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異世界漂流記  作者: 春雪
第一章〜無人島サバイバル編〜
27/56

第二章 学園生活編 〜プロローグ〜

第二章、プロローグになります。


感想、ご指摘、イイネなどお待ちしております。

 


 ーーーーーーー見つけた。



 自分で庭の木の根元に掘った穴を見つめながら、その理由がわからず首を傾げていた私に突然″声″が聞こえてきた。



「、、、、、、え?」



 突然聞こえてきた″声″に思考の渦から引き戻された私は惚けた声を上げて周囲を見渡したが人の姿は見えない。そもそも″声″の聞こえ方がおかしかったような気がする。なんというか、、、うまく表現できないが耳ではなく頭に直接響くような感じだった。



 自分の謎の行動に困惑していた私は不可思議な″声″に更に困惑したその瞬間、周囲の景色が一瞬で切り替わった。



 ーーーーーーーーーーーーーー



「、、、、、、え?」



 驚愕の事態に今度は困惑ではなく驚きで惚けた声を上げた。



 周囲の景色が一瞬で切り替わった事に驚いたのではない。謎の″声″に驚いたわけでもない。


 その2点も充分に驚愕に値する出来事であり、一応驚いてはいるのだが、私は()()()()を気にする余裕がない程の衝撃に襲われていた。



 わ、、私、いま、、一瞬、、春樹の事忘れてた、、、?



 その事実に気が付き、猛烈な恐怖に襲われ、身体は震え脚に力が入らなくなって思わずぺたんとその場にへたり込んでしまう。



 私はいま、間違いなく春樹の事を忘れてた。あんなに必死に忘れたくないって思ってたのに、、次の瞬間には何事もなかったかのように綺麗さっぱりと、、



「、、、、ッ!!」



 再び忘れてしまうのではないかという恐怖に駆られ必死になって思い返すが今は全部覚えてる、、はずだ。流石に365日全てとはいかないが、春樹と過ごしたたくさんの思い出が今は頭の中にある。先程のように少なすぎると違和感を感じる事もない。理由はわからないが一度忘れて再び思い出せたのだ。



 大丈夫、、大丈夫だ。



「、、、、この娘は何者ですか?」



『、、勇者モドキの関係者だ。以前話した通りアレが勇者と同等の力を身に付ければ非常に厄介だ。くれぐれも我が眷属に我らの存在を気取られぬ様、ソレをうまく使い早いうちに手を打て』



 春樹の事を思い出せた事に安堵しているとそんな声が聞こえてきた。



 それでようやく私は自分の置かれている現状にまで頭が回ってきた。今、私はどこかのお城?の王座の間の様な場所に座り込んでいる。王座らしき椅子には腰まである長い銀髪を靡かせ、褐色の肌に赤い瞳、頭からは山羊のような螺旋状の角を生やし、軍服のような服装にマントを羽織った異様な出で立ちの男が座っており鋭い目でこちらを見ていた。



 こ、、ここどこ?さっきまでお家の庭にいたはずなのに、、、それにあの人はなに?目が赤いしツノも、、、こすぷれってやつ?



「承知しました。策を練ります」



 あまりの急展開に事態が飲み込めずひたすら困惑する私を無視して男はそう口にするとおもむろに立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。



「おい、娘。名はなんと言う」



「あ、、、え、、?」



「お前の名前だ。答えよ」



 依然として茫然自失状態の私が突然の質問に何も答えれず吃っていると再び男が名前を問うてきた。



「い、、今村仁千佳、、です、、」



 混乱する頭でも名前を聞かれている事は理解できたのでなんとか自分の名前を答えると男は私の後ろの方に視線を移し口を開いた。



「聞いていたな?徹底的に調べ上げろ。ただし、悟られるな」



「かしこまりました」



「ッ!!!」



 男の言葉に返事を返す声が突如真後ろから聞こえてきた事で私は、思わず悲鳴をあげそうになりながら慌てて振り向くとそこには燕尾服を身に纏ったいかにも執事といった雰囲気の老齢の男性が立っていた。男と同じで銀髪、、、と言うよりは白髪?で褐色の肌に赤い瞳、頭からは男とは若干形状の違う大きなツノを生やしている。



 い、、いつのまに?さっき部屋を見回した時には誰もいなかったのに、、



「して、このお嬢さんはどのように?」



「丁重にもてなせ。暴れるようなら拘束して構わん。ただし、絶対に殺すな」



「かしこまりました。では部屋を一室与えてもよろしいですかな?監視には私めが付きましょう」



「任せる」



 混乱する私をよそに男と執事の間で話はどんどんと進んでいき、男に礼をした執事風の老人がこちらに向き直り声をかけてきた。



「ではお嬢さん、お部屋へ案内いたします。今我が主人がおっしゃっていた通り、こちらとしても手荒な事は望んでおりません。、、大人しくついてきて頂けますかな?」



「、、、、、、、、」



 私は無言で頷いた。というかそうする他に選択肢がなかった。



 状況は全くわからないが、さっきあの男は私の事を殺すなと命令していた。だからひとまずはここで今すぐ暴れたとしても殺される事はない、、筈だ。でも暴れたからと言って私1人でどうにかできるとは思わないし、あの男は暴れても殺すなとは言ったけど暴力を振るうなとは言わなかった。依然としてここがどこなのかすら分からない。だから、、少なくとも今は大人しく言う事を聞くべきだ。



