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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
28/56

第二十三話  『誤算』

第二十三話です。


感想、ご指摘などお待ちしております。

 


 ーーーーーあぁ、しくじった。



 俺は白い天井をぼんやりと見上げながらそんな事をぼんやりと考えていた。



 現在、俺たちが緋月の背に乗り島を脱出してからちょうど1ヶ月が経過していて、島にいたメンバーは全員「検査入院」という体で事実上の軟禁生活を送っていた。なんやかんやがあり、明日退院する事にはなったが、そもそもなぜこんな事になったのかと言うと、、、まぁ、自業自得だ。



 と言うのもあの後、緋月の背に乗り島を脱出した俺たちは本当に緋月の宣言通り1時間もかからずに日本本土に無事降り立つ事ができた。そして同時に警察やら軍やらに一斉に包囲されたのだ。



 もちろん、騒ぎになるであろう事は予想できていた。



 だが、そのあまりに速すぎる対応は流石に予想外で目を丸くしていた俺だったが、どうやらこの世界には強力な魔物の襲撃に備えて魔力を感知するレーダーのような物が存在しているらしい事をちょうど横にいた先生から聞いた。



 そしてそのレーダーに馬鹿げた魔力を持つ存在、、、要するに緋月が引っかかり、更には尋常ではない速度で本土に接近しているものだからもう大騒ぎ、警察やら自衛隊やらが大慌てで総動員されたわけだ。



 大量の脂汗をかき、死ぬ覚悟を決めた戦士の様な悲壮な表情を浮かべ、いかにも相打ちになってでも街を守ってやる、、と言った雰囲気を漂わせる皆様に流石に焦った俺は、慌てて緋月を人間状態にさせ、事情を()()()()()()()()()



 そして、そのまま半ば強制的に政府の運営する病院に入れられて、現在に至る訳だ。



「んぐんぐんぐ、、、んむ?」



「、、、はぁ〜」



 上体だけ起こした俺は、膝の辺りで寝っ転がり、誰かが持ってきた見舞いの品である果物を美味しそうに頬張りながら俺に視線を向けられている事に気が付き首を傾げている緋月を見て、思わずため息をつく。



「普段は、、こんななのになぁ、、」



 俺は、そう口にしながらこの1ヶ月間の事を思い返す。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 島を出てから2週間と少し、軟禁状態に置かれ家族すら面会拒絶されている中「お見舞い」と言う名目で政府のお偉いさんやらどこぞの研究室の人やらがほとんど毎日訪れていた。



 目的は明らかに緋月、、とついでに俺だ。誰も彼もいかにも政治家と言った感じで自身の狙いは明かさず、こちらの腹を探り、好きあらば言質を取ろうとしてくる。そして明確には口にしないものの、いいように利用してやろうと言う意志は政治に明るくない俺でもわかるほど露骨に態度に出ていた。中にははっきりと口にしてきた連中もいる。



 考えてみれば当然の事だった。



 緋月は、過去にアトランティスを沈めた、、と言っていた。アトランティスがどれだけの規模だったのかはわからないが、つまりは個の力で国を滅ぼしたのだ。



 俺の知っている限りでも死んでも元に戻れる権能に広範囲に及ぶ洗脳、高速での飛行能力を有し、実態はわからないが国を一つ沈める攻撃手段も持ち合わせている。当の本人があの様子なのですっかり忘れていたが計り知れない程驚異的な存在だ。



 言ってしまえば、実情を知らないその他大勢の視点から見れば核兵器などより遥かに強力な兵器の起動スイッチをどこの誰ともしれない、いち高校生が手にしたような物なのだ。警戒するのも、籠絡でもして取り込もうとするのも至極当然の流れである。



 俺自身に関してもそうだ。



 勇者とやらと同じで、別世界の記憶を保持したままこの世界にやってきた存在。その条件はとても厳しく、狙ってできるようなものでもない。事実、歴史上で俺含め2人しか確認されていない。そんな貴重な、()()()()()()()が俺なのだ。実験動物として扱われる危険性くらい考慮しておくべきだった。



