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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
3/56

第二話  『現状の把握と探索』

第二話です。


感想、ご指摘などお待ちしております。

 



「ねえ、ちょっと」



 俺がこれからの事について考えを巡らせているとこれまで口を閉ざしていた仁千佳が声をかけてきた。



「うん?仁千佳か、、どした?」



「っ!!、、アンタ、火は使えないの?」



 俺が答えると仁千佳は一瞬顔を強張らせそう聞いてきた。



「うーん、、テレビとかでよく見る木の棒使ってやるやつは素人がやったってちゃんとできるかわからないしなぁ、、」



 最悪、その方法でトライする事も考えなければいけないがそれよりも荷物の中にハワイで買った飲み物のペットボトルがあったはずだ。それを利用すればいい。



 虫眼鏡で火がつくアレだ。ペットボトルでも同じ事ができるとテレビでみた記憶がある。ただ問題は、、、もう夕方に差し掛かる時間帯だがはたしていけるのだろうか?理由はよくわからないがこの方法では夕方だと火が起こしずらいと同じくテレビで言っていたのを見たような気がする。



 クソ、、こんな事ならもっとテレビや漫画のサバイバル知識をまじめに見ておくんだった。



 そんな事を考えていると仁千佳は露骨に不機嫌そうな顔をして言葉を続けてきた。



「チッ使えないわね。はぁ、、唯一見つかった男がアンタみたいな頼りない奴だとか本当に最悪」



「ア゛ァ゛?」



「ひぅ!?な、、何よ本当のことでしょ?」



 い、、いかんいかん。仁千佳のあんまりな言い草に思わずバイト先の店長と言い合いをしてる時みたいな口調が出てしまった。



 一瞬、小さな悲鳴を上げて怯む仁千佳だったがすぐに周りに人がいる事を思い出したのかハッとしたように再び強気になって言葉を続けてくる。



「大体何よ!普段ウジウジオドオドしてる癖に!自分以外女しかいないからって調子に乗ってるんじゃないの?」



 冷やかな表情を浮かべながらそんな事を言う仁千佳に広瀬と盛島も同調して最低だのキモいだの罵声を浴びせてくる。



 、、、落ち着け。



 コイツらもきっとこの状況で精神的に不安定になってるんだろう。ここは俺だけでも心に余裕を持って大人な対応を心がけないとな。



 そう思い、俺は顔に笑みを浮かべる。余裕のある人は笑ってるものだからな。



 そんな事を考えつつ俺が笑みを浮かべた途端、それまで騒いでいた3人が急に押し黙った。



「な、、、なによ」



 なにやら狼狽えた様子の仁千佳がそう言ってくるが明らかに声が震えているし3人とも表情が青褪め引き攣っている。



 、、どうしたんだろう?



 そう思い、先生達の方に視線を向けると先生と熊谷まで表情を引き攣らせていた。



 おいおい熊谷、さっきまでの無表情はどうした?



「ちょっと貴女達!いい加減にしなさい!!今は喧嘩してる場合じゃないはずよ?」



「、、、、、、、」



 俺がみんなの不自然な様子に疑問を浮かべているとそれまで急に怒り出したニチカに戸惑っていた様子の先生はハッとした表情を浮かべて慌てたように会話に割り込んできた。先生が為に入った事で仁千佳達は無言で不満そうな顔をしていたがそれ以上何かを言ってくる事はなくなった。



 どうやら大人しく引き下がってくれたようだ、、めっちゃ睨まれてるけど。あと先生、仁千佳を嗜めているようで実は俺から守ってるように見えたのは考えすぎですよね?