「ありがとうございます。ではお部屋へ向かいましょう」



 私が頷いた事に満足そうな笑みを浮かべた執事の男は再び男に一礼をすると王座の間の扉に手をかけ待機している。私を待っているのだと察してよろよろと立ち上がり扉に向かう。外に出る際、チラリと男の方を振り返るとこちらの方をまるで値踏みするようにじっと見つめていた。



「、、、、、、」



 ここはどこなんだろ?私はどうなってしまうんだろう?



 丁重に扱って暴れても殺すなって、、私は人質か何かにでもなってしまったのだろうか?でも、、私なんかを人質に取ってなんの意味があるの?ウチは貧乏でもないけどお金持ちというわけでもない普通の一般家庭だし有名人に知り合いがいるわけでもない。



 そう言えば、、謎の声が勇者モドキ?と私が関係者だって言ってた。だとしたら勇者モドキって人は私の知り合いって事?そもそも勇者ってなに、、?あの物語に出てきて魔王を倒してお姫様を助けたりする勇者のこと?、、この現代社会で??それとも何かの比喩?。



 疑問は次々と浮かんでくるのにその答えは一つも出ずに困り果てた私は前を歩く執事風の男に視線を向けた。前を向いて歩いているので表情は見えないが、さっきの様子だと優しげな好好爺めいた雰囲気ではあった。信用は全くできないが、、さっきの男と目の前の男性どちらに話を聞くかと言われたら間違いなく目の前の男性の方が聞きやすい。



「あ、、、あの」



「はい? どうなさいましたか?」



 そう考え声をかけた私に男性は振り向いて答える。



 褐色の肌に、赤い瞳、大きなツノで異様な雰囲気ではあるがその表情は柔和なものだった。その事に少しだけ安堵した私は続けて口を開く。



「ここは、、、どこなんですか?私、どうなっちゃうんですか?」



「ここは魔王様の居城になります。あなたに関しましては現在は客人としての立場になっております。暴れたりされると取り押さえねばなりませんが、そうでなければある程度城の中を自由に動いてもらっても構いません」



 ま、、魔王!?ど、、どう言う事?

 もしかしてふざけて、、、る様にも見えない。

 もう、、、何が何だか、、

 まさか、、そのツノも本物、、なの?



「も、、もしかしてそのツノ、、本物なんですか?」



 私が恐る恐る浮かんだ疑問を問いかけると一瞬キョトンとした表情を浮かべた男性はすぐ納得した様子を見せ衝撃の内容を口にした。



「あぁ、、失念しておりました。()()()()()()には我等のような存在は居ないのでしたな。えぇ、このツノも本物ですよ。触ってみられますかな?」



 男性が冗談めいた口調でそんな事を口にするが私は反応する事ができなかった。



 、、、今、なんて言った?()()()()()()



 まるで、、まるでここは違うみたいな言い方だ。



 別世界だなんて馬鹿馬鹿しい。普段ならそう吐き捨てるところだが、、否定しきれない自分がいる。さっき、景色がいきなり切り替わった事もそうだし今目の前にいる男だって、、



「、、、、ツノ、、触ってみても良いですか?」



「は、、、?、、失礼。もちろん構いませんよ」



 私がそう口にするとまさか本当に触りたがるとは思わなかったのか一瞬鳩が豆鉄砲を食らった様な表情を浮かべた男性だったが、すぐに柔和な笑みを浮かべ了承すると私の前に膝をついて頭を触りやすい位置へと運んでくれた。



 恐る恐る手を伸ばしツノに触れてみる。感触を確かめてみたり軽く引っ張ってみたり、少し髪をかき分けて根元の部分を確認してみたりしたが、、どうやら本物っぽい。整形、、の可能性もあるかもしれないが少なくとも装着しているわけではなく間違いなく頭から生えている。



 ほ、、本物だ。本当にここは別の世界って事、、、?でも、、どうして私が?私だけが別世界に来てしまったの?いや、、さっき勇者モドキとか言う人が私の縁者だって、、、



「、、、ッ!!!」



 そこまで考えた私の脳裏にある人物の顔がよぎりハッとする。



 幼馴染の男の子。ある日、元々いなかったかの様に世界からも私の記憶からも消えた男の子。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()大好きな男の子。



 ま、、まさか。勇者モドキって春樹の事!?春樹もこっちに来てるの?



