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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
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第四十八話  『初陣・1』

第四十八話です。 大変お待たせいたしました。

 


「、、!!隊長!」



「うおっ!?」



 樹海からの転移を行い、景色が一瞬で見慣れた自室へと切り替わった事で視界に映り込むいつもと変わらぬ様子の自室の光景。とりあえず家は無事な事に若干ホッとしているといきなり後ろからバカでかい声が響き渡った。



 室内で聞くにはいささか似つかわしくない声量に思わず肩を跳ねさせた俺が慌てて振り返ると部屋の入り口付近に2人の女性が並んで立っていた。



 どちらもスーツを着込んでおり、見た目は20代前半といったところだ。そして何故だか2人とも身体が燃えている。



 いま隊長って言ってたし、状況的にもまず間違いなく家の警護に当たってくれてる牧瀬さんの部下なのだろうが、、、それはいいとしてなんでこの人たち燃えてんだ??

 平気そうにしてるし、、見た所周囲に延焼もしてないから魔法の類ではあるんだろうが、、、身体を火で覆ってなんの意味が、、?魔物避けか?



 というかそんなことよりも、、、



「状況は?」



「先程お伝えした通り地上、空共に突如大量の魔物が発生、初動で死者、怪我人が多数。 現在は地上で警察と軍の合同で戦闘及び一般市民の護衛、空では竜神様が魔物と戦闘中です」



「、、その火はなんだ?」



「詳しい事は私達にも、、、ですが、これのおかげで死傷者が最小限に抑えられている事と、これが竜神様のお力であると言う事は確かです。 襲撃時、慌てて駆けつけた私達の目の前でこの、、魔法?を行使して行かれました」



「、、、、、、、、、」



 こっちの俺の遺品(エロ本)、、処分しとくんだったなぁ、、、



 なんというか、、アレだな。

 こういう時ってノーリアクションが一番効くんだな。



 後生だから気持ち悪がるなりなんなりの反応をしてくれないだろうか。

 そうすれば「なんとなく捨てづらくてあはは〜」とか「緋月が捨てるなって騒いで〜」とか言い訳もできるのに、、

 てか言い訳じゃなくて事実だし。



 自分から切り出すわけにもいかないしこのままでは完全に誤解されたままになるパターンではないか。



 目の前で真面目かつ端的に情報共有が行われる中、全体的にモザイク処理が必要な自室に師匠?と知らねえ人が2人いる(全員女性)という地獄の様な状況に遠い目をして現実逃避をしているとどうやら状況報告を聞き終えたらしい牧瀬さんが声をかけてきた。



「オイ、聞いた通りだ。 とりあえず人間は竜神様が守って下さってるみてえだが、、万が一何かあって術が解ける様な事があったらその時点で詰みだ。 空を自由に移動できるお前はまず最優先で竜神様と合流して竜神様の安全を確保、その後空の敵を叩け。 地上はこっちが受け持つ」



「、、、了解」



「よし、お前らは引き続きこの家の警護だ。 魔物や魔族ごときに遅れをとるんじゃねえぞ?」



「「了解!!」」



 勢いよく返事を返した2人を見て満足気に頷いた牧瀬さんは窓を開け放ちそのまま外へと飛び出していった。

 俺も軽く頬を叩いて意識を切り替え、窓の方へ近づいていく。



「、、、家族の事、頼みます」



「任せてくださいッス。 そちらもご無事で」



 窓枠に足をかけながら口にした俺の言葉に、牧瀬さんの時と比べいくらか砕けた口調でそう返してくれた部下の人に軽く頭を下げた俺は窓から飛び出した。



 そのまま家の庭に着地すると、そこにはすでに牧瀬さんの姿はなく、周囲からは魔物の鳴き声や爆発音が鳴り響いている。そして頭上を見上げると情報通り数えるのもバカらしい数の魔物が空を飛んでいた。



「緋月は、、、あそこか、、」



 こんな状況で緋月を見つけ出せるのか、、と一瞬焦ったがそんな事はなく、すぐに見つける事ができた。



 空の一角にやたらと魔物が密集している箇所があり、その中心で人型状態の緋月が戦闘していのが見える。



 とりあえずは元気そうだ、、がその姿を見て俺は首を傾げた。



「、、、、、、?」



 なんでアイツ竜化してないんだ??

 、、的がデカくなるから?

 それにしたってなんで格闘戦なんてしてんだ?

 見たところ弱っている風には見えないし、、アイツならあの程度まとめて吹き飛ばすくらいワケないはずだよな?