「し、、渋谷君も落ち着いて?、、ね?」



 、、、先生、どうしてそんな怯えた目で見てくるんですか?俺はこんなにも笑顔なのに。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 そんなこんなで一悶着はあったがその後、先生の提案で2チームに分かれて拠点の候補地探しと火おこしに使えそうな木材集めを行うことになった。



 ・なにがあろうと絶対に森には入らない事

 ・人及び住居、またはその痕跡を発見した場合接触は計らずに速やかにその場を離れる事

 ・常に周囲を警戒して危険を察知したら迷わず逃げて予め決めた集合場所まで戻る事

 ・どんな理由があっても絶対に1人にはならない事

 ・必ず17:30には集合場所に集まる事



 以上のルールを決めた上で現在俺たちは二手に分かれて海岸沿いを歩いている。



 ちなみに俺、先生、熊谷と仁千佳、盛島、広瀬の仲良し3人組とで分かれている。編成を決めたのは先生だ。二手で分かれた方が効率が良いのもあるが、、、まぁ落ち着くまで俺と仁千佳達を引き離しておきたかったのが本音だろう。



 しかし、仁千佳はいったいどうしたのだろうか。



 疎遠になる前はもちろん、疎遠になった後だってクラスが同じなのだから目にする機会は多かった。少なくとも俺の知る仁千佳はあんなに攻撃的なやつじゃなかったはずだ。こんな状況に置かれて精神的に不安定になっているとも考えられるが、、でも、あの感じはそれだけではないような気がする。



 というか、もしかしなくても俺、仁千佳に確実に嫌われてるよな?な、、なんでだ?



 疎遠になったのだってなんの事はない。思春期になって互いに相手を異性として意識する機会が増え、なんとなく気まずくなることが増えて距離が開いていった、、というよく聞くありきたりなパターンだ。決してケンカ別れなどはしていない。



 それに、朝登校時間が被った時に挨拶を交わす程度のことはしていたし仁千佳の方から挨拶してくることもあった。修学旅行に出発する日の朝も挨拶と少し雑談を交わした覚えがある。



 それならば、修学旅行中に何かやらかしたのかと思ったが修学旅行中仁千佳の姿を見かけることはあったが会話は交わしていないはずだ。そもそも、先程仁千佳は普段から俺に不満があったような言い方をしていた。



 わ、、、わからねえ。



 俺が頭を悩ませながら適当に拾い集めた木にペットボトルで火をつけようと角度を調整していると先生が声をかけてきた。



「渋谷君、なにをしているの?」



「あぁ、これで火をつけれないかなって試してました」



「そう、、凄いわね、渋谷君は」



 俺が答えると先生は感心したようにそう言ってきた。



「そんなことないですよ。たまたまテレビで見たのを覚えてただけですし、、結構有名じゃないですか?コレ」



「確かに知識としては先生も知ってたけど、、、正直この状況に焦るばかりで全く思いつきもしなかったわ、、、情けないわね」



「先生は立場がありますからね。俺なんて気楽なもんですからその分心に余裕があるだけですよ」



 俺が笑いながらそう答えると先生は苦笑いを浮かべてそれからは黙って俺の作業を見ていた。



 、、うーん。おそらくは無意識なんだろうけど自虐的な雰囲気を感じるし相当参ってそうだな。こんな時に気の利いた事でも言えれば良いのだが″生徒″の俺が何を言っても今は逆効果な気がする。



 、、、どうやら火も起こせそうにないし空気を入れ替えるためにもここいらで中断するか。



「やっぱり夕方だと火がつきそうにないですね。明日のお昼にもう一度試してみることにして行きましょうか」



 そう言ってふたたび歩き始めて10分程歩いていると、砂浜が途切れ岩場になっている地点が目に入ってきた。



 いいぞ。岩場なら餌もないから動物も寄り付かないはずだ。潮の満ち引きには注意が必要だがそんな事は些細な事だ。後は雨を凌げる窪んだ地形か洞窟でもあれば最高なんだけどなぁ。



 そう考えながら俺達は岩場に向け足を進めるのだった。




ここまで読んで頂きありがとうございました。


ここまでファンタジー要素ほぼ皆無でお送りしておりますがもうしばしお待ちください。

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