第四十四話 『魔物溜まり・2』
大変お待たせいたしました。第四十四話です。
感想、ご指摘、コメントなどお待ちしております。
「きゃああああああああああああ!!!」
そんな悲鳴を上げながらわたし、今村仁千佳は空を飛んでいた。
否。正確には牧瀬さんによって放り投げられ、錐揉み回転しながら絶賛落下中だ。10mはあった塀が結構下に見えている。一体どんな馬鹿力をしてれば人間1人をこんな高さまで投げれるのだろうか?
と言うか今はそんな事どうでもいい。
まずい。まずいまずいまずいまずい。こんな高さから落下したらまず間違いなく助からない。万が一生き残れたとして、下は魔物蔓延る樹海が広がっている。そんなところに落下して大怪我で動けない状況に陥るなんて全然笑えない。なんとか、、なんとかしないと!!
未だなぜこんな事になっているのかよくわかっていないわたしはなんとかそれだけ理解すると生き残る為に必死で口を開いた。
「、、『風壁』っ!!」
そう口にしながら体内の魔力を練り上げ、自らの下に風の壁を作り出した。しかし、若干の抵抗感を感じたものの私の身体はすぐに風の壁を突き破ってしまった。
「、、、ッ!!『風壁』『風壁』『風壁』!!『風壁』ッ!!!うぅうぅぅうっ!!『風壁』ぃぃぃぃっ!!」
『風壁』の強度を上げ、連続で展開。すると牧瀬さんに投げられた勢いも手伝い、ほとんど自由落下に近い速度で飛んでいた私の身体は壁を突破する度にぶつかる衝撃と急激に減速した事によるGに襲われた。
「ふうへ、、ぐぅっ!?」
うめき声を漏らしつつも必死に壁を展開し続けていると不意に腹部に強烈な衝撃を感じて思わず息が止まり、動けずにいるとバキッと言う音と共に再び身体が落ちて今度は背中に衝撃が走る。
「ゴホッゴホッ、、ぅ、、、」
激しくむせ返りつつなんとか呼吸を整える。
わたし、、い、、生きてる、、?
ハッとしたわたしは慌てて身体を確認するが特に大きな怪我はしていない。少なくとも目に見えてる部分には小さな擦り傷がある程度だ。途中衝撃を感じた腹部もさすってみるが、、痛みや違和感は特にない。
背負った大きな鞄のせいで若干苦戦しつつ起き上がり周囲を確認すると傍にはへし折れた太めの木の枝が落ちていた。おそらく腹部に感じた衝撃はコレにぶつかった時のものだろう。
いや、、、流石におかしいよね?、、、、おかしいかな?、、あ、、、、あれぇ??
自分の疑問に被せる形で更に疑問を感じたわたしは無言で自分の手を見つめた。
、、あれ?、、いきなりの事態でテンパってたけど、、よくよく考えたら普段の訓練でさっきのと同等以上の速度で壁に叩きつけられたりしてるし、、、あのくらいなら別に魔法で軽減しなくても平気だった、、、かも?
「、、、、、、、、、、」
、、そう言えば、、前はひたすら体力的に追い詰めてくるだけだったのに最近では普通に殴り飛ばされるようになってるし、、これも訓練の成果、、なの?
「は、、ははは、、」
私は、いつの間にか牧瀬さん達のいる領域に片足の爪先くらいは突っ込んでいたらしい事に気が付き思わず乾いた笑いを浮かべると頭を振って意識を切り替えた。
今はこれからどうするのかを考えなきゃ!生き延びろって言ってたし、、森の中で魔物と戦いながらサバイバルしろって事だよね?
そこまで考えた私は荷物の存在を思い出し、背負っていたリュックを下ろして中身を確認して、、固まった。
「な、、なに、、、これ」
呆然とそう口にしながら中身にぎっしりと詰められていたものを一つ手に取ってみる。布製の袋だ。
「、、、、、、、」
手から伝わる感触に猛烈な嫌な予感に襲われつつも袋を開けてみると中には砂が詰められていた。
「ま、、、まさか、、」
慌ててリュックをひっくりかえすとガラン、、と音を立てて鍋が一個転がり出てきた。後は全て砂袋だ。
し、、、信じられない!!あのひと人の心とかないの!?やたら重いなとは思ってたけど文字通りただの重りだったの!?というか鍋一個でどうしろと!!?
