第二十四話 『この世界のこと』
お待たせいたしました。
第二十四話です。
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ーーーーーーー本当に、、勘弁してくれ。
「大人気ね?勇者様?」
美香さんが、新聞の見出しを睨みながら顔を顰める俺を見てニヤニヤと笑みを浮かべながらそんな事を言ってくる。
「、、、勘弁してくださいよ、、マジで」
俺が力無く答えると美香さんは「え〜つまんな〜い」などと言いながら唇を尖らせ拗ねるふりをしている。そんな美香さんを見た俺は物凄い疲れを感じてため息を吐きつつもう一度新聞に目を向ける。
『伝説の勇者の再来!!!神竜様と共に現代に現れた生ける伝説!!』
、、、本当に勘弁してくれ。
なぜ、こんな事になったのかというと国が大々的に俺の事を公表したからだ。もちろん、勝手にではない。しっかり国のお偉方が許可を取りに来て俺が許可を出した、、出してしまった。
なんでも、緋月や俺はその所有権を巡って戦争にまで発展しても不思議じゃない存在らしく、どこの国にでも属さずに野放しでいるとわかればどんな手段を使ってでも我が物にしようとする連中が必ず現れるし、既に一般人含め大勢に見られている上に日本が接近してくる緋月を察知したように他国にもその存在を気取られている可能性が非常に高く、今まで認知されていなかった島の存在など諸々含め隠し通す事は非常に困難である、、、との事だった。
だったら、下手に隠して他国からの不興をかうより大々的に公表してしまえばいいじゃない、、となった訳だ。フリだけでも「国の所有物」という事にしておけば他国との軋轢も最小限に抑えることができ、俺自身の身の安全にも繋がる。そう土下座するような勢いで頼み込まれて俺が折れた結果だ。
、、、何度でも言おう、本当に勘弁してくれ。
理屈はわかる。俺はともかく緋月に関しては本当に奪い合いで戦争が起こっても別に不思議とは思わない。隠し通す事ができない事も、逆に公表するという対策も納得できる。
でも、、、コレはどうにかならなかったのだろうか?
そんな事を思いつつ再び紙面に目を向けると一面にデカデカと死んだ魚のような目をした俺の姿が載せられていた。
こういうの、、普通許可とか取るもんじゃないのか?せめて、、せめてもっといい写真はなかったのか?もはや悪意すらあるだろ、、これ。
ていうか俺こんなにクマ凄かったのか、、、
「、、、あ、、」
そこまで考えて、思い至った。
そうだ、、、これは俺じゃない。この世界に来て、島から脱出してから今まで、写真なんて撮られていない。つまりこれは、こっちの世界の俺だ。
、、、その事に気が付きなんだか妙な気分になりつつ改めて写真をよく見ると、、クマだけじゃない。なんというか、、こう、、表情から滲み出る雰囲気が暗い。この世の全てに絶望したような顔をしているし、若干鏡で見る自分の顔よりもやつれたような痩せ方をしている気がする。熊谷から虐められてたとは聞いてたけど、、それのせいなのだろうか?
、、まぁ、これ以上は考えても仕方ないか。
別世界の自分の顔を初めてみて、なんとも言えない微妙な感覚を忘れるように頭をふり、ページを巡って他の記事に目を通していく。
政治、経済から大きな事故や事件、芸能界の話題や街の行事に四コマ漫画、クロスワード等、俺の知っている新聞と何も変わらない。
それでも、この1ヶ月こうしてこまめに新聞や雑誌、ネットで調べたり美香さんや緋月に色々質問したりして情報を集めたおかげで段々とこの世界の事や元いた世界との違いがわかってきた。
まず、魔法やら魔物やらが存在している事。それ自体は島にいた時点でわかっていた事だがどうやら魔法の他にも呪術やら祈祷術、気術等色々とあるらしい。そして、例外もあるが基本的には込められた力を消費すると消えると言う性質上、日常生活でそれらが使用される事はほとんどなく、また緊急時を除いて基本的に街中での使用が法律で禁じられている事もあり、この世界の人々にとってはあくまで護身術の一つ程度の認識らしい。
次に、この世界には天国や地獄、魔界や妖精界など『異世界』が存在するらしい。緋月に聞いてみたところ、これは俺の元いた世界とは異なりあくまでこの世界に内包されており、正確には異世界というより異界であり、簡単ではないが行き来もできるとの事だった。
ついでに、美香さんの補足によると魔界に住まう魔族とは数百年前に大きな争いがあったが勇者と緋月の活躍により終戦、現在は互いに最低限の交流がある程度。逆に、獣人やエルフ等の亜人が住まう幻想界と呼ばれる世界とは頻繁に交流があり、こちらに移り住んできたりその逆だったり、旅行や留学なんかも頻繁に行われているらしい。
旅行で異世界とは随分とスケールのでかい話だと思うがどうやら旅費は普通に海外旅行に行くよりも安く済むらしい。
そして、1番衝撃を受けたのは銃火器が存在していない事だ。
正確には過去に生み出した人間はいて、文献にも残っているのだが普及する事は無かったらしい。
いや、魔法込みにしても普通に銃火器は有効では?、、と首を傾しげたがよくよく考えれば答えはすぐにわかった。
そもそも前提が違うのだ。例えば、島にいたメンバーの中で1番防御に向いてそうな先生の土魔法を相手で考えても銃火器は確かに有効だろう。どの程度の厚さと速さで展開できるのかでも変わってくるが半端な土壁程度ならマシンガンによる掃射や対物ライフルなんかあれば容易く抜けるはずだ。
ただそれは、元いた世界での現代の銃火器の話だ。
銃火器に詳しくはないが、生み出されたばかりの原初の銃なんて火縄銃にも劣る性能の筈だ。単発式なのは当然、威力も何もかも俺の知る現代の銃と比べると遥かに性能面で劣る上にこの魔法や呪術など豊富な攻撃手段の存在する世界だ。生み出したはいいものの、いや、、魔法でよくね?となってわざわざ金と時間をかけてまで改良しようとした人間がおらず、そのまま廃れていった訳だ。
そして、銃がない代わりにそのまま人類が使用する武器は刀剣類が用いられており、日本では一部の職業を除き刃渡りに制限があり免許が必要になるが一般人でも帯剣が許可されているそうだ。
ちなみに刃渡り100cmまでが通常免許、それより長いものになると大型免許が別途必要になるらしいが不意に魔物が発生する事がある世界なだけに免許は案外簡単に会得できるっぽい。通常は1日の講習、大型はそれに加えて簡単な実技試験があるそうだ。元の世界で言うところの原付の免許くらいの気軽さである。
とまぁ現状わかった事はとりあえずこのくらいだ。
この1ヶ月、次から次へとくる「お見舞い」の合間を縫って情報を集めた今の所の感想は「あまりに似すぎている」だ。今上げた点以外は元いた世界と相違ない。病室の窓から見える外の風景も、通り過ぎる人々が帯剣している以外は元いた世界と変わらない。
元は一つだった存在とは言え「魔法や魔物の存在する世界」と「魔法も魔物も存在しない世界」でこうも似る物なのだろうか?
緋月に聞いてみようか、、、
「失礼するぞ」
緋月に質問しようと口を開きかけたその時、そんな声と共に病室のドアが開かれたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
活動報告の方でも書きましたが、色々と環境が変わった影響で更新頻度が落ちております。
しばらくはこの状況が続くと思われますがなんとか頑張ってなるべく早めに更新できるようにしたいと思います。
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