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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
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第四十三話  『魔物溜まり・1』

お待たせ致しました。

第四十三話です。


感想、ご指摘などお待ちしております。

 


「よし、樹海いくぞ」



「「「、、、、、、、」」」



 文化祭を終え日常に戻り、いつもの訓練を行おうとしていた俺達はいきなり牧瀬さんからそんな事を言い渡され、思わず無言で顔を見合わせた。



 樹海。そう聞いてパッと思い浮かぶのは元の世界にあった富士の樹海だ。火山の噴火の影響で凹凸のある独特な地形になっており距離感が狂いやすく、また森の中ということもあり似たような景色が続くので非常に迷いやすい。また、自殺の名所としても有名で肝試し感覚で樹海に踏み入った若者が死体や脱ぎ捨てられた靴を発見したなんて話も聞いた事がある。あとは地質の影響でコンパスが常にくるくる回って役に立たないことで有名だが確かそれは迷信で実際は普通に使えるとテレビか何かで見た気がする。



 、、とまあ俺の思う樹海に対するイメージはこんな所だが、、たしかこの世界では少し違ったはずだ。地形とそれに付随する迷いやすい等の基本的な特徴は変わらないが、こちらの世界では「魔物が集中して沸きやすい」という明確な違いがある。なんでも、理由は解明されていないが魔物の発生する数が他の地域に比べて数十倍はあるらしく、そう言った地域がこの世界にはあちこちに点在しており樹海もその一つとの事だった。



「、、訓練の為ってのはなんとなくわかりますけど、、、まるで今から行くみたいな言い方ですね?」



 なんとなく嫌な予感がしつつも俺がそう問いかけるとなにを当たり前の事を、、と言いたげな表情を浮かべた牧瀬さんが口を開いた。



「みたいもなにも今から行くんだよ。ホラ、さっさと『ゲート』を開けろ」



「いや、、無理っすよ。前に説明しましたよね?」



 俺がそう断ると、めんどくさそうに頭をガリガリとかいた牧瀬さんは「チッ、、使えねぇな、、まぁいい、なら走って行くぞ」などと言い出した。



 ちなみに『ゲート』とは新たに覚えた転移魔法の事である。覚えた当初はめちゃくちゃテンションが上がったものだがこれが意外と不便で行きたい場所のイメージをかなり正確に思い浮かべる必要がある為、基本的に視界内にしか転移できない。写真などを見ながら試してみたりもしたが何故かできなかった。



 、、なんとなく、喉元まで答えが出かかっているというか、、発想を変えればいけそうな気もするのだが今の所なにも思いついていないので現状、長距離の転移は毎日過ごしている自宅の自室くらいしかできないのである。



 、、とまあそれはさておき、そんな俺と牧瀬さんの会話を聞いていたニチカ達がサッと青ざめ絶望的な表情を浮かべた。



 そうなるのも仕方がないだろう。直線距離で考えてもおそらく余裕でフルマラソンの倍くらいは距離がある。断じて足がないなら仕方ないよね、、みたいなテンションで軽はずみに走る選択肢を取る距離ではない。俺に関しては多分息切れすら起こさないと思うがニチカ達にとっては地獄だろう。



 そんな事を考えていると、ニチカ達からチラチラと助けを求めるような視線が飛んできたが俺は静かに首を振った。



 かわいそうだとは思うが、この理不尽の権化は一度決めたら止まらない。むしろ下手にごねると絶対重りとか追加してくるぞ。断言してもいい。



「じゃあさっそく行くぞ。1人一つアレを背負え」



 ニチカ達に気を取られていた俺がそんな言葉で視線を戻し指差す方向を見てみると、どこに売ってるんだというくらい馬鹿でかいリュックが人数分壁際に無造作に置かれていた。



 前言撤回。ごねなくても重りは標準装備らしい。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「おー、、」



 目的地に到着した俺は思わずそんな声をもらした。



 目の前には高さ10mはあろうかという塀が広がっている。もしかしなくても魔物対策だろうが、、これが富士の樹海を取り囲んでいるのだとしたらかなりの規模だ。



「起きろオラァ!!!」



「「「、、、ッ!?」」」



 俺が目の前の壁に呆気に取られているといきなり怒声が響き渡り、疲労感から泥のように気絶していたニチカ達が飛び起きた。



「テメエらがチンタラ走るせいで時間を無駄にしちまったが、、まぁいい。テメエらがこれからやる事は一つだ。私がいいと言うまで、生き延びろ」



「、、、え?」



 いきなり叩き起こされ告げられた言葉に理解が追いついていない様子で呆然としているニチカ達。ちなみにだが、朝出発したのが午前9時、現在の時刻は午後14時。5時間でフルマラソンの倍の距離を走破したのだから充分人間をやめている偉業と言っても全く差し支えない結果なのだが牧瀬さんからすると「チンタラ」という評価になるらしい。



 なんとも理不尽な話だが、、目の前の理不尽の権化のような存在は想像の更に上をいくようで無言のまま固まっているニチカの胸倉を掴み上げるとそのまま無造作に放り投げた。



「き、、、きゃあああぁぁぁぁぁ!?」



 放り投げられ、錐揉み回転しながら塀を軽々と超え飛んで行ったニチカの悲鳴が遠ざかって行き、やがて聞こえなくなった。



「「「、、、、、、、」」」



 全員、絶句である。



「わ、、、わたし用事が、、アッ!?ま、、待って!!待ってください!!私まだ死にたくな、、キャァァァァァァァァ!?」



 そんな衝撃的な光景を見て、更にぐりん!と牧瀬さんの顔が自分の方を向いた事で流れるように逃走を図った美香さんが即座に捕らえられ、同じように放り投げられ悲鳴を上げながら塀の向こうへと消えた。



 その後、似たような流れを人数分繰り返し、あまりに非道な行いに完全にドン引きしていた俺に牧瀬さんが声をかけてきた。



「さて、お前はアイツらとは別の課題だ」



「、、別の、、課題?」



 俺がなんとかそれだけ聞き返すと頷いた牧瀬さんは口を開いた。



「ああ、お前は魔物如きじゃ相手にならねえからな、、アイツらを守れ。ただし、攻撃に魔法を使うのは禁止だ。あとアイツらの前に姿を見せるのも禁ずる。悟らせるのもダメだ。バレた時点で訓練の期間を追加するからな」



「頭湧いてんのかアンタ、、いでぇ!?」



 あまりに理不尽に内容に思わず口から出た暴言に速攻で拳骨が落とされ、脳が揺らされてふらついている俺を見てため息を吐いた牧瀬さんは言葉を続けてきた。



「ハァ、、忠告しておくが、中にいる魔物共はアイツらでも問題はねえが油断すりゃあ普通に死ぬ相手だ。気ィ抜くんじゃねえぞ?」



「そ、、そんな環境に疲弊し切った人間放り投げたのかアンタ、、、」



「いいからさっさと行け。それともアイツらみてえに投げ込まれてえのか?」



「、、わかりましたよ、、、念の為確認ですけど、魔物以外には攻撃魔法使用しても?、、例えば木とか魔物以外の生物とか」



「許可する」



「あいよ、じゃあ行ってきます」



 牧瀬さんとそんなやりとりを交わした俺は脚に力を込めて一気に跳躍して塀を飛び越え、樹海へと立ち入るのだった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。


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