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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
38/56

第三十三話  『訓練』

お待たせしました。第三十三話です。


感想、ご指摘、いいね等お待ちしております。

 


「渋谷くん、少し聞いてもいい?」



 クラスメイト達の自己紹介(自白)を聞き終え、先生に用意させた新しい自分の机で一息ついていた俺にそんな声がかけられた。



 声の方に視線を向けると、そこには1人の女子生徒が立っていた。



 名前は霧島 鏡花(きりしま きょうか)



 、、確か、盛島、広瀬程ではないがニチカと結構仲が良く、美人だがとても気が強く大の男嫌いで有名だった。告白してきた男をこっぴどくフッて、そのうち言いよる男はいなくなったとか、、、後は薙刀の腕前が全国大会のトップ争い常連レベルだと風の噂で聞いたことがある。



 、、、少なくとも、()()()()()()の話だが。



 普通に話しかけてきたって事はこちらではそうでもないのかな?と周囲をチラリと見てみると明らかにみんな驚いた様子でこちらを見ている事からどうやらこちらでも男嫌いは健在らしい。



 ていうか、ビビられている自覚はあるし、むしろそうなるように仕向けた部分もあるからさっきの今で普通に話しかけてくる奴がいるとは思わなかったな、、、



「、、、別にいいけど?」



「さっきの、、あんなこと聞いて何するつもりなの?復讐でもするつもり?」



 俺が話しかけられた事に若干驚きつつ了承すると、霧島はそんな事を聞いてきた。若干、トゲのある言い方だ。さっきは個人的に思うところもあり結構本気で脅したつもりだったのに大した度胸だ。目つきも挑発的というか、、なんだかギラギラしているしどうやら強気な性格の方も変わらずらしい。



「別に?個人的にはお前らに恨みなんてないし興味もねぇからあの情報使ってどうこうするつもりはねえよ?あと復讐は、、するつもりってか()()()()()



「、、、どういう事?」



「お前は、、あんまり堪えてねぇみたいだけど、、他の奴らにはさっきので充分嫌がらせにはなっただろ?それで復讐は終わりって事」



 俺がそう答えて周囲に視線を巡らせると、それまでこちらを見ていたクラスメイト達はビクリと肩を震わせて視線を逸らした。そんな様子を見ていた霧島はやはりわからないと言った様子で口を開いた。



「よくわからないけど、、恨みがないって言うわりに復讐って矛盾してない?」



 そう問いかける霧島に俺は苦笑いを浮かべて口を開いた。



「お前らがどう認識してるか知らないけど()は本来こっちの世界に来た時点でこっちの俺に取り込まれて消えるはずだった。それがいろんな偶然が重なって逆に俺が取り込む形でこっちの世界に来ちまった」



 俺はそこで一旦言葉を区切ってから再び口を開く。



「、、、もちろんそうなるように望んだ訳ではないし、そもそも望んだところでどうこう出来るもんでもねえ。それに、俺が消えなくて心底良かったしラッキーだったって思ってるけど、、、それでもやっぱりこっちの俺に罪悪感みたいなのはあんだよ」



「、、、こっちの渋谷くんの為にあんな事したって事?」



「まぁ、そういう事。こっちの俺も、さっきのクラスの連中のビビりっぷり見りゃザマアミロって笑って成仏してくれんだろ。、、まぁ、正確には魂も肉体も俺ん中に溶けて消えたらしいからそもそも成仏もクソもねえんだろうしただの自己満足だけど、それでも何もしねぇのは気持ち悪かったんだよ」



 俺がそう答えると霧島は納得の表情を浮かべ、確認するように問いかけてきた。



「、、、じゃあ、一人一人に復讐して回るつもりはないって事でいいの?」



「さっきも言ったけど、()個人としちゃお前らに恨みも興味もないしこれ以上の事するつもりはねえな」



 俺がハッキリと答えると何故か霧島は残念そうな表情を浮かべ「そう、、、」と呟いた後、考え込むような素振りを見せた。



 、、、今、残念がる要素あったか、、?



 俺がそう思っていると、再び霧島が口を開いた。



「ところで話は変わるんだけど、今日の午後からの授業で模擬戦あるじゃない?そこで私とやらない?」



「本当に話変わったなオイ、、まぁ、、別にいいけど」



「やった!!じゃあ決まりね!!」



 困惑しつつ了承した俺に、霧島は嬉しそうにガッツポーズをして自席に戻ったのだが、、それ以降、やたらとこちらをチラチラと見てくるようになった。物凄くギラついた目で。



 、、、な、、なんなんだ?



