第三十話 『見知った、見知らぬ街』
第三十話です。 感想、ご指摘、いいねなどお待ちしております。
「なんだァ、、こりゃァ」
俺は、目の前に広がる光景を見て呆然と立ち尽くしてそう呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
結局、ニチカと公園で別れた後、自宅までたどり着いた俺は玄関先でめちゃくちゃ困っていた。理由は単純に入りずらいからだ。
実はこの1ヶ月、面会が出来ないとはいえ、外部との連絡は普通に取れていたので両親と会話する機会も普通にあった。当然、事情なんかも諸々全て説明してあるし、その上で両親は俺の事を受け入れると言ってくれていた。なのでこのまま大手を振って堂々と異世界の我が家に帰還を果たせばいいのだが、、、下手に文面で親睦を深めてしまったせいで謎の気まずさのようなものが生まれてしまったのだ。グループチャットで会ったこともない他校の生徒と友人繋がりで仲良くなり、実際に会う時にやたらと緊張するあの感覚に似ている気がする。
とまあそんな理由で困り果てた俺は、ニチカを頼ることにした。さっきの事もあり若干気まずいが、両親との間に挟むクッション役としてはこれ以上なく適任であるし、先程この世界の人ともっと積極的に関わってみようと決めたばかりなのでそう言った意味でもちょうどいい。
そう決めた俺は早速隣の家に足を運びインターホンを鳴らした。すると中からおばさん、、ニチカの母親である橙子さんが姿を現した。そして俺の姿を見たおばさんは何か納得したような表情を浮かべて「あの子の事お願いね」と言って中に通してくれた。
、、何をお願いされたのか気になるところだが、上げてくれるのなら特に不都合はないので大人しくついていくと、おばさんは階段を上がりながら「多分あの子出てこないと思うから、多少強引にでもいいからまた昔みたいに連れ出してあげて?あの子チョロいから多分それですぐ元気になるわ」、、などと笑いながら言ってきた。娘に対して中々に酷い評価である。
そうしてニチカの部屋の前にたどり着き、おばさんが声をかけると扉越しにくぐもったニチカの声が聞こえて来る。そして2人は少しだけやり取り、、というかおばさんがほとんど一方的に俺がきている事を伝えると「じゃあ春樹君、ウチの我儘娘の事お願いね?」とウィンクして階段を降りて行ってしまった。
元の世界でも、もう数年前から朝に会ったら挨拶する程度になってたけど、、あの人、あんな感じだったか、、?いや、、結構あんなんだったかも知れない、、
そんな事を考えつつ、ニチカに声をかけると案の定帰れと言われたが、おばさんの許可もあるので扉を破壊して強引に押し入って連れ出したのだが、、、結論から言うと正直、ニチカは必要なかったほど両親との再会はあっさりとしたものだった。あまりにあっさりしすぎていて、かなーり緊張していた身としては拍子抜けもいいところだったが両親曰く、色々と思う所もあったしどう接していいかわからないと言う思いも確かにあったが、実際に俺を一目見た瞬間、間違いなく自分達の息子だと確信し、それらの不安や心配事は吹き飛んでしまいどうでも良くなった、、との事らしい。なんだったら、俺を見たときよりも竜神様(笑)である緋月を目の当たりにした事の方に感動してはしゃいでいたくらいだ。
正直なところ、俺にはいまいちピンとこない部分ではあるのだが、両親だからこそ理屈ではなく何か感じる部分があるのだろうか?
とまぁそんな感じで、病院にいた時に俺が無事な事も諸々の事情を話していた事も手伝ってかなりさっくりと再会を喜び合った俺達は、「疲れているだろうから今日は休みなさい」という両親の言葉に従って自分の部屋に足を運んで、現在に至るのだが、、、
「なんだァ、、こりゃァ」
俺は、目の前に広がる光景を見て呆然と立ち尽くしてそう呟いた。
「これは、、なんか凄いね?」
「お、、おぉぉぉおおおぉ!!これは凄いのじゃ!!」
立ち尽くす俺に、ニチカは若干引き気味に答え、緋月は興奮気味に叫んで部屋の中へと突撃して行った。
、、、この世界の人達は魂を分けたほぼ同一人物、、であってるんだよな?
思わず頭を抱えた俺は、目の前に広がる自室の光景に改めて目を向ける。
そこには、「美少女」が溢れていた。壁中にアニメのキャラクターが描かれているポスターが貼られ、棚にはフィギュアが並び、本棚にはライトノベルや漫画がズラリと収められており、収まり切らないものは床に積み上げられている。他にはPCと布団が畳まれた状態で置かれていた。
、、これ、多分布団広げたら足の踏み場無くなるぞ?、、これが本当に俺の部屋なのか?それに、、なんか、、よく見ると全体的に際どい。ポスターやフィギュアのキャラの布面積が異常に少ないし、、なんだったら全裸のやつもいくつかある。しかもしっかりと細部まで書き込まれたり作り込まれたりしてるし漫画も、、これ、少なくとも目に見えている部分は半数以上がエロ本なのではなかろうか?