 実際、露骨な実験動物のような扱いは今のところ受けていないが、家にも帰れず病院に軟禁され、何度も血を抜かれたりよくわからない装置を身体に装着されて何かのデータを取られたりしている。



 逆に、この程度で済んでいる上に退院までできる事になったのは、間違いなく緋月のおかげだ。理由は単純。要は緋月という脅威と友好関係を結んでいる俺に下手な手を打つ事ができないわけだ。それでも国側としても引き下がるわけにはいかず、なんとか食い下がろうとしていたところへ緋月がトドメをさした。



「妾がどういう存在かは理解しておる故、監視程度なら許す。だが、春樹に直接介入する事は妾が許さぬ。その時は、妾が主らの敵に回る事と思え」



 毅然とした態度でハッキリとそう口にした緋月に国のお偉いさん方はとうとう折れた。そうしてほとんど脅迫のような形で俺は自由を手にして、それ以降は露骨なのは無くなったものの、それでもなんとか俺と緋月を取り込もうと更にご機嫌取りの「お見舞い」の数が増えたのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



 そんなこんなで病院に軟禁されてから1ヶ月が経過し、明日退院する事になった訳だが、、、今思い返しても、、我ながら本当にしくじった。



 緋月の特殊性も、俺自身の特殊性も理解していたし騒ぎになる事も予想していた。でも、理解したつもりになっていただけで実際は緋月がこの世界の人達にとってどういう存在なのかも、自分がどれだけ特異な存在であるのかもまるで理解が足りていなかったのだ。



 もちろん、状況に振り回され、解決した後は両親の事で頭を悩ませ、その事にまで頭が回らなかったのもある。それでも、明らかに他のメンバーは緋月に対して畏敬の念を抱いていたし本人が口にした内容とか他にも幾つかヒントはあった。つまりちょっと冷静になって考えればこうなる事は馬鹿でも予想できたはずなのだ。だからこの事態に陥ったのは紛れもなく自業自得である。



「、、、、、、、」



 1人後悔していた俺は再び緋月に視線を向ける。



「ふんふーん♪」



 果物を食べ終わった緋月は相変わらず俺の膝辺りに乗っかるようにしてうつ伏せに寝っ転がり、ご機嫌に鼻歌など歌いながら足をパタパタさせている。



 、、、あの時の、毅然とした態度で俺を庇ってくれたカッコいい緋月はどこへ行ってしまったのだろうか?



 俺がそんな事を考えていると、病室の扉が開いた。



「失礼しま〜す。春樹く〜ん、頼まれてた物持ってきたわよ〜」



 雑誌や新聞を数冊両手で抱えて扉から入ってきたのはこの1ヶ月、俺の担当につき身の回りの世話などをしてくれていた看護師の永島 美香(ながしま みか)さんだ。入院している間に、お互い名前で呼び合いこうして気軽にお願い事ができる程度には仲良くなった。



「あざっす美香さん。業務と関係ない事お願いしちゃってすみません。本当に助かります」



「いいのいいの。こっちとしても仕事を抜け出せる大義名分ができて助かるわ」



 なんでもないという風に手を振りながらそう答えた美香さんに改めて感謝の意を伝えつつ雑誌類を受け取った俺は早速目を通して初めて、、、一面の見出しを見た瞬間に盛大に顔を顰めた。



 実は、この世界についての情報を仕入れてみたいと思い美香さんに色々と買い集めて来てもらっていたのだが、、、一つ目に選び手に取った新聞で早速嫌な物を目にしてしまった。



 見出しはこうである。



『伝説の勇者の再来!!!神竜様と共に現代に現れた生ける伝説!!』



 そんな文言と共に俺の写真がデカデカと掲載されていたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


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