 さらに困惑する俺だったが、答えは出ないまま授業中や休憩中ニチカ達に学校の事を教えてもらっている時にもそれは続き、結局午後の模擬戦の授業を迎えるのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「おぉ、、、こんなんがどこの学校にもあんのか、、、」



「き、、規模はまちまちだけどね」



 感嘆の声を漏らした俺に酷く緊張した様子のニチカが答えてくれる。



 現在、模擬戦の授業とやらで先日外観だけ目にした闘技場にやってきた俺達だったのだが、その内部は、、知ってる近いものに例えると、ボクシングの会場のリングを数倍に広くしたような感じだった。四角形のリングにロープはなく四角に大きな柱が立ち、四方を囲うように2mくらいの高さの壁があり、その上に少し段差をつけた観客席のようなものが置かれている。なるほど確かに「闘技場」と言った様相だ。



「、、、、、、」



 チラリ、とニチカの様子を見ると顔は青褪めある方向をチラチラと見ている。



 、、いや、ニチカだけでなく俺と、俺の中で変人疑惑が浮かびつつある霧島以外、クラス全員がニチカと同じような状態だ。



 まぁ、原因はわかってる。



「ところで、、なんでアンタがここにいんの?」



 俺が半眼でそう尋ねると、闘技場の中心で威圧感を放ちつつ腕を組んで仁王立ちしているこの事態を引き起こした原因が口を開いた。



「臨時講師になった」



 、、、うん、わからん。端的な答えは嫌いじゃないが端的すぎてわけがわからん。一体何がどう言う経緯でそうなったんだよ、、、、



「いや、、アンタ国の人間じゃなかった?、、なにしてんの?マジで」



 半眼を強めそう問いかける俺に、何故か学校にいる牧瀬さんはめんどくさそうに舌打ちをすると口を開いた。



「国の人間だからいんだよ。私自身が出張る事は稀だが、、たまにこうしてガキどもに戦闘を教えんのは普段からやってんだ。ウチの部署は暇なんだよ。それに、護衛と訓練が同時にできて、なにより私が暇を持て余さねぇ素晴らしい方法だろうが、文句あんのか?ア゛ァ゛?」



 ヤンキーの様な口調でそんな事を言う牧瀬さんの言葉に俺はなるほど、と納得した。暇がどうとかの件は知らんが、確かに効率はいいしなにより放課後や土日を使って訓練するものだと思っていたのでぶっちゃけ助かる。



 俺がそう納得していると、クラスメイト達の方に視線を向けた牧瀬さんが口を開いた。



「、、そう言う訳で、臨時講師の牧瀬董華だ。普段はコイツ(勇者)の護衛をしてる。とりあえず今日はとやかく口出しするつもりはねえ。、、、元々、模擬戦の予定だったんだろ?なら、普段通りにやれ。そこで見定める」



 そう口にした牧瀬さんにクラスメイトが困惑している中、霧島が待ってましたと言わんばかりに声を張り上げた。



「はいはいはーい!!私からやる!行こっ渋谷くん」



「ちょっ、、俺まだルールとか何も知らねぇんだけど!?」



「そんなのただ相手を叩きのめせばいいんだよ!簡単でしょ?」



 急に手を引かれて焦る俺に笑顔で恐ろしい事を口にした霧島は止まる様子がない。



 、、、あぁっ!みんなが観客席の方に向かっていく、、完全に俺達がトップバッターを飾る空気だ。やばい、、マジで俺ルール知らねえんだって!叩きのめせばいいって文字通りか?なんでもありでいいのか!?



 俺が盛大に焦りそんな事を考えているうちに霧島は俺の手を離し10歩程離れた位置で薙刀を構えた。



 、、、あれ、、多分だけど真剣だよな?普通こういうの木刀とか使うんじゃないのか?闘技場には結界があるって話だし死ぬことはないんだろうけど痛みとかその辺はどうなんだ?



 疑問に思った俺は試しに自分の腕をつねってみるが、、、うん、普通に痛え。あんなもんでぶった斬られる痛みを味わうなんて、、たとえ死ななくても絶対に嫌だぞ?