わたしがあまりの仕打ちに絶句していると、不意に背後から物音が聞こえた。
「、、ッ!?」
慌てて振り返るのと同時に茂みの中からオオカミのような見た目の魔物が飛び掛かってきた。
「ッ『風刃』!!」
咄嗟に魔法を使うと直撃を食らった魔物は悲鳴を上げる隙もなく真っ二つになり地面に落ちた。
「、、、、、、、、、」
わたしは無言で自分の手を見つめると、グッと握りしめた。
、、いける。さっきの魔物、、島で私達を襲った魔物と同種だった。あの時は身体が硬直して反撃どころか動く事すら出来なかったけど、、今は違う。
「わたし、、ちゃんと強くなってたんだ」
ポツリとそう呟くと頭を振って再び気を引き締め直す。
頭では理解していたつもりだったけど、、実際に魔物に襲われてようやく実感した。ここはいつ魔物に襲われてもおかしくない危険地帯でわたしは1人。水も食料も無しで呆けている暇はない。島の時と似てはいるけど状況は更に悪い。
でも、、やらなきゃいけない事は同じだ。あの時春樹は、、、そうだ、まず拠点を探してた。
でも、あの時とは状況が違う。わたし1人で森のど真ん中。視界が開けてて生物があまり出てこない海岸沿いとはわけが違う。
それならまずは、、、飲み物を確保できる水場を探しつつ他のメンバーと合流が最優先だ。
「そうと決まれば、、『風壁』」
スカスカになったリュックに鍋を詰め込んだわたしは魔法を起動、先程は投げられた勢いと荷物の重さで全く勢いを殺しきれなかったが魔法が本来の性能を発揮した。
風の壁を作る『風壁』の応用で足元に風の壁を作り出し擬似的に空を飛んだわたしは木々の上まで飛び出し眼科を見渡してみるが、、、樹海だけあって木々のカーテンに遮られて地表がほとんど見えない。せめて川だけでも見つけられたら、、と視線を巡らせてみるとかなり離れた位置に巨大な氷の柱が立っているのが見えた。
「、、、あれは、、三裡ちゃん?」
氷の柱を見て脳裏によぎった友達の名を呟いた私はさっそく氷の柱に向けて移動を開始したのだった。
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「、、どうしたもんかなぁ、、、」
樹海を囲う塀を飛び越えた俺は途方に暮れていた。
というのも、他のメンバーの場所がわからない。
おそらくはバラバラの位置にいるメンバーを守りつつ存在を気取られてはダメで攻撃魔法を使わずに自分に襲いかかってくる魔物も含めて対処、、、難易度が高すぎる。
「『探知』、、、、無理か、、」
しばらく考え込んでいた俺はとりあえず「離れた位置にいる仲間の場所がわかる魔法」をイメージして発動してみたが失敗に終わった。
「、、イメージの仕方が間違ってるか?、、まぁいい」
、、島では緋月が俺たちの存在を把握していたしやりようはあるはずだが今は悠長に、、、いや、、まてよ?
島での出来事からある事を思い付いた俺はその場で高く跳躍した。木々のカーテンを突き破り目印になるものがないかと周囲に視線を巡らせると遠くに氷の柱が立っているのが確認できた。
「、、、、あれは、、三裡か!!ちょうどいいな、『誘引』」
三裡が生み出したと思わしき氷の柱に向けて魔法を起動した俺は地面に着地した。込めたイメージは「視界に映る範囲内の人間が氷の柱に惹き寄せられる」だ。そう、緋月が島で俺達にかけた島の中央に惹き寄せられるアレの再現である。
問題は、、目に見えた現象が発生しないので正しく発動したのかわからない事だ。
まぁ現状できる事なんて他に思い浮かばないしとりあえず俺もバレない様に注意しつつ氷の付近まで移動して感知魔法ができないか試行錯誤してみるとしよう。
そう決めた俺はさっそく氷の柱に向けて移動を開始したのだった。
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