第三十八話 『モテ期』
第三十八話です。
なんだか調子がいいので可能ならば、、本日中にもう一話あげたい所存、、
上がらなかったら、調子に乗ったんだな、、と察してやって下さい、、
感想、ご指摘、いいねなどお待ちしております。
「それで?どういうつもりな訳?」
そんな言葉を耳にしながら、俺は空を見上げた。
ーーー拝啓、父上、母上。
『モテ期』というヤツは誰でも人生に2〜3回は来る、、、なんてよく耳にしますが、どうやら俺にもそのモテ期ってヤツが来たみたいです。
「ねぇちょっと!聞いてんの!?」
そんな言葉で思考は中断され、視線を空から下ろすと目の前には3人の女子が立っていた。3人とも3年の先輩らしい。実は先日、同じく3年の先輩である女子生徒に告白され、断ったのだが後日その先輩の友達を名乗る目の前の3人組が現れそのまま体育倉庫裏というベタすぎる場所に連行されて現在に至るわけだ。
コイツらの言い分をざっくりまとめると「テメエなにウチらのダチ泣かせてくれてんだ?」、、、だ。
いや、、知らねえよ。
そううんざりしつつもこのまま言葉のサンドバックにされる謂れも趣味もないので普通に反撃するために口を開いた。
「まず、オメエらは誰だよ?これは俺と告白してきたあの人の問題だ。他人がしゃしゃり出てくんなカス」
「はぁ!?だからウチらはあの子の友達だって、、、」
「じゃあ」
相手のセリフに被せるようにそう言って黙らせた俺はそのまま言葉を続けた。
「じゃあ仮に、あの子と俺が付き合う事になったとして、デートする度にお前らも友達だからって必ずついて来んのか?来ねえだろ?付き合ってんのは俺ら2人なんだから当然だよな?それを踏まえてもう一度言うけど、これは俺ら2人の問題だ。関係ねぇ外野が一々口出しすんな」
「、、でも、、泣くようなフリ方する必要ないでしょうが!!」
「いや、別に暴言吐いた訳じゃねえし、、そもそも泣かねえフリ方ってなんだよ?勇気出して好きな奴に本気で告白して断られりゃそりゃ真剣であればあるだけ普通泣くだろ?、、それともなにか?君はとても魅力的だけど俺の方が君に釣り合わないから、、とかなんとか耳障りのいい嘘ついて変に希望持たせてやりゃよかったか?もしくは現状全く好きじゃないのに哀れんで付き合ってやりゃよかったのか?」
そんな俺の言葉に、3人とも何か言いたげにしていたが結局何も言えずに押し黙った。そんな3人に冷めた目を向けた俺は再び口を開いた。
「お前らは、ただ気に食わなかったんだろ?本当は告白の成否なんてどうでもよくて、、せいぜいが友達だし成功してくれればいいな、、程度にしか思って無かったけど、ダチが目の前で泣いてるのを見て嫌な気分になった。、、要は見たくないもん見せられた腹いせにここに来てんだろ?」
「、、、ッ!!違う!!私達はあの子の為に、、」
「あの子の為ってんなら今してる事が逆効果でしかないの、、普通に考えたらわからないか?、、まさかとは思うがこの行動であの子に対する印象が良くなるなんて寝ぼけた事本気で思ってないよな?、、それにお前らここに来てから一度でも『考え直してあげて』って言って来たか?あの子の為を思うのなら、出てくるべきはそういう言葉じゃねえのか?それとも単純に泣かせた事の復讐か?体を震わせてまで勇気出して告白してくれたあの子がそんな事望んでたのか?」
そこで一旦区切り反応を待ってみたが立て続けに繰り出された疑問にまた3人とも押し黙ってしまったので俺は再び喋り始めた。
「、、お前らが怒ってんのは『自分の為』でしかねえよ。しかも自覚がねえのがタチが悪い。俺、そういうの1番嫌いだし不快だから二度とそのツラ見せんなよ」
唇を噛んで俯いている3人を一瞥した俺は、それだけ告げてさっさとその場を後にするのだった。
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「ハァ、、モテるって、、大変なんだな、、」
「、、、それ、普通私に言う?」
体育倉庫裏での一件を終え、ため息混じりにそう口にした俺にニチカはジト目を向けてそんな事を言って来た。
、、、確かに言われるとちょっとどうかと思わなくもないが、愚痴くらいは許して欲しい。なんせこれで13回目なのだ。
俺の出演した番組が放送されてから露骨に女子に話かけられたり告白される機会が増えた。
まぁそれに関してはわからないではない。有名人は理由もなくモテるものだし、俺には「勇者」と言う肩書きもあるからこの世界じゃ将来も安泰だ。現に、既に訓練用の刀の調達含めて国には色々と世話になっているし、近々俺専用の法律が立案される事も決まっている。正直、この国にいる限り何かに不便することはもう無さそうな勢いである。それでいて国に縛られていると言う事もないのでそりゃあ多少見た目や性格が自分の好みじゃなかろうと関係ないほどの魅力が今の俺にはあると言っていいだろう。
