第二十二話 『安心』
第二十二話になります。
感想、イイネ、ご指摘などお待ちしております。
ーーーーーーーこれは、現実なのかな?
私、熊谷三裡は淡い光を放つ洞窟の天井を眺めながらぼんやりとそんな事を考えていた。
何度もこの島にきた時点に戻される現象に巻き込まれ、色々と試したが自分1人ではどうしようもないと悟った私は渋谷くんに助けを求めた。
結論から言えば、その判断は大正解だった。
何度も繰り返したそれまでが嘘のようにトントン拍子で事態が動いた。渋谷くんが先生達を救い、竜神様、、緋月さんが現れ、なんと渋谷くんと盟約を交わしてしまったのだ。
おそらく、四大精霊と盟約を交わした人間なんて史上初なんではないだろうか?もしかすると勇者様とも交わしていたのかも知れないが、、少なくともそう言った逸話を耳にした事はない。
、、なんだか、悲しい誤解があったみたいだけどそれでもこれはとんでも無いことだ。最終的には本当に友達になっていたし、、、
目の前で起きている事にただただ驚いている間にも話は進み、その緋月さんが私達を乗せて日本へ連れ帰ってくれる事になったのだ。
あまりにあっさりと帰れる事になって正直現実味がない。
渋谷くんに頼る。たったそれだけの事で怒涛の展開が始まり、あっという間に解決してしまった。
本当に、、帰れるの?
時間が経ち、こうして横になって落ち着いて振り返ってみてもまるで夢の中にいるみたいに気分がふわふわしたままだ。いや、実際困り果てた私の見た都合のいい夢、、と言われた方がまだしっくりくるかも知れない。
もし、、このまま寝たらどうなるんだろう?
「、、、、ッ!!!」
そう考えた瞬間、途轍もない不安に襲われた。
緋月さんのお話も聞いていたし、彼女が嘘を言っているようにも思えない。だから、、大丈夫。
必死に自分にそう言い聞かせるが、「もしここで眠って、次に目を覚ましたらまたあの砂浜なのでは?」と言う不安が消えてくれない。
ダメだ、、、眠れそうにないや。
寝るのを諦めた私は身体を起こし、何気なく洞窟内を見渡すと渋谷くんの姿がない事に気がついた。
横になる前にはいたはず、、いつのまに?
渋谷くんの姿が見えない事に更に不安に襲われる私だったが、慌てて視線を巡らせるとすぐに彼の姿を発見した。月明かりに照らされた洞窟の入り口の辺りで壁に背を預けて座り込んでいる。彼がいた事にホッとした私は、どうせ眠れないのだし少しお話ししたいな、、と思い彼に近づき声をかけた。
「何してるの?」
「ちょっとな、、熊谷も寝れないのか?」
私が声をかけると若干驚いた様子を見せた彼は、そう問いかけてきた。
、、ここは正直に話してみよう。なんとなくそう思った私は苦笑いを浮かべて口を開いた。
「、、、ん。ちょっと、、怖くて」
「怖い?」
「、、このまま眠っちゃったら、明日が来なくてまた最初に戻っちゃうんじゃないかって、、もちろん、緋月さんのお話も聞いてたし大丈夫だとはわかってるんだけどね、、、」
「、、、、、、、、」
なにやら難しい顔をして無言の渋谷くんに、私は思い切った事をしてみる事にした。
「となり、座ってもいい?」
「、、、ああ」
困惑しつつ了承してくれた渋谷くんの隣に腰を下ろす。
肩が触れるほど近い。
男性経験のない身としては信じられない程大胆な行動に出たものだと思うが、緋月さんという絶世の美女の裸を見ても一切動じていなかった渋谷くんなら、別にこの程度なんとも思わないだろう。
「「、、、、、、、、」」
、、、やっぱり、安心するなぁ。
お互い無言だったが、隣にいるだけで先程の不安が吹き飛んだ私は彼にお礼の言葉を口にした。
「、、、ありがとね」
「、、、そりゃこっちのセリフだろ?熊谷が話してくれなきゃ、きっと今頃何も知らずに「六回目」の真っ最中だった。 勇気出して話してくれてありがとな」
ポツリと呟くように口にした私に彼は何でもないようにそんな事を言った。彼は、自分がどれだけの事をしたのか理解していないのだろうか?
渋谷くんに頼る。私がした事なんてそれだけだ。強いて言えば″四回目″で渋谷くんに信じて貰えるように手を打ったくらいか。
たったの一手、それだけで事態が一気に好転した。私達全員の命を救い、緋月さんの封印を解き、大精霊と盟約を結ぶ偉業を成し遂げ、私達を帰す約束を取り付けてくれた。
彼が自ら望んだんじゃない事もあるし、封印だって私でも解けたし、話を聞くに緋月さんならどの道私達を送り返してくれていたとは思う。
つまりは、きっと渋谷くんの手がなくてもこの一連の問題はいずれは解決していた。それでも、渋谷くんがいなければここまでスムーズに事が進む事はあり得なかったはずだし、絶望に染まった私の心を確かに救ってくれたのだ。
「ううん。私1人じゃ、どうにも出来なかった。信じてくれて、助けてくれて本当にありがとう」
私はそう考えつつゆっくり首を振って再度お礼を口にした。
「「、、、、、、、」」
再び、互いに無言になるが今度は渋谷くんの方から口を開いてきた。
「、、、、悪かったな」
「、、、? どうして渋谷くんが謝るの?」
彼がこの島に来てから一度だって謝るような事をしただろうか?
、、、、思えば何回か泣かされかけたし一度は泣いてしまったがそれはこっちが勝手にビビっただけだ。彼は何もしていない。だとしたら、、どうして?