「、、、、、、、、」
無言でチラリ、と他の2人に目を向けると緋月はエロいものというより漫画にその物に興味津々らしく、さっそく数冊見繕って布団を枕にして寝っ転がり読み始めている。そして、ニチカはとっても居辛そう。そりゃあ当然だ。
あと、こんなことになってしまってニチカには本当に申し訳ないと思ってる、、だからそんな「え、、?こういうのが好きなの?」みたいな目で見てくるのはやめてほしい。俺も困惑してるんです。それと、、すまん!こっちの俺。お前の性癖が幼馴染に全部バレた。
「、、、あー、、ちょっと街を案内してくれないか?俺の知ってる街との違いを見てみたいし、一ヶ所いってみたいとこもあるし、、そうだ!そういや学校も俺の知ってる名前じゃなかったから気になるな」
「あー、、うん、、そうだね。私はそれでいいよ」
流石に、、この部屋で女2人、、1人と1匹?を連れてティータイムと洒落込むメンタルは持ち合わせていないので、俺がそう提案するとニチカが何かを察したように了承してくれたので、俺たちは逃げる様にして家を飛び出したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「おぉ〜?、、基本、、場所や見た目は俺の通ってた学校とほぼ同じだけどちょこちょこ違うな?あんな建物もなかったし、校庭にあるあれは、、、アレ、、なんだ??」
「アレは闘技場だね。校庭のは魔法の訓練に使う的だよ」
現在、家を飛び出した俺たちは学校へと足を運んでいたのだが、見慣れないものに反応を示す俺にニチカが簡単に説明をしてくれた。
「的の方まぁはわかるけど、、学校に、、闘技場、、?」
「、、その様子だと、、春樹の世界にはなかったの?こっちだと大体どこの学校にもあると思うよ?毎年武芸を競う大会もあるし」
「マジかよ、、」
そう呟いた俺は、せっかくなので詳しく聞いてみようと思いいろいろ質問してみると、言葉通り年に一度、武芸を競う大会があり武器はもちろん魔法の類も使用可能でまずは地区予選、それを勝ち上がった学校が県の代表として全国大会で腕を競い合うらしい。
それ、怪我人どころか死人も出ねえか?と思い聞いてみるとどうやら闘技場には範囲内での怪我を無かったことにする結界が貼られており、一定のダメージを受けると結界外に弾かれる仕組みになっているらしい。
なんとなく緋月の権能に似ているな?と思ったがニチカ曰く同じ系統ではあると思うが緋月の方が圧倒的に優れているらしい。なんでも、学校に設置されているものは特別な素材で作られた巨大な柱で四方を囲って結界を構築するもので、効果的には正確には「無かったことにする」ではなく「とてつもない速度で癒し結界外へ弾く」というものらしく、特に道具も必要とせず、あれだけの範囲で力を行使していた緋月とは比べ物にならないらしい。、、なるほど確かに、似た力ではあるが緋月の方が遥かに強力だ。
ちなみに、この時の俺たちはまだ知らなかったが緋月の権能も、長い時間をかけて己の力を行き渡らせ自らの領域と化していたあの島だからできた芸当であり、その他の場所では自己に使用する分には特に制限はないが、他者に使用する際には色々と条件をクリアする必要があったりする。最も、それでも破格の性能を誇る事に違いはないが。
まぁ要するに、その武芸大会とは前の世界で言う総体のようなもので、闘技場もプールくらいの感覚で基本的に各学校に設置されているものらしい。
、、なんというか、、、本当に異世界なんだな。
ここまで、魔法も魔物も島で見たきりだし、緋月も基本人型だし、俺の知る人々も多少の違和感を感じる程度で元いた世界と何も変わらないから頭では理解できていてもどこか現実味がないというか、実感がなかった。、、なにしろ異世界という情報を得るまで気付かなかったくらいだ。それがこうして見知った場所に見知らぬものがあるのを見て、ようやくここは異世界なのだと実感する事ができた気がする。
、、ちょっと、、、この後を見るのが怖くなってきたな。
「さて、、ここいらで切り上げた方が良さそうだな、、」
頭に浮かんだ不安を振り払うように俺はそう口にした。なにしろ今日は平日、つまり普通に教師も生徒も学校にいる。もちろん、俺達もここの学校の生徒なので敷地に入ろうがなんら問題はないのだが今の俺たちはちょっと普通とは言えない立場だ。騒ぎになるのは目に見えているので下手に侵入して見つかる前にさっさと退散した方がいいだろう。
