第二十七話 『嵐の去ったあと』
お待たせしました。第二十七話です。
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「、、、どうすんだよ、、これ」
俺は、目の前の惨状を見て呆然とそう呟いた。
今、俺の目の前には6人の死体、、、のようなモノが転がっている。
何故こんな惨状になったのかと言うと、牧瀬さんにより俺以外の島にいたメンバー+何故か美香さんが俺と似たような戦闘訓練を施された結果だ。同じ、と言ってもどうやらあの鬼も手加減というものを知っていたらしく俺の時のように反撃をする事はなかったがそれでも延々と動かされ続け、足を止めれば怒号と強烈な殺気が飛ばされ、みんな泣きべそをかきながら死に物狂いで半ばヤケクソ気味に挑み続けた結果、1人、、また1人と疲労の限界を迎え意識を手放していったのだ。
そして最後の1人が動かなくなるとこの惨状を生み出した張本人は「訓練の日程が決まり次第追って連絡する、、落ちてるゴミは掃除しとけよ?」とだけ言い残してさっさとどこかへ行ってしまった。鬼畜の所業である。
一人でこの人数を介抱するのも大変なので助けを呼ぼうかとも思ったのだが、、改めて倒れてるゴミ改め女性陣を見回すと中々に酷い有様になっている。美香さん以外は普通に患者服のままだから服がはだけまくっているし、全員汗やら涙やら鼻水やらヨダレやら吐瀉物でぐっちゃぐちゃ、唯一メイクをしていた美香さんは黒い涙を流している。その上、全員白目をむいて苦悶の表情を浮かべて気絶しているし、、、、本人たちの尊厳の為に名前は伏せるが何人かの股の部分にシミができている。
、、、流石に、この有様を他人に見られるのは女性として精神的に辛かろう。かと言って俺が介抱するのは気が引ける。というか、ぶっちゃけ汚くてあんま触りたくないから嫌だ。
、、、うーん、、とりあえず一つ試してみるか?
「、、、起きろッ!!!寝てんじゃねえぞオラァ!!」
「、、、ッ!!?」
しばらく考え込んだ結果、とりあえずの思い付きで牧瀬さんの真似をして怒鳴りつけてみたところその効果はバツグンだった。もしかして最初から全員意識あったのでは?と思う速度で飛び起きて、ふらつきながらも慌てて周囲を見渡して不思議そうな表情を浮かべている。
「、、、、、、、」
、、す、、すげえ、、この感じ、、絶対訳も分からずただ無意識に起き上がって来ただろコイツら。あの短時間で完璧に調教されきってやがる、、、
誰か1人目が覚めてくれるといいなぁ、、くらいに思ってたけどまさか全員飛び起きてくるとは思わなかったぞ、、
「、、、あ、、れ?私、、確か、、渋谷くん?」
俺がドン引きしているとようやく頭が回転し始めたらしい熊谷が不思議そうにそう口にした、、が他の面々含めどうやら自分達の惨状にまではまだ頭が回っていないらしい。
「あー、、とりあえず、、服」
「え?、、、、、、、、、、きゃっ!?」
このままでは非常に目のやり場に困るので目を逸らしつつそう指摘すると、全員不思議そうに視線を下げて自分の状態を確認、そして時間が止まったのかと思うほどたっぷり5秒ほど硬直した後耳まで真っ赤にして悲鳴を上げてうずくまった。
「、、、、、、、」
無言の時間が流れる。
別に何も悪い事はしていないので堂々としていればいいのだが、、めっちゃ気まずい。こういう時なんて声を掛ければいいんだよ、、
そうして俺が困り果てていると、先程まで1人だけ病室に残り窓から見ていた救いの女神がふわり、、と地上に降り立った。
「全員手ひどくやられたの〜、、、む?お主達失禁しておるではない、、ホバァァ?!」