答えが分からず怪訝な表情を浮かべる私に彼は真面目な様子で口を開く。
「あの場で帰る決断をしなかったからだよ、、、怖かったんだ、、帰るのが。自分の事でいっぱいいっぱいでお前らの事考えれてなかった。だから、ごめん」
「、、、帰るのが、、怖い?」
最初は意味が分からずオウム返しになる私だったがすぐに理解し思わず「、、、あ」と声が出た。
そう、、そうだ。彼は″別の世界″からやってきたんだ。見た目は同じだが、、、″元の彼″をよく知る今村さんの反応を見ている限り内面の方は完全に同じと言うわけではないのだろう。私の視点から見てもそしてそれは彼の視点から見ても同じ事だ。
自分の知っている人によく似た別人の元へ帰る。
それは、、一体どれだけ不安な事だろう。自分に当てはめて考えても、、やはり怖い。きっと、、世界に自分だけ取り残されたような、、そんな言いようの無い不安や恐怖に襲われるはずだ。
「、、情けない事に、わからないんだ。どんな顔して会えばいいのか。、、、こんな事して戻るのを先延ばしにしたって意味ないのにな」
「、、、ッ!!!」
思わず絶句して考え込んでいた私に今までとは全く違う弱々しい笑みを浮かべながらそう口にした。
そんな彼の姿を見た瞬間、私は激情に駆られた。
うまく言葉にできないが、、とにかく、嫌だ。彼のこんな姿を見ていたくない。胸がバラバラに引き裂かれ、肺が締め付けられるような痛みを覚えた私は思わず彼の手を取って立ち上がる。
何か考えがあってそうしたわけでは無い。身体が、勝手に動いた。
「、、うちに、、、うちに来ればいいよ」
「、、、、、、は?」
思わず、ほとんど何にも考えず反射に近い形で口にした私の言葉に渋谷くんはただ呆然としていた。
一方私は、とにかくなんとかしなければ、、と勢いだけで口にしてしまった言葉だが、口にした事でなんだか本当にそれがいい手な気がして更にまくし立てるように続ける。
「そう、、それがいいよ!!お父さんとお母さんは私が絶対説得するから!!学校だってウチから通えばいいんだし、それに、、、」
「熊谷、ちょっと落ち着け」
私の言葉を遮るようにそう口にした渋谷くんが私の手を引いて座らせてくる。
「、、、ッ!!、、ごめん、、出来もしないこと言った」
手を引かれて急に正気に戻った私は、猛烈に反省した。
こんな無責任な発言をして、、何をしているんだ私は。現実には、そんなことできるわけがないのに、、もし仮に両親の説得に成功したとしても、隠し通せるわけがない。急に家から渋谷くんが出入りするようになれば近所で噂になるだろうし、渋谷くんの親だって黙ってないはずだ。もちろん、助けになってあげたい気持ちに偽りはないし、実行する事もやぶさかでは無いが、、、この案はあまりにも現実的では無い。
「謝んなよ、、励まそうとしてくれたんだろ?ありがとな」
落ち込んで俯いた私に渋谷くんはそう口にしながらぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「、、、、私に何かできる事はない?さっきの事だって渋谷くんがいいなら本気でお母さん達説得するし、、、とにかく、、私の事を信じて助けてくれた渋谷くんの力になりたいの」
頭を撫でられ、再びなんだか気分が落ち着いた私はそう口にした。
本心だ。私を信じてくれて、助けてくれた渋谷くんに少しでも恩返しをしたい、力になりたい。
「流石に居候は申し訳なさすぎるし、感情面を抜きにしても色々と無理があるから気持ちだけ貰っとくよ。でも、、そうだな、、、早速だけど気分転換がてらに少し話に付き合ってくんない?」
そう口にした渋谷くんにそんな事でいいなら、と私は大きく頷いた。
そこから、他愛の話をしばらくしていた。互いにどんな学校生活を送っていただの、互いの印象はどうだっただの本当に他愛のない話だ。そして、途中から何かを考え込むように黙り込んでしまった渋谷くんの横顔を見ていた私は、彼に身を寄せた。
、、、、、、え?
わ、、わわわわわ私は一体何を!!?ほとんど無意識に身体が動いた!?確かに安心するし近くにいたいと思ったけどこれはちょっとやりすぎでは!?
「、、、熊谷?」
内心で盛大に動揺していた私に渋谷くんが声をかけてきたが私は申し訳ないと思いつつも全神経を注ぎ全力で寝たふりをした。起きている事がバレて何をしているんだ?なんて聞かれた日にはもうおしまいだ。私にもわかりません?と答えるしかない。そんなの、完全に変な奴だ。
、、ていうか、それはそれとして女の子がここまでしてるのに一切動じないのはそれはそれでどうなの?
無意識に動いてしまった事には驚いたが、別に安心するからってだけで変な事を考えていた訳ではない。ないけど、、流石にこの無反応は乙女としてのプライドが傷付いてしまう。いくら大人びているとは言えちょっとは照れるとか慌てるとかそういう可愛い反応を見せてくれてもいいじゃないか。
「、、、頑張ったな」
私がそんな事を考えていると再び渋谷くんが頭を撫でてくれた。
「、、、、、、、」
その瞬間、感じていた動揺やら何やらが全て吹き飛んでしまった。
、、、やっぱり、落ち着くなぁ。
そんな感想を抱きながら程なくして、すっかり安心してしまった私は本当の眠りに落ちていくのだった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
これにて本編第一章は完結になります。
活動報告でも書いた通りここから一章全体の修正作業ともしかしたら人物紹介、閑話などを挟むかもなのでそんなに時間をかけるつもりはありませんがもしかしたら少し間が開くかも知れません。
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