吹き飛ばして、空いた空間に滑り込んで、またまとめて吹き飛ばして、また滑り込む。

 さっきからずっと同じ流れの繰り返しだ。

 それで間に合ってない以上やり方を変える必要がある。



 でも、どうする?

 緋月の守りが″意識外からの攻撃″を防いでくれない以上、大規模な範囲攻撃や建物の破壊はできなくて死体の処理は絶対。



 2本あった刀は一振りは緋月が持っててもう一振りは魔物を数体切った辺りで早々にへし折れた。

 折れたのは明らかに俺の技量不足、、、と言う反省は後でするとして、、そもそも近接戦は死体も残るし効率も悪い。

 となると魔法でどうにかするしかないが、、、まぁとりあえずどんどん試してみるか。



「『颪風』・『黒天球』」



 しばらく考えた俺は″壁″の中に戻り、″壁″の周囲を覆う様にして風魔法の『颪風』を発動し、さらに重力魔法の『黒天球』を″魔物を引き寄せる″イメージを込めて発動。

 するとその効果は絶大で″壁″を覆った風の鎧に重力魔法によって引き寄せられた魔物達が次々と突っ込んで行き、空中に真っ赤な血の花を咲かせ細切れになって地上へと落下して行った。



「お、、おぉお、、、グロ、、」



 風も“壁″も目には見えないので見た目的には魔物達が自分からこちらに突っ込んできたかと思えば急に派手に血を撒き散らしてミンチになる、、、と言う光景が数百、数千規模で展開されているのでまるで悪夢の様な状況である。



 血肉のシャワーを浴びまくってる下の建物の所有者が気の毒ではあるが、、まぁこの状態だし文句は、、、あれ?、、物凄い今更だけどそういや魔物の血肉って平気なのか?

 なんと言うかこう、、人体に悪影響があるとか病気とかそう言う感じの意味で。



「、、、、、、、、、、、、」



 まぁ、、、俺に今の所何の影響も出てないし大丈夫と言うことにしておこう。



 自身の頑強さについては都合よく忘れた事にしてそれ以上考えるのをやめた俺は改めて外の様子を窺うと咄嗟の思いつきにしては相当に効果覿面なようで今の所風の鎧を抜けて″壁″まで到達している魔物はいないようだった。



 これで当面は大丈夫そうだ、、、とホッと肩の力を抜いた次の瞬間。



「、、、ッ!?」



 突如として″壁″も、風の鎧も、足場すらも()()()()()()()根こそぎ消えた。



 そうなると当然、身体は重力に従い落下を始め、突然の事態に動揺も冷めやらぬまま何とか落下先にいた魔物にしがみついた。



「ぐっ、、、このっ、、暴れるな!!」



 しがみついた魔物がジタバタと暴れ出したことで振り落とされない様さらに強くしがみつくと、手加減しているとはいえ人外の膂力により締め上げられた魔物が苦悶の声を漏らしてさらに激しく暴れ出す。



 激しく揺さぶられながら混乱する頭で何とか周囲を探るが、、、やはり、周囲に漂っていた緋月の魔力がない。

 魔力がない以上足場が作れないのでこのまましがみついているしかない。

 地上まで落ちた所で多分死にはしないが、、魔力なしで戻って来れるかかなり怪しい。



 どうする?

 と言うか何で急に緋月の魔力がきえ、、、



「ッ!!!」



 完全に混乱していた俺はようやく()()()()()()()()()事の意味に思い当たり、弾かれた様に頭上を見上げると同時に、パチリと目を開いた緋月と目があった。



 よかった、、、どうやら無事みたいだ。

 でも、ヤバい、、″壁″も風の鎧も消えた。

 幸いと言うべきか、、『誘引』も消えたおかげで魔物共は冷静さを取り戻し、先程までの『颪風』を警戒してかまだ襲いかかってはいない。

 だが、攻めに転ずるのも時間の問題だろう。



 そうして焦る俺の内心を表情から読み取ったのか緋月はまるで安心させる様に微笑むと、逆手にして持っていた刀をそっと手放した。

 緋月の手からするりと抜け落ちた刀は重力に従いそのまま落下していくかと思いきや、緋月の足元の辺りで停止する。



 刀身の半ば辺りから波紋を発生させ、まるで空に刺さるかの様に停止した刀に目を奪われていた次の瞬間。



「座標固定。『禁域・月神宮』」



「、、ッ!?」



 緋月のその呟きと共に、頭上から大瀑布のごとく魔力が降り注ぎ、思わず息を詰まらせた。



 間違いなく緋月の魔力だが、、質がまるで違う。

 物理的な圧力を伴っているとさえ錯覚するほどの濃密な、まるで力で無理やり押さえつける様な魔力に味方だと分かっていながらも思わず背筋が凍りつく。



「、、、、、、、」



 不意に手に伝わる感触に視線を下げると俺がしがみついている魔物が震えていた。



 明らかに怯えている。

 コイツだけじゃなく周囲の他の魔物も例外なくだ。



 ″この世界の生物は魔力を感知できない″



 緋月など、一部の例外を除きその常識は魔物にも通用する。

 先の樹海での戦闘で鬼がして見せた様に、この世界の強者は魔力による攻撃に反応、対応してみせる事があるがアレはあくまで攻撃の気配や空気の揺らぎ、音などに反応しているだけで魔力そのものを感知しているわけではない。



 つまり魔物たちは、本能で悟ったのだ。

 自分達が、決して喧嘩を売ってはならない相手のテリトリーに土足で踏み入ってしまった事を。



 そして、誰もが動けない中、緋月が再び口を開いた。



「『五ノ月・月命霊樹』」



 緋月がそう口にした直後、キンッと言う音と共に眼下から天を衝くように巨大な光の柱が立ち登った。

 そして驚きの声を上げる間も無く上部が枝分かれし、光る葉が一斉に多い茂り一本の光る木になった。



 全体が月明かりの様に発光し、光る葉からはキラキラと燐光を散らす光の木。

 そのあまりの美しさに状況も忘れて思わず見惚れていると、不意に身体に異変を感じた事で意識が引き戻され、視線を違和感の元に向けると、先の戦闘で受けた傷が木と同じ様に発光しており、みるみるうちに塞がっていき、やがて傷跡一つ残らず消えてしまった。



「、、、これは、、傷が、、回復魔法??」



 ″回復魔法″



 この世界には存在しない魔法だ。

 この世界に来て、魔法を学んで、当然真っ先に試そうとしたが、、無理だった。

 訓練で怪我をした際などにあれこれ試したのだが、、″傷が跡形もなく消える″イメージだと表面だけ綺麗になって中は治ってないままだったし内側まで治そうとしたらそもそも発動すらしなかったのだ。



 当たり前の話だが、傷は目に見えているものが全てではない。

 どんな大きさ、深さ、種類の傷を負って、どの細胞がどう傷付いたかなんて全て把握できるわけがない。

 故に諦めてたが、、、そうか、、傷そのものをどうこうしようとするんじゃなく、″傷だろうが病気だろうが癒す薬″的なのをイメージすれば良かったのか。



 答えを知ってみれば真面目に悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなるほど簡単な事だ。

 1人で特訓してる時あれこれ試し、諦めて以降勝手に無理だと思い込んでたのでそもそも質問をした事がなかったが、、、ちゃんと緋月に聞いておくべきだった。



 そうして1人で後悔していた俺はとりあえずしがみついていた魔物を消し炭にすると意識を切り替えて緋月の元へと転移を行うのだった。









ここまでお読みいただきありがとうございます。

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