「、、まぁ、本人に直接聞きゃいいか。『召命ー″緋月″』」



「む? 、、おお!春樹!!ちょうど良い所に!!」



 盟約の力で呼び寄せた緋月がポンッとどこかコミカルな音と共に目の前に現れ、俺に気がつくとその表情をパァッと輝かせた。



「おう、家族や街の人間守ってくれてありがとな。 てかそれはそれとしてお前、なんであんな戦い方してたんだ?」



「、、、? あんな、とは?」



「いや、、竜化もしてないし格闘で戦ってるし、、、お前ならあのくらいまとめて吹き飛ばせるだろ?」



 不思議そうにコテン、、と首を傾げる緋月に浮かんだ疑問をそのまま投げかけると緋月は何を当たり前のことを?と言いたげな表情で口を開いた。



「、、無論できるが、、よいのか?」



「、、、、、?」



 なにやら意味深な緋月の言い方に今度は俺が首を傾げるとそれを見た緋月が再び口を開いた。



「形も残らぬほどの威力で力を使えば周囲にも被害が及ぶ。 そうならぬように加減すると今度は死体が残る。 すでに事切れておるとはいえそれなりの体躯があの高さから落ちれば立派な脅威じゃ」



 そこで緋月は一旦区切ると「それに」と続けた。



「人は妾が守っておるが、、アレは敵の悪意や本人の危機感に反応して力を発揮する。 故に悪意を孕まず、意識の外からの脅威に関しては無力なのじゃ。 それこそ崩れた建物の瓦礫が気付かぬ内に頭上から落ちてきて、、等は防げぬ。 じゃから細かい調節のきく人の姿で倒した魔物を安全な場所に落としおったのじゃよ」



「、、、、、、、、」



「一応、建物に被害が出ぬように一定数まとめて消し飛ばす事も出来ないではないが、、次から次へと湧き出てくる以上あまり意味はないし、あまり圧倒しすぎて下手に魔物共に恐怖心を植え付けたら空に注意を引き留めておけなくなるしのぅ、、」



「、、、、、、、、」



 どうしよう、めちゃくちゃちゃんとした理由だった。

 いつものポンコツじゃない。

 時折り見せる「緋月さん」モードだ。



 てか危ねえ。

 どうせ人は緋月が守ってるんだからと全力でぶっ飛ばすつもり満々だったし危うく間接的に人を殺す所だった。




「、、、さっき言ってた丁度いいってのは?」



 色々と考えが足りてない事を自覚した俺は改めて気を引き締めてからそう問いかけると、緋月は思い出した様にぽんっと手を打ってから口を開いた。



「おお!そうじゃった!! 妾の事を守って欲しいのじゃ!!」



「そりゃ、、、構わねえけど、、俺が?お前を?」



 実力を比べ合った事はないが、、普通に立場が逆では?と暗に問いかけると緋月は大きく頷いた。



「うむ! 人や建物を傷付けずに奴等を一掃する手段があるにはあるのじゃが、、、妾は守りは得意じゃが攻めは不得手でのぅ。 少しばかり下準備とタメが必要故、困っておったのじゃよ」



「なるほど、、要は大技撃つまでの間邪魔させなけりゃいいんだな? 承知した」



「助かるのじゃ。 ではさっそく上に戻るとするかの。 少しでも下への意識を逸らしておきたいしの」



「あぁ、、、悪い。 せっかく空に引きつけてたのに呼び寄せたのは悪手だったな」



「よいよい。 幸い魔物共も急に消えた妾に混乱してまだ地上に意識が向いておらんようじゃしの。 合流できたのじゃからあのまま手をこまねいておるよりずっと良いのじゃ」



 そう言って慰めの言葉を口にしてくれた緋月に曖昧な笑みを返しつつ頭上を見上げた俺は考えを巡らせた。



 先程、緋月の守ってほしいと言う願いを軽く受け入れちゃった訳だが、、さて、どうしたものか。

 魔力で球状に壁を作ってその中に引き篭もってれば問題ない気もするけど、、ぶっちゃけ耐久面がイマイチ掴めてないんだよな。



 魔力の壁、、ようは魔力を足場として利用する技術の応用で魔力を高密度に圧縮して障壁として利用する単純なものな訳だが、、、少なくとも牧瀬さんは普通に破壊してくるしな、、、

 アレ(理不尽の権化)が特殊なだけ感は否めないが、、魔族という不確定要素もいる以上不安が残るのが正直な所だ。



 まぁ壊されたところで俺も緋月もそう簡単にはやられはしないだろうし結局の所やるしかないのだが、打てる手があるのなら打っておきたい。



 、、、

 、、、、、、

 、、、、、、、、、



「、、、緋月」



「うん? どうしたのじゃ?」



「少し準備があるから先に上がる。 出来次第さっきみたく呼び出すから準備しておいてくれ」



「わかったのじゃ」



 空を見上げて十数秒の熟考の末そう口にした俺の言葉にとくに疑問を挟む事もなく了承を返した緋月。

 そんな緋月に感謝しつつ再び空に視線を戻した俺は、()()()()()()()を適当に数体見繕って転移を行った。



「、、よォ。 オメー中々強そうだな?」



「!?!? ッ!!ゴァアアアアァァァア!!!」



 いきなり目の前に現れ話したかけてきた俺に驚いた様子を見せる魔物、、、図鑑で見た記憶が間違っていなければ″ワイバーン″はしかし流石と言うべきか、すぐさま動揺から抜け出し咆哮を上げて牙を剥いてきた。



