表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
44/56

第三十九話  『訓練・3』

第三十九話です。 


今回は主人公→熊谷→主人公と視点が切り替わっております。


読みにくい等ございましたらご指摘の程よろしくお願いいたします。

 


「よし、テメェもそろそろ次の段階に進んでよさそうだな」



「、、!!!」



 週末、朝から学校に足を運び誰に言われるでもなくいつも通り走り込みを始めようとしていたところで牧瀬さんにそう声をかけられた。



 毎日学校の放課後と土日に行なっている訓練で何度も何度もひたすら走り続け、ようやく刀をぶつけたりする事がほとんどなくなって来た今日この頃、そう言われた俺は内心ガッツポーズをした。



 ようやく、この鬼畜女にいつぞやの借りを返せる時がやって来たみてぇだなァ、、、



 そんな事を考えつつ内心ほくそ笑み、自然と口元にも笑みが浮かぶ。

 そんな俺を見た牧瀬さんは獰猛な笑みを浮かべて口を開いた。



「なんだァ?随分とやる気じゃねえか。いいぞ?来てみろ」



 そのセリフが開始の合図となり、俺は躊躇わずに全力で踏み込んだ。



「、、ッラァッ!!!」



 踏み込んだ際にバゴン!!と轟音を立てて足元の地面が蜘蛛の巣上にひび割れ陥没し加速、一瞬で距離を詰めた俺はそのまま全力をもって右の拳で殴りかかる、、がヒョイ、と軽く身を捻っただけでかわされてしまった。



「チッ、、」



 舌打ちをひとつ、からぶった事で崩れた体勢をすぐさま立て直してそのまま立て続けに攻撃を仕掛ける、、がどれも避けられ、いなされ、受け流されて一向に攻撃は当たらない。



 、、まぁ、ここまでは予想通りだ。人間、そんな急に強くなったりはしないし、何よりずっとアスレチックしかしてなかったからな!!

 要は「刀を持ち歩く生活に慣れた」だけ、ぶっちゃけ戦闘面じゃ何もかわっちゃいない。

 ようやく強くなる為のスタートラインに立てただけだ。



 だけど、、ただ走るだけしかしてこなかった訳じゃねぇぞ。



 そう考え一旦距離をあけた俺は口元に不敵な笑みを浮かべて()()を起動した。



 ちなみに、今まで訓練で魔法を使った事はなく今回が初披露だ。この鬼畜女に一泡吹かせてやろうとずっと1人でコソコソと特訓していたのだ。

 そのおかげで、最初は一歩一歩踏み出すようにして登っていた『魔力の階段』も今では駆け上がれるほどスムーズに展開できるようになっていたりする。



 俺は一瞬で目の前に野球ボールくらいの大きさの球状に生成した『魔力弾』を牧瀬さんに向けて発射した。



 オラァ!!!食いやがれ鬼畜女ァ!!!



「、、、あ?」



「、、、ッ!!なッ!!?!」



 そして直撃すると思われたその瞬間、目を疑うような事が起きた。



 ピクリ、と眉を動かし反応を示した牧瀬さん。その手がブレた次の瞬間、何事もなかったかのようにその場に立っていた牧瀬さんは自分の手を眺め、口を開き出したのだ。



「、、、なんだ?こりゃァ。どう言う仕掛けかわからねぇが随分とおもしれえもん身に付けたなお前」



 そんな事を呟きながら手で何かを弄ぶような仕草を見せる牧瀬さん。その手つきは、まるでボールのようなものをいじっているようで、、、



 、、、、、ホワッツ?



 、、、え?、、、待って、、え?

 もしかしてキャッチしたの?見えない玉を?

 威力を抑えたとはいえそれなりの速度で撃ち込んだのに?

 もしかして見えてないの俺だけでみんなには見えてる?



 そう思い慌てて他の面々に視線を向けるが、、、皆一様に困惑している。

 俺や牧瀬さんの様子から何かが起きた事はわかるがそれが何か分からないと言った様子だ。



 つまり、みんなにも見えてない。

 でも、、それなら、、



「な、、、なん、、で」



「あ?」



「な、、なんで、、わかったんですか?」



 未だ事態を飲み込めず、しどろもどろになりながら問いかけた俺に対する答えは実にシンプルだった。



「カン」



 、、、カン?、、、、あぁカンね?、、、、、カン?



