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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
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第二十五話  『理不尽』

第二十五話です。

感想、ご指摘などお待ちしております。

 


「失礼するぞ」



 そんな言葉と共に病室のドアが開かれスーツを着込んだ女性が1人で入ってきた。若干目つきが鋭く機嫌が悪そうに見えるが物凄い美人だ。腰まである髪を後ろで束ねており、美香さんと比べて身長がかなり高い。目算だが170cmは余裕であるんじゃないだろうか?



 それになんか、威圧感が凄まじい。近くに立ってる美香さんが縮こまっちゃってる。



 身長と目つきが悪いせいだろうか?



 いや、それだけではない気がする。なんというかこう、、身長とか目つきとか関係なしに全身から肉食獣のようなオーラが滲み出ている感じで立ち振る舞いは普通なのに何故か思わず目を逸らしたくなるような凄みがある。なんとなく負けた気がして腹立つから絶対逸らさないけどね。



「、、、?テメエら何してんだ?さっさと入ってこい」



「じ、、邪魔しちゃ悪いと思いまして、、へへっ」



 訝しげな表情を浮かべた女性が扉の方へ振り返り声をかけるとそんな三下めいたセリフと共に熊谷、ニチカ、盛島、広瀬、先生と続き島にいたメンバーがゾロゾロと部屋に入ってきた。



 ぶっちゃけ、国としては俺と緋月を手中に収めたいのであってその他のメンバーはさほど興味はなかったのだろうが、俺達に巻き込まれる形で同じくこの1ヶ月軟禁状態に置かれてたのだ。美香さんに聞いた話では流石に一般人とは分けられていたが俺とは違い5人で一つの病室に割り当てられ、検査の類も一度受けて終わりで後は放置に近い状態だったらしい。



 俺に関しては検査とトイレの時以外は病室から出れなかったので実に1ヶ月ぶりの再会になるのだが、、、なんだか全員顔色が悪い。ダラダラと汗を流し青ざめているし熊谷はまたおかしなキャラになっている。



「、、、、?」



 みんなの様子を訝しんで首を傾げていると謎の女性と目があった。その瞬間、強烈な威圧感と奇妙な懐かしさを感じた俺は再び首を傾げた。



 、、、なんだ?、、懐かしい?



 女性をまじまじと観察してみるがどう考えても初対面だ。



 忘れてるだけでどこかで会った事がある?いや、こんな色んな意味で目立つ人物が知り合いにいて忘れてるなんて事はないはずだ。



 なら、なんでこんな気持ちになるんだ?



「テメエが渋谷春樹か、、新聞で見たツラと違って少しは骨がありそうじゃねえか」



 俺が自分でもよくわからない感情にモヤモヤとしていると女性が凶悪な笑みを浮かべつつそう口にしてきた。そしてその表情を見て更に懐かしいという感情が強くなる。



「、、、そうですけど、、何の用ですか?」



「私は牧瀬 董華(まきせ とうか)だ。テメエらの護衛と訓練を担当することになった。おっさんから話は聞いたんだろ?」



「、、、、、聞いてますけど、、」



 確かに、その話は聞いている。



 俺の存在を公表した事で抑制できるのは「表立った行動」だ。裏でコンタクトを取ってくるやつはいくらでもいるだろうし、中には強引な手段を用いてくるやつも必ず出てくる。そんな連中の対策に護衛と、俺自身がある程度自衛できるように訓練もつけてくれるという話は()()()()聞いていたし、俺としてもありがたい話だったので受け入れていた。



 、、、つまり、このやたらと威圧的な女は今、内閣総理大臣をおっさん呼ばわりしたわけだが、、一体何者だ?



「、、、し、、渋谷君?どうして笑っているの?」



「、、、え?」



 俺が牧瀬と名乗った女性の正体について考えを巡らせていると美香さんが青褪めた顔でそんな事を言ってきた事で思考が中断される。ふと、他の面々に視線を向けるとみんな更に顔を青褪めさせ、熊谷に至っては気を付けの姿勢で直立不動になっている。



 笑ってる?俺が?



 はて?と思い顔に手を当て意識を向けると確かに口角が上がっているのがわかる。どうやら無意識のうちに笑みを浮かべていたらしい。



 いや、なんで??