俺の言葉にニチカが頷きを返したのを確認して、俺達は学校を後にした。
目的地へと向かう道中、その街並みはやはり俺の見知ったものであった。多分、郵便局とか病院とかの場所を聞かれたら、、おそらくだが案内できるくらいだ。おそらく、と言うのは所々違っている点も存在して、コンビニが鍛冶屋になっていたり、老舗の駄菓子屋が魔道者を売る店になっていたりするからだ。つまり、俺の知っている場所がまったく違う何かになっている可能性がある為、「おそらく」だ。全く別物になってる場合は案内できない。
そうして、道中に街中の景色を見つつ、気になる事をニチカに聞いてみたりしながら歩き慣れた道を歩いて、目的の場所にたどり着いた。
、、あぁ、、やっぱりか。
目の前には、「魔道具のフジノ」と書かれたお店が建っている。
、、、ここは、元の世界で俺のバイト先の店があった場所だ。
なんとなく、予感があった。理由はうまく説明できないが、ただ漠然とそんな気はしていた。先程の学校でも感じた、ここは異世界なのだという実感がさらに大きなものとなって胸におしかかってくる。同時に、何か大切なものが抜け落ちたような、、胸にポッカリと穴が空いたような感覚に陥った。
、、、どうやら、あんな場所でも、俺にとっては大切な場所だったらしい。それも、自分で思ってるよりもかなり。
「、、、わかってたけど、、本当に異世界なんだな、ここ」
俺が力無くそう呟くと、手がそっと何かに包まれた。横に目を向けるとニチカが俺の手を握って心配そうに見上げて来ていた。
「、、ここに、何かあったの?」
「、、、元の世界で、、飲食店でバイトしてたんだけどさ、、その職場が、、ここだった。暴力なんて日常茶飯事のひどい職場でさ、、働いてる時はいつも辞めたいって思ってたし店長とは喧嘩ばっかりしてたけど、、、どうやら俺は結構気に入ってたみたいだ」
ニチカの質問に苦笑いを浮かべてそう答えると、繋いだ手にぎゅっと力が込められた。
「、、、大丈夫?」
「大丈夫。、、寂しい気持ちがないと言えば嘘になるけど、、実際、意外とそこまででもねえんだ。店の連中もこの世界のどこかで元気にやってんだろうし、店自体も元の世界に残ってるから消えてなくなったわけでもないしな。、、ただ、、恥ずかしながらようやく実感したんだ、、ここが俺のいた世界とは別の世界なんだって、、それでちょっとぼーっとしちまってた」
心配そうに問いかけるニチカに俺はなんでもないと言うふうにヘラっとして答えを返すと、ニチカは不安そうに俯いて口を開いた。
「、、、やっぱり、元の世界に戻りたいって気持ちは変わってない?」
「、、そりゃあな、、、うん、、帰りたいよ」
俺がそう答えると、ニチカは泣きそうな表情を浮かべ、握った手に更に力が込められる。
「でも、、でもこの世界のおじさんやおばさんはどうなるの?それに、、私だって、、、っ!!!、、ごめん、、忘れて、、本当にごめん」
口を開いたニチカは、途中でハッとしたように言葉を区切り、謝罪の言葉を口にした後、再び俯いてしまった。
「、、、別に、まだ決まった訳じゃねえよ。世界を渡る方法は緋月すら知らなくて、創世竜ならワンチャン知ってるかもってレベルの話だから帰れるかどうかすら怪しいしな、、それに無事帰れたとして、なにも片道切符とも限らねえだろ?帰ることができるんなら、またこっちにくることだってできんだろ」
気休めの為に言ったことだが、事実そうだ。帰る手段を得られるのならこちらにまたこれる可能性も充分にある。何も情報がない今、片道切符である可能性と戻ってこれる可能性は五分五分だ。
「、、、うん、、そうだね、、そうだよね」
俺の言葉に何かを確かめるように呟いたニチカの表情は、心なしか先程よりは柔らかいものに変わっていた。
その後、俺の提案で魔道具屋を見てみることになり、一通り店内を見て回った満足した俺は、ニチカに付き合ってもらったお礼にとペンダント型の魔道具をプレゼントして帰路につくのだった。
ちなみに、魔道具の効果は【運気上昇】らしい。説明書きも「運気が上がる」というかなんともフワッとした物だったが、、本当に効果あんのかね、、これ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回から少し改行の仕方を変えてみました。
読み辛い等なければこのまま作品のストックが貯まった時にでものんびり以前の話も修正していこうかと思います。
感想、ご指摘などございましたらコメントして頂けると喜びます。