前言撤回。地上に降り立った悪魔の後頭部を全力でしばき強制的に黙らせた後恐る恐る視線を戻すと熊谷はプルプルと震えながら更に顔を赤くして俯き、盛島は泣き出してしまい先生は光の宿っていない瞳で虚空を見つめて何事かをブツブツと呟いている。
ヤバイ、、先生のダメージが特にヤバイ。
「、、オイ、緋月」
「ぴっ!?」
俺が呼びかけると頭を押さえてうずくまっていた緋月の肩がビクッと反応して恐る恐ると言った様子でこちらを振り返ってくる。
「テメェ、、人がせっかく全力で気付かないフリしてたのに台無しにしてくれやがって、、この空気どうするつもりだ?ア゛ァ゛?」
「だっ、、だだだだって実際に失禁しておるではないか!」
「だからってわざわざ言わなくてもいいだろうが!!全員女性だし先生なんて成人してんだぞ!?少しは気とか使えねえのかこのノンデリクソトカゲがよォ!!」
俺が罵声を浴びせかけると緋月はガビーンとした表情を浮かべたあと表情に怒りを浮かべ猛然と反論してきた。
「あっ!!トカゲってゆった!!!いくらお主でもトカゲ呼ばわりだけは許さぬぞ!!失禁したから失禁したと事実を述べただけなのにそこまで言われる筋合いはないのじゃ!!」
「うるせえ!!!まず漏らした奴らに謝れやダメトカゲが!!」
「い、、一度ならず二度までも、、う、、ウガァァァァァ!!!」
2人でギャーギャーと言い合いをしているとトカゲ呼ばわりされたことがよほど我慢ならなかったのか緋月が突然唸り声をあげ飛び掛かって首元に噛み付いてきた。
「ちょっ、、オイ!!いてっ!?オイ噛むな!!お前が空気の読めない事言うからだろが!どうすんだアレ、、痛てっ!!」
「あ、、あのぅ、、」
「「ア゛ァ゛?」」
噛み付いて離さない緋月を何度か振り解こうともがく俺に遠慮がちにかけられた声に緋月と同時に反応を返しつつ目線を向けると「ヒッ、、」と小さな悲鳴をあげた美香さんがいた。
「あ、、あの、、その辺にしといてあげたほうが、、」
「「、、、、、??」」
怯えつつも横にチラチラと視線を向けつつ口にする美香さんの言葉に怪訝そうな表情を浮かべた俺と緋月がそのまま視線を追っていくと、、、廃人が増えていた。熊谷、盛島まで先ほどの先生のように光のない瞳でブツブツと何事かを呟きながら虚空を眺め、逆に先生は先程までが嘘のように澄み切った表情を浮かべ、自らの土魔法で地面に穴を掘りその中に無言でいそいそと入ろうとしているのを無事だった他のメンバーが必死に止めようとしている。
、、、、、ふむ。
ああなっている原因に心当たりは、、、まぁめちゃくちゃある。そう思いチラリ、と緋月を見ると緋月もこちらを見ており目があった。
おい、なんだその非難するような眼差しは。
「、、、オイ、見ろ緋月。お前がデリカシーない発言したせいでああなったんだぞ?、、マジで謝っとけ」
「妾嘘ついておらんもん!それに今のは春樹が悪いのじゃ!」
「、、ねぇ、、春樹くんそれ本気で言ってる?間違いなく春樹くんの方が彼女達にダメージ与えてたの気付いてるわよね?、、ねえ?私と目を合わせて?ねえってば」
俺の指摘に緋月はそっぽを向き、美香さんは真顔で詰めてくる。目にハイライトが無い上にメイクが落ちて黒い涙になっているので非常に怖い。
「、、、、なんのことかわかりませんね」
全力で目を逸らしつつそう答えた俺は、頭の中で状況を整理する。
全員目が覚めたし看護師の美香さんもいる。廃人になってしまった3人は、、俺が何を言っても藪蛇な気がするしまぁ強く生きてもらいたい。要するに俺の手は必要ないし、、むしろ男の俺はいない方がいいだろう。つまりは、もう俺病室に帰っても問題ないよな?ないよね?いやないとしよう、そうしよう。
「、、、そういうわけで美香さん、後の事は任せますね」
「、、え?ちょっ!?春樹くん!?」