なのでなんで俺みたいなのが、、とは思うが同時にモテる事に関してはそれほど不思議には思わない。
、、思わないのだが、番組が放送されてからまだ1週間も経ってないのにこれである。ラブコメの主人公もしっぽ巻いて逃げ出しそうなくらいハイペースなモテっぷりだ。ちなみに先程のように後から友達を名乗る連中が押しかけて来たのは今回で三度目だった。
そりゃあ俺だって男だし、一度はモテまくってハーレムを築いてみたい等と馬鹿なことを考えた事もあるし、モテる奴は全員タンスの角に小指をぶつけてしまえばいいのにと呪ったりもしていたが、、、いざ自分がその立場に立ってみるとモテると言う事の大変さが身に染みてわかった。
正直、嬉しいと言う気持ちもある。だが、それ以上に告白を断るのも、目の前で泣かれたり無理に笑われたりするのも結構堪えるのだ。あとさっきみたいな関係ないやつにまで恨まれんのも死ぬ程めんどくさい。
「、、、誰かと、付き合ったりしないの?」
そんな事を考えているとポツリ、とそう呟いたニチカに俺は「ん〜?」と考えてから口を開いた。
「、、、そんなこと言われてもなぁ?ほとんどがその日初対面レベルの人達ばっかだしいきなり付き合えとか言われても普通に困るし、、クラスの奴からも2人ほど告られたけど、、そっちに関しては付き合うどうこう以前にまず神経を疑うレベルだしなぁ、、」
「うっ、、それは、、私にも刺さる、、」
そんな事を言って胸を押さえて苦しそうな表情を浮かべたニチカに「何言ってんだ?コイツ」と不思議に思った俺はそのまま思った事を口にした。
「、、、?何言ってんだ?アイツらとニチカじゃ全然違うだろ?お前は、きちんと自分がして来た事と向き合って反省した上で想いを伝えてくれたから、、、まぁ嬉しかったし不快に思ったり神経を疑ったりはしてないから気にする必要はねえよ」
「っ!!、、、そ、、そう」
俺の言葉を聞いたニチカはボッと一瞬で顔を真っ赤にすると、そのまま俯いて無言で俺の手を握って来た。
「、、、そういや、告白されてからちゃんと返事できてなかったけどさ、、」
「っ!!、、、うん」
俺が話を切り出すと、肩をピクリと震わせ、握った手にギュッと力を入れたニチカは小さな声で頷いた。
「情けない事に、、わかんねえんだ。正直な所、告白されて素直に嬉しかったし、実際に付き合ったりすんの想像してみても簡単に想像できたし全く抵抗感も無かった。その程度にはお前の事を大切な存在だと思ってるし好意もある。、、でもそれが、異性としての好意なのか、、ガキの頃からずっと一緒に育って来た奴に対する好意なのかが、、わからない」
「、、、うん」
「それだけ大事に思ってて、抵抗感もねえんだから本来なら、変に悩まねえでさっさと付き合っちまえばいいんだろうけど、、俺が元の世界に帰るつもりだってのもある。、、、その辺りの事も含めて、色々ちゃんと考えて答えを出すから、、、少し、時間をくれないか?」
「、、、うん、、わかった」
俯いたままそう短くそう答えるニチカに、物凄く申し訳なくなって来た俺は謝罪の言葉を口にした。
「ごめんな、、お前は勇気出して正面から気持ちを伝えてくれたのに、、こんな煮えきらねぇ答えしか返せなくて、お前を落ち込ませて、、我ながら本当に情けねぇ、、」
そんな俺の謝罪を受けたニチカは顔を上げて首を横に振った。
「謝らないで。、、それに、勘違いしないで?わたし、全然落ち込んでなんてない。むしろ、飛び跳ねたいくらい喜んでるの我慢してただけだから。、、だって当然でしょ?好きな人に付き合ってる想像しても嫌じゃ無いって言ってもらえた上に、脈なんて無いと思ってたのが結構脈アリだってわかったんだもん」
そう口にしたニチカの表情には確かに、とても落ち込んでいるとは思えないほど眩しい笑顔が浮かんでいたのだった。
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春樹と家の前で別れた私は、玄関をくぐり靴を乱暴に脱ぎ捨てるとそのまま手洗いうがいも済ませずに自室に入り、カバンを適当に放り投げて制服のままベットに飛び込み枕に顔を埋めた。
「〜〜〜〜〜ッ!!!」
そのまま、言葉にならない悲鳴のようなものを上げ、足をバタつかせた。制服がシワになってしまうが、そんな事構うものか。
ヤバい、幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。
春樹は、私の事をしっかり考えていてくれた。私が気持ちを伝えた事が嬉しかったと言ってくれた。たまらず思わず握ってしまった手を、振り払わずに握り返してくれた。
それが、、その事が一体どれだけ嬉しい事だったのか春樹はわかっているのだろうか?