「、、、、、、、」



 落ち着いてこれまでの事を整理してみよう。



 まず、春樹が世界からいなくなり、私の記憶からも消えた。そして理由はわからないがおそらく私も同じ世界に移動した?事で春樹の存在を思い出した?そして勇者モドキは私の関係者?



 何が起こっているのかなんてさっぱりわからないが勇者モドキ=春樹だと考えるとなんだかしっくりくる、、気がする。



 そう、、そうだ。きっと春樹も来てるんだ!!



 その考えに辿り着いた私は慌てて口を開いた。



「春樹、、その勇者モドキって人、渋谷春樹って名前ですか!?」



「、、い、いえ?名前まではまだ把握できておりません。ですが、あなたと同じ世界の存在である事は間違いないかと、、少なくとも、我が主人からはそう聞き及んでおります」



 興奮した様子で詰め寄る私に若干たじろいだ様子の男性はそう口にした。



 やっぱり、、!

 春樹だ!きっとそうだ!!

 会いたい、、今すぐ春樹に会いたい。

 行かないと、、行かなきゃ!!



「その勇者モドキって人に会わせてください!今すぐに!!!」



 私がそう詰め寄ると男性は静かに首を横に振って口を開いた。



「それはなりません」



「どうしてよ!?」



「理由はいくつかあります、、ですが、、」



 そこまで聞いた私は春樹と合わせるつもりが無いのだと悟り踵を返して全力で走り出した。冷静になって考えるとどう考えても悪手なのだが、とにかく春樹に会いたくて仕方が無くて思わず走り出してしまった。



 動き出してしまったものはもうどうしようもない。とにかく、この城から出ないと!



 そう思い廊下を全力で走り曲がり角を曲がった所で私は、硬直して立ち止まってしまった。



 先程置いて逃げてきた、()()()()()()()()執事風の男性が道を塞ぐ様に廊下に立っていたのだ。



「あ、、、え、、」



「手荒な事はしたくないと言ったはずです。大人しくしてください」



 硬直する私に、男性は落ち着かせる様な口調で語りかけながら手を伸ばし、私の腕を掴んできた。



「、、、ッ!?いやっ離してよ!!!」



「どうか落ち着い、、、グッ!?」



 身体も思考も硬直していた私は、一拍おいてから″拘束された″のだと気が付き、振り解こうと乱暴に腕を振った。その瞬間、いきなり男が苦悶の声を上げて吹き飛び、轟音を立てながら廊下の壁を突き破って奥の部屋の壁に亀裂を入れながら叩きつけられた事で再び私の身体と思考は硬直した。



 わけもわからず男性の方を見ると頭から血を流し、右腕は肘から先がなくなって壁に半ばめり込みながらぐったりとしている。そして、腕に違和感を感じて恐る恐る視線を向けると千切れた男性の右腕が私の腕を掴んだままの状態でぶら下がっていた。



「、、、ッきゃっ!!!」



 まるで虫が腕についていた時のようにゾワゾワと悪寒が背筋を走り、思わず小さな悲鳴をあげて慌てて腕を引き剥がした私は、ドチャッと嫌な音を立てて地面に落ちた腕を見て再び硬直してしまう。



 、、、え?あの人、、腕が、、わ、、わたしが、、やったの?で、、でも私は振り解こうとしただけで、、私の、、せい?



「ッ!!大変!!」



 混乱しきった頭で、自分が人を殺してしまったかもしれないという事だけは何とか理解できた私が先程捕まりかけた事も忘れ慌てて駆け寄ろうとしたその時、男性が苦しそうな表情を浮かべながらも普通に立ち上がった。



「、、、お願いします。手荒な事はしたくありません。どうか話を聞いてください」



「で、、でも腕が、、わた、、私そんなつもりじゃ」



「大丈夫ですから、どうか落ち着いて」



 男性がなだめるような口調でそう言うと、なんと傷口がボコボコと音を立て始めあっという間に新しい腕が生えてきてしまった。あまりの事態に私が呆気に取られているとその様子を見た男性が苦笑いを浮かべながら口を開いた。



「仮にあなたがこの城を抜け出したとしても、目当ての人物に会う事は叶いません。そして城の外は危険です。どうか、今はこの城にいてください」



「ど、、どうして?」



「そもそも、あなたの目当ての人物がいる世界と、今私たちがいる世界は違うのです。そう簡単に行き来はできません。だから、今はどうかお待ちください」



「世界が、、違う?わたしは春樹と同じ世界に来たんじゃなかったの?」



「その辺りも含めて詳しくお話しします。今ならまだ我が主人にも混乱していたという事で誤魔化せます。重ねて申し上げますが我々はあなたに危害を加えたくは無いのです。どうか、、どうか落ち着いて話をする機会を頂けませんか?」



 自分の腕が吹き飛ばされたというのに尚も低姿勢を崩さずこちらを気遣う様子を見せる男性に、未だ混乱から復帰できていない私はただ呆然と頷き返す事しかできないのだった。


ここまでまでお読み頂きありがとうございました。


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