「ふ、、ふっざけんなァァァァァ、、ブベラァ!?」



「いきなりウルセェよ」



 あまりに理不尽な理由に思わず叫び声を上げると、頬に猛烈な衝撃を感じて思わず後ろに倒れ込んだ。何が起きたか理解できず牧瀬さんの方を見ると、何かを投げた後のような体制でこちらを睨んでいた。



「な、、、な、、な」



 え?もしかしてキャッチした魔力弾をそのまま投げ返してきたの?嘘でしょ?嘘だよね?嘘だと言ってよ!!



「なんかしらねえがおもしれえ、、もっと色々やってみろ。まさかそんな子供騙しの手品しか芸がねえ訳じゃねえんだろ?」



 そんな事を言いながら獰猛な笑みと強烈なプレッシャーを放ちつつこちらに歩いてくる理不尽の権化に、俺は大量の汗をかき引き攣った笑みを浮かべるしかないのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「避けんじゃねえよこの化け物がァァァァァァァ!!」



「避けれるもんわざわざ食らうわけねぇだろうがクソボケェ!!人に文句ばっか言ってねぇでもう少しまともな攻撃打ち込んで来いやァ!!」



「、、、、、、、、、」



 目の前で繰り広げられる壮絶な戦いと舌戦を呆然と眺めていた私、熊谷三裡は思った。「なにこれ?」、、と。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 いつもの時間に訓練場に集まった私達は、みんなで仲良く挨拶を交わした。前は今ほど仲良くなかったが、何度も同じ地獄を潜り抜けてきたり、封印したい黒歴史を共有した事もあって、私達は通常の友達付き合いでは得られない強い絆で繋がったように思う。戦友、、と言ってもいいのかもしれない。



 最近では未だそそ、、、道を踏み外していない仁千佳ちゃんと鏡花ちゃんに「2人も早くこっち側に来なよ?」などと同じ傷を共有した組で冗談めかしていったりするくらいだ。、、、春樹くんの前では口が裂けても言えないけど、、



「よし、テメェもそろそろ次の段階に進んでよさそうだな」



 そんなこんなで訓練が始まり、いつものように牧瀬さんに向かって行こうと身構えた私達だったが、そんな牧瀬さんの言葉で困惑して顔を見合わせた。



 え、、?今日から春樹くんも私たちに混ざるって事?

 嬉しい気持ちもあるけど、、その、、訓練中やその後の見られるのはちょっと、、



 なんて考えて躊躇っている間にも2人の会話は進み、何やら2人で戦闘する流れになり始めた。



 今日は私達は見学ってこと?



 そう思いつつしばらく指示を待ってみたが特に何も言われないので困ってみんなの方を見ると、どうやらみんなも困惑しているらしかった。再び目を合わせて頷き合った私達は、そのまま少し離れた位置で見守る事にして現在に至るのだが、、、



「ッダァクソがァ!!なんで見えてんだよ!?」



「だからカンだったってんだろうが!耳ついてねえのかテメエは?」



「ウルセェボケェェェ!!!ただの勘とかそんな馬鹿げた理由認めてたまるかァ!?常識ってもんを知らねえのかこのイカれ女がァ!!、、ウゴォ!?!」



 相変わらず互いにものすごく怖い形相で舌戦を繰り広げつつ戦闘を繰り広げていた2人だが、牧瀬さんの蹴りが腹部に直撃した事で渋谷くんがおもちゃのように吹き飛び、そのままバガァとえげつない音を立てて闘技場の壁に埋め込まれた。



「、、ヒュッ」



 通常なら明らかに死んでいるような勢いで壁に激突した春樹くんを見て、誰かの喉が鳴るのが聞こえた。



 し、、知ってたけど私たちの時ってやっぱりかなり手加減してくれてるんだ、、



 今まであの恐ろしい怪物に何度も挑みかかっていた事実を改めて自覚した私は、いつの間にか震え出していた足になんとか力を込めて、春樹くんの方を見た。



「、、、っ痛ぇなァ!!」



 えげつない速度で激突し、えげつない音を立てて壁にめり込んだ直後にも関わらず当然のように起き上がり復帰してきた春樹くんは悪態をつきながら足元に転がっていた壁の破片を拾い上げるとそのまま投擲した。