そうして考えを無理矢理まとめた俺は、後処理を全て美香さんに丸投げして、しがみついたままの緋月を引きずってその場から足速に離脱した。
そうして、女性陣、、特に廃人化した3人の心に深い傷を残し入院生活最後の1日を終えるのだった。
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翌日。
俺達は退院する為に集まり、通常は使われない階段を使用して地下へ向かう階段を降っていた。
なぜ退院するのに地下にいるのかというと、どうやら政治家や芸能人などがよくお忍びで入院してくるこの病院には秘密の地下通路が存在しているらしく、俺達も普通に病院を出ると騒ぎになる可能性が高いのでこの通路を使って病院から出よう、、という事らしい。そんな大袈裟な、、とも思ったが美香さんの話では俺たちが入院した当初は院内にまでマスコミが入り込み大騒ぎ、その後国が警備を強化して表面上は沈静化したがそれでも毎日敷地外の入り口付近には記者が張っており、病院の職員はよく情報を聞き出そうと話しかけられており、中には通院してきた患者を装って院内を嗅ぎ回る連中もいたとの事だった。
この世界の学校には、魔法の授業やら戦闘技術を競う大会やらがあるらしく、そんなものに馴染みがない身としては非常に気になるので退院してから更に1週間後に復学する方向で話を進めていたのだが、、そんな状況で果たして普通に学校生活が送れるのだろうか?、、まぁ、、マスコミは無視すればなんとかなるだろうし世間も数ヶ月もすれば次の話題に移るとは思うが、、不安だ。
とりあえずは無視、、という方向で結論を出した俺はチラリ、と他の面々に目を向ける。
今、この場にいるのは島にいたメンバーと案内役の美香さんの7人だ。正確には牧瀬さん含む政府の人間が数人で付かず離れずの距離で護衛に当たっている、、らしいのだが姿は見えない。というか今は普通に廊下のような一本道だがどうやって見張っているのだろうか?
ちなみに、廃人化していたメンバーは俺と目が合うと若干顔が赤くなったり挙動不審になったりはするが一応普通に見える。他のメンバーのメンタルケアのおかげか自力で乗り越えたのかはわからないがどうやら立ち直ることができたらしい。
「ついたわ。この先よ」
他のメンバーの様子を見つつ階段を降り、しばらく廊下を歩いたところで美香さんがそう言って立ち止まった。そこにはなんの変哲もない扉があり札には「西側第三倉庫」とある。
、、やたらと手が込んでんな、、こんなカモフラージュまでされてんのかよ、、
政治家や芸能人のお忍びの為にここまでするか普通、、、と思ったがよくよく考えると他の病院を知らないので比較対象がない。なのでまぁこんなもんか!と思う事にして室内に入ると中は倉庫というよりは資料室のようになっていてずらりと並ぶ棚にファイルや本などが収められていた。美香さんはそのまま奥の方へとズンズン進んでいき突き当たりに置いてある本棚の前で立ち止まるとゴソゴソと何かした後、本棚の端っこの方を掴み手前に引いた。するとどうやら本棚自体が片開きのドアのようになっていたらしく、本棚の奥から薄暗い通路が現れた。
なんか、、だんだん秘密基地みたいでワクワクしてきたぞ。
などと内なる男の子の部分が騒ぎ始めた俺だったがその後は特に物珍しい物もなく、500mくらい進んだところで突き当たりになり、そこにはハシゴがかけられていた。若干ガッカリしつつハシゴを上り、天板を開けるとそこは普通の家の様な空間になっていた。
いや、、「家の様な」というか多分これ普通に家だ。今出てきたところも一見するとただの床下収納のフタに見える様になっている。
、、ねえ、マジでここまでする必要、、ある?