「、、、今日は顔合わせだけして帰るつもりだったが、、気が変わった。オイ、表でろ」



「、、、は?急に何を、、、、、なんすか?」



 自分の状態に困惑していた俺を見て更に凶悪な笑みになった牧瀬さんがスタスタと歩いてきて俺の襟首を掴んで口を開く。



「うるせえ、何度も言わせんな」



「ア゛?、、、え?、、ちょっっ、、とぉ!?」



 襟首を掴まれた事で更に困惑し、尋ねる俺にそう告げた牧瀬さんはそのまま片腕で俺を持ち上げた。



 いくら背が高いとは言えその他の体格は普通に華奢な女性である牧瀬さんに片腕で持ち上げられた事に激しく動揺する俺。そして牧瀬さんはそんな俺に構わずまるでボールでも投げるかのような気軽さでそのまま俺の身体を放り投げた。



 なす術なく身体が宙を舞い、背中にわずかな抵抗を感じ、ガラスの割れる音が耳に入る。直後、全身に風があたり、ジェットコースターに乗った時のような浮遊感に襲われる。



「ちょっ、、!!は、、春樹くぅぅぅぅぅぅぅぅん!!?」



 視界がぐるんぐるんと回転する中、美香さんが悲鳴じみた声で俺を呼ぶ声を聞きながら何とか体勢を整えて未だ混乱する頭で考える。



 窓から投げ捨てられた!?、、、え?、、なんで?、、っていうか俺のいた病室って確か7階だよな?



 や、、やばいやばいやばいやばいやばい!?死っ、、死ぬ!!



「うっ、、うわああああぁぁああぁぁあぁ‥あぁぁ〜?」



 物凄い勢いで近付いてくる地面に死を感じ、思わず悲鳴を上げた俺だったがその悲鳴は尻すぼみに小さくなりやがて疑問と困惑の声に変わった。



「あ、、、あれ?」



 なんか、普通に着地できた。それも感覚的には道路にある縁石から飛び降りたくらいの衝撃だった。



 、、衝撃を緩和する類の何かをされた?いや、、俺の身体能力がこの程度問題ない程上がってる?



 そんな事を考えていると背後からダンッ!!と音が聞こえ、振り返るとそこには先程と変わらない凶悪な笑みを浮かべた牧瀬さんが立っていた。



 え?飛び降りてきた?、、、え?もしかしてこの世界じゃ人が7階から飛び降りても平気なのは普通の事なの?



「、、、、、、」



 無言で上を見上げると窓から身を乗り出した他の面々が皆一様に口をあんぐりと開けている。、、、どうやら普通に異常っぽい。



「オォイ!!テメエらもさっさと降りてこい!」



「は、、、はぁい!!!」



 呆然とする俺を放置した牧瀬さんに怒鳴りつけられたニチカ達は悲鳴に近い声で返事を返し窓から飛び出してきた。そしてそのまま落下するかと思いきや、フワフワとゆっくり下降してきた。



 、、、浮いてる?、、あぁ、ニチカの風魔法か。いいなぁ、あれ、、中々に便利だし、何より気持ちよさそうだ。



「よし、じゃあ始めんぞ。テメェらがどれだけできるか見ておく」



「、、って、ちょっと待てやぁぁぁぁぁ!?」



 着地したニチカ達を見て満足そうに頷いてそう口にした牧瀬さんに、同じくニチカ達を見て呆然とどうでもいい感想を抱いていた俺は急に我に帰り、大声で叫んだ。



「ア゛ァ゛?んだぁ?いきなりうるせえな」



「うるせえじゃねェェェ!!て、、ててテメェイカれてやがんのかァ!!?」



「だから、うるせえよ」



「うぼぁ!?」



 唐突に行われた凶行に全力で猛抗議していると、いきなり顔面に強烈な衝撃を受け、再び視界がグルングルンと回転し始めた。、、どうやらぶん殴られたらしい。



 、、あぁ、、そうか。



 猛烈な勢いで後ろに吹き飛びながら思う。



 何故、この女を見たときに懐かしさを感じたのかがわかった。コイツ、、この女は、、店長と同じ人種だ。理不尽が服着て歩いてるようなヤツだ。



 そう理解した次の瞬間、壁に叩きつけられ、背中に強烈な衝撃を感じる。それでも尚勢いは衰えず、背後の塀を突き破り病院の敷地外へと飛び出し、地面を数度バウンドしてから再び衝撃を感じ、真横に吹き飛ばされた事でようやく止まった。どうやら、車道に飛び出した事で運悪くそこを通りがかってしまった車に轢かれたらしい。



 激しくむせ返りながらも同時に口角が上がっていくのがわかる。



「オウ、とっとと立てや木偶の坊」



 なるほどなるほど、、、店長(アレ)と同種なら、、遠慮はいらねェなァ?



 そう考えた俺は、ニタァと笑みを浮かべながらゆったりと立ち上がり、声を張り上げ走り出した。



「上等だァこのイカれ野郎がァァァァァァァ」





ここまでお読みいただきありがとうございます。


今回から、今村仁千佳の名前表記が「ニチカ」になっておりますがコレはあえてそうしています。


・1ヶ月落ち着いて色々考えた結果主人公の中でやはり自分の知る「仁千佳」とは別の存在であると言う意識が固まり、そのまだ本人も自覚していない心情の表現という割とちゃんとした理由。


・シンプルに同じ名前のキャラ働いてややこしいから区別の為というメタ的な理由。


という上記の2点が理由になります。


ニチカ=原初世界出身


仁千佳=分体世界出身


です。


感想、ご指摘、イイネ等お待ちしております。


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