「、、、狙いは悪くねえが、、私には通じねえよ」



「、、、チッ、、コレも対応すんのかよ、、もうカンとかじゃなくて一種の魔法だろそれ、ふざけやがって、、」



 飛んできた岩を素手で弾いて粉々にした後、何かを掴み取るような動きを見せた牧瀬さんの言葉に春樹くんは舌打ち混じりに悪態をついた。



 、、、さっきから、渋谷くんは何をしているんだろう?



 最初は気が付かなかったが、よくよく2人の戦いを見ていると先程から明らかにおかしいタイミングで地面が陥没したり、今のように2人が謎のやり取りを交わしたりしているし、その2人の口振から春樹くんの方から何かを仕掛けているのはわかるが、、肝心のそれがなんなのかが全くわからない、、、



 視認が難しい魔法、、、風魔法ならあんなに地面を陥没させたりはできないし土埃とかが巻き上げられないのも変だ。

 他には、、重力魔法あたりがありうるけど、、それだと2人が時折見せている何かを投げるような動作やそれを受け止めるような動きが説明がよくわからない。



 結論、あんな、、、魔法?は見た事がない。



 と言うか、引きで俯瞰して見れている私達にも発動のタイミングも、発動された魔法自体も一切見えないのになぜ牧瀬さんは反応できているのだろうか?、、まさかとは思うが本当に本人の言葉通りカンだけで、、、?



 だとすれば、春樹くんの言う通りいくらなんでも馬鹿げている。一度や二度となら納得できなくもないが、もう先ほどから何度も不可視の攻撃に対応しているし、いくらなんでもカンで全てを捌き切るのなんて出来る訳がない。



 、、、と、頭ではそう思うのに、「牧瀬さんなら」と否定しきれないのがまた恐ろしい。



 そんな事を考えて表情を引き攣らせていると、再び事態が動いた。



 自分の足元を見て立ち止まっていた春樹くんは何かを確かめるようにゲシゲシと地面を蹴るような謎の動きを見せた後、納得したように頷くと前傾姿勢で構えた。



 そして次の瞬間、その姿が掻き消えた。



「、、、ッ!!!、、ッハハッおもしれえッ!!!」



 春樹くんの姿が突然消えたかと思った直後、パァン!!という破裂音が響き渡ったのとほぼ同時、何が起きたかわからずにいる私の耳に、どこか楽しそうな牧瀬さんの声が聞こえてきた。だが、春樹くんの姿は見えない。



 ど、、どこにいったの?と慌てて辺りを見渡すと()()()春樹くんの声が降ってきた。



「おかしいだろ?おかしいよな?なんで今のも避けれんだよ!?」



 声に釣られてバッ、、と上に視線を向けた私は、、今日何度目かわからない驚愕に襲われ、思考が硬直した。



 春樹くんが空中でしゃがみ込むような体制で浮いている。



 、、、な、、何あれ?やっぱり風、、いや、、重力魔法?、、、でも、さっき考えていた通り牧瀬さんは春樹くんが飛ばしていた『なにか』をキャッチして投げ返していたし、、風も重力もありえない、、、そのはずだ。



 でも、、でもそれならアレは一体なに、、?



 目の前で起きている事が理解できずただひたすらと困惑する私をよそに、空中で立ち上がるような素振りを見せた春樹くんは手をかざして口を開いた。



「、、、コレはどうだ?『氷牢』」



 春樹くんがそう呟いた瞬間、一瞬で牧瀬さんの周囲を囲うように大量の氷の礫が出現し一斉に牧瀬さんに襲いかかった。



 こ、、氷魔法!?で、、でも、、さっきまでのは?まさか、、複数属性を、、、?そんな馬鹿な。



 対する牧瀬さんは飛来する礫の全てを弾き、砕き、避けている。もう人間業ではないし理解の範疇を越え過ぎていて何が何だかわからなくなってきたが、、それ以上に訳がわからないのは春樹君だ。1人で複数属性を操るなど聞いた事がない。



「、、『泥砂』」



「、、あ?」



 混乱する私をよそに再び春樹くんが呟いた瞬間、今度は牧瀬さんの足元が泥のように変質し、その足が脛のあたりまで地面に沈み込み、ガクッと耐性を崩すが、信じ難い事にそれでも危なげなく礫に対処している。



 つ、、土魔法まで!?