ていうかお忍びできたお偉いさんの為の隠し通路だとして病み上がりに500m歩かせてハシゴ登らせんのか?お偉いさん方は本当にそれでいいのか?もうコソコソせず素直に入院しろよめんどくせえ、、
俺がそんな事を考えていると悲しそうな表情を浮かべた美香さんが口を開いた。
「、、、ここまでよ。外にタクシーを手配してあるからそれで自宅まで送ってもらって」
「ありがとうございます、、寂しくなりますね、、」
気分を切り替えつつ俺がそう口にすると美香さんは泣きそうな表情になり、しばらく躊躇う様な素振りを見せてから口を開いた。
「、、、ねぇ、、本当は、看護師としてこういう事しちゃいけないんだけど、、良かったら連絡先聞いてもいい?休みの日にお茶とか行ってみたいし」
「もちろんいいですよ。デート行きましょデート」
「「「えっ!?」」」
「えっ?」
「「「「、、、、、、、」」」」
俺の言葉に顔を真っ赤にした美香さんと、なぜかニチカと熊谷まで驚いたような声を上げ、無言になってしまった。
あ、、あれ?なんかまずい空気だぞ?俺としては「暇な時遊びに行こ〜」くらいのニュアンスで言ったつもりなんだけどなんかガチの方で受け取られたっぽい。
今の俺、そんなガチ感出てたか?デートって単語軽率に使ったのがよくなかった?、、いや、、別に恋愛感情がなくても男女で遊びに行く時に軽いノリでデートって表現するやつ普通にいるよな?、、、ていうかガチに受け取られていたとしてこの反応、そこそこ脈アリなんじゃね!?
ウッヒョォォォァー!!マジかy、、、いや落ち着け、、今はとりあえずこの空気をなんとかしなくては、、、
急激に冷静になった俺は空気を変える為に口を開いた。
「いやー美香さんがこのスマホの連絡先第一号っすよ。普通に嬉しいです」
「そ、、そうなの?なんか、、意外ね?」
俺の言葉に美香さんは心底以外そうな表情でそう口にしたが、空気を変える為に咄嗟に口にした事とはいえ、内容は事実だ。こちらの世界でも覇権を握っているらしい某有名なチャットアプリに両親しか登録されていなかった。
「こっちの俺は友達が少なかったみたいで、、」
「あ、、そっか、、そうよね。、、フフ、じゃあ私が退屈しない様にたくさん連絡してあげるね」
俺があまり暗くならない様に冗談っぽく軽くスマホをふりながら掲げて見せると美香さんはまだ赤い顔に笑みを浮かべそんな事を言ってきた。
うーん、、これは、、マジで脈アリなんじゃ、、?なんだか、、視線も熱っぽいし多分勘違いじゃない、、よな?
ど、、どうしよう、、さっき誤解させる様な事言ってしまったしちゃんと否定しておいた方が、、、でも若干話題変わった今、わざわざ掘り返していうのもなんかな、、うーん、、
、、、まぁいいか、、なにも言ってこないのならこっちから言うことも何もないし、口にして万が一違った場合軽く死ねる。うん、このまま放置でいいな。
俺が「何かアクション起こさない限りは放置」の方向性で方針を固めていると熊谷が一歩進み出ておずおずとあった様子で話しかけてきた。
「あの、、私も連絡先きいていい?ほら、、私だけクラス違うし」
「おうもちろん。、、この世界の事色々とまだ聞きたいことあるし、街の事とかも知りたいし休みの日にデートと洒落もうや」
「「「えっ!?」」」
「えっ?」
「「「「、、、、、、、」」」」
やや強引な気もしたが「先程の件を冗談にするチャンス!」、、とあえて「デート」と言う単語を用いた俺の発言に再び、無言の時間が流れる。美香さんは若干不機嫌そうになり、ニチカはなんとも言えない複雑な表情を浮かべ、その他のメンバーは何か信じられないものを見るような目で俺を見ている。そして言われた張本人の熊谷はというと、先程の美香さんの様に耳まで真っ赤にして俯きモジモジしている。
あらまぁ初心な反応で大変微笑まし、、、ってお前もかァッ!!?
ポッ、、じゃねェンだわ、、どう考えても「ハイハイw」とか気持ち悪がるなどして軽く流すノリだろ今のは。なんでドイツもコイツもガチな反応返して来やがるんだ?俺か?俺が悪いのか?なんなんだクソッタレ、、
「はぁ、、、」
一瞬回復しかけた空気がまた気まずいものに逆戻りしたことでなんだか色々と面倒になってきた俺は、天井を見上げて深いため息をつくのだった。
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