第三十五話 『魔法』
第三十五話です。
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「こ、、、怖ぇえぇ、、、」
眼下に広がる街並みを目にした俺は、思わずそんな声を漏らした。
現在、俺は自宅上空に立っている。
と言うのも遡る事2時間ほど前、興奮した状態で緋月に魔法の教えを請うた俺に困ったように苦笑いを浮かべた緋月は頬をぽりぽりと掻きながら「教えろと言ってものう、、技術面で特に教えるような事はないのじゃ。知覚はできておるのじゃから試しに何か念じてみるといいのじゃ」、、、と言われたのが始まりだった。
そんなフワッとした事言われても、、、と思いつつ試しに自身の周囲の球状範囲から魔力が消えるのを想像して『消えろ』と心の中で唱えてみると、それまで感じていた魔力が嘘のようにフッと消えた。
「、、、、、、、」
、、、え?嘘でしょ?こんな簡単に、、、?特に何か力を込めた訳でもなく、ただ念じただけだぞ?こう言うのってもっとこう、、なんか特訓とかした末に使えるようになるものなんじゃないのか、、?
、、、はっ!?
もしかして俺に何か物凄い才能があって、、!?
あらヤダ、、もしかして俺って魔法の天才だったりする!?
あまりにあっさりできた事で若干混乱していると、そんな俺を見て肩をすくめた緋月が口を開いた。
「、、、ほらの?魔力を知覚さえできればなんと言う事はない。後は念じれば誰でも簡単に行使できる故、教える事など特にないのじゃよ」
「、、、、、、」
うん、知ってた。別に本気で俺に特別な才能があるなんて思ってなかったし特にガッカリなんてしてない。
、、、してないったらしてない。
「これで、、炎の魔法とか使ったり出来るのか?、、、あれ?そういや俺の魔法の属性ってなんだ?」
落ち込んだ気分を切り替えるようにそう問いかけると、緋月はキョトン、とした表情を浮かべてから俺の問いに答えた。
「別に属性とか関係ないぞ?体内に取り込んだ魔力を使うならまだしも、大気中の魔力を使用するのにその様な縛りなどないのじゃ」
「え、、?そ、、そうなの?」
「うむ、試しに火なり氷なり出してみると良いのじゃ」
そう口にする緋月の言葉を聞いた俺は、期待に胸を膨らませ、試しに手のひらの上に小さな火の玉を作る様にイメージして念じてみると、、、特に何も起きなかった。
「嘘つきっ!!!」
念願の魔法が撃てるという期待が裏切られ、ついでに謎の羞恥心に襲われブワッと涙を流して叫ぶ俺を見てケラケラと笑った緋月は笑いながら口を開いた。
「おそらくイメージの仕方が悪いんじゃろうな。いきなり火の玉を想像するのではなく、まず魔力を手のひらに集め、その集めた魔力の塊に着火する様なイメージで念じてみよ」
「、、、、、、、」
緋月に言われた通りに念じてみると、今度はポッと小さな音を立てて手のひらの上に野球ボールくらいのサイズの火の玉が出現した。
「お、、おぉぉおぉお、、って熱っツァ!?」
本当に火の玉が出現した事に感動する間もなく、当然といえば当然なのだが即座に火の熱に襲われた俺が慌てて手を振っているとその様子を見ていた緋月が再びケタケタと笑いながら助言を投げかけてきた。
「普通に火を思い浮かべるとそうなるのじゃ。『自らは触れても平気な火』を思い浮かべてみよ」
そう口にした緋月に「そう言う事は先に言ってくれよ、、」とブツブツと文句を言いながらおっかなびっくり言われた通りに念じてみると、今度はなぜか熱を全く感じない不思議な火の玉が生み出された。