「『霧雪』」



 再び春樹くんが言葉を発すると、まだ周囲に浮いていた礫、牧瀬さんに向かって飛んでいた礫、すでに砕かれ破片となって地面に落ちていた礫、その全てがパキンッと音を立てて砕け散り霧になって周囲に広がった。



 霧に覆われた事で牧瀬さんの姿が朧げな輪郭しか見えなくなり、次は何をするのかと上を見上げて、、私は再び自分の目を疑った。



 上空に、、()()()がある。何かはわからないが、空の一部が写真でぼかし加工を入れた時のようにぼやけていてそこに何かがあるのがわかる。



「な、、に、、あれ」



「『潰れちまえ』」



 呆然とそう呟いたのとほぼ同時に、春樹くんが掲げていた手を振り落ろしながらそう口にした事で空にあった闘技場のリングをすっぽり覆うような規模の()()()が落ちてきた。



 次の瞬間、周囲で轟音が鳴り響き、思わず小さな悲鳴をあげてうずくまっていると、最後にバキィッと音が鳴って周囲の霧が一気に晴れ、降ってきていた巨大な()()()も消えた。



 恐る恐る周囲を見渡すと、四方にあった結界を維持するための柱は全てへし折れ、リングの中心部では未だ泥沼に足を取られた状態の牧瀬さんが拳を振り上げた状態で立っており、上空の春樹くんは引き攣った顔を浮かべていた。



 そんな光景を目の当たりにした私達は、、理解のできない事だらけの現状にただひたすらにポカンと口を開けて呆然とするしかないのであった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 やっぱり、、この人は理不尽だ。



 俺は、眼下で拳を振り上げたままこちらを睨んでいる牧瀬さんを見てそう思った。



 不可視であるはずの攻撃に全て対応された。



 途中で思いつき、ぶっつけ本番で試した、足元に反発する性質を持たせた魔力を設置し、それを踏む事で可能となった高速移動にも対応された。



 緋月に教わった、技名を唱える事ででイメージを明確にし、魔法の正確性や威力、速度を高める技術も、属性魔法を用いた多彩な攻撃も、壊されないように視認できるほど高密度に圧縮した魔力による面制圧までも対応された。



 、、、この人、、どうやったら倒せんだ?



 俺が顔を引き攣らせつつそんな事を考えていると、ため息をついて頭をガリガリとかいた牧瀬さんが声をかけてきた。



「ハァ、、ここまでだな、、オイ!終わりだ、さっさと降りてこい!」



「はいはいっと、、、、あでぇ!?」



 悔しさを噛み締めながら適当に返事しつつ地面に降り立つと、いきなり拳骨を落とされた。



「中々面白かったが、やりすぎだバカ。お前はもう魔法使用禁止だ」



 そう言われた俺はムッとして言い返しかけたが、、ここにきてようやく周囲の惨状が目に入った事で押し黙り、大量に汗をかき始めた。するとそんな俺の様子を見た牧瀬さんは再び頭をガリガリとかくと、めんどくさそうに口を開いた。



「勘違いすんなよ?単純に、常にこの規模でやられたら私のクビが飛ぶってだけだ。、、、テメエの使ってきた技自体は中々悪くねぇ。、、その調子で鍛錬を怠るなよ」



 そんな事を口にした牧瀬さんに、その場にいた全員が目を丸くした。



 、、、これ、、もしかして俺が落ち込んでると思って慰めてくれてる、、、のか?



「あ、、、アンタ、、そういう気とか回せるんすね、、、」



 呆然とそう呟いた俺の頭に再び拳骨が落とされたのだった。




ここまでお読み頂きありがとうございました。


面白い!と感じていただけたらコメント、いいね、ブクマ等して応援して頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