「、、ねぇ。武器、抜かないの?もしかしてわたし、ナメられてる?」



「、、あ?」



 俺が躊躇っているとそんな事を突然言われ、何の事だ?、、と疑問に思ったがそう言えば俺、刀腰に差してたな、、と刀の存在を完全に忘れていた俺は苦笑いを浮かべて口を開いた。



「そんなんじゃねえよ。俺の元いた世界じゃ、こういう近接武器を扱える人間なんてほんの一握りしかいなかったんだよ。当然、俺も刀どころかバットすら持って戦ったことなんざねえ。要するに、素手のが強い」



「なるほど!じゃあ遠慮なくっ、、ッ!?」



 俺の言い分に納得の表情を浮かべた霧島が獰猛な笑みを浮かべ前傾姿勢になり踏み込む、、前に俺は全力で地面を蹴った。



 地面が爆ぜ、俺が一瞬で距離を詰めてきた事に表情をこわばらせる霧島に構わず拳を繰り出すと霧島は咄嗟に柄の部分でガードしつつ後ろに吹き飛んだ。



 、、、おぉ?死なないんだからとそれなりに力を込めたのにまともに防がれた。てか、今わざと後ろに飛んで威力殺したなコイツ。



 普通に対応された事に驚きつつ後ろに飛んだ霧島に向かって更に踏込み再び肉薄した俺は口元に笑みを浮かべた。



「長物持ってるやつとケンカなんかした事ねえけど、、多分距離詰められんの嫌、、、うぉっ!?」



 近付かれるのは嫌だろう?と更に距離を詰め肉薄して攻撃を繰り出そうとした俺の言葉は、霧島が胸の前で持っていた薙刀を身体ごと捻るようにして放った足払いによって中断させられた。



 石突の部分が脚に当たり、体勢を崩された俺の拳は空を切りそのまま勢い余ってつんのめった。そして、そんな俺の背中に捻った身体をそのまま回転させる事で勢いを乗せた突きが迫ってきた。



「、、、ッ!!こなくそッ!」



 倒れ込みながら背中に強烈な悪寒を感じた俺は、全力で身体を捻って間一髪で突きを回避しつつ下から掬い上げるようにして薙刀を殴り付けた。そして薙刀が大きく跳ね上がられた事で霧島の体勢が崩れた隙に慌てて起き上がり距離を取る。



 や、、やべぇコイツめっちゃ強ぇ!?



 いやまて、俺が弱いのか?、、そういやこの世界に来てから今んとこ魔物にしかまともに攻撃して当てれてなくね?、、あ、、やばい、ちょっと泣きそうだ。



「、、、流石ね」



「、、、うん?」



 突如降って湧いた自分が弱い説に動揺している俺にそんな言葉が投げかけられ、何の事だ?と視線を向けると霧島の薙刀は柄の部分が中程からへし折れ、刃のついている側が地面に突き刺さっていた。



 どうやら、俺の初撃を防いだ時に衝撃を殺しきれずにヒビが入ったのが先程の苦し紛れの一撃で完全に折れたらしい。なんか勝った感がまるでないが、まぁ結果オーライだろう。



「、、、えっと、、俺の勝ちでいいのかな?」



「まさか。まだわたしも渋谷くんも元気でしょ?」



 内心の動揺を全力で押し隠しつつそう口にすると、とても女の子がしちゃいけない様な獰猛な笑みを浮かべそう言った霧島は落ちている薙刀を拾い上げ、元々持っていた折れた柄と共に構えた。



 二刀流もいけんのかよ、、てか戦闘狂かよこいつ。こりゃ手加減なんて考えてたら普通に負けるな。



「、、フゥーー」



「、、、ッ!!」



 そう考えた俺は、一度目を閉じ深呼吸をして意識を切り替え、再び霧島に目を向けるとその表情が変化した。相変わらず口元に獰猛な笑みを浮かべてはいるのだが、その口元は若干引き攣り汗をかき始めている。



「、、なんだァ?来ねえのか?さっきまでの威勢はどうしたよ?」



「、、、本当に同一人物?最高ね、あなた」



 その様子を訝しんだ俺は、試しに挑発してみるが霧島はそう口にしただけでやはり動こうとしない。このままでは埒が開かないので先程と同じ様に再び踏み込んだその瞬間、違和感を感じた俺は立ち止まった。



「、、、ッ!?なんだ、、これ?」



 それは、違和感としか言えないモノだった。うまく言語化ができないが、、、とにかく周囲に()()がある。歩いたりすると肌に空気が当たるのを感じるのと同じように、()()()()が肌に当たるのを感じるのだ。風が当たった時の様に暖かいとか冷たいとか温度を感じる事はないし、肌で感じている、、というのも少し違う気がするが、とにかく何かが俺の全身に触れているのがわかった。



 霧島に何かされた?と視線を向けるが、、霧島は急に立ち止まった俺に困惑した様子でこちらを見ている。なら他の誰かかと視線を巡らせてみるが、誰も彼も不思議そうな表情を浮かべている。そもそも、攻撃されていると言う感じもしない。違和感は凄いし、事実こうして足を止めてしまっているので戦闘中に相手の動揺を誘う、と言う意味では有効かもしれないが、、なんとなくそれも違う気がする。