確かに、以前も私の方から手を伸ばして春樹の手を握った事はあったが、あの時は純粋に落ち込んだ春樹を慰めてあげたいと言う気持ちだけだったし、春樹もそのように受け取っているだろう。
でも、今回は違う。手を握った理由も、2人の間に流れていた空気も、何もかもが違う。それでも、春樹は受け入れた。
春樹にとっては異性と手を繋ぐことなんて別にたいしたことでは無いのかもしれない。それでも、あの時、あの場の空気で受け入れた事の意味を春樹は多分自覚していない。普通は本当に微塵も付き合う気がないのならあの状況であれば流石に手を振り解くはずだ。
何より春樹は私を異性として見ているのか、昔からの幼馴染として見ているのかわからないと言っていたが、同時に私と付き合う事に抵抗がないとも言った。
春樹は、気付いているのだろうか?
『昔馴染み』、『友達以上恋人未満』、『兄妹』、、、なんだっていいがとにかく春樹の言う「ガキの頃からずっと一緒に育って来た奴に対する好意」という定義は、付き合っている事を想像出来て尚且つ抵抗感を抱かなかった時点でそもそも前提から崩れている。本当に純粋に『家族』や『ただの女友達』としか思っていないのなら、付き合う事を想像するなどあり得ない。その上で抵抗感が生まれないなどもっとあり得ない。
あの様子だと、気付いてないんだろうな、、、気付いて欲しいな。
、、、とにかく、私にも充分脈がある。今はそれが知れただけでも充分すぎる。
「、、、、、、、、、」
一通り悶えて少し落ち着いた私は、寝返りを打って天井を眺めつつ冷静になって今の自分について考えてみた。
相変わらず、自分の事は好きになれない。アイツをいじめた私が何を、、と未だにふとした拍子に思ってしまうし、ここ最近の女の子からモテてる春樹を見るたびに醜く嫉妬してた自分も嫌いだ。
それでも、今日春樹と話していて明確に自分の中で変わった部分がある事に気が付いたのだ。
それに気が付いたのは、春樹の「元の世界に帰るつもり」と言う発言を聞いた時だった。少し前までの私なら、間違いなく嫌がっていた。聞きたくないと耳を塞ぎ、現実から目を逸らし、いざその時がくれば泣いて行かないでとみっともなく縋りついていたはずだ。それが先程は、むしろ叶うなら春樹を元いた場所に返してあげたい。私に何かできる事があるのなら手伝いたいとすら思ったのだ。
もちろん、春樹と離れ離れになりたいわけではない。だが、離れるのではなく私がついていけばいいと、そう思ったのだ。
考えてみれば単純な事だった。もちろん、この世界を離れる事への不安はあるが、春樹がいてくれるのなら世界なんてどこでもいい。それに前にも春樹が言っていたように向こうに行けるなら、きっと帰ってくる事だって出来る。
今日、気が付くまで自覚していなかったが、きっと春樹に諦めないと宣言したあの日、あの時に既にこの答えは出てたいたのだと思う。
きっと、この道の先には様々な障害が待ち受けている。
どうやって世界を渡るのか、渡れたとして「統合」はどうなるのか、それらをどうにかしたとして向こうの私との関係、住む場所、戸籍と今パッと思い付くだけでもこれだけある。その障害を取り除くのに何をすればいいのか今は検討すらつかない。
それでも、私は春樹を諦めない。春樹から拒絶されるまではどこまでだってついていく。春樹のいる場所が、私のいたい場所だ。
改めてそう決意した私は、頭の中で一区切りがついたせいか心地よい眠気に襲われ、そのまま眠りについたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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