第四十一話 『学園祭・前半』
第四十一話です。
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学園祭の時期がやって来た。
校内にはどこかソワソワとした雰囲気が漂い、俺自身も剣と魔法の世界の学園祭という事で結構ワクワクしていたのだがニチカ達に話を聞いたところ魔法を使うのなんてせいぜい劇をするクラスが演出で使う事があるかもしれないと言うレベルで基本は俺の知る学園祭とそう変わらないらしい。
早いクラスなんかは既に出し物を決めているらしく、さっそく放課後準備に取り掛かり始めているのだが、そんな中絶賛話し合い中のウチのクラスは中々に難航していた。
まぁぶっちゃけ原因は俺だ。
理由はいくつかあるが、1番大きな理由は俺が勇者であることだ。一般人も来れるので、まだまだ世間では騒がれている現状まず間違いなくエグイ数の人間が押し寄せてくる。そうなると、取れる択も限られてくる。
後は初登校の日、俺がやらかした事も原因の一つだ。ニチカや霧島などは普通に、、というかむしろ積極的に話しかけてくるし俺も友好的に接しているので最近では話しかけてくる生徒もチラホラといるのだが、、、やはり以前虐めに加担していたか、もしくはただみていた事への気まずさも手伝って目が合うとサッと逸らす生徒が半数近くを占めている。
そんなわけで、下手な発言したら俺が怖いし、そもそもそんな大勢が来るのに何したらいいんだ?、、となっている訳である。更には誰も口にはしないが、、なんとなく俺に決定権が委ねられている空気が場に流れている。
半分は自業自得な気がしないでもないが当然、俺はクラスのリーダーになどなっていないしそのように振る舞った覚えもないので本当に勘弁して欲しい
勘弁して欲しい、、のだがこのままでは次の朝日を学校で迎える事になりそうなので俺はため息をついてから口を開いた。
「お前ら、本当に誰もやりたい事特にないのか?」
「「「「、、、、、、、、、、」」」」
誰も、答えない。チラリとニチカ達に視線を向けると、何故かニチカ、霧島はニヤニヤしながらこちらを見ているし、盛島、広瀬はそんな2人を見て苦笑いを浮かべていた。
なんかムカついたのでニチカと霧島の2人は後でシメる事を心に誓い、頭をガリガリとかいた俺は再びため息をついて口を開いた。
「はぁ〜、、あのなぁ、、お前らが俺にどんな印象持ってんのか知らねえけど別に学園祭の出し物の案出したくらいでキレたりしねえぞ?、、って言ってもこの雰囲気じゃ言いづらいだろうからこうしよう」
俺は自分のノートを取り出し、数ページ程魔法で切り取り、それをクラスの人数分更にカットした。
すると、俺の魔法を初めて見たクラスメイト達からどよめきの声が上がるがサクッと無視して口を開いた。
「匿名で書けば安心だろ?、、最悪、当日俺目当ての奴らを別の場所に引きつけるくらいの事はしてやるから客数の事とかは考えずにとりあえず自分のやりたい事を書け。留年とかしなけりゃ主催側では人生で後2回しか高校の学園祭を経験できねえんだ、、後悔はしたくないだろ?」
そう口にしながら担任に紙を手渡し、アゴで「配れ」と合図をすると青い顔をした担任は紙を配り始めた。
そして全員が書き終わったのを確認してから再び担任にアゴで指示を出して回収させ、集計させた結果メイド喫茶、執事喫茶、軽食屋とバラバラではあるが基本的には食品を提供する類のものが半数以上を占めていた。
「、、飲食系が半数を占めているからその方向で進めようと思うが、、、どうせならなるべく多くの意見を拾ったものにしないか?」
そう提案する俺に何度か話しかけて来たことのあるクラスメイトの女子の1人が質問をして来た。
「なるべく多くって、、そんなことできるの?」
「できる。単純に軽食を提供する店でウェイトレスにメイドや執事の格好させりゃあいい。、、別にいろんな要素を掛け合わせちゃダメなんてルールないだろ?」
そう答えた俺は「反対意見のある奴はいるか?」と問いかけたが特に反対の声は上がらなかったので担任の方に視線を向け口を開いた。
「、、と、言うわけだからアンタは早急に食品衛生責任者の資格を取ってこい」
「な、、なんで私がそんなものを!?というかいきなり取れるものではないだろう!?」
俺の言葉に驚きの声をあげた担任はそう抗議の声を上げた。
「テストの類もねぇし講習を受けるだけで取れるが、、俺たちは学生だから年齢をクリアしててもそっちが引っかかって取れねぇ」