「、、っと危ねぇ。 、、お前、″十等級″なんだろ? ちょっと、頼まれてくれや。 『誘引』、オラァ!!!」



「ゴァッ!?」



 迫り来る顎門を躱し、その巨体に触れ『誘引』を発動。

 そのまま爆散して死なれては困るので打撃、、と言うよりも押す様に前蹴りを放ち、短い悲鳴を上げ直線上にいた魔物を巻き込みながら吹き飛んでいくワイバーンを見やる。



 さて、、、どうなる?



「「「「グォォォォオオォオ!!!」」」」



 吹き飛んだワイバーンが翼を使い器用に空中で体勢を立て直したのが見えた直後、辺り一体の無数の魔物が咆哮を上げ一心不乱といった様子でワイバーンに向かって突進を始めた。

 それを見て″効果アリ″と判断した俺は先程地上で適当に見繕った魔物の元へ転移を行い同じ様な流れで次々と『誘引』をかけていく。



 魔物同士の衝突で大量の死体が落下しても面白くないので数は3体ほどにとどめておくのがいいだろう。

 、、なんとなくその心配は無い気がしているが、、まぁなんにせよ、これで空間に″穴″ができた。



「『召命ー″緋月″』」



「いやー下で見ておったが中々に考えたのぅ。 アレなら

 ()()()()としては充分じゃろう」



『誘引』で釣ったおかげで生まれた″穴″に移動し再び呼び寄せた緋月のそんな言葉に俺は周囲を魔力の壁で固めつつ内心「やっぱりな」と思いながら魔物達の方に視線を戻した。



「ま、、そんなに上手い話もねえよなぁ」



 俺は苦笑いを浮かべつつポツリとそう呟いた。



 やる前から薄々そうなるだろうとは思っていたが、、やはり魔物達に被害は出ていない。襲った方、襲われた方、双方共にだ。どちらも今は静止して混乱や困惑の真っ最中といった様子だ。



 要するに、『誘引』が解けてる。



 元々、島でくらった時にも俺は自力で解いたし、、ニチカ達だってちょっとした衝撃で解けてた。

 洗脳と言うには弱く、暗示よりは少し強いといった感じだ。

 潰し合わせれれば楽だったんだが、、″緋月の行使した″『誘引』でその程度なのだからここいらがこの技の限界なのだろう。



 まぁ、効果の程を改めて確認できたのは有益だしなにより目的は達成できたのだから良しとしよう。



「ほい『誘引』っと。 さて準備できたけど、、あと何か手伝える事はあるか?」



 俺が思考を切り替え、注意を引くために自らに『誘引』をかけつつそう問いかけると緋月は手を差し出しながら口を開いた。



「ありがとうなのじゃ。 後は″緋凪″を貸して欲しいのじゃ」



「、、別にそれくらい構わねえけど、、、なぁ、本当に何する気なんだ?」



「まぁまぁ、見ておれ」



 緋月は俺が怪訝な表情を浮かべつつ差し出した刀を受け取り、そんな事を口にしつつ刀を鞘から引き抜いた。

 そして刀を逆手に持ち替え、差し出す様に腕を伸ばし瞳を閉じた。



 バキンッ!!



「ッ!!」



 突如響いた音に弾かれた様に振り返ると同時に再度音が鳴り響き″壁″が破壊された。

 すると当然、それまで″壁″に阻まれていた魔物共が一斉に雪崩れ込んでくるが即座に″壁″を再展開、再び押し留める事に成功した。



 しかし、このままではジリ貧だ。

 ″壁″が壊され再度展開するまでの間に少しずつ距離を詰められる。



 ″壁″が壊れたのはそれを成しえる奴が紛れ込んでいたのか、もしくはシンプルに数の暴力で耐久限界を迎えたのか、、、

 後者ならまた別の対策を練らないといけないが、、、どのみちこのまま手をこまねいているわけにはいかない。



「緋月!ちょっと外に出てくるが、、どれくらい時間を稼げばいい?」



「、、、、、、、、、、、」



 ″壁″の外に出る前にどの程度の時間が必要になるのか確認しようと声をかけて見るが極度の集中状態なのか返事はない。



 、、、本当に、、何するつもりなんだよ、、ちょっと怖くなってきたぞ。



 そうして、緋月の尋常ならざる様子に若干不安になりつつも俺は″壁″を守る為に外へと踏み出すのだった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

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