「、、、、、、、」
試しにとバケツに水と新聞紙を用意した俺は、新聞を数枚くしゃくしゃに丸めて再び火を生み出し、近づけてみた。すると普通に新聞に着火した。どうやら俺が熱を感じないだけで問題なく火として使用できるらしい。
「お、、おぉぉおぉお、、って熱っツァ!?」
着火の為に近付けていた手に、再び熱を感じて先ほどの焼き増しのように慌てて手を振っていると、こちらも焼き増しの如くケタケタと笑い声を上げた緋月が説明をしてきた。
「それはお主の魔法によって引き起こされた現象であってお主の魔法とは別物故、普通に熱を感じるのじゃ」
「、、だから、そう言う事は先に言ってくれよ、、、」
半眼で緋月を睨みつつそう口にした俺は、とりあえず燃える新聞紙に水をかけて処理した後、色々と試行錯誤を開始したのだった。
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そして、色々と試行錯誤した結果。「魔力で火や氷などの現象を引き起こす」よりも「魔力そのものを操る」方が簡単で手っ取り早いと言う結論に行き着いた。
例えば火の玉で相手を攻撃する場合、『手のひらに魔力を集める』→『集めた魔力を球状に圧縮する』→『圧縮した魔力に着火する』→『着火した魔力を標的に向け放つ』と言う工程を経る事になる。
これが魔力そのもので攻撃する場合、『手のひらに魔力を集める』→『集めた魔力を球状に圧縮する』→『そのまま前方に放つ』で済む。
要するに、単純に発動の際の手順が端折れて楽なのだ。
その上、「火の玉」の場合、火なので相手に火傷をさせる事はできるが、物理的な威力はないに等しく、着弾と同時に散ってしまう。
これが「圧縮した魔力の塊」をぶつけた場合、物理的な威力を持つ事が判明したのだ。
つまりは、、まぁ時と場合によりけりではあるだろうが、基本的には普通に魔力の塊をぶつけた方が簡単で尚且つ威力も高い。
やっと念願の火の玉を撃つことができたのに、それよりも目に見えず、周囲からは何をしているのかよくわからないこのやり方の方が便利なのはなんとも微妙な結果だが、、まぁ魔法が使える事に違いはないので良しとする。
そう割り切って、更に色々と試行錯誤を重ねた結果現在に至るのだが、、、、
「こ、、、怖ぇえぇ、、、」
眼下の街並みを見下ろした俺は思わずそう呟いた。
物理的な威力あるのなら触れるんじゃね?と思い、試しに適当な形状に生成し、空間に固定した魔力に手を伸ばすと、普通に触れることができた。
触れるんなら、乗ったりもできんじゃね?と思い、薄い板状に圧縮した魔力を成形し、その上に足を伸ばしてみると普通に乗ることができた。
なら、階段みたいに連続で足場作っていけば擬似的に空中移動もできんじゃね?と思った結果、一歩一歩踏み出すごとに足場を生成してここまで来る事ができた、、のはいいのだが足元には確かに何かを踏み締めている感触はあるものの、見た目は普通に透明なのでめっちゃ怖い。
や、、やばい、、流石に足がすくんできた。楽しくなって調子に乗ってたけどこの高さで何かの間違いでいきなり足場が消えたら洒落にならねえ、、、さっさと戻ろう。
そうして登った時と同様に、一歩一歩足場を作りながら降りてくると、何やら緋月がニチカを背負っている事に気が付いた。
ニチカが白目を剥いてエクトプラズムを吐き出しているのは相変わらずだが、、なんでわざわざ背負ってるんだ?