「そ、、そんな資格ならあったところで何の意味が、、」
俺はそう言ってゴネようとする担任の言葉に被せるようにして口を開いた。
「確かに無駄に終わる可能性も無くはねえが、結局判断するのは保健所だ。いるのといないのじゃ大きく変わってくるし後は衛生面をしっかり対策してるところを見せてやりゃ、ある程度メニューの幅を広げれる可能性は充分にあんだよ」
「し、、しかし、、」
「いいから、やれ。普段何もしてねえんだからこういう時くらい生徒の為に意地を見せろ」
尚も渋ろうとする担任に暗にいじめの放置等、日頃の問題行動を指摘するようにそう言ってやると、苦虫を100匹くらい噛み潰したような表情を浮かべつつも頷いた。
その様子を見て満足そうに頷いた俺は、とりあえず案だけでもという事でクラスメイトにメニュー候補を問いかけると、先ほどとは違い複数の生徒の手が上がり、話し合いは順調に進んでいった。
結果的に時々話しかけて来ていた生徒達を中心にぜひ一緒に参加してほしいとの声も上がり、俺は立場もあるので裏方での参加、その他のクラスメイトは希望制で接客班、裏方班に分かれること、また料理は俺が中心になりあと数名の料理ができるメンバーで揃えて対応することなどが決まったのだった。
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「ねぇ、、私裏方の方に混ざりたいんだけど」
いざ方針が決まり、女子達などがはしゃぎながら当日着る服を雑貨店等で買うか、自分達で作るかなどを話し合ってるのをボケーっと眺めているといきなり1人の女子から声をかけられた。
名前は確か、、河野樹里、、、だったか。「元の世界」の学校にはいなかった奴だ。いかにもギャルと言った派手な見た目をしており、肩まで伸ばしたストレートの髪を金髪に染めている。
「、、理由は?、、、ていうかなんで俺に?別に俺リーダーじゃないし一々許可なんて取らなくてもいいぞ?」
「、、、どう考えてもアンタが仕切ってたじゃない、、理由は、、ほら、こんな見た目だし、ネイルとか外したくないし」
確かにその通りだけどあのままじゃ一向に進展する気配がなかったし仕方ないじゃないか、、と心の中でぶつくさと言いながら河野の方に目を向けた。
、、、はて?
「、、、?それが理由?接客すんのが嫌とかじゃなくて?そんな理由ならお前美人だし接客側に回ってくれた方が売り上げ的にも助かると思うけど?あと別にネイルも外さなくていいんじゃね?お前自身はどっちがやりたいんだ?」
俺が首を傾げて立て続けにそう問いかけると、顔を赤くして照れたような困惑したようなよくわからない表情を浮かべた河野が口を開いた。
「それは、、前から興味あったし接客の方をしてみたいけど、、で、、でも、、学園祭の出し物とはいえ仮にも飲食店みたいなものなんだからネイルとかダメっしょ、、」
「、、これは経験則だけど、しっかりとした接客さえすればそんなもん関係ねえよ。それでも文句を言ってくるような奴はテメエに提供する飯なんざねぇって追い返せ。必要なら俺が追い払ってやる」
そこで言葉を区切り、「ただし」と人差し指を立てて付け加える。
「ただしそれはお前が完璧な接客が出来ていることが前提だ。自分で言って来たくらいだから言われるまでもなく理解してんだろうが、、そういう固定観念があるのは事実だし、実際に指摘してくる奴もいる。だからお前は人一倍努力して完璧な接客をして、そういう奴らに寝言一つも文句を言わせるな。好きな事しつつ実力でくだらねぇ事ぬかしてくるやつを黙らせろ、いいな?」
俺がそう口にすると、感銘を受けたように何度も頷いた河野は「わかった、頑張ってみる!」と口にすると自分の席に戻って言った。
するとその様子を近くで見ていた霧島が感心半分呆れ半分と言った様子で声をかけて来た。
「春樹くん、、ほんとに同い年?妙に人にやる気を出させるのに手慣れてない?関係ない私ですら今の聞いてなんかこう、、グッと来たしなんだかいい上司になれそう」
、、、まぁ「良い」がつくかは知らないが、実際に上司やってたしあの手合いも何度か指導したことあるしね、、
、、、バイトなのに。
そんな事を考えつつ霧島に適当な苦笑いで返した俺は、再び話し合いの輪の中に混ざっていくのだった。
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