「なぁ、、霧島。さっき、、というか現在進行形だけど、、なんか、変な感じしないか?」



「、、、、、どういう事?」



 俺の問いかけに、霧島は更に困惑した様子でそう尋ねてきた。本気でわからないと言った様子だ。



 、、、まぁ、今はいい。痛みがある訳でもないし体調にも影響は出ていない。強いて言えば蜘蛛の巣が身体にまとわりついた時の様な、払ったはずなのにまだ身体にまとわりついている様な気がするあの時に似た気持ち悪さがあるくらいだ。



「いや、、悪いなんでもねぇ。、、、いくぞ?」



 そう考えた俺は急に戦闘を中断した事を詫びつつ頭を振って未だ消えない違和感を無理矢理無視すると、一気に踏み込んだ。



 再び地面が爆ぜ、一瞬で懐まで潜り込み肉薄するとそのまま全力で拳を振りかぶる。すると先程武器が破壊された経験からか今度は防御ではなく回避を選択した霧島は後ろに大きく飛んだ。



「逃すかオラァ!!!」



「ッ!!」



 距離を空けた霧島をすぐさま追い、再び距離を詰めようとする俺に苦々しげな顔を浮かべた霧島は左手に持っていた刃がついてない方の折れた薙刀を投擲してきた。



「ッ!、、っ痛ってぇなオラァ!!!」



 投擲物が額に当たり、額が切れたのか視界に鮮血が舞うが痛み的には大したことがないので構わず突撃し、苦し紛れに振るわれた薙刀を屈んでギリギリで躱した俺は、起き上がる勢いを乗せて全力のアッパーカットを霧島の脇腹あたりに叩き込んだ。



「ぐぅっ!!」



 そして今度こそ直撃しその確かな感触が手元に伝わってきた瞬間、苦悶の唸り声と共に霧島の姿が掻き消えた。



「、、、、、、あ?」



 避けられた!?あのタイミングで?どうやって??、、、魔法か!?



「あーあ、、負けちゃった」



 確実に当てたと思った攻撃を避けられたと呆然とする俺の耳にそんな声が届き、その方向に視線を向けると戦闘エリアの外側で大の字で横たわっている霧島の姿が目に入った。



 なんであんなところに?、、、てか、負けたってどういう事だ?やっぱり攻撃は当たってた?、、でも避けられたはずじゃ、、、あ、、



 急に目の前から人が消えて混乱していた俺は、そこまで考えてようやく答えに行き着いた。



 そういえば、結界内で一定のダメージを受けると外に弾かれると言ってたな。つまりはやはり攻撃はちゃんと当たっててそのダメージが許容量を超えたから結界の外に飛ばされたわけだ。



 俺が1人で納得していると、審判が俺の勝ちを告げる笛を鳴らしたのでとりあえず未だ倒れている霧島の元に近寄り、声をかける。



「お疲れ、、、怪我とかねえか?」



「、、ありがと。平気よ」



 俺がそう尋ねながら手を差し伸べると、その手を掴んだ霧島はそう答えて起き上がった。そして2人で観客席の方に近づいていくと青い顔でこちらを見ていた生徒たちの話し声が耳に入ってきた。



「す、、素手で結界外に、、?」



「致死量のダメージ与えないと結界外には弾かれないはずだよね?」



 、、、一定ダメージって致死量レベルなのかよとか、たかが高校の生徒同士の模擬戦で過激すぎないか?、、とか色々とツッコミたい所だが、正直今はそれどころではない。



 慣れとは恐ろしいモノで、最初ほど気にはならなくなってきたが違和感はやはりまだ消えてはいない。相変わらず痛みも無ければ体調に異変も感じないし、戦闘が終わっても消えない所を見るにやはり攻撃や妨害の類ではなさそうだが、、明らかに異常事態だ。



 未だ消えない違和感に考えを巡らせつつ席につくとそんな俺の様子を見ていた霧島が口を開いた。



「、、、ところで、さっきのなんだったの?変な感じがどうとか言ってたよね?最初は動揺でも誘う気なのかと思ったけど、、、その様子を見る感じどうやら違うんでしょ?」



 まさに今考えていた事について聞かれた。ちょうど良いので改めて聞いてみよう、、先程は戦闘中だったしまた違う意見が聞けるかもしれない。



「ああ消えてない。、、、こう、、なんつーか言語化が難しいんだけど、、なんか、空気とは別の何かが漂ってる感じしないか?」



「空気とは、、別の何か?」



 霧島はそう口にしながら周囲を見渡すがその表情には明らかに無理解と困惑の色が浮かんでいる。



「こうやって手を振ると肌に空気、、、風があたるのを感じるだろ?それとは別の何かがあるん、、だけどやっぱり何も感じないのか?、、こう、、熱くも冷たくもないし、感触もないんだけど確かにあるのはわかるっつーか、、」