そう思って尋ねてみたところ「途中で起きてきたのじゃが、お主が宙に浮いてるのを見て説明を求められ、ありのままを話したら再び気絶したのじゃ」、、、と言うことらしい。
すると、ニチカを縁側に運んだ緋月は表情を真面目な物に変えて話しかけてきた。
「さて、ここからは真面目な話じゃが、その力を使用する時は充分に注意するのじゃぞ?刀の方も扱いに慣れるまでは代用品を使うとよいのじゃ」
「、、、なんとなくわかるけど、一応理由を聞いても?」
俺がなんとなく察しつつも尋ねると、緋月は「もちろんじゃ」と頷いてから理由を語り始めた。
「通常、人の子らが使う魔法は体内の魔力を使用する性質上、魔力切れと言う名の果てがある。、、まぁ、呼吸と共に取り入れれる上にわずかな期間で体質に合わせ変質するので長時間の戦闘でもしない限りはそうそう切れる物でもないのじゃが、、それでも確かに限界はある。威力や規模に関しても使用者の体内に存在する魔力を超えるものは使えぬ。それに比べてこの力は、それらの果てがない。威力も、規模も、継戦力も何もかもが桁違いじゃ。その気になれば、国の一つや二つ一夜のうちに簡単に滅ぼすことが出来るじゃろう」
「、、世界を滅ぼすつもりはねえよ」
俺がそう答えると、緋月は大きく頷いてから再び口を開いた。
「もちろん、お主がその様な人間でない事はわかっておる。問題ありと判断したのならばそもそもこの力の事は教えておらぬよ」
緋月はそこで一旦区切り、「じゃが」と続きの言葉を口にした。
「、、じゃが、感情が大きく揺さぶられたとすればどうじゃ?例えば、お主の大切な誰かが殺されたとして、その時お主は冷静でおられるのか?」
「それは、、、」
自信が持てず、思わず言い淀んだ俺に緋月は更に言葉を重ねた。
「その力は「想い」で使うと言うたな?つまり、激情に駆られて使用した場合、簡単に暴走してしまう危険性もあるのじゃ。もちろん、妾が春樹と出会ってからしっかりと見定め、お主なら大丈夫じゃと感じたから話したが、危険な力である、、と言う事は重々承知しておいておくれ。常に冷静である事を心掛けるのじゃ」
「わかったよ、約束する。、、、刀の方も同じ様な理由か?」
「刀の方は実戦で使う分には問題ない。じゃが、訓練などで使うのはやめておくのじゃ。、、アレは、刀の扱いに不得手な者が扱うには少々斬れすぎる。故にまずは、訓練の際は別の武器で代用して扱いを学ぶべきじゃ」
「言ってる事は理解したし承知した、、、けどそういやそもそもあの刀については何か力があるって事しか聞いてねえな?どんな力があるんだ?」
俺がそう問いかけると、緋月はなんて事ない様な雰囲気でつらつらとその驚くべき性能を語り始めた。
「うむ、あの刀は本来斬れぬ物も斬ることができるのじゃ。魔法や結界、空間はもちろん概念までもな。その気になれば、『怪我をしたと言う事実』ごと斬ったりも可能じゃ。、、まぁ使われた素材が妾のほんの一部じゃから流石に大怪我や死んだ事をなかった事にはできぬし、そもそもお主は元々の肉体の生命力に加えて妾と盟約を交わした影響でそれぎ更に強化されておる故かなり怪我の治りが早くなっておるからあまり意味がないかもしれんがの」
、、などと笑いながら言う緋月。
ついでに、離れた場所にいても瞬時に手元に呼び寄せる機能に自動修復機能、更にはどれだけ距離があろうと遠隔で刀を起点に魔法の行使が可能だったり、刀身に風の刃を纏わせたりできるらしい。
最後のに関してはなんなら刀を使わなくても自前でやれそうなのであまり意味がなさそうだが、、その他は破格の性能と言っていいだろう。
「まぁそう言うわけで、人殺しになりたくなければ武器の扱いに慣れるまでは仕様は控えておく事じゃな!」
「、、そっ、、」
「、、、うん?なんじゃ、、アイタァ!?」
「そう言うクソ大事な事はもっと早めに言えやこのクソボケがァァァァ!!!」
ガハハ!と笑いながらそんな事を言う緋月に思わず大声を出してその頭を引っ叩いてしまった俺は今更になってとんでもないもんを腰にぶら下げていた事を知り、冷や汗が大量に吹き出した。
あっっっぶねぇなオイ!?
いや、、マジで危ねぇよ!?慣れてないからって理由で使わなかったけど下手をすりゃあ霧島との模擬戦で使ってても全然おかしくなかったぞ!?なんだ?概念を斬るって。そんな物騒なもん気軽に渡してくるんじゃねえよ!?100歩譲って渡すにしてもちゃんと渡す時に説明しろよ!?
「う、、ん、、あれ?わたし、、、」
俺が愕然として頭を抱えているとそんな声が聞こえてきた。声のした方に視線を向けるとどうやらニチカが再び目を覚ましたらしい。
「あれ、、?確か春樹が空に浮いてて、、」
「、、、、、、、」
寝ぼけた様な事を口にするニチカを見て、一周回ってなんだか冷静になってきた俺は、未だ状況が飲み込めていないニチカに澄み切った笑顔で尋ねたのだった。
「なぁニチカ、、この辺に武器屋って、、ある?」
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