「、、、うーん?」



 俺がなんとか説明しようと手をパタパタさせていると、霧島もそれを真似するがやはりわからないらしく首を傾げている。



「春樹、お疲れ様」



 そんなやり取りをしているとニチカと盛島、広瀬がやってきたので先程と同じ様に説明してみるが、やはり理解されなかった。周囲を見渡してみても違和感を感じている様な素振りを見せている者はいない。



 、、、感じてるのは俺だけ、、、なのか?



 ここにいる人間の中で俺だけというのは、、、まぁぶっちゃけ立場が立場だけにそこまで不思議でもないのだが、、だとしてコレはなんなんだ?、、、後で緋月にでも聞いてみようか?



「、、、ッ!?」



 そんな事を考えていた途端、再び空気が変わった。



 正確には、先程まで周囲を漂っていた()()の質が変わった。相変わらず悪いモノではない、、と思う。むしろ、先程のモノよりもあたたかいような感じがする。もちろん物理的な熱ではなく、、こう、ホッとするとかそういう感じだ。



「、、春樹?」



 急に俺の表情が強張った事でニチカが心配そうに声をかけてきた。他の3人も、、、その他のクラスメイトも特に変わった様子はない。やはり俺だけしかこの違和感を感じ取っていないらしい。



「、、、いや、大丈夫。なんでもねえ」



 俺がそう答えると、ニチカはまだ不安そうにしていたが違和感を感じているのが俺しかいない以上ここでこれ以上考えても答えは出ないだろうし、体調に異変などもないから平気だという事を伝えると渋々と言った様子で納得はしてくれた。



 とりあえず、帰ったら緋月に聞いてみよう。



 そう決めた俺は、感じている違和感を振り払うように始まった次の試合に集中する事にしたのだが、、、結論から言うと俺はそこまで弱いわけでもなく、今まで戦ってきた相手が異常だったらしい。



 流石は剣と魔法の世界。たかが高校生とは言え幼い頃から魔物の脅威が存在し、剣の扱いを幼少期から学んでいるだけあって皆自分の武器を上手く扱えている。このクラスで1番弱い人間と俺の元いた世界のクラスメイト全員を戦わせたらおそらく前者の方が勝つだろう。それほど、戦闘面において全体の水準が高かった。もしも今、この世界の平均的なレベルまで身体能力が落とされたら、俺は多分全敗に近い戦績になるはずだ。それほど、今回の模擬戦を通してこの世界の人達との戦闘経験の差を感じた。



 それでもやはり、霧島と牧瀬さん程の圧は感じなかったのだ。牧瀬さんは言わずもがな、霧島ですら勝ちはしたがあんなものは所詮、身体能力に任せてゴリ押ししたにすぎない。この2人、、、特に牧瀬さんは明らかに別格だ。



 牧瀬さんクラスがそうそういるとは思わないし思いたくないが、霧島クラスは多分割とゴロゴロいるはずだ。護衛がついているとはいえ、命を狙われる危険性のある立場としては正直笑えない。



 、、、ちょっと、、真面目に本腰入れて訓練した方が良さそうだなぁ。、、あれ?ていうか、ニチカ達も俺視点で見れば普通に強かったけど、、もしかして島で魔物に襲われた時、別に助けなくても自力でなんとかしていたのでは?



 そう思って本人に聞いてみたのだが、あの時は武器を持っていなかったし、なによりそもそも、魔物が発生したとしても弱く、街中では大抵は警察などが対応する現代社会で命をかけた戦いを挑んだ経験などあるはずもなく足がすくんで動けなかったとの事だった。



 まぁ、理解できる話だ。いくら格闘技の有段者でも、いざ試合ではなく命をかけた実戦で動けなくなってしまう事は普通にある事なんだろう。俺はどうやら「動ける側」の人間だったらしいが、きっとそっちの方が少数派なんだろうなという事もなんとなくわかる。



 そんな事を考えているうちに授業の終わりを告げるチャイムがなり、気が付けば意識しなければ忘れるほど違和感も薄れていた。



 、、、本当に慣れというヤツは恐ろしい。



 そうして、怒涛の登校一日目を終えた俺はニチカと共に帰路に着くのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございました。


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